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道路陥没が全国で相次ぐ—原因・対策・インフラ老朽化問題とは?

道路陥没は突発的に発生し、交通の混乱や重大な事故を引き起こす危険性があるインフラの課題です。
記憶に新しい埼玉県八潮市の陥没事故のほかにも、これまでも日本各地で道路陥没の事例が報告されており、安全対策の強化が求められています。
本記事では、道路陥没の原因や影響、再発防止に向けた取り組みについて解説し、持続可能なインフラ維持管理の重要性を紹介していきます。
【この記事でわかること】
【この記事の要約】
近年、日本各地で道路陥没事故が発生し、インフラの老朽化対策が喫緊の課題となっています。特に、高度経済成長期に整備された道路や下水道の老朽化が進み、計画的な補修・更新が不可欠です。事後対応型の補修ではなく、AIやドローン、3Dモデルを活用した予防保全型の管理体制を整える必要があると言われています。また、官民連携(PPP方式)を強化し、民間のノウハウを活用した効率的な維持管理が求められています。しかし、十分な予算確保、人材育成、技術革新の加速が不可欠であり、持続可能なインフラの維持には計画的な管理と予防保全の徹底が必要です。
道路陥没とは?発生しやすい場所
道路陥没とは、道路の一部が突然沈下したり、穴が開いたりする現象のことです。
主な原因には、地盤の変化やインフラ設備の老朽化が挙げられます。
国土交通省によると、2022年度の全国の道路陥没発生件数は年間およそ10,000件に上ります。
※出典:道路の陥没発生件数とその要因
特に、道路配水施設に関連するものが約半数を占めており、下水管やボックスカルバート※など、水に関わる部分で多く発生しています。
※道路の下を横断する道路や水路などに使用する箱形の構造物
埼玉・八潮市の道路陥没事故—発生から現在までの経緯
2025年1月28日、埼玉県八潮市で大規模な道路陥没事故が発生し、トラックが巻き込まれる事故が起きました。
事故の原因として、下水道管の老朽化、軟弱な地盤、交通荷重による影響が指摘されています。
また、この陥没事故を受け、住民の避難や下水道の使用の自粛要請などが行われ、日本のインフラ老朽化の深刻さが改めて浮き彫りとなりました。
本稿では以下の観点から八潮市道路陥没の概要や、今後の課題点について解説していきます。
今回の事故を契機に老朽化したインフラの点検・更新の必要性が一層高まり、安全で持続可能な社会基盤の整備が喫緊の課題となっています。
2025年1月28日に発生した事故の詳細
1月28日に発生した道路陥没事故では、トラックが転落し、運転手の救助に長期間を要する深刻な事態となりました。
事故の発生から救助活動、事故調査、復旧に至るまでの経緯を時系列で整理します。
日付 | 主な出来事 |
1月28日 | ・陥没事故が発生 ・救助活動が行われるも、難航する |
1月29日 | ・新たな陥没発生 ・周辺住民に避難指示 |
1月30日 | 2つの陥没穴がつながる ⇒救助活動は長期化の様相を呈する |
2月1日 | スロープが完成し、救助作業開始 |
2月2日 | がれき撤去作業再開 |
2月3日 | ・スロープ着工 ・埼玉県が節水要請 |
2月6日 | ドローンで下水管内調査 |
2月9日 | 消防による穴の捜索が開始 ⇒下水管内の危険物の発生により、操作は難航 |
2月12日 | 下水道の使用自粛要請を解除 |
2月15日 | 国土交通相が視察に訪れ、「最大限の支援」を表明 |
2月19日 | ・地盤改良工事が完了 ・避難要請が解除 |
2月22日 | 県が復旧に長期間を要するとの見通しを示す |
2月28日 | 約40億円を計上した補正予算案が可決される |
八潮市の陥没事故では、1月28日に発生してから2週間後の2月12日頃には復旧作業に移行し、住民避難要請の解除と復旧計画が進められました。
埼玉県は、この道路陥没を受け、破損した下水道管や損壊した道路の復旧工事費として約40億円を計上した補正予算案を提出。
2月28日に開かれた埼玉県議会で、全会一致で可決されました。
埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受け、公明党の斉藤鉄夫代表は、事故原因の徹底究明や再発防止策の強化を求めました。
さらに、公明党の中野洋昌国交相や石井啓一常任顧問が現地を視察し、近隣住民や事業者の声に耳を傾けるなど、党を挙げて事故対応と再発防止に向けた積極的な行動を展開しています。
また、路面下空洞調査を持つ企業を視察し、意見交換を行うなど社会インフラの長寿化に向けた取り組みを後押ししています。
国土交通省・自治体の対応
