介護・医療介護・医療

高額な医療費が戻ってくる!高額療養費制度の申請・計算方法を解説

「急な入院で医療費が高額になってしまった」

「高額療養費制度の申請方法が分からない…」

「どれくらいの費用がかかるのか知りたいけど、計算方法がわからない」

 

このような疑問や不安を抱く人も多いのではないでしょうか。病気や怪我により、予期せぬ高額な医療費が発生した場合、高額療養費制度を利用することで、その大部分の費用を軽減することができます。しかし、計算方法や申請方法が複雑で、戸惑う人も少なくないでしょう。本記事では、高額療養費制度の仕組みから計算方法、申請方法や注意点に至るまでを詳しく解説していきます。急な病気や怪我に備えて、高額療養費制度について学んでいきましょう。

高額療養費制度とは?

高額療養費制度は、急な病気や怪我で医療費が高額になった際の個人の経済的負担を軽減するための制度です。一定期間内に支払った医療費が限度額を超えた際に、その超過分の支給を受けることができます。

自己負担の限度額を超えた分が適用される

高額療養費制度は、病院や薬局での医療費の自己負担が一定の限度額を超えた際、その超過分を支給してもらえる制度です。その限度額は年齢や所得に応じて決められ、医療機関ごとに外来と入院を別々に計算します。

本制度の施行当初、患者は自己負担限度額を超えた金額を一旦全額支払い、後で超過分を支給してもらう必要がありました。しかし、支給を受けるまでの間、患者の経済的負担が大きすぎると改善を求める声があり、2007年に制度が改正されました。以降は「限度額適用認定証」の提示により、負担限度額のみを支払うことで済むようになりました。この変更によって、例えばがん治療などの高額な医療費を必要とする患者の経済的な負担が、大きく軽減されるようになったのです。

 

公明党は、医療費の家計負担を軽くする「高額療養費制度」の改善を一貫して進めたんだヨネ!

患者さんは一時的に多額の費用を用意する必要がなくなったんだ。これは「本当にありがたい」という声がたくさん届いているんだよ。

 

自己負担額は、世帯で合算できる

家庭内で、一人ひとりの医療費の自己負担額が少ない場合には、同一の公的医療保険に加入している家族間で合算することが可能です。

個別に申請すると高額療養費制度の適用外になる負担限度額以下の医療費でも、家族全体の医療費を合わせることで、高額療養費制度の対象とすることができるのです。

ただし、異なる公的医療保険に加入している家族間では合算することができません。また、75歳以上の後期高齢者医療制度の加入者と74歳以下の家族間での合算もできませんので、注意しましょう。

申請は原則本人が行う必要があり、対象期間は遡って最大2年間となります。

支給されるタイミング

それでは、高額療養費制度の申請をした場合、自己負担額を超えた医療費の超過分は、いつ支給されるのでしょうか。一般的には、申請から約3ヶ月後とされています。

支給までの期間が長いため、医療費が高額になるほど経済的な負担が増します。そこで、負担を減らすために、前述した「限度額適用認定証」の使用がおすすめです。この「限度額適用認定証」を医療機関に提示することで、限度額のみの支払いで済むようになります。ただし、この「限度額適用認定証」の交付も、保険者によっては1週間ほどの期間が必要なこともあるため、短期入院などの場合には早めに手続きをしましょう。

日本とは異なる、海外の医療制度

日本以外でも、各国がそれぞれの歴史や状況に応じて独自の医療制度を採用しています。以下で、海外で採用されている主な医療制度を紹介していきます。

 

アメリカ「公的医療限定方式」

アメリカの医療保険制度は多元的ではありますが、限定的なものです。公的なものは、主に高齢者を対象とした「メディケア」と、低所得者を対象としている「メディケイド」のみです。その他の人々は、主に民間の保険に頼るしかありません。この体系は、競争と自己責任を重視するアメリカの価値観に基づいているものです。

しかし、アメリカの医療費は非常に高く、企業が従業員に提供する医療保障も減少してきたため、保険未加入者が増加してしまいました。このような背景からオバマ前大統領によるオバマケアが導入され、いずれかの保険に加入することが義務とされましたが、完全には成功していない状況です。

イギリス「税方式」

イギリスでは、税金を基盤とした国民保健サービス(NHS)が医療を提供しています。このサービスはイギリス国内の居住者が対象で、基本的な医療費用は無料ですが、処方薬には一部自己負担が必要です。

