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予防医療とは?予防の力がもたらす社会保障の負担軽減や医療費削減の実態

日本では急速な高齢化に伴い、医療費や介護費が年々増加しており、社会保障制度の「維持」が大きな課題となっています。

こうした状況の中で注目されているのが、病気を「治す」前に「防ぐ」ことを目的とした予防医療です。

予防医療とは、定期的な健康診断や生活習慣の改善、ストレスケアなどを通じて、疾病の早期発見・早期対応を促すと共に、日々の健康維持を目的とした取り組みです

これにより、一人ひとりの健康寿命を延ばすだけでなく、結果として医療費や介護費の削減につながる可能性があります。

本記事では、以下の内容についてまとめました。

特に企業にとっては、従業員の健康を守ることが組織の生産性向上につながる投資といえます。

疾病リスクを早期に把握することで、休職や離職の防止、生産性の維持といった効果が期待できるため、福利厚生や健康経営の一環として予防医療に取り組む企業が増えています。持続可能な社会の実現に向けて、今こそ予防に目を向ける時期であるといえます。

【この記事の要約】
予防医療とは、病気の発症を未然に防ぎ、健康寿命を延ばすことを目的とした医療の考え方です。治療中心の医療から、生活習慣の改善や定期検診などを通じて「病気にならない体づくり」へとシフトする動きが広がっています。政府も医療費の増加を抑え、労働生産性を高めるために、企業や自治体と連携した予防医療の推進を強化しています。一方で、制度の理解不足や費用負担などから、一般への普及はまだ十分とは言えません。今後は、個人・企業・行政が一体となって、データやテクノロジーを活用しながら、持続可能な健康づくりを実現していくことが求められています。

厚生労働省の「予防医療」とは?予防医学との違いを簡単に解説

厚生労働省が推進する「予防医療」は、病気を未然に防ぐだけでなく、早期発見や重症化の防止までを包括的に捉えた考え方です。

「予防・健康づくり」という枠組みのもと、健康診断・予防接種・生活習慣改善の支援などを通じて、国民一人ひとりの健康維持を支援しています。これは、単なる医療行為ではなく、社会全体で健康を支える仕組みづくりを目指す政策的な取り組みです。

予防医療は、目的に応じて次の3つに分類されます。

分類 目的 施策例
一次予防 病気を発症させない 生活習慣の改善やワクチン接種など
二次予防 病気を早期に発見・治療する 健康診断やがん検診など
三次予防 重症化を防ぐ 発症後の再発防止やリハビリなど

病気になる前だけでなく、発症後の再発や悪化を防ぐ段階までを視野に入れ、人の一生を通じた健康支援を目的としています。

一方、「予防医学」は、予防に関する理論や科学的根拠を体系的に研究する学問領域です。たとえば、どの生活習慣が病気のリスクを高めるのか、どの検診が効果的か、といった点を明らかにすることが目的です。

予防医療は、こうした研究成果をもとに医療・保健・行政、そして企業の現場で実践される実務的アプローチを指します。

※参照:厚生労働省保険局一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会社会医療法人清風会 岡山家庭医療センター

 

予防医療って健康診断とかワクチンのことだけじゃないんだヨネ!

 

そうそう。生活習慣の改善から早期発見・再発予防まで、段階ごとに幅広く含まれるんだ。

 

予防医療が普及しにくい理由

予防医療は、健康寿命の延伸や医療費抑制につながる重要な施策であるにもかかわらず、日本では十分に普及していません。その背景には、制度的な課題と個人の意識・行動に関わる課題が複合的に影響しています。

日本では「国民皆保険制度」により、病気になった際の医療費が比較的低負担で済みます。このため、多くの人が「病気になってから医療を受ければよい」と考えやすく、予防への関心が高まりにくいと考えられます。

さらに、予防医療に対する公的支援制度や補助金は限定的で、定期健診やワクチン接種など一部の施策のみが対象です。企業が福利厚生として導入する場合も、補助範囲や手続きの煩雑さがハードルになるケースがあります。

個人レベルでは、「予防の必要性」を実感しづらいことが普及の壁になっています。医療費自己負担が軽いため、大きな損失を感じにくく、定期健診や生活習慣改善へのモチベーションが上がりにくいためです。