国土交通省と自治体はそれぞれの役割に応じた取り組みを進め、道路陥没対策の強化や復旧を図っています。
国土交通省は陥没のリスク軽減と迅速な対応を目的に、以下の取り組みを実施しました。
- 緊急点検の要請
- 現場視察と支援表明
- 再発防止策の検討
- 職員と機材の派遣
- 情報提供の強化
また、事故現場への職員と機材の派遣など、事故対応を行う自治体の取り組みを積極的に支援しています。
一方で自治体も地域の特性に応じた対策を強固にし、道路陥没の未然防止とインフラの維持管理に取り組んでいます。
- 緊急点検の実施
- 日常的な道路パトロールを強化
- 「八潮市下水道事業経営戦略」の実施
- 「八潮市下水道ストックマネジメント計画」に基づく施設の健全化
緊急点検の実施や日常的な道路パトロールの強化により、道路陥没の兆候を早期に発見し、事故の未然防止に努めています。
また、老朽化した下水道施設の点検・調査・改修を計画的に進めることで、施設の健全性を維持し、道路陥没のリスク軽減を目指しています。
全国で発生している道路陥没の事例
道路陥没は埼玉県八潮市の事故にとどまらず、全国各地で発生しており、年間の発生件数は10,000件にも上ります。
※出典:道路の陥没発生件数とその要因
記憶に新しい八潮市の事例のほか、大規模な道路陥没事故として、以下の2つが挙げられます。
■博多駅前陥没事故(2016年11月8日)
福岡市の博多駅前で発生した大規模な道路陥没事故です。 工事中に地盤が割れたことによって地下水が流入したことが原因とみられ、工事の安全管理や地盤調査の重要性が再認識されました。 当初、復旧には半年以上かかると見込まれていましたが、迅速な意思決定と官民一体の協力体制により、わずか1週間で道路の完全復旧が実現しました。 |
■ 東京都調布市の陥没事故(2020年10月18日)
調布市の住宅街で道路の陥没や地中の空洞が相次いで発見されました。 原因は東日本高速道路が進めていた「東京外かく環状道路(外環道)」のトンネル掘削工事によるものとされています。 再発防止策として、東日本高速道路は陥没発生箇所の地盤補修工事を進めていますが、完了時期は未定です。 |
これらの事故を受け、日本のインフラの老朽化が大きな課題となっています。
20年後には日本の下水道管の約4割が耐用年数を超えると予測されており、インフラの維持・更新が急務です。
道路陥没の主な原因とメカニズム
道路陥没が起きる原因として、主にインフラの老朽化が挙げられ、特に上下水道管の老朽化による土砂流出が原因で発生することが多い傾向があります。
インフラ老朽化とは道路・上下水道・電力設備などの社会基盤が長期間の使用により劣化し、安全性や機能が低下することです。
インフラの老朽化のほかにも地盤の弱さや交通・自然災害の影響など複数の要因が重なり、道路陥没に繋がります。
特に、日本では20年後に下水道管の4割が耐用年数を超えると予測されており、このまま放置すれば道路陥没の頻度が増え、都市機能が著しく低下する可能性があります。
以下ではインフラ老朽化による影響や道路陥没のメカニズムについて、詳しくご紹介します。
道路陥没の原因を特定し、適切な予防策を講じることで安全で持続可能な都市づくりを実現できます。
下水道・下水管・ガス管の老朽化がもたらす影響
道路陥没の主な原因の一つが老朽化した下水道・下水管・ガス管の破損であることは、多くの事例から明らかになっています。
インフラの劣化は道路陥没のリスクを高めるだけでなく、ライフラインの途絶など私たちの生活にも深刻な影響を及ぼします。
これらのリスクは、社会全体の安全性や快適な生活に深刻な影響を及ぼすため、適切な維持管理と計画的な更新が不可欠です。
埋設管の破損による道路陥没のメカニズム
道路陥没は、地下に形成された空洞が崩壊することで発生します。
特に、老朽化した下水道管などの埋設管の破損による水漏れが、空洞の形成を引き起こす主な要因となっています。
以下のメカニズムで空洞が形成され、最終的に陥没につながります。
- 埋設管の老朽化により破損が発生し、水が漏れだす
- 漏水によって周囲の土砂が徐々に流される
- 下水道管の中に土砂が吸い込まれ、管の外側に空洞ができる
- 空洞が徐々に拡大し、地盤の支持力が低下する
- 地盤が支えを失い、道路陥没が発生する
下水道管などの埋設管は時間の経過とともに劣化し、材質の腐食やひび割れによって漏水が発生します。
埋設管の損傷は以下の要因によってさらに進行し、陥没の発生を早める可能性があります。
- 掘削工事
- 豪雨や洪水
- 地震
これらの要因が組み合わさることで、地下の空洞が広がり、最終的に道路の陥没につながる可能性があります。
インフラ老朽化への対応策と課題
