介護・医療
ヤングケアラーとは?子どもが抱える問題と支援を紹介

ヤングケアラーという言葉を聞いたことはありますか?
ヤングケアラーとは、家庭内で病気や障害を抱える家族のケアを担う子どもたちのことです。本来であれば大人たちが担うべき役割を負担している子どもたちは、学校生活や友人関係、そして未来の夢といった幼少期・青少期に享受すべき多くの機会を失ってしまっている現状があります。この問題は、単なる家庭の問題ではなく、社会全体で取り組むべき重要な課題なのです。
本記事では、ヤングケアラーの実情や直面する困難、支援対策や問題解決に向けた提言まで、幅広く解説していきます。ヤングケアラーが安心して成長できる社会を築くために、私たち一人ひとりができること、そして社会全体が向き合うべき問題について、本記事を通じて深く理解していただければ幸いです。
ヤングケアラーとは?
ヤングケアラーという言葉は、まだ日本では聞き慣れないかもしれません。
ヤングケアラーとは、家族の介護を行う子どもたちを指しますが、似たような状況にある若者ケアラーと呼ばれる子どもたちも存在します。
ヤングケアラーを深く理解するために、まずは言葉の定義や若者ケアラーとの違い、その実情などを詳しく解説していきます。
ヤングケアラーの定義
ヤングケアラーは、病気、障害、または高齢などの理由でケアが必要な家族を持ち、そのケアを担っている18歳未満の子どもたちを指します。ケアの内容は多岐にわたり、身の回りの世話から、家事、買い物、そして医療のアポイントメントの管理までさまざまです。このような介護責任を負うことで、ヤングケアラーは、一般的な子どもが享受すべき学業やスポーツ、友達とのコミュニケーションなどに十分な時間を割くことが困難となっています。
若者ケアラーとの違いは?
若者ケアラーは、ヤングケアラーと似たようなケアの役割を担っているものの、年齢的には18歳以上であるという点が異なります。若者ケアラーは、学業や就職、社会への適応といった、成人としての新たな課題と、家庭での介護作業のバランスを求められるため、ヤングケアラーとは異なる困難に直面しているのです。
両者は家庭内での介護作業が通常の生活を困難にしているという共通点を持っており、それぞれの年齢層において、適切なサポートと理解が求められています。
日本のヤングケアラーの割合
日本の中高生におけるヤングケアラーの実態を明らかにするために、厚生労働省と文部科学省は共同で実態調査を行い、2021年4月12日に結果を公表しました。調査は中学2年生5,558人、全日制高校2年生7,407人を含む、全国の中高生が対象です。
調査結果によれば、中学生の約17人に1人(5.7%)、全日制の高校生の約24人に1人(4.1%)がヤングケアラーである可能性が示されました。しかし、ヤングケアラーと自覚しているのは中学生の1.8%、全日制高校生の2.3%にとどまり、多くのヤングケアラーは自分の立場を認識できていない状況にあります。この自覚の低さは、家族の世話が日常化し、問題として認識できていないことが一因とされています。
ヤングケアラーの実情と事例
ヤングケアラーは家族の世話の頻度や時間が多いことが問題となっており、調査によれば3〜6割のヤングケアラーはほぼ毎日家族の世話をしています。世話に費やす時間は「3時間未満」が最も多いものの、「7時間以上」も1割程度存在しました。この世話の負担は、学業や個人の時間に影響を与えており、中学生の16.0%、高校生の13.0%が「宿題をする時間や勉強する時間が取れない」と訴えています。
以下に、ヤングケアラーの事例を紹介します。
事例1:祖母と母の介護
Aさんは祖母と母との3人暮らし。父は他界し、母は健康上の理由で働けず、祖母の年金で生活していました。小学3年生のとき、祖母が腰を痛め、Aさんは母と共に外出の用事や祖母の身の回りの世話をすることに。
中学・高校と上がるにつれて役割が増え、学校を休むことが増え、友達を作ることもできなかったのです。
母が倒れてからは一人での介護が始まり、家計を支えるためにアルバイトをしながらケアのマネジメントも担いました。しかし、母の不安が高まり、アルバイトを辞めざるを得なくなり、ストレス障害を発症したこともありました。
祖母と母が他界した後、Aさんの長いケア生活は終わったのです。しかし、「ひとりきり」の寂しさと介護ロス、社会的スキルの未熟さがAさんに残りました。
事例2:祖母のケア
Bさんは父親、年上の兄弟、そして祖母の4人で暮らしていました。父親は聴覚障害を抱えながらも、日々労働し家事も務めていました。徐々に祖母の足腰が弱くなり、後に寝たきりの状態となりました。Bさんと兄弟は家事を手伝うだけでなく、祖母の移動の際の介助なども担当するようになりました。