NHSでは、かかりつけ医が中心的な役割を果たします。利用者は、まず登録しているかかりつけ医に診察を受け、必要であれば専門医を紹介してもらえる仕組みです。

この制度は、医療費が基本無料であるという利点はありますが、その一方で、NHS医療機関が常に混雑しているため、アクセスが困難であるという問題点があります。

フランス「社会保険方式」 

フランスでは、公的医療保険と民間保険がありますが、国民のほぼ全員(99%)が公的保険を利用しています。

日本と同様に一定の自己負担は必要で、外来の場合には医療費を全額支払った後に自己負担額超過分が償還される仕組みです。

かかりつけ医制度は義務化されてはいませんが、広く受け入れられています。専門医を受診する際に、かかりつけ医を経由すれば自己負担は3割で済みますが、そうでなければ5割となるためです。 

 

高額療養費の計算方法

高額療養費の計算は、一見複雑に見えますが、段階的に考えていけばそれほど複雑なものではありません。細かい計算は病院等が行なってくれるため、大まかな計算ができれば、治療にかかる支払い計画を立てるには十分です。

治療を受ける患者の年齢と所得を下記の表に当てはめて、その計算方法や固定金額を割り出します。

70歳未満の場合

70歳未満の方に適用される高額療養費の計算方法は、所得金額に応じて異なります。以下の表は、各所得区分ごとの自己負担限度額を示しています。

この計算方法は、所得税の課税標準に基づいており、所得が多いほど、自己負担限度額も高くなります。

 

所得区分 所得要件 自己負担額の計算式
区分ア 年収約1,160万円~

健保標準報酬月額 83万円以上

国保旧ただし書き所得 901万円超

252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
区分イ 年収約770万円~約1,160万円

健保標準報酬月額 53万円~ 79万円

国保旧ただし書き所得 600万円~901万円

167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
区分ウ 年収約370万円~約770万円

健保標準報酬月額 28万円~ 50万円

国保旧ただし書き所得 210万円~600万円

80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
区分エ 年収約370万円未満

健保標準報酬月額 26万円以下

国保旧ただし書き所得 210万円以下

57,600円
区分オ 世帯主及び国保加入者全員が住民税非課税 35,400円

国保旧ただし書き所得とは、住民税の賦課方式としては既に廃止されている、旧地方税法における住民税課税方式に関する条文のただし書きとして規定されていた方法を用いて算出される所得のことです。

参考:「旧ただし書き所得」とは何ですか。

たとえば、年収が800万円で総医療費が700,000円の場合、区分イに該当し、自己負担限度額は167,400円+(700,000円-558,000円)×1% = 168,820円となります。

70歳~74歳の場合

70歳~74歳の方の自己負担限度額は、所得要件と外来、外来+入院の状況に応じて以下のように計算されます。

 

区分 所得要件 自己負担額の計算式

(外来)

自己負担額の計算式

(外来+入院)

現役並み所得者Ⅲ 年収約1,160万円~

標準報酬月額 83万円以上

課税所得 690万円以上

252,600円+(総医療費-842,000円)×1% 同左
現役並み所得者Ⅱ 年収約770万円~約1,160万円

標準報酬月額 53万円以上

課税所得 380万円以上

167,400円+(総医療費-558,000円)×1% 同左
現役並み所得者Ⅰ 年収約370万円~約770万円

標準報酬月額 28万円以上

課税所得 145万円以上

80,100円+(総医療費-267,000円)×1% 同左
一般 年収156万円~約370万円

標準報酬月額 26万円以下

課税所得 145万円未満等

18,000円 57,600円
低所得Ⅱ 住民税非課税 8,000円 24,600円
低所得Ⅰ 住民税非課税世帯(年金収入80万円以下等) 8,000円 15,000円

 

75歳以上の場合

75歳以上の方についても、70歳~74歳の場合と同様の区分が適用されます。

ただし、75歳の誕生月には、自己負担限度額に特例が適用されます。誕生日の前後で加入する医療保険ごとに、自己負担限度額が本来の半額になります。

高額療養費の申請方法

高額療養費制度には事前申請と事後申請の2つの方法があります。

それぞれの申請方法と注意点について解説していきます。

方法①:限度額適用認定証を事前に取得する

治療時に限度額適用認定証を提示すれば、窓口での支払いが、自己負担上限額まで軽減されます。

事前に「限度額適用認定申請書」を提出し、認定証を受け取っておく必要があります。この認定書が提示できない場合には、治療費を一旦全額支払い、後で限度額の超過分を支給してもらう形になるため、事前の準備が必要です。