日本のインフラは1950年代後半~1970年代の高度経済成長期に整備されたものが多く、現在では老朽化が進行し、安全性や維持管理の問題が深刻化しています。
特に地方公共団体では維持管理を取りまとめる部署・組織がある地方公共団体は1割強にとどまっていると指摘されており、多くの課題を抱えています。
※出典:社会インフラの維持管理をめぐる状況
- インフラの状況を取りまとめた台帳の更新が追いついていない
- 老朽化の把握が不十分
- 技術的ノウハウを持った職員が限られている
- 予算不足や人手不足、技術力の不足が懸念されている
インフラ管理の責任が明確でない自治体が多いことから、インフラ全体の老朽化状況を把握しにくく、計画的な維持管理が困難となっています。
さらにインフラ維持には多額の費用がかかるため、地方自治体の財政難により、予算が確保しにくい傾向にあります。
そのため、限られた予算や人員の中で、効率的にインフラの維持管理を行うための取り組みが求められています。
政府と自治体が進めるインフラ老朽化対策
国土交通省を中心に様々な施策が推進されており、新技術やデータの活用により、効率的かつ効果的なインフラ維持管理の実現を目指しています。
- インフラ長寿命化計画
↳インフラを持続可能な状態に保ち、将来にわたって国民の安全と経済活動を支える取り組み - インフラメンテナンス国民会議
↳産学官民が有する技術や知恵を総動員するためのプラットフォーム - インフラDX 総合推進室
↳インフラ分野のDXを推進するために設置した組織
インフラ長寿命化計画ではドローンやAIを活用した効率的な点検・診断により、コストを抑えつつ、安全性の向上を図る施策が進められています。
また、インフラDX総合推進室はデータとデジタル技術を活用し、インフラの維持管理や安全性向上を図る取り組みが進められています。
官民連携と技術革新
効率的なインフラの維持管理を行うため、官民連携や技術革新が促進されています。
これらの取り組みがどのようにインフラ維持管理の効率化に貢献するのかを解説します。
PPPによる官民連携の強化
道路陥没をはじめとするインフラ事故を防ぐには、行政と民間が一層の連携を図り、PPP(Public Private Partnership)の取り組みを加速させることが求められます。
PPPとは公共施設等の建設、維持管理、運営等を行政と民間が協力して行うことで、民間の創意工夫を活用し、財政資金の効率的使用や行政の効率化を図る手法です。
民間企業にインフラの運営・維持管理を委託することで、リスクやコストの分散が可能となるだけでなく、民間のノウハウや技術を活用した効率的なインフラ管理が実現します。
また、自治体が所有権を保有するコンセッション方式を採用することで、民間の経営ノウハウを活用しながら公共性の維持が可能です。
【コンセッション方式の仕組み】
- 自治体
- インフラの所有権を保有する
- 民間
- インフラの運営権を保有する
PPPの導入事例は限られていますが、今後さらに推進し、官民が協力して持続可能なインフラ管理体制を構築することが重要です。
AI・ドローン技術を活用した点検システム
道路陥没事故を未然に防ぐには、道路の異常を早期に発見し、適切な対応を取ることが重要です。この課題に対して、AI(人工知能)やドローン技術を活用した点検システムが注目を集めています。
【AI・ドローンを導入する利点】
- AIを活用した点検システム
- 道路表面の割れ目など異常を自動的に検知できる
- ドローンを活用した点検システム
- 広範囲の道路を短時間で点検できる
すでに一部の先進的な自治体では、これらのシステムの導入が進められており、点検の効率化と異常の早期発見に貢献しています。
異常箇所を早期に発見することで、道路陥没事故の未然防止や損害賠償リスクの低減が期待されます。
さらに、点検データを蓄積・分析することで、道路の劣化傾向や異常発生のパターンを把握し、予防保全型の維持管理を推進することも可能になるでしょう。
3Dモデルを活用したインフラの維持管理
3Dモデルを活用することで、インフラの見える化が可能となり、より精度の高い維持管理が実現できます。
高精度な3Dモデルを用いることで、道路のひび割れや沈下などの異常を詳細に検知し、予防保全型の維持管理を推進できます。
3Dモデルはレーザースキャナーや高解像度カメラで取得したデータを基に作成され、インフラの現状を立体的かつ詳細に表現することが可能です。
さらに道路の表面だけでなく、内部の構造も可視化できるため、異常箇所の特定や経年変化の追跡が容易になります。
東京都など一部の自治体では、すでに3Dモデルを活用した道路の維持管理システムが導入されており、有効性が実証されつつあります。
