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男性の育休取得推進が義務化!育休制度の概要やメリットについて解説

2022年の育児・介護休業法の改正により、企業や労働者、その家族にとって大きな変化がもたらされました。それは、これまで男性が育児休業を取得するということに抵抗があった日本社会において、とても大きな変革であり、重要な意味を持つものです。

本記事では、男性の育休制度の基本知識から、育休取得に関する現状や課題、法改正の内容、育休のメリットや給付金に関する事項まで詳しく解説していきます。男性の育休取得が、働き方や家庭での生活、そして社会全体にどのような影響を与えるのか、一緒に考えてみましょう。

男性育休とは?どのくらいの休暇期間があるの? 

男性育休とは、父親となった男性が、子育てや家事を行うために取得する休暇のことを指します。この制度は育児休業法で定められており、子育てと仕事の両立を支援し、男性が家庭生活に積極的に参加することを奨励するために設けられました。

男性の育休取得期間は、出産予定日から子どもが1歳になる誕生日の前日までで、最長で1年間まで休業することが可能です。ただし、「パパ・ママ育休プラス制度」を利用すれば、1歳2カ月まで延長が可能となります。

育休と産休の違い 

現在、子供の出生による労働者の休業制度には、「産休」や「育休」と呼ばれるものがあります。「産休」と「育休」は、ともに出産や育児を行う労働者を支援するためのものですが、根拠となる法律や対象者などが異なります。また、新たに「産後パパ育休」という制度も新設されました。以下にその違いについて詳しく見ていきます。

 

産休(産前産後休業制度)は、労働基準法により定められた制度で、産前と産後の女性が対象です。期間は、出産予定日の6週間前から開始し、出産日翌日から8週間後までとなります。母体保護を目的とするため、申出期限が定められておらず、分割取得や休業中の就労も認められていません。

 

育休(育児休業制度)は、育児・介護休業法により定められており、対象者は母親と父親の両方が対象です。育児と仕事の両立を支援することが目的であり、男女ともに取得することができます。期間は以下のとおりです。

 

  • 男性は配偶者の出産日から子どもが1歳になるまで
  • 女性は産後休業が終わった翌日から子どもが1歳の誕生日を迎えるまで

 

申出期限は原則1ヶ月前までで、分割取得も可能です。特別な理由がある場合に利用できる延長制度も設けられています。

 

そして、2022年10月1日から新たに始まった制度が「出生時育児休業」、通称「産後パパ育休」です。この制度は、子どもの出生後8週間以内に最大4週間まで取得することができます。この制度の特徴は、労使協定を締結することで休業中に就業が可能となる点です。また、休業の申出期限は原則2週間前までですが、労使協定を締結することで最長1ヶ月前までとすることができます。

 

産休 育休 産後パパ育休
対象者 女性 男女 男性
取得可能期間 出産予定日の6週間前から出産後8週間まで 産後休業が終わった翌日から子どもが1歳の誕生日を迎えるまで(最大で2年まで延長可能) 子どもの出生後8週間以内で4週間(28日間)が上限
申出期限 産前休業は出産予定日の6週間前から開始日を自由に決めることが可能。産後休業は申し出不要 予定日の1か月前までに申請 原則休業の2週間前まで。労使協定を締結することにより最長休業の1ヶ月前までとすることができる
分割取得 不可 可(2022年10月より2回に分割して取得可能) 可(2回に分割して取得可能)
休業中の就業 不可 不可 労使協定を締結することで休業中に就業することができる

 

育児休業の申請方法や必要書類 

育児休業の申請方法は、法律によって細かく定められているわけではなく、会社によって多少の違いがあります。一般的な申請手続きの流れは以下のとおりです。

 

まずは、育児休業を希望する旨を上司に伝えます。そこで、育児休業の手続きの詳細を説明してもらいましょう。大企業などでは、人事部等が一括して取り扱う場合もあります。

最も重要な手続きは、育児休業申出書の提出です。これは、予定日の1ヶ月前までに提出することが法律で定められています。申出書は通常、会社側が用意してくれます。

男性育休の現状と課題 

男性の育児休業取得率は、近年、徐々に増加しています。しかし、その数値は依然として低く、多くの男性が育児休業を取得していないという現状があります。男性の育児休業の現状とその背後にある課題について詳しく見ていきましょう。

男性の育児休業取得率は13.97%

2022年の厚生労働省の調査結果によると、男性の育児休業の取得率は、13.97%に上りました。

参考:厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」

 

これは10年前のわずか2%程の取得率から見ると、大きく進歩しています。しかし、女性の育児休業取得率の85.1%と比べると、まだ大きな差が存在します。男性の育児休業取得率が低い背景には、社会全体の理解不足や職場環境の問題などが影響していると考えられます。これらの課題を解決することで、男性の育児休業取得率のさらなる向上が期待できるでしょう。

 