手順は以下の通りです。

  • 健康保険では、 特設窓口や協会けんぽホームページから申請書を入手して郵送します。健康保険証の写しも同封する必要があります。
  • 国民健康保険:居住地の国民健康保険担当窓口で申請手続きをします。申請には、保険証、本人確認書類、マイナンバーカードなどが必要になります。

 

限度額適用認定証の有効期限は申請書受付月の1日から最長1年間ですので、早めの申請と有効期限切れに注意する必要があります。

方法②:高額療養費支給申請書を後日申請する

まず3割負担分の医療費を支払い、その後で保険者に「高額療養費支給申請書」を提出し、過払い金を受け取る方法です。

 

手順は以下の通りです。

  • 健康保険(協会けんぽ):自己負担限度額を超えた場合に、協会けんぽの支部に申請書を提出します。申請書は、協会けんぽのホームページから入手できます。
  • 国民健康保険: 居住地の市区町村役場から申請書が郵送されてくるので、保健所やマイナンバーカードなどの必要書類を添付して郵送で提出します。

 

注意するべき点としては以下の通りです。

  • 医療費控除の適用を受ける場合、領収書の5年間の保存が必要になります。
  • 診療を受けた翌月1日から2年を経過するまでに申請しないと、時効により申請ができなくなりますので注意が必要です。
  • 払い戻しには3か月以上かかることがあるため、自己負担限度額を超える分を自分で立て替える必要があるため、資金計画も重要になります。

 

申請手続きの方法は、事前・事後いずれにしても、保険者や居住地によって詳細が異なりますので、保険証の裏に記載してある保険者に問い合わせすることをおすすめします。

方法③:手続き不要!マイナ保険証を窓口で提示する

上記で説明したように、これまで高額療養費制度を利用するには、「限度額適用認定証の事前取得」か「高額療養費支給申請書を後日申請」という手続きが必要でしたが、マイナ保険証を利用すれば、これらの手続きが不要となりました。

 

マイナ保険証とは、マイナンバーカードを健康保険証として利用する仕組みです。マイナ保険証を利用することで、高額療養費の申請手続きが不要となります。

マイナ保険証に対応できるオンライン資格確認システムを導入している医療機関においては、医療費が高額になった場合に自動的に制度が適用されるのです。

 

マイナ保険証を利用するための申し込み方法は以下の4つです。

  1. セブン銀行ATMから申し込む
  2. パソコンのWeb上で、カードリーダーを使って申し込む
  3. スマートフォンから申し込む
  4. 医療機関に設置されているカードリーダーから申し込む

※いずれの場合も、マイナンバーカードと4桁のパスワードを準備しておく必要があります。

 

また、マイナ保険証を使用することで、過去の治療歴や健診データなどの重要な医療情報をマイナポータルサイト経由で簡単に閲覧可能になります。これにより、医療提供者はより適切な治療計画を立てることができ、患者の健康管理がさらに向上します。

 

しかし、マイナ保険証を使用する場合、世帯合算ができない点には注意が必要です。また、全ての医療機関がマイナ保険証に対応しているわけではないため、事前に対応医療機関かどうかを確認しましょう。

具体的な計算例

それでは、高額療養費制度における自己負担額の具体的な計算例を、年齢や所得区分の違いとともに見ていきましょう。

ケース1:52歳男性の場合

52歳の会社員(年収800万円)が、同一月に入院した場合を見ていきます。

総医療費は3,000,000円であり、保険の適用によって3割負担の900,000円を窓口で支払いました。

この場合、高額療養費制度の申請により、いくら払い戻しを受けられるのでしょうか。

 

まずは、前述の高額療養費の計算方法で紹介した表を見て、該当する区分の計算方法を当てはめてみます。今回のケースでは、70歳未満の区分イが当てはまりますので、計算式は下記となります。

 

「自己負担額=167,400円+(総医療費-558,000円)×1%」

 

具体的な金額を当てはめてみると、

 

167,400円+(3,000,000円-558,000円)×1%=191,820円

 

191,820円が自己負担額になりますので、窓口で支払った900,000円から191,820円を差し引いた金額の708,180円が高額療養費制度によって支給されます。