公明党のインフラ老朽化対策への取り組み
公明党はインフラの老朽化対策を重要な政策課題の一つと位置づけ、国や自治体に対して積極的な提言をしています。
道路陥没事故の再発防止と適切なインフラ維持管理の推進に向けて、様々な取り組みを求めています。
【公明党が提言する主な道路陥没対策】
- 県の上下水道管更新計画の見直し
- 一刻も早い人命救助と迅速な応急復旧
- 事故原因の特定&再防止策の強化
- 全国での点検の実施およびインフラ点検の強化
- 持続可能なインフラメンテナンス対策への支援の強化
また、公明党はインフラ整備や維持管理に携わる建設業の担い手確保に向けても、以下のような要望を行っています。
- 公共工事設計労務単価・技術者単価の引き上げ
- 国民の安全安、心防災・減災国土強靭化の推進
- 5ヵ年加速化対策/20兆円規模の予算確保
国土交通省の試算によると、今後30年間で必要なインフラメンテナンス事業の費用は、総額で約190兆円に上るとされています。
インフラの老朽化対策を進めるには、安定的かつ十分な予算確保が必要不可欠です。
予算確保などの課題に対応しつつ、自然災害や切迫する大規模地震、老朽化するインフラへの対策として実施されてきた5ヵ年加速化対策は、2025年度で終了します。
これを受けて、後継となる5ヵ年実施中期計画の内容を現在詰めており、その規模は5年間でおおむね20兆円超と見込まれています。
この新計画では「スフィア基準」※1や「TKB48」※2に基づいた避難所環境の抜本的な改善に加え、能登半島地震、埼玉県八潮市の道路陥没事故、さらに3月31日に公表が予定されている南海トラフ地震の被害想定など、最新の災害リスクも十分に踏まえて具体化を進めていく必要があります。
※1:災害や紛争の被災者が尊厳ある生活を営むための人道支援活動における最低基準
※2:災害関連死の防止につながる避難所の設置目標
自公協議でもこうした現実を背景に20兆円強の規模が必要との認識が共有されており、公明党としても、実効性ある防災・減災施策と的確な予算配分が重要であると強調しています。
公明党の提言と要望は、道路陥没事故の防止とインフラの持続可能な維持管理に向けた、政治の責務を示すものと言えるでしょう。
公明党は、道路陥没事故を防ぐためにインフラの点検強化を訴えているヨネ!
インフラの維持管理を担う人材の確保など、様々な角度から持続可能なインフラの実現に向けた提言を行っているんだよ
道路陥没を防ぐためにできること|前兆現象はある?
道路陥没は前兆なく突発的に発生するため、事前の察知が困難なケースがほとんどです。
しかし、道路に以下の現象が見られると陥没のリスクが高まると言われています
- 道路にひび・亀裂が入っている
- 道路が沈んでいる
特に、道路のひびや亀裂が深く、幅が広い場合は、陥没の危険性が一層高まります。
発見した場合の通報先
ひび割れなど道路の異変に気づいた際は、以下に通報しましょう。
- 道路緊急ダイヤル(#9910)
- 国土交通省LINE通報アプリ
- 道の相談室
(電話・FAX・インターネット) - 自治体ごとの相談窓口
(電子申請など)
道路緊急ダイヤル(#9910)や国土交通省LINE通報アプリは全国共通で利用でき、特に緊急性の高い案件の通報が推奨されます。
国土交通省LINE通報アプリは「国土交通省道路緊急ダイヤル(#9910)」を友達追加することで利用できます。
そのほか道路についての意見・要望は各自治体の「道の相談室」を通じて、電話・FAX・インターネットでの通報が可能です。
さらに、自治体によってはLINE公式アカウントを活用し、写真を撮影して通報できる仕組みを導入している場合もあります。
道路インフラの未来と今後の課題
近年、道路陥没事故が各地で発生し、インフラの老朽化対策が喫緊の課題となっています。
特に、高度経済成長期に整備された道路は耐用年数を迎えつつあり、計画的な補修・更新が不可欠です。
今後、道路インフラの維持管理には単なる修繕対応ではなく、「予防保全」の考え方を徹底し、事故を未然に防ぐ仕組みの構築が求められます。政府や自治体は従来の事後対応型の補修ではなく、AIやデジタル技術を活用した予防保全型の管理体制を整える取り組みを実施しています。
しかし、これらの取り組みを実現するためには、十分な予算確保・人材育成・技術革新の加速が不可欠です。
政府・自治体・民間企業が一体となり、計画的なインフラ維持管理を進めることで、次世代に安心・安全な道路環境を残していくことが求められています。
その“当たり前”実は
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