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ガソリン暫定税率廃止はどうなる?ガソリン税の内訳や二重課税についても解説

ガソリン代上昇の背景には、原油価格の変動だけでなく、「ガソリン税」という見落とされがちな要素が深く関係しています。

特に「暫定税率」という仕組みが現在も続いており、ガソリン価格を押し上げている要因のひとつです。

暫定税率については、すでに廃止すること自体は合意されていますが、実際にいつ廃止するかを現在検討している段階です。

廃止が実現するまでの間、少しでも消費者の負担を軽減するため、まずはガソリン代の10円引き下げが2025年5月22日から始まっています。

本記事では以下の内容についてまとめました。

ガソリン税の仕組みや暫定税率の正体、今後の動向について順を追って解説します。

難しい制度の話については、わかりやすく、かみ砕いて紹介しているため、ぜひ読み進めてみてください。

【この記事の要約】
ガソリン暫定税率廃止とは、本来の税率に上乗せされていた暫定税率を廃止することです。廃止そのものは合意済みですが、具体的な廃止時期はまだ検討中です。廃止が実現すればガソリン価格が下がり、家計の負担が軽くなるほか、物流や運送業などにおけるコスト削減も期待されます。ただし、税収減によって道路整備などに使われる財源が不足する恐れもあり、慎重な議論が必要です。現在は、廃止までの間に消費者負担を少しでも軽減するため、2025年5月22日からガソリン代が10円引き下げられる措置が始まっています。燃料費の高騰が続く中で、家計や産業への影響を見直す上でも、注目される政策の一つです。

 

ガソリン税には揮発油税・地方揮発油税が含まれる

ガソリン価格には税金が大きく関わっていますが、その中心にあるのが以下の2つです。

  • 揮発油税(きはつゆぜい)
  • 地方揮発油税

揮発油税は、国が徴収する税金で道路整備や交通インフラの整備に使われています。

一方、地方揮発油税とは、地方自治体の財源とされる税金です。

本来の課税額は以下となりますが、暫定税率(25.1円)の上乗せにより、実際には合計53.8円のガソリン税が課されています。

※暫定税率については後述で詳しく解説しています。

1リットルあたりの税金
揮発油税 24.3円
地方揮発油税 4.4円

どちらも、ガソリンを購入するときに必ず支払う必要があるため、知らないうちに多くの税金を支払っていることになります。

ガソリン税に関して詳しくは以下の記事をご覧ください。
高騰するガソリンにはどんな税金が?補助金やトリガー条項についても解説

ガソリン税のトリガー条項とは?

ガソリン税のトリガー条項とは?

「ガソリンが高くなったら税金を一時的に軽減する制度があるらしい」といった話を耳にしたことがある方も多いでしょう。

これは、トリガー条項と呼ばれる仕組みで、ガソリン価格が国民生活に与える影響を抑えるために導入された制度です。

この制度は全国平均のガソリン価格が、3ヵ月連続で「1リットルあたり160円」を超えた場合に発動し、発動後は暫定税率にあたる25.1円分の課税が一時的に停止します。