また、予防の効果は長期的に現れるため、短期的な成果が見えにくい点も課題となっています。

こうした制度や意識の課題を踏まえると、企業が予防医療を推進するには、社員が自発的に参加したくなる仕組みづくりや、制度を実務に落とし込む工夫が欠かせません。

予防医療の一次・二次・三次予防の分類と具体例

予防医療は、健康維持から病気の再発防止まで、発症前・発症時・発症後の各段階で適切に介入することが重要です。

予防医療は次の3段階に分類され、それぞれに具体的な施策が存在します。

予防医療の一次・二次・三次予防の分類

企業の福利厚生や健康経営においても、これら3段階を意識することで、より効果的に従業員の健康を支援することが可能です。

※参照:厚生労働省保険局

一次予防:発症予防

一次予防は、病気にならない様に健康を維持することを目的とした段階です。生活習慣の改善や感染症予防など、日常的な健康行動を支援する取り組みが中心となります。

企業の福利厚生においても、一次予防の施策は社員の健康意識を高め、長期的な医療費削減に寄与します。

主な施策例:

  • 禁煙支援プログラムの導入
  • 定期的な運動・フィットネスの費用補助
  • バランスの良い食生活の推進
  • インフルエンザや新型コロナウイルスなどのワクチン接種支援

これらは「健康維持のきっかけ」を提供する取り組みです。

特に運動や食事支援は、メタボ予防やメンタルヘルス改善にもつながり、組織全体のパフォーマンス向上にも寄与します。

二次予防:早期発見・早期治療

二次予防は、病気を早期に発見し、進行を抑える段階です。

企業でも取り組みやすい領域であり、定期健診やがん検診の受診率を高めることができます。

主な施策例:

  • がん検診(胃・大腸・乳・子宮頸など)の受診支援
  • 特定健康診査(メタボ健診)の実施および再検査フォロー
  • 血圧・血糖値・コレステロール値などの定期測定

たとえば、乳がん検診を受けた女性は死亡リスクが約18%低下すると報告されており、早期発見が健康寿命の延伸に直結することがわかります。

企業においては、受診を義務化することではなく、受診しやすい環境を整えることが重要です。勤務時間内での健診実施やオンライン診療との連携など、受診しやすい仕組みづくりが効果を上げます。

※参照:日本医学放射線学会

三次予防:再発防止・重症化防止・リハビリ

三次予防は、すでに発症した病気の再発や重症化を防ぎ、社会復帰を支援する段階です。

治療後のサポートや復職支援など、企業の姿勢が社員の安心感につながります。

主な施策例:

  • 心筋梗塞後の再発防止支援(服薬・生活指導など)
  • 脳卒中後のリハビリテーション支援
  • 糖尿病や高血圧などの慢性疾患に対するフォローアップ

厚生労働省が2023年5月に行った調査によると、発症初期からのリハビリ介入は合併症予防やADL(生活動作能力)の改善に効果があると報告されています。

これは、本人の社会復帰だけでなく、職場全体の生産性維持にもつながります。

※参照:厚生労働省

予防医療が注目される3つの社会的背景

予防医療への関心は、個人の健康維持だけでなく、社会全体の医療費抑制や労働生産性の向上にも直結する重要なテーマです。

日本では特に、次の3つの社会的背景が予防医療の必要性を高めています。

予防医療が注目される3つの社会的背景

これらが複合的に作用することで、病気を「治す」から「防ぐ」へという発想転換が求められ、国・自治体・企業を挙げた取り組みが進められています。

高齢化社会の進行

日本は世界で高齢化が進む国のひとつです。

内閣府の「高齢社会白書」によると、総人口の約3割が65歳以上を占めており、今後も高齢化率は上昇すると見込まれています。

高齢社会白書

※出典:内閣府

高齢化に伴い、生活習慣病や認知症などの慢性疾患の罹患者が増加すると、医療・介護の需要も急速に拡大しています。

こうした状況だからこそ、病気の発症を未然に防ぐ「一次予防」や、早期に異常を発見する「二次予防」が重要です。

※参照:GLOBAL NOTE

医療費・社会保障費の増大

医療技術の進歩は人々の寿命を延ばす一方で、医療費・介護費の増大という課題も生じています。

厚生労働省の「医療費の動向(2024年)」によると、我が国の国民医療費は年間約48兆円にのぼり、今後も増加が見込まれています。

医療費の動向

※出典:厚生労働省

また、2025年の予算ベースでは、給付費が140.7兆円と国内総生産(GDP)の約2割を占めており、制度の持続可能性が問われる状況です。

社会保障給付費2025年の予算※出典:厚生労働省

このような背景のもと、厚生労働省は特定健診・特定保健指導などの予防医療施策を推進しています。病気を未然に防ぐことは、将来的な医療費・介護費の抑制につながる投資と位置づけられています。

