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出産育児一時金の申請方法は?手順や期限について解説

「出産育児一時金はどうやって申請するの?」

「出産育児一時金を受け取るための期限は?」

出産を控えた人の中には、このような疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。

 

正常分娩の場合、病気ではないため健康保険の適用にはならず全額自己負担となります。そのため、高額な出産費用の負担を減らすために出産育児一時金を上手に活用し、制度内容や手続き方法を事前に確認しておきましょう。

この記事では、出産育児一時金の基礎知識や、ケース別の申請方法についてくわしく解説します。よくある質問にもお答えしますので、これから出産を控えたパパ・ママはぜひ参考になさってください。

 

出産育児一時金とは

出産育児一時金とは、出産の際に必要な費用の一部を支給する制度です。健康保険法などで定められた制度で、出産での経済的負担を軽減するため設けられました。対象は、健康保険や国民健康保険などに加入している人や、扶養親族として健康保険に加入している人です。

出産育児一時金には出産費用のほか、産科医療補償制度の掛け金が含まれています。これは分娩時のトラブルなどで重度の脳性まひとなった場合、補償金が支払われる制度です。産科医療補償制度に加入している病院で出産する場合、掛け金を支払うと万が一の補償が受けられます。

 

出産育児一時金は、出産費用の増加に伴い支給額が見直されてきました。少子化対策のため、今後も支給額が変更になる可能性があるでしょう。

参照:厚生労働省「出産育児一時金について」

参照:日本医療機能評価機構「産科医療補償制度について」

 

申請するといくら受け取れるのか

2023年4月から、出産育児一時金を申請すると原則50万円を受け取ることができます。2022年12月10日の岸田内閣総理大臣の記者会見で発表されました。現行の42万円から8万円の増額で、これは出産育児一時金制度が始まってから過去最高の増額となります。出産費用の増加に対応するため、どの病院でも安心して出産できるよう、金額が大幅に引き上げられました。

厚生労働省が調査した正常分娩の出産費用を見ると、公的病院では45.5万円に対し、私的病院では50万円と大きな差があります。室料差額などを考えると42万円の支給金では賄えません。そのため私立・公立病院など全施設の平均額や近年の出産額上昇を考慮し、50万円に増額したのです。

その一方で、昨今の電気料金や医療機材の高騰、また円安による物価高などを理由に、出産費用を値上げする産院が少なくありません。SNS上でも「便乗値上げでは」という声が相次いでいます。トラブルを避けるためにも、自分自身で出産費用を事前に問い合わせるなど、よく調べたうえで産院を選ぶようにしましょう。

 

参照:厚生労働省「医療保険制度改革について」

 

現行の42万円から50万円へ引き上げということは今回8万円も増額されたってことだヨネ!

 

そうなんだよ。ここまでの大幅な増額は初めてのことなんだ。公明党がかねてより42万円では足りないと主張し続けてきたことが実った形だね。

 

出産育児一時金42万円→50万円増額分の財源はどこから?

これまで原則、現役世代が負担していた出産育児一時金ですが、2023年4月から50万円に引き上げられることでその財源は、どこから捻出されるのでしょうか。

もともと出産育児一時金は74歳未満の現役世代で補う仕組みでしたが、今回の出産育児一時金の増額では、後期高齢者医療の保険料に上乗せする形で75歳以上の人たちから一時金の7%を財源として拠出してもらうことになりました。2024年4月の保険料からの上乗せとなる予定です。これにより子育てを社会全体で支援する形となります。

ただ、急激な負担増加を緩和するための経過措置として2024〜2025年度においては、出産育児一時金の7%に対して2分の1(総額の3.5%)を負担していただくことになっています。

 

出産育児一時金を受け取るための条件

出産育児一時金を受け取るための条件は以下のとおりです。

  • 国民健康保険や会社の健康保険などに加入している人や、扶養家族が出産したとき。
  • 妊娠12週(85日)以上での出産であること。

健康保険に加入している人や扶養家族になっている人が条件なので、誰でも受け取れる制度です。妊娠12週以上であれば、死産の場合でも支給されます。

参照:調布市「国民健康保険加入者が出産したときの出産育児一時金」

参照:協会けんぽ「子どもが生まれたとき」

 

出産手当との違い

出産育児一時金と似た制度として出産手当があります。出産のため仕事を休んだ分の給料を補填する役割を持つ給付金です。出産の日以前42日から出産の翌日以後56日目までの範囲内で会社を休んだ期間が対象です。出産育児一時金との違いは、国保に加入している人や扶養家族の場合は支給がないということです。専業主婦で夫の健康保険に扶養家族として加入しているなら、出産育児一時金は受け取れます。しかし、働けなかった分の給料を補填する出産手当は、専業主婦は対象とならないのです。