その後は、価格が3ヵ月連続で「1リットル130円」を下回ると解除され元の税率に戻る仕組みです。

しかし、実際にはこれまで一度も発動されたことはありません。

2011年に起きた東日本大震災の際には、復興財源を確保する目的からトリガー条項の発動は凍結されました。

近年のガソリン価格の高騰を受け、凍結解除の是非をめぐる議論も続いてきましたが、混乱が起こる懸念が強く、いまだ合意には至っていません。

結果として、「発動できるはずの制度が事実上発動できない状態」となっています。

ガソリン暫定税率とは?二重課税の状態になった背景

ガソリン暫定税率とは?二重課税の状態になった背景

ガソリン暫定税率とは、以下の理由により1974年に一時的な増税措置として導入された税金です。

  • オイルショックに伴うエネルギー価格の高騰
  • 道路整備を進めるための財源不足

当時政府は、安定した財源確保のため、本来の税率に上乗せするかたちで暫定的な増税を行う方針を取りました。

しかし、1989年、日本では新たに「消費税」を導入することが決定します。

これによりガソリン価格にも消費税がかかることになり、すでにガソリン税が含まれた価格に対してさらに消費税が課税される構造となったのです。

税金に対して再び税金がかけられている状態となり、これが「二重課税」だと指摘されているのです。

制度上は合法とされていますが、国民の負担が増す要因であることは間違いありません。

ガソリン暫定税率の廃止が難しい理由

本来、ガソリン暫定税率はあくまでも一時的な措置のはずでしたが、以下の理由により今は国の重要な財源の一部として定着しています。

  • 道路整備や公共インフラの整備に不可欠である
  • 財政赤字の抑制に役立っている

ガソリン税の収入は、道路や橋・トンネルなどのインフラ整備だけでなく、公共交通の維持や補助にも使われています。

税収がなくなった場合、以下のようなリスクが考えられるでしょう。

  • インフラの修繕が遅れる
  • 地域のバスや鉄道の運行に支障をきたす

また、暫定税率による収入は、国の財政赤字を抑制するための重要な財源にもなっています。

暫定税率を廃止した場合、国や自治体は失った税収を補う必要があります。

消費税の増税や新たな税の創設といった対応が求められ、結果として国民全体の負担が増える可能性があるのです。

こうしたことから、暫定税率に代わる財源確保の道筋が見えない限り、廃止は現実的に難しいという状況が続いています。

ガソリン暫定税率廃止はいつから?法案提出後の見通し

ガソリン暫定税率の廃止について、政府・与党の間で廃止そのものには合意していますが、実施のタイミングについては慎重に検討されています。

政府は財政の健全化を重視し、補助金という手段で国民負担を抑える方法を優先している状況です。

一方で野党各党は、ガソリン税の減税や暫定税率の見直しを強く訴えています。

ただし、政策実現には与党との合意形成が不可欠のため、法案提出後も施行までには多くの課題が残っています。

暫定税率が廃止されるまでの間は、ガソリン価格の高騰が国民生活に与える影響を抑えることが重要です。

そのため、補助金の拡充や2025年5月22日から始まったガソリン10円引き下げといった対策が講じられています。

今後も、廃止時期の調整や財源確保を進めながら、負担軽減に向けた取り組みが続けられる見込みです。

公明党はガソリン補助の支援強化を提案

公明党は、暫定税率の廃止には一定の時間を要すると見ており、当面は補助金制度の拡充によって国民の負担をやわらげる必要があると考えています。

政府に対しては支援策の強化を働きかけており、将来的な制度見直しに向けて、現実的な対応を着実に進める姿勢です。

廃止までの期間は、ガソリン価格の高騰による影響を緩和するためにも、補助金などを活用した対策が現実的な選択肢といえるでしょう。

ガソリン暫定税率廃止が実現するとどうなる?

ガソリン暫定税率廃止が実現するとどうなる?

以下では、ガソリン暫定税率が廃止された場合の影響をまとめました。

ガソリン1リットルあたりの税金が引き下げられることで、結果としてガソリン価格も下がると考えられます。

一般家庭から産業・地方経済に至るまで、さまざまな影響をもたらすでしょう。

家計の負担軽減

ガソリン代が下がることで、日常生活における移動コストの軽減が期待できます。

自家用車で通勤・通学・買い物を行う家庭では、年間で数万円規模の節約になるケースもあるでしょう。

特に、地方では公共交通の選択肢が少ないため、家計への直接的なインパクトが大きく、暫定税率の廃止が生活のゆとりにつながると考えられます。

コストの低下による物価の安定

トラック輸送や宅配業者などの燃料コストが軽減されることで、商品の販売価格にも好影響を与える可能性があります。

物流全体のコスト圧縮により、生鮮食品・日用品・ネット通販など、日常生活に直結するサービスの価格安定が期待できるでしょう。

これは、物価高騰への抑制策の一つとしても注目できる効果です。

観光業界への好影響

旅行やドライブといったレジャー行動のハードルを下げる効果も期待できます。

自家用車での移動がしやすくなることで、地方の観光地へのアクセスも促進される見込みがあるためです。

その結果として、宿泊施設・飲食店・観光施設など、観光関連産業の回復や活性化にもつながる可能性があります。

地方経済の活性化

ガソリン価格の負担が軽くなれば、家計に余裕が生まれ、その分を他の消費に回すことで地方経済の活性化にも期待できます。

特に、地方は自家用車が生活に不可欠であり、ガソリン支出の割合が高い傾向があるためです。

市町村の人口規模が小さいほど、ガソリン支出が多いことが分かっています。

 

