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リカレント教育とは?人生100年時代で重要な「学び直し」を解説

「リカレント教育って聞いたことあるけど、具体的にどういうこと?」
「学び直しに、補助金が出るって本当?」

このような疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。

リカレント教育とは、働きながら学び、その学びを仕事に生かし、更に新たな学びへと繋げていく循環型の教育のことです。雇用の流動化、技術革新、人生100年時代という社会の大きな流れの中で、リカレント教育は私たちのキャリア形成において欠かせない存在となっています。

本記事では、リカレント教育の基本知識からそのメリット、さらには支援・助成金制度や講座の探し方まで詳しく解説していきます。

リカレント教育とは

まずは、リカレント教育の基本的な知識を深めていきましょう。

リカレント教育の概要や、社会的に注目を浴びている理由を把握することで、リカレント教育の重要性を理解することができます。

 

リカレント教育の概要

リカレント教育とは、個人が一定の教育や訓練を受けた後も、生涯にわたって学び続け、就労と学習を繰り返しながら知識や技能を更新し続けることです。

リカレント(recurrent)は、”再帰的、反復的”という意味を持ち、教育と仕事を循環する形を表現しています。

 

リカレント教育の目的は、新しい技術や社会の変化に対応できるような、知識やスキルを身につけることによるキャリアアップやスキルアップです。さらに、それは社会全体の知識レベルやスキルセットを向上させ、全体を活性化する役割も担っています。

 

リカレント教育は、ビジネスの世界だけでなく、介護やスポーツといった幅広い分野でも活用され、それぞれの分野で個々の学びと成長を支える重要な枠組みとして機能しています。

 

リカレント教育が注目されている理由と背景

リカレント教育がなぜ今、重要視されているのでしょうか。その理由と背景について詳しく見ていきましょう。

雇用の流動化

近年、日本をはじめとする世界の雇用環境は大きく変化しています。非正規雇用の増加や転職の一般化により、従来の「終身雇用」という概念は崩れつつあります。そういった状況で、個人のスキルや知識のアップデートがますます重要視され、リカレント教育が注目を集めています。

 

急速な技術革新

急速な技術革新もリカレント教育の必要性を高めています。AIやIoTなどの先端技術の発展により、仕事の内容や求められるスキルが大きく変化してきました。

特に情報技術の分野では、新しい技術が次々と生まれ、それに対応するためには継続的な学習が欠かせません。リカレント教育を通じて、最新の知識や技術を身につけることが求められています。

 

人生100年時代におけるライフスタイルの変化

「人生100年時代」とは、人間の平均寿命が延び、100歳を超えて生きる時代が現実のものとなった社会です。これは医療技術の発展や生活環境の向上により、世界的に高齢化が進展しているからであり、先進国では人口の半数が100歳まで生きるという予測が出ています。

 

そんな状況下では、一度学んだ知識や技能が一生役立つという考えは、現在では古くなりつつあります。社会や技術の急激な変化に対応するため、また長い人生を豊かに過ごすためには、定年退職後も新たなキャリアを追求することが求められています。

 

リカレント教育は、成人後も絶えず学び続け、自己の成長やキャリアの発展を支える教育です。現代社会では、一生涯にわたる学習が必須で、自己のスキルや知識を常に更新し続けることが、キャリアの継続や生涯活動的でいるための重要な要素となっています。

 

近年、社会人となった後にもう一度学校で学習したことがある人や、今後学習してみたいと考えている人の割合は増えているんだヨネ!