課題 

男性が積極的に育休を取得できる社会を目指すには、職場や社会全体の意識変革といった、多くの課題があります。多くの企業では、依然として男性の育休取得は例外的なものとして扱われているのが現状です。その理由としては、上司や同僚からの理解不足や、キャリアパスへの影響を懸念する意識が挙げられます。

また、制度面でも課題が残ります。

日本の育休制度は世界的にも充実した水準にあるため、制度の仕組みを社会全体で理解・共有することが必要です。

 

収入が減ることへの抵抗感

男性が育児休業を取得する際の障壁のひとつとなるのは、収入の減少です。育児休業中は給付金の支給があるものの、100%補償されるものではありません。

特に、男性の仕事が家庭の主な収入源である場合、この影響は大きいと言えるでしょう。

また、育児休業を取得した後のキャリアに対する不安も、男性が休業を取得しない理由となっています。これらの不安を解消するためには、制度の充実に加え、企業全体での制度の周知・意識の改革が必要となります。

 

育休は女性が取得するものという世間の考え 

男性が育児休業を取得することに対して、社会的な認識も大きな課題となっています。

育児休業は女性が取得するものという考え方が男性の育児休業取得を阻害する原因のひとつです。これを打破するためには、社会全体での意識改革が必要です。

男性も育児に積極的に参加し、家庭内の役割分担を平等にすることが必要であるという認識を広めることが課題です。

 

【2022年4月施行】男性育休取得推進の義務化と法改正の内容

2022年4月に施行された育児・介護休業法の改正により、男性の育児休業の取得がより容易になりました。

この法改正は、大企業だけでなく中小企業にも影響を及ぼし、新たな制度の導入と準備が進められました。法改正の重要なポイントは、育休の周知と意向確認の義務化、産後パパ育休制度の創設、そして、従業員が1,000人を超える企業には、育休取得率の公表が義務化された点です。

さらに、日本政府は今後の男性による育休取得率の目標を「25年度に50%、30年度に85%」に引き上げると発表しており、さらなる制度改革を進めています。

 

育児・介護休業法の改正で、より多くの男性が、育児休業を取得できると良いヨネ!

 

そうだよね。この法改正は、公明党が「男女が共に仕事と育児を両立しやすい環境整備」を推進してきた結果、実現したことなんだよ!

 

出生時育児休業(産後パパ育休)制度の開始 

2022年4月の法改正により、「パパ休暇」は廃止され、新たな「産後パパ育休」制度が導入されました。この制度は、育児休業とは異なり、子どもが誕生した日から8週間以内の任意の期間に、最長4週間の休業が可能となります。取得期間は分割することも可能で、家族や仕事の状況に応じて柔軟に選択できます。

 

「産後パパ育休」の大きな特徴として、労使協定に基づいて、労働者が希望する範囲での就業が認められる点が挙げられます。通常の育児休業では原則として就業することはできないため、産後パパ育休と育児休業を組み合わせて使うことで、家族のニーズや職場の状況に適応した、より自由度の高い休業取得が可能となります。

男性育児休業制度の通知と取得推進の義務化 

新たな育児休業制度の導入により、企業には従業員への周知や意思確認、雇用環境の整備といった新たな義務が生じました。

まず、妊娠や出産について申し出があった労働者に対して、企業は個別に休業制度やその申請方法、給付金や社会保険料の取り扱い等について説明しなければなりません。

そして、育児休業を取得しやすい環境の整備も義務化されました。研修の実施や相談体制の整備などを行うことで、労働者全員が育児休業に関する情報を共有し、休業を取得しやすくなるような環境づくりが求められています。

男性育児休業制度の通知と取得推進が義務化された背景 

男性の育休の取得推進が義務化された背景には、育休を取りにくい環境による男性の育児参加率の低さが挙げられます。これは、男性が育休を取得しにくい職場環境や、育休取得のメリットを理解できていないためです。

 

企業が育児休業取得を推進することで、男性の育児への参加率を高め、仕事と家庭の両立を実現する助けとなります。また、男性の育児参加が増えると、女性の就労機会も増え、職場復帰が容易になるため、女性の就労率の向上と男女共同参画社会の推進が可能となるのです。さらに、男性の育児への積極的な関与により、女性の育児負担が軽減し、子育てがしやすい環境が整備されるため出生率の向上にもつながります。

企業側から見た男性育休

長年にわたり、多くの企業は男性の育休取得に懐疑的であり、これが男性の育児参加率の低さにつながっていました。しかし、近年、政府の積極的な法整備により、男性の育休取得の重要性がようやく認識され始めています。

企業に課された義務 

2022年4月の育児・介護休業法の改正により、企業には男性が育児休業を取得しやすい環境を整備し、出産予定の申し出があった従業員に対しては、育休制度の個別説明をする義務が課されました。また、従業員が1,000人を超える企業においては、育休取得状況を公表することも義務化されました。