学校には欠かさず通い続けていましたが、友達と過ごす時間や勉強に割く時間は限られてしまいました。
年上の兄弟はBさんよりも多くの役割を担っており、「将来のことはあきらめた」と漏らすこともあったようです。
最終的に、祖母は親類に引き取られることになりました。
ヤングケアラー問題の原因と背景
ヤングケアラー問題は、家族構成や社会的認知の欠如など、様々な要因に起因しています。それらが交錯し、子どもたちが家庭内でのケアの役割を担うことになり、学業や社会的交流に影響を与えているのです。
以下に、ヤングケアラー問題の主な原因と背景を詳しく紹介します。
家族構成と社会環境の変化
近年の家族構成の多様化や核家族化の進行は、家庭内の役割分担を変化させています。高齢化社会の進行に伴って、家庭内での高齢者や障害者のケアニーズが増加し、それを家族が担うケースが増えています。特に、親が働いている家庭では、子どもたちが家庭内のケアタスクを担うことも少なくありません。
ヤングケアラー問題が注目されるようになった背景には、「子どもの権利」の尊重と児童虐待問題があります。日本では2023年4月に「こども基本法」が施行され、子どもの権利の保障が明記されました。これにより、子どもが子どもらしく育つことや、子どもの意思が尊重されることが重視されるようになりました。しかし、ヤングケアラーには、これらの権利が守られていないことが問題視されているのです。
社会的認知の欠如
ヤングケアラーに対する社会的認知の欠如も、この問題を深刻にしています。ヤングケアラーの存在や、彼らが直面する問題は見過ごされがちであり、社会的な支援や理解が不十分な状況です。また、ヤングケアラー自身が自らの立場を理解し、必要な支援を求めるのが難しい状況にもあります。これらの課題を解決するためには、ヤングケアラーの課題を理解し、社会全体での支援体制を構築することが重要となります。
ヤングケアラーが直面する困難
子どもたちが抱える悩みや困難は多岐にわたりますが、ヤングケアラーが直面する困難は一般的な家庭とは異なる性質のものです。学業、友人関係、そして心と体の健康に至るまで、多面的な問題を抱えています。以下では、ヤングケアラーが直面する困難について詳しく掘り下げて説明していきます。
学業への影響と未来への不安
介護負担が増えることで、多くのヤングケアラーは学業に支障をきたしています。介護に費やす時間とエネルギーによって、子どもたちの学業が犠牲となり、その結果、成績の低下や進学・就職に関する選択肢が狭まっています。このような状況は、将来への不安を一層増幅させ、精神的にも影響を与えているのです
コミュニケーション不足による友人関係への影響
ヤングケアラーは、介護負担によって、友達と遊ぶ時間やスポーツを楽しむ機会、さらには習い事に参加する時間が大幅に制限されているのが現状です。その結果、友人とのコミュニケーションを減らし、子どもたちの社会性の発展に障害を与える可能性が高くなっています。特に成長期においては、友人関係が精神的・感情的発展に重要な役割を果たすため、その影響は長期にわたり深刻なものとなるのです。
子どもの心と体の健康への影響
ヤングケアラーが担う介護の負担は、心と体に重大な影響を与えます。長期にわたる介護作業は、肉体的な疲労だけでなく、精神的なストレスをも引き起こす可能性が高いのです。最悪の場合、身体的な健康問題に加えて、うつ病などの心の疾患に至ることもあります。
さらに、学業成績が低下することによる将来への不安や、友人関係を構築することが困難であることによるストレスや孤立感が、より状態を悪化させる危険性があるのです。
ヤングケアラー支援の取り組み
ヤングケアラーに対する支援は、徐々に広がりを見せています。
以下に、日本や海外におけるヤングケアラー支援の取り組みを詳しく紹介します。
日本の取り組み
日本政府は、2022年度から3年間をヤングケアラー支援の「集中取り組み期間」と位置づけ、多角的な支援を展開しています。2022年には、ヤングケアラーの発見と支援の連携に焦点を当てたマニュアルを作成し、一部自治体でモデル事業を推進しました。
教育現場ではスクールソーシャルワーカーを配置し、スクールカウンセラーと連携して支援が必要な子どもを特定し、関係機関に紹介することとしています。
また、広報・啓発活動を通じてヤングケアラーの社会的認知度を向上させる努力が続けられています。
福祉サービスでは、家族全体やヤングケアラーの状況を考慮したサービスの提供・運用を目指し、さらにヤングケアラー同士のネットワーク形成を推進するための支援金を設けています。
