子育て・教育
低出生体重児とは?原因やリスク・対処法を徹底解説

低出生体重児という言葉を耳にしたことはありますか?
一般的に、出生時の赤ちゃんの体重は3,000g~3,200gが多いとされていますが、小さく生まれてくる赤ちゃんも少なくありません。その中でも2,500g未満で生まれてくる新生児を低出生体重児と呼びます。
近年、その傾向は増加気味であり、多様な健康上のリスクをもたらす可能性が高く、社会的に深刻な問題となっています。
また、11月17日は世界早産児デーです。世界早産児デーは、早産の課題や負担の意識を高めるために、2008年にヨーロッパNICU家族会(EFCNI)及び提携している家族会によって制定されました。
本記事では、低出生体重児の定義やリスク、その要因から予防策に至るまで詳細に解説していきます。ぜひ最後までご覧いただき、低出生体重児に関する理解を深めていただけると幸いです。
低出生体重児について
低出生体重児と混同される言葉として、未熟児や早産児があります。その定義や違いについて、以下で詳しく解説していきます。
低出生体重児とは?
低出生体重児とは、生まれた時の体重が2,500グラム未満の新生児のことです。一般的には、新生児の平均体重はおおよそ3,000グラム前後とされています。しかしながら、この数値はあくまで平均であり、正常な範囲とされる体重はもう少し広がりがあります。
出生体重によって、新生児は以下のように分類されます。
出生体重 | 区分 |
2,500~4,000g未満 | 正出生体重児 |
2,500g未満 | 低出生体重児 |
1,500g未満 | 極低出生体重児 |
1,000g未満 | 超低出生体重児 |
このような体重による分類は、それぞれのカテゴリーで必要とされる医療ケアが異なるために存在します。
低出生体重児とされる新生児は、妊娠期間が短かった場合や、何らかの理由で成長が制限された場合に多く見られます。妊娠週数が37週未満で出産された赤ちゃんは、特にこのリスクが高いです。
近年の医療技術の進化は目覚ましく、特に1,500グラムから2,500グラムの範囲で生まれた赤ちゃんも、かつてよりも高い確率で健康に成長しています。さらに、体重が500グラム程度の超低出生体重児でも、適切な医療ケアによって生存し、成長するケースが増えています。
早産児と低出生体重児の違い
「早産児」と「低出生体重児」は、それぞれ異なる側面から新生児の健康状態を評価するための用語です。
低出生体重児が出生時の体重で分類された区分の用語であるのに対し、早産児とは、妊娠期間(在胎週数)で分類された区分の呼び方です。在胎週数は赤ちゃんが母体内で過ごした期間を週数で表します。
在胎週数 | 区分 |
37週~42週未満 | 正期産 |
22週~37週未満 | 早産 |
22週~28週未満 | 超早産 |
28週~34週未満 | 極早産 |
34週~37週未満 | 後期早産 |
早産で生まれた赤ちゃんは、身体の各器官が未熟な状態である可能性が高く、その結果として低出生体重であるケースが多いです。特に妊娠22週から37週未満で生まれた場合は、「早産児」と分類され、多くの場合、集中治療室(NICU)での長期ケアが必要とされます。
在胎週数と出生体重を組み合わせて表記することで、赤ちゃんの状況を把握しやすくなります。
例:在胎34週、出生体重1800g → 早産低出生体重児
例:在胎38週、出生体重2400g → 正期産低出生体重児
未熟児と低出生体重児の違い
新生児の健康状態を評価する際には、「未熟児」と「低出生体重児」が混同されやすいですが、両者は異なる基準で定義されています。
「未熟児」は、赤ちゃんが生まれた際の身体の機能が完全には成熟していない状態を表す表現です。
かつては、出生体重が低いことを基に「未熟児」と呼ばれることも多かったのですが、出生体重が低くても身体の機能が成熟している場合もあるため、現在ではこの用語は避けられています。実際に、世界保健機関(WHO)もこの違いを明確にするため、「未熟児」から「低出生体重児」という呼称に変更しています。要するに、低出生体重と未熟性は別の健康リスクや必要なケアがあるため、注意深く区別する必要があるのです。
低出生体重児の出生率は増えているという研究結果も
日本では1980年代から少子化の影響で生まれる赤ちゃんの総数は減少していますが、一方で低出生体重児の割合は顕著に増加しています。厚生労働省のデータによれば、1980年の5.2%から2009年には9.6%と、ほぼ倍増したのです。現代においては、新生児10人中1人が低出生体重児である状況となっています。