企業が男性育休を推進するメリット

男性育休を推進することで企業にとっても多くのメリットがあります。

育休を取得することで、従業員は仕事と家庭生活を円滑に両立することが可能となり、結果として企業への満足度やロイヤルティが高まるでしょう。それは、仕事へのモチベーションへとつながり、生産性の向上に寄与します。

さらに、男性育休を推進することにより企業イメージを向上させ、優秀な人材確保の可能性を広げることにもなります。

推進することで助成金が出る場合も

男性の育休取得を推進した企業に対し、助成金が出る制度もあります。

厚生労働省が実施している「両立支援助成金」は、育児休業の取得を促す職場環境や業務体制を整備を行い、育児休業を取得した男性労働者が生じた事業主に対して支給される支援金です。

他にも、各自治体が独自で行う助成金制度もあります。

従業員側から見た男性育休

企業だけでなく、従業員自身も、男性の育休取得に対して消極的な意識を持っていました。しかし、近年の法制度の改正とそれに伴う企業からの周知活動の強化により、この意識は徐々に変わりつつあります。

育休取得までのステップ

育児休業制度は、仕事と家庭の円滑な両立を支援するための制度です。職場の上司や同僚、夫婦間で十分に相談し、計画をたてた上で有効に取得することが望ましいです。

  1. まずは、夫婦で休業期間や休業時の役割分担などを話し合いましょう。
  2. 続いて、勤務先の上司へ報告が必要です。休業予定日の1ヶ月前までに申請することと法律で決められてはいますが、早ければ早いほどよいでしょう。この時に勤務先から育児休業制度についての説明がありますので、情報を整理し、必要な準備を進めていきます。
  3. 最後に、自身の業務を整理し、職場での引き継ぎやあいさつ回りを行います。これは、休業に入る前に仕事上の不安を解消し、安心して育児に専念できるための重要なステップとなります。

男性従業員が育休を取得するメリット 

男性が育児休業を取得することのメリットは多岐にわたります。

出産後の育児に参加することで、家族との絆を深め、育児に対する理解を深める事ができます。また、配偶者の育児負担を軽減することにより、家庭内のストレスを緩和し、身体的・精神的健康の維持に寄与します。

さらに、この経験は、職場復帰後に、仕事と家庭の両立を意識的に行うための一助となるでしょう。

社会保険料の免除

育児休業期間中は、育児給付金が支給されますが、給与の全額を保証されているわけではないため不安は残ります。しかし、育児休業中は、申請により社会保険料の免除を受けることができるため、休業中のお金に対する負担を緩和でき、安心して育児に専念することが可能となります。

社会保険料の免除申請は、事業主から日本年金機構へ申請しなければならないため、勤務先へ育休を申し出る際に、社会保険料免除を希望する旨を併せて伝えておきましょう。

育児休業給付金

育児休業中には、雇用保険の加入者に対し雇用保険から育児休業給付金が支給されます。これは、夫婦個別に計算され、ともに支給を受けることができます。期間は原則として、子どもが1歳になるまでです。「パパ・ママ育休プラス制度」を利用することで、子どもが1歳2ヶ月になるまで延長することも可能となります。

育児休業給付金の支給条件は以下のとおりです。

  • 雇用保険に加入している
  • 過去2年間において、就業日が11日以上ある月が12ヶ月以上ある
  • 育児休業中に1ヶ月間で10日以上就業していない

育児休業給付金は2つの金額設定がある 

育児休業給付金は、休業の日数によって2段階の金額設定があります。

計算方法は、以下のとおりです。

  1. 育児休業開始日から180日まで :休業開始時の賃金日額×休業日数×67%
  2. 育児休業開始日から181日目以降:休業開始時の賃金日額×休業日数×50%

 

※休業開始時の賃金日額とは、育児休業前6ヶ月間の賃金総額(手取額ではない)÷180日で計算します。(上限・下限の設定あり)

社会保険料免除と併用することで給与の約8割を担保できる

育児休業中は、申請により社会保険料が免除されます。通常、厚生年金や健康保険料は、月収の約14%を占めるため、その負担が減少するということは、休業中のお金への不安を大きく緩和してくれます。さらに、休業開始から180日間は、育児休業給付金が給与の67%を補填してくれるため、免除制度を併用することで、休業前の手取り月収の約80%を担保できることとなります。

まとめ

これまで、育休制度の概要から、男性の育休の現状と課題、そして2022年の法改正の内容等、幅広く解説してきました。男性の育休取得を義務化することで、男性が育児に積極的に参加し、女性に偏りがちな育児や家事の負担を夫婦で分かち合うことができます。これにより、女性の出産意欲や持続的な就業が促進され、企業全体の働き方改革にもつながります。

少子化が問題となっている日本では、次世代を担う子どもたちを、安心して生み、育てるための環境を整えることが必要不可欠です。

本記事を読んでいただいた方々が、育休制度についての理解を深めるとともに、制度を活用することで、安心して育児と仕事を両立できる社会が実現することを願っています。

 

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