健康意識・ライフスタイルの変化

コロナ禍を契機に、人々の健康意識は大きく変化しました。

感染症予防をきっかけに、日常的な健康管理や「未病(みびょう)」への関心が高まり、スマートウォッチや健康アプリなどを活用したデジタルヘルスの普及が進んでいます。NTTドコモ モバイル社会研究所が2024年2月に行った調査では、健康管理・増進のためにスマートウォッチを所有している人が多いことがわかりました。

スマートウォッチの所有理由

※出典:NTTドコモ モバイル社会研究所

また、経済産業省が推進する「健康経営」は、従業員の健康保持・増進を経営戦略の一部と位置づけ、企業活動を通じて社会全体の健康を支える取り組みとして広がりを見せています。

このように、個人・企業・行政が一体となった健康づくりの流れの中で、予防医療は今後ますます社会基盤としての重要性を高めると考えられます。

※参照:経済産業省

予防医療がもたらす社会的効果

予防医療は、個人の健康維持にとどまらず、社会全体の医療費抑制や労働生産性の向上など、幅広い社会的効果をもたらします。

ここでは、特に重要な2つの社会的効果について解説します。

厚生労働省は「健康寿命の延伸」や「医療費・介護費の適正化」を国家的課題として掲げており、予防医療の推進はその中核的な施策と位置づけられています。

 

たしかに、病気になってから治すより、かからないほうがみんな助かるヨネ!

うん。医療費の削減にもつながるし、国全体の健康寿命を延ばす意味でも大切なんだよ。

医療費削減や社会保障費の負担軽減につながる

生活習慣病や慢性疾患を未然に防ぐことにより、将来的に必要となる高額な治療費や介護費を抑制することが可能です。厚生労働省の推計によると、生活習慣病の重症化を予防することで、医療費削減効果が期待されるとされています。

定期健診や生活習慣改善プログラムは短期的には費用が発生しますが、病気の進行や合併症を防ぐことで、中長期的には国全体の医療費・社会保障費の軽減に寄与します。

このように、予防医療は将来の医療費を抑えるための社会的投資としての位置づけが強まっています。

※参照:厚生労働省

国民の健康寿命の延伸と労働生産性の向上

予防医療を推進することで、健康寿命(=健康に生活できる期間)が延び、介護を必要とする期間の短縮が期待されます。

2024年に厚生労働省が発表した2022年の健康寿命は、男性が72.57歳、女性が75.45歳でした。

国民の健康寿命

※出典:厚生労働省

健康で働ける期間が延びることは、就労可能年齢の延伸や労働力不足の解消に直結し、社会全体の生産性向上にも貢献します。

企業においても、社員が長期的に健康で働ける環境を整備することは、健康経営の観点から重要です。これにより、個人のQOL(Quality of Life;クオリティ・オブ・ライフ ※「生活の質」「人生の質」という意味)が高まるとともに、就労期間の延長や労働力確保にもつながります。

※参照:厚生労働省

予防医療の企業での取り組み事例

厚生労働省と経済産業省は、企業が従業員の健康を戦略的に守る枠組みとして、「健康経営」や「コラボヘルス」を推進しています。コラボヘルスとは、健康保険組合と事業主が連携し、健診結果やレセプトデータを活用して、従業員の健康増進施策を戦略的に設計・実施する枠組みです。

以下では、健康経営優良法人制度に取り組んだ企業の事例をご紹介します。

【味の素株式会社】

味の素株式会社では、健康経営の一環として、従業員の健康関連情報を可視化しています。従業員がいつでも検診結果や就労情報、健康年齢を確認できる環境を整備しました。

また、セルフケア向上に役立つ動画コンテンツ視聴や健康保険組合の情報も入手可能となっています。

定期健診後の面談や社食での健康メニュー提供も行っており、個別フォローや社内プログラムの整備によって、生活習慣病リスクの低減を図っている事例です。

※参照:健康長寿産業連合会

 

【キリンホールディングス株式会社】

キリンホールディングス株式会社では、健康管理システムの導入によって、従業員の健診結果の一元管理に取り組んでいます。

従業員一人ひとりが健康を維持することを目的に、ストレスチェックの実施や動画、コラム等の健康情報を提供しています。企業全体で生活習慣改善や健診フォローアップを体系的に行い、社員の健康保持と業務効率化を両立している事例です。

