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【主張】所有者不明土地 予防策として「権利放棄」も必要
登記簿を見ても氏名、住所が直ちに判明せず、判明しても連絡が取れない所有者不明土地が生まれることをどう予防するか――今年中の制度改正をめざし、政府内での議論が大詰めを迎えている。
法制審議会(法相の諮問機関)が昨年末にまとめた中間試案に対するパブリックコメント(意見募集)が今年実施され、結果もまとまった。
同試案は、所有者不明の原因となる相続登記の放置を防ぐため「相続登記の義務化」を提起、また、相続人が持て余している土地の「所有権放棄」を認める制度なども盛り込み、多数の賛成意見を得た。実効性のある具体策に向けた詰めの議論が期待される。
特に、「所有権放棄」のあり方については土地所有者と国の責務について適正に判断する必要がある。
人口減少で地方の過疎化が進む中、都会に住む人が地方の土地を相続しても、価値が低すぎて売れず、自治体に寄付しようにも使用目的がなければ管理費だけの負担になるため受け付けてもらえない。
現在は、こうした処分に困る「いらない土地」の行き場所がないため、結局、相続登記も土地・家屋も放置され所有者不明土地となっていく。そして、土地・家屋が荒れ果てて地域の環境と治安の悪化を招いてしまう。
そこで「所有権放棄」によって「いらない土地」の受け皿を作る方法が検討されている。しかし、どこにその土地を引き受けさせるのか、また、相続人がいない土地は最後は国に帰属することになるため、その管理費用をどう捻出するかなど課題は多い。
当然、土地所有者の都合で放棄された「いらない土地」の管理費まで国が税金で賄うことの是非が問われるが、土地については国が最終的な責務を果たす必要がある。同時に、土地所有者にとっては「所有権放棄」で管理責任の安易な放棄ができるため、モラルハザード(倫理観の欠如)の問題も懸念される。
4月施行の改正土地基本法は、土地所有者について「土地の利用及び管理並びに取引を行う責務を有する」と初めて明記した。“土地は公のもの”である。国と所有者の双方の責務を重視した制度にする必要がある。