 

そうだね。働き方改革によって自己研さんに使える時間が増加していることや、デジタル化に対応できるようスキルアップをめざす人が増えていることなどが背景なんだ。公明党は、リカレント教育の充実を訴えていて、新たな職業スキルや知識を習得して雇用ニーズの高い職種や成長分野への就業を支援するよう求めているんだ。

リカレント教育と似た言葉との違い

リカレント教育は、学校教育が終了した後も、個々の状況に応じて再学習を行い、仕事と学びを繰り返し続けることを指します。似た言葉として「生涯学習」や「リスキリング」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。大きな意味ではそれほど違いはありませんが、言葉の定義を紹介します。

 

生涯学習との違い

生涯学習は、文字通り生涯を通じて学び続けることを指します。これは学校教育だけでなく、社会人としての研修やセミナー、趣味やスポーツ、生きがい活動など多岐にわたります。リカレント教育は特に仕事をする上でのスキルアップやキャリアアップを目的としていますが、生涯学習は人生を豊かに過ごすことを目的としています。

 

リスキリングとの違い

リスキリング(Reskilling)とは、新しいスキルや知識を習得することで、既存の職業から別の職業への転職や、同じ職場での新たな役割への移行を可能にするプロセスを指します。これは、技術の進歩や社会経済の変化により、既存のスキルが時代遅れになったり、新たなスキルが必要になった場合などに特に重要となります。

 

近年では、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)において、新たに必要となる業務や職種に順応できるように、従業員がスキルや知識を再習得するという意味で使われることが増えています。

 

新しいスキルや知識を習得することに目的が限定されている点が、リカレント教育との違いです。

リカレント教育のメリット

リカレント教育とはどういうものかを理解いただけたと思います。

では、リカレント教育が持つメリットは何でしょうか。個人と企業、両方の視点から解説していきます。

 

個人のメリット

リカレント教育が個人にもたらすメリットは数多くあります。その中でも特に注目すべきは、スキルの向上とそれに伴うキャリアの選択肢の拡大、高給取得の可能性、そしてブランクからの再就職への支援です。

スキルが身につき、キャリアの選択肢が広がる

リカレント教育により、新たな知識やスキルを習得することができます。

それまで持っていたスキルセットを拡充し、専門性を深めることで自分のキャリアの選択肢が広がり、多様な仕事に挑戦することが可能になるのです。

さらに、自分自身の市場価値を高め、より好条件での就職や転職への道が開けるでしょう。

 

高給な職種人材に成長できる

急速に技術革新が進む現代では、特に専門的なスキルを持つ人材が求められています。リカレント教育を通じて、特定の分野や技術について深く学び、専門性を高めることで、より高給な職種人材に成長することができます。

 

ブランクから企業への再就職がしやすくなる

リカレント教育は、育児や介護などで一時的に職を離れる人々にとっても大きなメリットをもたらします。ブランク期間中に新しいスキルを学び、自分の専門性をアップデートすることで、再就職の際に有利な条件を手に入れることができます。

 

企業のメリット

つづいては、リカレント教育を導入することによる企業のメリットを見ていきましょう。

生産性が向上する

従業員が新たな知識を学んだりスキルアップをすることで、労働人口が減少している環境であっても、生産性を向上させることができます。

例えば、最新のAIを活用し、データ分析の自動化や意思決定支援など、従来の手作業を超える速度と精度で業務を遂行することが可能になります。

また、リカレント教育を通じてデジタル化を推進することで、情報共有の効率化、業務の自動化、遠隔作業の可能性などが拡がり、生産性が大幅に向上します。

 

人手不足の解消に繋がる

リカレント教育の導入により、業務の多様性に対応できる人材が増えます。これは、特定の人材が不足した場合でも、他の従業員が彼らの役割を補うことが可能になるということを意味します。これにより、企業全体としての柔軟性とレジリエンスが向上し、人手不足の問題を解消することができるでしょう。

 

また、従業員が自身の成長やスキルアップの機会を企業内で得られると感じれば、他社への転職を考える可能性は低くなります。

実例として、ソニー株式会社は「フレキシブルキャリア休職制度」を採用しており、修学のための休職の場合に、入学時にかかる初期費用を最大50万円まで会社が負担する支援をしています。スキルアップのための休職や支援を行うことにより、従業員は復職後に学んだ知識やスキルを活かすことができます。