ケース2:70歳女性、国保加入者の場合

70歳女性(年収380万円)が、同一月にかかった通院の総医療費が800,000円だった場合を見ていきます。年収が370万円以上なので国保の3割適用で、窓口での支払いは240,000円となり、70歳以上の区分現役並み所得者Ⅰに該当しますので、計算式は下記となります。

 

「自己負担額=80,100円+(総医療費-267,000円)×1%」

 

具体的な金額を当てはめてみると、

 

80,100円+(800,000円-267,000円)×1%=85,430円

 

85,430円が自己負担額になりますので、窓口で支払った240,000円から85,430円を差し引いた金額の154,570円が高額療養費制度によって支給されます。

ケース3:75歳夫婦の場合

それでは、75歳の夫婦(住民税非課税)の場合で、同一月に入院と通院の総医療費が二人合わせて600,000円かかったケースを見ていきます。75歳以上で住民税非課税の場合には保険負担は1割となりますので、窓口での支払は60,000円となります。区分は70歳以上の場合と同じなので、低所得者Ⅱの区分に該当します。この場合、自己負担額の計算式はなく、一律で24,600円となります。

したがって、窓口で支払った60,000円から24,600円を差し引いた35,400円が、高額療養費制度によって支給されます。

高額療養費制度に関する注意点

これまで、高額療養費制度の仕組みや具体的な計算方法を紹介してきました。医療費が高額になった場合に、患者の経済的負担を大きく軽減してくれる制度ではありますが、利用する際にはいくつかの注意点があります。

公的医療保険の利かないものは対象外

高額療養費制度は治療を受ける際にかかった費用のすべてが対象になるわけではありません。以下に、対象外となる代表的なものを紹介します。

 

  1. 入院時の食事代:入院中にかかる食事代は高額療養費制度の対象外です。通常、1日あたり約1,400円の食費がかかります。長期間の入院の場合、この食費が積み重なってかなりの額になることがあります。もし制度の対象になると期待していた場合、予想外の出費となりますので、注意が必要です。
  2. 差額ベッド代(個室料金):差額ベッド代、すなわち個室料金は高額療養費制度の対象外となります。1人部屋は特に高価で、静かに過ごしたい場合などに選択されることが多いです。ただし、感染症で大部屋に入れない場合など、治療上の必要があれば個人負担にはなりません。ベッド代は入院費用に大きく影響するため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
  3. 自由診療:保険適用外の自由診療も、高額療養費制度の対象外です。美容整形、歯のホワイトニング、予防注射などがこれに該当します。自由診療にかかる費用は全額自己負担となるので注意しましょう。

特定疾病には特例が適用される

特定疾病は長期にわたる治療が必要で、高額な医療費がかかります。このような状況を考慮して特例制度が設けられています。

 

対象疾患には血友病、慢性腎不全、後天性免疫不全症候群などがあり、自己負担額は疾患や年齢、所得により1万円または2万円に制限されます。

 

特例を受けるためには「特定疾病療養受療証」の申請が必要で、認定を受けると自己負担額が制限されます。さらに、一定額を超える医療費に対しては高額療養費の支給が受けられます。詳細な情報や手続きについては、保険者にお問い合わせいただくとよいでしょう。

直近12カ月の間に3回以上対象になると、多数該当が適用される

同一世帯で、直近12ヶ月の間に3回以上高額療養費が支給された場合、4回目以降にかかる医療費に対しては、自己負担限度額が引き下げられます。これにより、長期にわたる治療や複数回の高額な医療費の負担を、さらに減らすことができます。

しかし、企業の健康保険から国民健康保険に変更するなど、保険者が変わった場合には、これまでの支給回数は通算されないため注意が必要です。

まとめ

年齢に関わらず誰にでも高額な医療費がかかる事態が発生する可能性があります。しかし、高額療養費制度を適切に利用することで、その負担を大幅に軽減することが可能です。

本記事では、制度の基本的な仕組みから申請方法、計算の流れなどを詳しく解説してきました。

高額療養費制度は、私たち一人ひとりの健康と安心を支える大切な制度です。

制度を理解し、適切に活用することで、医療に対する経済的な不安を和らげ、より良い治療と回復に専念することができるでしょう。

 

みんなの笑顔(えみ)が広がる社会を目指して

Instagramでも あなたの悩みに寄り添う を発信

Instagram Instagram

ソーシャルメディア