※参照:健康長寿産業連合会

これらの事例から、企業が従業員の健康を戦略的に支援することで、病気の予防や早期発見を促進できることがわかります。

データに基づいた健康施策は、生活習慣病の早期介入や重症化防止に寄与し、国全体の医療費適正化にも貢献する仕組みとして注目されています。

※参照:厚生労働省経済産業省

予防医療を普及させるメリットとデメリット

予防医療は、個人の健康保持や国全体の医療費抑制、健康寿命の延伸に寄与する重要な施策です。

ただし、導入にあたっては一定の課題もあるため、メリットとデメリットを正しく理解することが、効果的な取り組みにつながります。

主なポイントは以下の通りです。

予防医療を普及させるメリットとデメリット

こうした特性を踏まえ、個人・自治体・企業が中長期的な視点で計画的に取り組むことが重要です。

メリット:医療費削減・健康寿命延伸・生活の質向上

予防医療には、次のようなメリットがあります。

  • 医療費の抑制
  • 健康寿命の延伸
  • 社会的・経済的効果

生活習慣病や慢性疾患の発症、重症化を防ぐことで、将来的に必要となる医療費や介護費の増加を抑えることができます。健康な状態で過ごせる期間が延びることで、介護を必要とする期間が短縮され、生活の質(QOL)の向上につながる点もメリットです。

また、健康寿命の延伸は、働ける期間や社会参加の持続にもつながり、社会全体の生産性向上にも寄与します。

※参照:厚生労働省

デメリット:短期的コストや効果の見えにくさ

一方で、予防医療には次のような課題もあります。

  • 初期費用や運営コスト
  • 効果の可視化の難しさ

健診や検査、啓発活動などを実施する際には、一定の費用がかかります。

また、短期的には成果が見えにくく、費用対効果を判断するのが難しい場合があります。

ただし、こうした課題を理解した上で計画的に取り組むことで、将来的な医療費の抑制や健康寿命の延伸といった社会的効果を実現することが可能です。予防医療は、中長期的な視点で個人や組織の健康を守る基盤として活用できる施策です。

公明党の予防医療推進への取り組み

公明党は、急速に進む高齢化や医療・社会保障費の増大を背景に、予防医療の推進を社会保障制度を持続させる要と位置づけています。健康寿命を延ばすことにより、将来的な医療費や介護費を抑制し、結果として国民の保険料負担の軽減につなげることを重視しています。

公明党の予防医療推進における主な取り組みには、以下があります。

  • ピロリ菌除菌の保険適用拡大
  • 睡眠障害対策の推進

胃がんの発症リスクを低減するため、ピロリ菌の除菌治療を公的医療保険で受けられるよう拡充しました。また、不眠や睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害への対策を強化し、生活習慣病の予防や心身の健康維持を支援しています。

さらに、公明党は「予防医療の普及により健康な人を増やすことで、社会全体の保険料抑制につながる」という立場を明確にしています。

一次予防・二次予防・三次予防を一体的に強化し、重症化予防、生活習慣改善、検診受診率向上を総合的に推進する方針です。

 

ピロリ菌除菌の保険適用や睡眠障害対策も、公明党がしっかり進めているんだヨネ!こうした取り組みが広がると、日々の健康管理がぐっとしやすくなるヨネ!

そうだね。ピロリ菌の除菌で胃がんのリスクを減らせるし、睡眠障害への支援も生活の質を上げてくれるんだよ。予防を支える仕組みが整うことで、誰もが健康を守りやすい社会に近づいているね。

予防医療を生活とビジネスに取り入れる第一歩を踏み出そう!

予防医療は、単に個人の健康寿命を延ばし生活の質を高めるだけでなく、社会全体の医療費や社会保障費を抑制し、企業の生産性向上にもつながる重要な取り組みです。生活習慣の改善や定期的な健診・検診の実施といった小さな行動が、将来的な病気の予防や健康維持の基盤となります。

日常生活においては、バランスの良い食事、適度な運動、禁煙、十分な睡眠など、基本的な生活習慣の改善が健康寿命延伸の第一歩です。

企業においても、従業員の健康保持を目的とした健康経営やコラボヘルスの導入は、病気の予防や早期発見を促進し、労働生産性の向上や医療費抑制に寄与します。

日々の小さな行動が将来の大きな安心につながることを意識しながら、今日から取り組みを始めることが重要です。

さらに予防医療について理解を深めたい方は、以下の動画も参考になります。

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