この増加の背景には複数の要因が考えられます。例えば、高齢出産が増加していること、過度なダイエットが一部の女性に見られること、そして早産が増加しているといった点が指摘されています。加えて、不妊治療によって多胎妊娠が増えている影響も無視できません。令和元年のデータによると、単胎での出生では低出生体重児の割合が8.1%、多胎での出生ではその割合が71.4%と、双方で増加傾向にあることが明らかです。
このような背景の中で、新生児医療の進歩や帝王切開技術の向上が救命率を高める一方、低出生体重児が増えるという二面性も存在しています。
低出生体重児として生まれる主な要因
低出生体重児がどのような状況や要因によって生まれやすいのかを理解することは、予防策を考える上で非常に重要です。以下で、不妊治療による多胎妊娠、高齢出産、帝王切開といった主な要因について詳しく説明します。
不妊治療による多胎妊娠
不妊治療が進化し、多くの人々に希望を与える一方で、多胎妊娠におけるリスクも一定数存在します。特に排卵誘発剤の使用や体外受精において複数の受精卵を子宮内に移植する方法は、双子や三つ子といった多胎妊娠の確率を高めます。この結果、妊娠中に母体にかかる負担が増し、早産のリスクも大幅に高まるのです。事実、多胎での出産が増加するにつれて、早産による低出生体重児の割合も上昇しています。一般的な単胎妊娠と比較して、多胎妊娠の場合、早産に至る確率が約10倍高くなるとされています。このため、多胎である場合の新生児の約半数が早産であり、低出生体重児となるケースが多いのです。
高齢出産
近年、高齢出産が増加していますが、母体の年齢が上がるにつれて低出生体重児が生まれるリスクも高まります。高齢母体では、胎盤の機能低下や体力の低下により胎児への栄養供給が不十分になる事が原因とされています。また、糖尿病や高血圧といった妊娠合併症のリスクも高まります。そのような症状から、高齢出産は低出生体重児を生む可能性が高いと言われています。
2017年の人口動態統計によるデータでも、低出生体重児が生まれる割合として、母親の年齢が25歳〜29歳の場合の8.8%に比べて、40〜44歳では12.1%と高くなっています。
帝王切開
帝王切開は、通常、母体や胎児の健康が危機的な状況にある際に選択される分娩方法です。そのような医療的判断が必要な状況では、低出生体重児が生まれるリスクが高くなります。帝王切開自体が直接的に低出生体重を引き起こすわけではなく、既にリスクのある状況下で帝王切開が行われることが多いということです。
低出生体重児のケアと対処法
低出生体重児は特別なケアが必要であり、その対処法も一般的な新生児ケアとは異なります。以下で、低出生体重児のケアと対処法に関して詳しく解説していきます。
NICU (新生児集中治療室) でのケア
低出生体重児は、NICU(新生児集中治療室)での治療やケアが必要となる場合があります。特に、1500g以下で生まれた場合には、各臓器の機能が未熟であるためNICUでの治療が必要です。NICUは特別に設計された環境で、専門の医療スタッフが24時間体制でケアを提供します。ここでは、呼吸や栄養摂取、体温管理など、低出生体重児に特有の医療ニーズに対応します。また、NICUでは親が赤ちゃんのケアを学ぶ場でもあり、専門家から指導を受けることができます。
小さい赤ちゃんの育児における注意点
NICUでの治療が終わった後でも、低出生体重児は継続的なケアが必要です。特に、感染症に対する免疫力が低いため、衛生管理には十分注意が必要です。また、食事量や成長ペースが通常の新生児と異なり、低血糖や体重減少の回復が遅いといった問題もあるため、栄養状態の詳細なモニタリングが求められます。さらに、皮膚が薄く、体温調整も困難なため、注意が必要です。
リトルベビーハンドブックの活用
低出生体重児を持つ親たちは、特有の困難と感情的な重荷に直面しています。一般的な母子健康手帳が低出生体重児の特別なニーズに対応していないため、親たちはしばしば孤立と不安を感じる場合があります。このギャップを埋めるべく、リトルベビーハンドブックは2011年に静岡県で誕生しました。このハンドブックは、赤ちゃんの体重が1キロ未満であっても記録できるようになっており、低出生体重児のケアに特化しています。さらに、地元の相談機関の連絡先や先輩経験者のメッセージも掲載されているため、親たちは不安を和らげ、必要なサポートを受けられるようになります。
リトルベビーハンドブックの効果的な展開方法としては、都道府県単位で取り組むことが望まれています。厚生労働省が全国レベルで作成した場合、素早い展開は期待できますが、各都道府県の独自のニーズに十分に対応できない可能性があるからです。しかし、ハンドブックは毎年印刷される必要があり、そのためには国からの補助が不可欠です。
各地の議会で、リトルベビーハンドブックを積極的に推進したのは、公明党の議員なんだヨネ!
うん。公明党は、リトルベビーハンドブックに加えて、出産・子育て応援交付金の推進など、子育て支援に全力を注いでいるんだよ!
