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2018年9月6日

障がい者雇用の水増し 再発防止対策 急げ

国27機関 チェック甘く、実際は半数

中央省庁による障がい者雇用の水増し問題は、全国の地方自治体でも次々と判明し、国民の間に不信感を生んでいる。民間企業に範を示すべき官公庁のずさんな障がい者雇用のあり方は、到底、許されるものではない。「共生社会の実現」を掛け声倒れに終わらせないためにも、徹底した原因究明と再発防止策が不可欠だ。

国の障がい者雇用の実態(厚生労働省調査)

政府は8月28日、中央省庁の昨年6月1日時点の障がい者の雇用数を、実際より3460人多く計上していたとする再調査結果を発表。国の33機関のうち、27機関で水増しがあり、職員全体に占める障がい者の割合は、従来の2.49%から法定雇用率を大きく下回る1.19%となった。

障害者雇用促進法では、行政機関や民間企業が一定割合以上の障がい者を雇うよう義務付けている。この法定雇用率は、国や自治体が2.5%(今年3月末までは2.3%)、民間企業は2.2%(同2.0%)。

手帳を確認しないまま…
自己申告をうのみ 軽度の人まで算入

障がい者を採用する際に、厚生労働省のガイドラインでは原則、「障害者手帳など」で確認するとしている。しかし、省庁の多くで手帳の確認を怠り、本人の自己申告のみで判断したり、手帳の期限切れ、障害者手帳の交付のない軽度の人などを算入していた。

こうした問題の背景としては、障がい者雇用に対する「意識の低さ」はもちろん、国の機関に対する「チェック機能の甘さ」が指摘されている。

民間企業の場合、雇用実態を毎年、厚労省に報告するほか、3年に1度は監査を受ける。一定規模以上の企業が雇用率を達成していないと、不足人数に応じ1人につき月5万円の納付金が課され、達成への計画作成も求められる。

一方、各省庁は年に1回、障がい者雇用数を報告するのみ。第三者によるチェック機能も、未達成の場合の納付金制度もない。

意識の低さに相次ぐ批判

一連の問題で、知的障がいのある当事者と家族でつくる「全国手をつなぐ育成会連合会」の久保厚子会長は、「範を示すべき政府の失態であり非常に残念だ。企業に悪影響が広がり、障がい者雇用の意欲を削ぐような事態となっては困る。襟を正し、早急に全容解明と再発防止策を示してほしい」と語気を強める。

また、障がい者雇用に力を入れる都内の大手企業担当者は、「あきれたというのが正直な感想。私たちは生き残りを懸け、多様な人間の能力を存分に発揮することで会社を強くし、変化への対応力と柔軟性のある組織をつくるために障がい者を雇用している。国にはその姿勢がないのでは」と指摘。その上で「障がい者雇用が、なぜ必要かを根本から本気で考え直してほしい。それが一番の再発防止につながるはずだ」と強調した。

問題の今後の対応

問題を受け政府は、第三者チームによる検証や、関係府省庁の連絡会議で再発防止策を10月に取りまとめる方針。また、全国の地方自治体にも調査を依頼し、10月に結果を公表する予定だ。

採用体制整え、管理職研修を

法政大学現代福祉学部 眞保智子教授

中央省庁で、こうした実態があるとは夢にも思わず、本当に驚いた。障害者権利条約を批准し、障害者差別解消法の制定や障害者雇用促進法の改正など国内法を整備したこともあり、障がい者雇用に関する意識が民間企業で上がり、その文脈の中で出てきた問題だろう。

条約批准国として、国民はもちろん、国際社会にも責任を負っている。国際的には省庁の問題にとどまらず、国全体の風土的な問題として捉えられかねない。政府は気を引き締め、障がい者と共に働き、生きる共生社会をつくるために先導する姿勢を見せるべきだ。

民間企業では、障害者手帳を確認する必要性から、採用時にコピーを提出してもらうことが多い。省庁で、採用時や職員が中途障害となった際のチェック体制が整っていないならば、労働組合の協力も得ながら早急に体制を整備してほしい。

まずは中立な第三者機関である人事院や、労働組合がこれまで以上に役割を果たし、各省庁の担当部局の担当者だけでなく最前線の管理職まで、法の理念や雇用率制度の周知徹底とともに、差別禁止と合理的配慮を視点とするダイバーシティ(多様性)研修を強化することが必要だ。

企業は工夫を重ね苦心しながら環境を整え、障がい者を「戦力」と位置付けて雇用を進めている。指導すべき立場の政府は、逆に優良な民間の取り組みに学ぶことも重要ではないか。

今回を契機に、政府は当然だが、社会全体で障がいのある人の個性や障がい特性、就業について理解が深まることを望みたい。

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