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【主張】医療機関の経営悪化 コロナの打撃深刻、支援急げ
新型コロナウイルスの感染拡大が、医療体制に新たな影響を及ぼしている。
新規感染者数の減少や軽症者用の宿泊施設借り上げなどにより、病床数の逼迫による医療崩壊は何とか避けることができている。
その一方で深刻なのが、コロナ禍による病院経営の悪化である。
感染の恐れから他の疾患の患者が受診を控えたり、医療資源をコロナ対応に集中させるための入院や手術の延期、院内感染を防ぐための外来診療の制限などが響いているという。
日本病院会など3団体が加盟病院に行った緊急調査の速報によると、4月の利益率は前年同月比で10%も落ち込んだ。全国医学部長病院長会議の試算では、4月の状況が続いた場合、全国の80大学病院で年間約5000億円の減収が見込まれている。
受診者や手術件数などが大幅に減った4月の診療報酬が医療機関に入る6月には、経営危機が顕在化する可能性がある。財政的な理由による医療崩壊を招かないよう、必要な手だてを迅速に打たねばならない。
政府も対策に乗り出している。26日にはコロナの重症患者を治療する病院などを対象に、診療報酬を通常の3倍にした。
加えて、27日に閣議決定した2020年度第2次補正予算案では、都道府県が医療体制の強化に使える「緊急包括支援交付金」を、1次補正の1490億円から2兆2370億円に大幅に積み増した。PCR検査の体制強化費も計上している。
第2次補正予算の速やかな成立を期すと同時に、各自治体では地域の事情に応じ、スピード感を持って補正予算を執行できるよう準備を進めてほしい。
緊急事態宣言の全面解除により、社会経済活動が徐々に再開されているが、コロナ再流行への備えを怠ってはならない。新規感染者が再び増え始め、感染第2波への危機感を強めている北九州市の例もある。
これまで続けてきた検査・治療体制の拡充と合わせ、経営面からも医療機関をしっかりと支え、命を守る体制を強化すべきである。