従業員の付加価値が高まり社内活性化が促進される

リカレント教育は、従業員が自分のキャリアを自己管理し、新たなスキルや知識を得る機会を提供します。これにより、従業員一人ひとりの付加価値が高まり、それが組織全体の活性化に寄与します。

また、新たな学びを通じて視野が広がり、クリエイティブなアイデアや問題解決の提案が増えていきます。そのプロセスで従業員間のコミュニケーションが活発化され、社内の一体感を高めてくれるでしょう。

リカレント教育の支援・助成金制度

リカレント教育を受ける際には、学費の支払いによる経済的負担から、それが学習の意欲を低下させてしまう場合もあります。しかし、自身のスキルやキャリアを向上させたいという強い意志を持つ人々をサポートするために、多くの支援や助成金の制度が用意されています。

教育訓練給付金

教育訓練給付金制度は、厚生労働省が運営しており、雇用保険の被保険者が教育訓練を受ける際に、費用の一部が支給される制度です。労働者のスキル開発やキャリア形成を支援する目的で設立された制度で、雇用の安定や就職の促進に寄与することを意図しています。

教育訓練給付金の対象となる教育訓練は3つあり、それぞれ異なる目的と支給額が設定されています。

参考:教育訓練給付制度

 

高等職業訓練促進給付金

高等職業訓練促進給付金は、ひとり親家庭の親が資格取得を目指して訓練を受ける際の生活費を支援する制度で、厚生労働省が運営しています。

この制度の目的は、ひとり親家庭の親が経済的な困難に直面しながらも、自身のスキルを向上させて、より良い職に就くことを可能にすることです。これにより、ひとり親家庭の生活水準の向上と子どもたちの生活環境の改善が期待されます。

参考:高等職業訓練促進給付金

 

就職・転職支援の大学リカレント教育推進事業

就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業は、文部科学省が実施しており、全国の大学が企業や経済団体、ハローワークと協力して、就職や転職に役立つ短期のプログラムを無料で提供するという取り組みです。このプログラムの期間は2ヶ月から6ヶ月程度で、教材費以外は無料です。

プログラムの内容は、社会で注目されているデジタル変革(AIやIoT)、医療や介護、地方創生、女性の活躍など、基本的なものから応用的なものまで幅広く、全国の22都道府県で63のプログラムが選ばれています。

さらに、一部のプログラムでは、厚生労働省の求職者支援制度と連携して、職業訓練を受けながら給付金を受け取ることも可能です。

参考:就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業

 

公的職業訓練(ハロートレーニング)

公的職業訓練(ハロートレーニング)は、厚生労働省が提供している職業訓練制度で、希望する職業に就くために必要な職業スキルや知識などを習得することを目的としています。

対象者によって、下記の2つの制度が用意されています。

 

  • 公共職業訓練(離職者訓練):主に雇用保険を受給している求職者の方を対象に、就職に必要な職業スキルや知識を習得するための訓練を無料(テキスト代等は自己負担)で実施しています。
  • 求職者支援訓練(求職者支援制度に基づく認定職業訓練):主に雇用保険を受給できない求職者の方(受給が終わった方も含む)を対象に、就職に必要な職業スキルや知識を習得するための職業訓練を無料(テキスト代等は自己負担)で実施しています。

参考:公的職業訓練(ハロートレーニング)

 

キャリアコンサルティング

キャリアコンサルティングとは、厚生労働省から委託された機関である「キャリア形成・学び直し支援センター」が提供する無料相談制度です。

国家資格を有したキャリアコンサルタントが、個人の希望や適性に応じたキャリア形成・学び直しを支援してくれます。

キャリアコンサルタントとの対話を通して、自分の強みや弱み、希望するキャリアなどを明確にし、キャリア形成・学び直しの計画を立てることが可能です。

 

キャリア形成・学び直し支援センターは、個人(在職者)、企業・団体、学校関係者を対象に、様々なキャリア形成支援や学び直し支援を無料で提供しています。

参考:キャリア形成・学び直し支援センター

 