個人事業主など国保に加入しているフリーランスも、出産育児一時金は受け取れますが出産手当金は受け取ることができません。

出産手当では、標準報酬日額の3分の2に相当する額が支給されます。会社員の方で出産・育児により働けない時期の収入減をサポートする制度といえます。

 

出産育児一時金の申請方法は3つ

出産育児一時金には以下3つの受け取り方法があります。

  • 直接支払制度
  • 受取代理制度
  • 直接申請

受け取り方法により申請方法が違うため注意しましょう。ここでは、出産育児一時金の申請方法3つについてくわしく解説します。

 

直接支払制度で申請

直接支払制度とは、出産した医療機関が健康保険加入者に代わって出産育児一時金の申請を行う制度です。加入している健康保険から、直接出産した病院などへ支払われます。

直接支払制度のメリットは、高額な出産費用を用意し窓口で支払う必要がないことです。以前は出産後に申請する方法だったため、出産費用をいったん自分で支払わなければなりませんでした。一時的とはいえ、多額の現金を用意するのは大変です。そこで安心して出産できるよう、直接支払制度が導入されたのです。

直接支払制度のデメリットは、クレジットカード払いができないことです。ポイントを貯めたいなど、クレジットカードでの支払いを希望する場合、制度を利用せず直接申請したほうがよいでしょう。

 

直接支払制度の申請手順

直接支払制度を利用するには、出産前に医療機関と出産育児一時金の支給申請や受け取りに係る契約を結びます。利用できない病院もあるため、出産予定の医療機関で確認してください。主な申請の流れは以下の通りです。

  1. 入院時に保険証や申請・受取に係る書類を提出
  2. 出産後、本人に費用の明細が交付される
  3. 医療機関が支払機関に請求する
  4. 支払機関が健康保険側に請求する
  5. 健康保険側から支払機関に支払われる
  6. 支払機関から医療機関などへ支払う
  7. 出産費用が支給額より少ない場合など、本人が手続きを行う

本人が行うのは、病院への保険証や書類の提出のみです。支払手続きは医療機関や支払機関、健康保険組合が行います。出産費用が支給額より安かったり、健康保険独自の付加給付などがあれば手続きを行うとお金が戻ってきます。

 

直接支払制度の申請期限

出産育児一時金の直接支払制度を利用するには、合意書などの書類を提出する必要があります。入院後の手続きがほとんどですが、臨月での提出を求める病院もあるため医療機関にお問い合わせください。

 

受取代理制度で申請

受取代理制度とは、直接支払を利用していない産院などで出産するときに利用する制度です。直接支払制度と同じように、出産費用を立て替える必要がありません。

直接支払制度では医療機関が出産育児一時金の請求手続きを代わりに行いますが、小規模な産院では利用できない場合があります。事前に健康保険組合に書類を送ると、産院から健康保険組合に直接請求できるようになります。

出産費用は健康組合から産院に直接支払われるので、お金の用意や面倒な手続きもありません。

 

受取代理制度の申請手順

受取代理制度を申請する前に、医療機関が対応してくれるかどうか確認しましょう。受取代理制度の主な申請手順は以下のとおりです。

  1. 健康保険組合に制度利用の申請を行う
  2. 受取代理申請書に医療機関からのサインをもらい、健康保険組合に提出する
  3. 健康保険組合が医療機関に受取代理申請受付通知書を送付する
  4. 出産後、医療機関が健康保険組合に出産に関わる書類を送付する
  5. 健康保険組合が医療機関に支払を行う。

健康保険組合への申請書類は、各健康保険組合により様式が用意されています。書類の入手方法を確認し、取り寄せてください。書類に必要事項を記入し、医療機関にも記載してもらってから健康保険組合に提出します。

 

受取代理制度の申請期限

受取代理制度の申請は、出産予定日の2か月前から申請ができます。臨月になると動くのが大変なので、手続きのタイミングを逃さず早めに済ませるとよいでしょう。

 

制度を利用せず直接申請

出産育児一時金には、直接支払制度や受取代理制度を利用せず、直接申請する方法もあります。出産費用を窓口で支払ってから、自分で健康保険組合に提出します。

クレジットカードのポイントをもらいたい場合や、海外で出産した場合は出産費用を自分で支払い、あとから直接申請するとよいでしょう。

 