海外の取り組み
世界の中でも、ヤングケアラー支援の取り組みが最も進んでいるイギリスでは、ヤングケアラーの支援が法律で明確に定められており、2014年の法律改正によって地方自治体はヤングケアラーの支援に関するアセスメントを実施する義務が生じました。このアセスメントは、ヤングケアラーが支援を必要としている場合や要請があった場合に実施し、支援の具体的内容を査定します。この法律によって、ヤングケアラーは「要支援児童」として法的保護を受けることが可能となりました。
また、各地方自治体ではソーシャルケア担当部署が存在し、ヤングケアラーのアセスメントと適切な支援を提供する体制を築いています。自治体はケアラーズセンターという支援団体と連携し、ヤングケアラーに必要な支援を提供しています。
さらに、NHS(National Health Service)のウェブサイトではヤングケアラーに関する情報提供がされており、ChildLineという電話相談窓口も設置されています。これによりヤングケアラー及びその家族は、必要な支援や情報に容易にアクセスできるようになっているのです。
企業と地域社会の役割
企業と地域社会はヤングケアラー支援において重要な役割を担います。
北海道では「ケアラー支援条例」を通じて、大手コンビニと連携し、ヤングケアラー啓発のポスターやステッカーを店内に掲示するなどの活動を展開しています。さらに、ヤングケアラー専用の相談窓口を設置し、地域の児童支援センターにヤングケアラーコーディネーターを配置して、学校や福祉部門と連携し、ヤングケアラーとその家族に必要な支援を提供します。
また、千葉県では、行政や支援組織間の連携を強化し、ヤングケアラー支援の体制を構築する取り組みが進められています。ヤングケアラーに特化した相談窓口の設置や、ヤングケアラーコーディネーターを中心とした会議の開催などが企画され、自治体の中核としての機能強化を目指しています。
こういった企業と地域社会の協力は、ヤングケアラーの早期発見と適切な支援を促進し、効果的な支援体制の構築に貢献していくと期待されています。
ヤングケアラー問題の課題解決に向けた提言
ヤングケアラー問題は、一家庭の問題ではなく、社会全体で考えるべき課題です。教育、健康、社会的孤立といった多面的な問題を解決するためには、政府、地域社会、教育機関、そして家庭のそれぞれが連携し、包括的なサポート体制を構築する必要があるのです。
早期発見と適切な支援
ヤングケアラーを早期に特定することは、その後の適切な支援に繋がります。学校や地域社会がヤングケアラーの存在を知り、個別のニーズに対応した支援計画を立てることが重要です。学業支援や心理的サポートに加え、行政手続きのサポートや支援制度のガイダンスなど、少しでも子どもたちの負担を減らしてあげることが大切なのです。ヤングケアラーが安心して学校に通える環境作りを急がなくてはなりません。
介護職やケアマネージャーとの連携
ヤングケアラーの負担を軽減するためには、介護職やケアマネージャーとの連携が欠かせません。専門家と連携することで、家庭内の介護に関わる問題点を発見できる可能性があります。そのうえで、家族全体を対象としたケア計画の見直しを行い、必要な介護保険サービスを適切に組み込むことができるのです。
専門家による最適なケアプランの構築によって、ヤングケアラーが持つ肉体的、精神的な負担を減らしてあげることができるでしょう。
政府が2022年度から3年間をヤングケアラーへの支援強化のための「集中取り組み期間」と定めたんだヨネ!
実はこの対策推進を進めてきたのは公明党なんだよ。公明党は国会議員と地方議員が連携して「誰一人取り残さない」仕組みを作るべく、日々奔走しているんだよ。
まとめ
ヤングケアラーの問題は、家庭の事情だけでなく、社会全体での認知と支援が不可欠である深刻な課題であることを理解していただけたと思います。ヤングケアラーたちは、家族や友人関係、学業、健康まで多くの困難に直面しています。日本国内外での支援の取り組みは進行中であり、法律や制度、企業と地域社会の連携によって少しずつ改善の道を歩んでいます。
しかし、この問題の解決には、社会全体での認知拡大と適切な支援が必要です。ヤングケアラーが抱える困難を理解し、社会全体で支援の手を差し伸べることが、ヤングケアラーたちに明るい未来を提供する第一歩となります。
そのためにも、私たち一人ひとりがヤングケアラー支援に積極的に関与する必要があるのではないでしょうか。
その“当たり前”実は
公明党が頑張りました!
政党って何してるの?と思う
あなたに知ってほしい、私たちの実績。