自分に合った講座の探し方

リカレント教育が注目を集めるなか、多様な講座から自分に合ったものを見つけるのは容易なことではありません。以下に、自分に合った講座の探し方を紹介します。

 

文部科学省が運営している『マナパス』で講座を探す

「マナパス」は、文部科学省が運営する社会人の学び直しを支援するウェブサイトです。

講座の検索や、学び直しに関する情報の提供、学び直しを支援する制度の紹介など、さまざまなサービスを提供しています。

講座の検索は、キーワードや分野、エリアなどから行うことができ、目的や、ライフスタイル、予算などからも探すことができます。

オンラインで受講できる講座も多数あり、時間や場所の制約を感じることなく学び続けることができます。

 

大学・大学院の講座を探す

大学のリカレント教育プログラムを活用して学び直す方法もあります。

 

現在、多くの大学がリカレント教育講座を提供しており、近年では実務に直結した講座が増えています。これらの講座で、仕事に役立つ知識やスキルを身につけることができます。

さらに、再就職支援や新技術を取り入れたイノベーション人材の育成を目指すリカレント教育を実施している大学も存在します。

 

社会人向けのリカレント教育プログラムには、国から認定を受けたものがあります。その中でも特に注目すべきは、履修証明プログラムと職業実践力育成プログラム(BP)です。

 

  • 履修証明プログラム:学校教育法に基づいて設定された社会人向けの統一された学習プログラムで、修了者には履修証明書が交付されます。これは履歴書に記載することが可能な経歴となります。
  • 職業実践力育成プログラム(BP):履修証明プログラムの中から文部科学大臣が認定した実践的なプログラムで、社会人や企業のニーズに対応する内容となっています。

 

リカレント教育に関するよくある質問

リカレント教育についての理解を深めるために、よくある質問を見ていきましょう。

 

どのような分野がリカレント教育の対象になるの?

リカレント教育の対象となる分野は非常に多岐にわたります。

医療や法律のような専門性が求められ、常に最新の知識が必要とされる分野では、リカレント教育は必須となります。

また、ITやデータ分析のような急速に進化する技術分野でも、最新のトレンドや技術を学ぶことは欠かせません。

さらに、リカレント教育の対象範囲はビジネスや専門的な領域だけにとどまらず、介護、スポーツ、音楽、哲学といった、人生の豊かさを感じ、生きがいを追求する分野にまで広がっています。

 

リカレント教育の課題は?

リカレント教育の実施には企業と従業員の両方に課題があります。

企業側では、従業員の再教育を支援する制度や環境の整備、そしてそのための資金調達が課題となっています。

一方、従業員側では、長時間労働による学習時間の不足と、自分に合ったカリキュラムの探し方の不明確さが課題となっています。これらの課題を克服するためには、企業と従業員の共同努力と社会全体の理解が必要です。

 

リカレント教育を導入している企業の事例は?

キャノン株式会社:「プロダクショントレーニー制度」を実施しています。職種や部門を超えて工場の仕組みと考え方を学べる制度です。また、デジタル関連の学び直しとして、工場従業員など1,500人を対象に学び直しの機会を提供しています。

 

サントリーホールディングス株式会社:自己啓発支援プログラム「SDP(Suntory Self-Development Program)」として、リカレント教育を推進中です。

応募型研修、英語力強化、eラーニング、通信教育通学費補助制度の4つのプログラムで展開しています。

 

リカレント教育についてのまとめ

リカレント教育は、急速に変化する現代社会で、生涯にわたり活躍し続けるために不可欠なものとなっています。自分に合った学びの機会を見つけ、自己成長を促進することで、より充実したキャリアと人生を送ることができます。

 

また、企業にとっても、リカレント教育は従業員のスキルや知識を最新のものに保ち、組織全体の競争力を高めるための重要な戦略となっています。企業は、リカレント教育を通じて従業員の成長を支援し、組織の成長を促進することが求められています。

 

リカレント教育は、個々の成長と組織の成長を両立するための重要な基盤となりつつあります。

 

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