直接申請の手順

直接申請の手順は以下のとおりです。

  1. 直接支払制度や受取代理制度は利用しない旨を書いた合意書を医療機関に提出
  2. 出産後、退院時に自分で出産費用を支払う
  3. 合意書や出産費用の明細書、申請用紙などを健康保険組合に提出する
  4. 出産育児一時金が振り込まれる

出産して退院後、必要書類を健康保険組合に提出すれば、指定の口座に振り込まれます。いつごろ振り込まれるかは健康保険組合により異なるため確認しましょう。

 

直接申請の期限

直接申請の期限は出産翌日から数えて2年です。必要書類を紛失する可能性があるため、出産後は早めに手続きしましょう。

 

出産育児一時金の申請に必要な書類

出産育児一時金の申請方法により、提出書類が違います。主な必要書類は以下のとおりです。

申請方法 手続きに必要な書類
直接支払制度の申請 直接支払制度に関する書類
受取代理人制度の申請 出産育児一時金等支給申請書(受取代理用)
制度を利用せず直接申請 出産育児一時金支給申請書

 

直接支払制度に関する書類は出産する病院で配布されます。受取代理人制度や直接申請の場合は、健康保険組合から申請書をもらう必要があります。

 

出産育児一時金 申請書 添付書類

出産育児一時金の申請には、出産費用を自分で支払ったことがわかる添付書類が必要です。出産育児一時金を健康保険組合に直接申請する場合の主な添付書類は以下のとおりです。

  • 出産費用の領収・明細書の写し
  • 直接支払制度を利用していないことを証明する書類のコピー

そのほか、出産育児一時金請求書に医師・助産婦または市区町村長の証明をもらう場合もあります。添付書類に違いがある可能性もあるため、加入している健康保険組合に確認してください。

 

出産育児一時金の申請に関してよくある質問

出産育児一時金の申請について解説してきましたが、ほかにも疑問がある人もいるでしょう。ここでは、出産育児金の申請に関してよくある質問をまとめました。

 

出産育児一時金の申請はいつまで?

出産育児一時金の申請は、出産の翌日から2年で時効を迎えます。子どもを育てるための経済支援制度なので、期限内に手続きし活用しましょう。

 

出産育児一時金の申請書はどこでもらえる?

出産育児一時金の申請書がもらえる場所は、申請方法により違います。具体的には以下のとおりです。

申請方法 申請書類の配布先
直接支払制度の申請 出産予定の医療機関
受取代理制度の申請 加入する健康保険組合
制度を利用せず直接申請 加入する健康保険組合

 

出産育児一時金の申請書はどこに出す?

出産育児一時金の申請書の提出先も、申請方法によって異なります。具体的には以下のとおりです。

申請方法 申請書類の提出先
直接支払制度の申請 出産予定の医療機関
受取代理制度の申請 加入する健康保険組合
制度を利用せず直接申請 加入する健康保険組合

 

出産育児一時金の申請書は誰が書いても大丈夫?

出産育児一時金の申請書は、原則保険に加入している本人が記入します。例えば妻が扶養親族の場合、被保険者である夫が記入します。

 

出産育児一時金 双子の場合はどうなる?

双子を出産した場合、1枚の申請書に2人分を書いて提出できる健康保険組合もあります。くわしくは加入している健康保険組合に問い合わせてください。

 

海外で出産した場合でも申請はできる?

海外赴任中など、海外で出産した場合も出産育児一時金をあとから申請できます。海外で出産したことを証明する書類が必要なので、あらかじめ用意しておきましょう。協会けんぽの場合は、以下の書類が必要です。

  • 出産を担当した海外の医療機関の医師・助産師の証明書
  • 出産した日(期間)において、実際に海外に渡航していた事実が証明できる書類(パスポート、ビザ、航空チケット等の写し)
  • 海外医療機関への照会に関する同意書

もし、出産を担当した医療機関の出産証明書が添付できない場合は、別の書類も必要になります。海外出産の予定があるなら、加入している健康保険組合に問い合わせ、必要書類を確認するとスムーズです。

参照:全国健康保険協会「出産育児一時金について」

 

まとめ

出産育児一時金は、出産費用の増加により支給額が見直され、2023年4月からは50万円が支給されます。健康保険組合から病院に直接払う制度が利用できるため、事前に手続きを行えば窓口で高額な出産費用を支払う必要がありません。出産費用をクレジットカードで払った場合や、海外で出産した場合などは健康保険組合に直接申請もできます。

出産費用の明細や、直接支払制度に関する合意書などの添付書類が必要です。出産の翌日から2年で時効となるため、忘れずに申請しましょう。

 

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