2024年計
都市階級・地方・都道府県庁所在地別1世帯当たり年間ガソリン支出金額(総世帯)

・全国     56,408円

都市階級別

・大都市     33,179円
・中都市     57,747円
・小都市A    72,729円
・小都市B・町村 87,372円

大都市:都道府県庁所在市以外の政令指定都市
中都市:大都市を除く人口15万以上の市
小都市A:人口5万以上15万未満の市
小都市B・町村:人口5万未満の市および町村

※出典:石油連盟

地方におけるガソリン支出の大きさを考慮すると、燃料費負担の軽減は消費の選択肢を広げ、結果として地域経済の循環を促す手段となり得るでしょう。

税制改革の促進

暫定税率の廃止は、ガソリン価格の一時的な引き下げにとどまらず、税制度そのものを見直す契機ともなり得ます。

たとえば、以下のような点についての議論が深まることが期待できるでしょう。

  • 燃料課税の公平性に関する再検討
  • ガソリン車以外の交通手段への課税バランスの見直し
  • 税の使途の透明性向上

制度全体の改善へとつながる「第一歩」としての役割も担うことが期待されます。

ガソリン暫定税率廃止を待たずにできる燃料費節約術

以下では、今すぐ実行できる燃料費の節約術をご紹介します。

ガソリン価格の高騰が続く中、いつかの税率廃止に期待するだけでは、家計の圧迫は避けられません。

日常のちょっとした工夫や制度の活用によって、少しでも節約していきましょう。

燃費向上の工夫をする

燃費をよくすることは、直接的なガソリン消費量の削減につながります。

具体的には、以下のような方法がおすすめです。

  • エコドライブの実践
  • タイヤの空気圧を適正に保つ

急発進・急加速を避け、一定の速度を保つ運転を心がけるだけでも、燃費が向上します。

また、空気圧が不足すると燃費が悪化するため、月に1回程度の点検を行うことが理想的です。

小さな工夫の積み重ねが、長期的に見て大きな節約になるでしょう。

給油コストを下げる

給油する場所や支払い方法によってガソリン価格は異なります。以下を参考にコストを抑えましょう。

  • 最安スタンドを探す
  • クレジットカードやアプリで割引を活用
  • 曜日・時間帯を選んで給油する

現在は、多くのガソリンスタンドが公式アプリを提供しており、位置情報をもとにリアルタイムでガソリン価格を確認できるサービスもあります。

中でも価格を確認したりお得なクーポンの取得におすすめのアプリは以下の通りです。

また、一部のガソリンスタンドでは、特定曜日や深夜・早朝などに割引を行っているケースもあります。

わずかな差であっても積み重ねることで、年間で大きな節約になるでしょう。

補助金や税制優遇を活用する

国や自治体ではガソリン価格高騰に対する支援策を随時実施しているため、利用可能な制度は積極的に活用しましょう。

たとえば、以下のようなものがあげられます。

  • 燃料補助金(補填金)の確認
  • EV・ハイブリッド車購入時の補助金

今すぐの利用は難しくても、事前に情報収集しておくと今後の節約につながるでしょう。

今できることを実践しましょう

ガソリンの暫定税率については、廃止する方向で合意がすでに形成されており、現在は具体的な廃止時期の検討が進められています。

その間の負担軽減策として、2025年5月22日からはガソリン価格を10円引き下げる措置が始まりました。

制度の転換を待つだけでなく、日々の生活の中で燃費を見直すなど、今できる工夫を積み重ねていくことも大切です。

特に地方在住者や車を仕事で使う人々にとっては、燃料費の節約が家計や事業経費に大きく影響します。

ガソリン税の在り方に注目し続けると同時に、自身の生活に合った節約術を取り入れていくことが、今を乗り切るための有効な一歩です。

「動きながら待つ」スタンスで、将来の変化を見据えて、今できる工夫を積み重ねていきましょう。

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