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低出生体重児の予防
低出生体重児が生まれるリスクを最小限に抑えるためには、妊娠前から妊娠中、産後に至るまでの総合的なケアが必要です。このセクションでは、そのための予防策として考えられる妊娠前および妊娠中の健康管理、適切な医療ケアと検診、そして生活習慣の改善とストレスの管理について詳細に解説します。
妊娠前および妊娠中の健康管理
低出生体重児の予防には、妊娠前からの健康管理が極めて重要です。特に、母体の栄養状態が妊娠前から良好であれば、胎児の健康な発育が期待できます。たとえば、妊娠前の体重が平均値を著しく下回る場合などは、低出生体重児のリスクも高くなります。また、妊娠中はバランスのよい食事と適度な運動を行い、適切な体重管理を心がけましょう。
適切な医療ケアと検診
妊娠が確認できたら、すぐに婦人科医に相談し、計画的な医療ケアと検診スケジュールを立てましょう。母体と胎児の健康を確保するため、定期的な検診は必須です。母体の栄養状態や感染症の有無などを確認し、問題がある場合には早期に適切な医療ケアを受けましょう。
生活習慣の改善とストレスの管理
妊娠中の生活習慣、特に喫煙、過度なアルコール摂取、ストレスなどは、低出生体重児を生むリスクを高める要素です。喫煙とアルコールは明らかに避けるべきですが、ストレス管理も重要です。ストレスは、コルチゾールなどのホルモンバランスを崩す可能性があり、それが低出生体重につながることがあります。リラクゼーション方法を見つけ、適度な運動や十分な睡眠を心がけ、ストレスを適切に管理することが大切です。
実体験とサポート
未熟児養育医療制度による助成金の活用
低出生体重児として生まれ、医師によって入院治療が必要と判断された場合には、一定の条件のもと、「未熟児養育医療制度」を利用できます。この制度では、状況により医療費の一部または全額が助成されます。
各自治体が指定する医療機関での入院治療を受け、以下の症状が見られる場合に対象となります。
- 2000g以下の未熟児
- 運動異常
- 体温が摂氏34度以下
- 強いチアノーゼなど呼吸器の異常
- 循環器の異常
- くり返すおう吐、強い黄疸
本制度は各自治体によって扱いが異なるため、必ず居住地の自治体に確認しましょう。
一部の自治体では、「所得制限」や、「一部自己負担」が設けられています。
申請窓口は市区町村の担当窓口や保健センターで、申請に必要なものは以下のとおりです。
- 申請書
- 診断書(医療意見書)
- 健康保険証
- 世帯調書
- 世帯所得を確認できる書類(所得制限がある場合)
- 印鑑 など
低出生体重児の家族の体験談
以下に低出生体重児の家族の体験談を紹介します。
・高齢出産への不安と覚悟
40代半ばでの妊娠は予期せぬ驚きであり、喜びでありましたが、それと同時にリスクが伴うことも理解していました。
生まれた赤ちゃんは910g、その小ささに心が震えました。
病院のNICUにいる我が子の未来を祈りながら過ごす日々でしたが、家族や友人、そして医療スタッフの皆様の献身的なサポートに支えられ、息子は来年小学校に入学します。(京都府 40代女性)
・何度も諦めそうになりました・・
超低出生体重児として生まれた双子の姉妹です。
NICUに入っている間は不安とストレスの日々でした。諦めかけた日もありましたが、支えられたのは看護師さんたちの励ましでした。
二人とも体は小さく、障害もありますが、家族みんなで前向きに生きています。
(鳥取県 30代男性 )
サポートグループやオンラインコミュニティ
低出生体重児として生まれた赤ちゃんを育てる家族が抱える孤独感や不安は計り知れません。健康な赤ちゃんとは違い、特別なケアや専門的な知識が必要である上に、同じような状況の家族が近隣にいないと、誰に相談すればよいかさえも分かりません。そういった状況で、低出生体重児の家族同士が繋がることは、精神的に大きな支えとなります。
全国各地で運営されているオンラインコミュニティやサポートグループを活用することで、心の負担を和らげるだけでなく、子どもの健全な育成にも寄与するでしょう。
- 日本NICU家族会機構・JOIN: NICUで入院した赤ちゃんの家族が参加できるネットワークです。全国各地に参加可能な家族会があり、オンラインでの集まりも計画されています。
- Nっ子ネットワーク カンガルーの親子: 低出生体重児のお子さんを持つご家族であればどなたでも参加できます。オンラインでの交流も可能です。
- リトルベビー保護者サークル: 低出生体重児のご家族やリトルベビーをサポートしていただける方々が参加できます。Instagramでの発信が主ですが、今後はオンラインや対面でも活動を行う予定です。
まとめ
本記事を通じて、低出生体重児に関するさまざまな側面を解説してきました。早産児や未熟児との違い、低出生体重児として生まれる主な要因やそれに伴うリスク、対処法に至るまでを網羅的に解説しました。
低出生体重児やその家族が直面する問題は多岐にわたるため、多角的なサポートと情報が必要です。不妊治療による出産や高齢出産によるリスクを理解し、妊娠前からの健康管理やストレス管理といった予防策を行うことが極めて重要です。
しかし、低出生体重児のリスクを完全になくすことは難しく、その困難に苦しむ家族がいるのが現状です。家族同士のコミュニティや支援制度を利用し、少しでも負担を軽減し、子どもの育成に注力できる環境づくりが大切です。
その“当たり前”実は
公明党が頑張りました!
政党って何してるの?と思う
あなたに知ってほしい、私たちの実績。