子育て・教育
高校無償化、対象になる?世帯年収による所得制限の計算方法と申請方法、要点まとめ
「高校無償化の所得制限対象は?」
「共働きなら世帯年収で計算されるの?」
上記のような疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。
この記事では、就学支援金制度の概要や、世帯年収別の支給対象と計算方法について徹底解説。申請方法や都道府県別の補助金についても説明します。
気になる所得制限は共働き世帯と一方が働いているケースに分けて分かりやすく解説。高校無償化の所得制限について知りたい人はぜひ参考にしてください。
高校授業料無償化制度の概要
高校無償化とはどのような内容なのでしょうか。制度の概要や受給資格、公立・私立高校別に詳しく解説します。
高校授業料無償化制度とは?
高校の授業料を軽減する「高等学校等就学支援金制度」を指します。授業料の保護者負担を軽減するため、2010年からスタートした制度です。2020年の改正で支給対象を、公立高校に加えて私立高校に通う生徒にも拡大。多くの高校生が利用できる制度となりました。
支援金は直接学校に支払われ、授業料は無料もしくは一部負担となります。全国の生徒のうち約8割が利用している制度です。支給条件には所得制限がありますが、多くの世帯が無償化の恩恵を受けています。
受給資格
高校授業料の経済支援を受けるには、受給資格を満たすことが条件です。具体的な受給資格は以下の通りです。
- 高等学校等に在学し、日本国内に住所がある
- 親の所得が所定の計算式で30万4,200円未満(後述)
この2つの条件を満たしていると、授業料の全額もしくは一部支援を受けられます。対象となる学校をまとめました。
- 国公私立の高等学校(全日制は3年まで、定時制・通信制は一4年まで)
- 中等教育学校後期課程
- 特別支援学校の高等部
- 高等専門学校(1~3学年)
- 専修学校(高等課程)
- 専修学校の一般課程や各種学校のうち国家資格者養成課程に指定されている学校
- 各種学校のうち一定の要件を満たす外国人学校
対象は高等学校のほか、中等教育学校の後期課程や特別支援学校の高等部、高等専門学校や専修学校の高等課程などが含まれます。ただし、専攻科や別科の生徒などは対象外です。
所得は保護者の課税標準額で計算され、共働きなら両親の収入が関係します。また、同居している祖父母など親権者でない人の年収はカウントしません。以下の計算式の金額で30万4,200円未満が支給対象です。
【高等学校等就学支援金制度の所得要件計算式】
保護者の課税標準額(課税所得額)×6% - 市町村民税の調整控除の額
所得制限は家族構成や収入などで変わりますが、文部科学省では910万円未満が年収の目安としています。
私立高校も実質無償化?!公立高校と私立高校の高校無償化の違い
公立高校と私立高校では支給額に違いがあります。学校ごとの支給上限額をまとめました。
学校種別 | 支給上限額(年額) |
公立高校 | 11万8,800円 |
国公立の高等専門学校(1~3年) | 23万4600円 |
私立高校全日制 | 39万6,000円 |
私立学校通信制 | 29万7,000円 |
参照:文部科学省 2020年4月からの「私立高等学校授業料の実質無償化」リーフレット
上限額が違うのは、平等な負担軽減を行うためです。私立高校は公立高校より授業料が高いため、金額が高く設定されています。制度の利用で保護者の負担が減るため、高校選択の幅が広がったといえます。
私立高校授業料をシミュレーションする: https://www.komei.or.jp/campaign/private-high-school/
実は、この制度は「すべての人に教育の光を」という公明党が結党以来60年近くにわたって主張してきたことを実現させた制度なんだよ。
公明党の「教育の最大の目的は子どもたちの幸福にある」という固い信念が実った制度なんだヨネ!
【世帯年収別】高校無償化の支給対象と計算方法
高校無償化には所得制限があります。家族構成や共働きなどで制限額が変わるため、モデルケースから近い金額を調べましょう。ここでは、共働き世帯と一方が働いている世帯の収入目安をまとめました。
共働きの場合の所得要件
共働きの場合、両親の年収を合計した金額であるため注意してください。支給条件を満たす年収目安は以下の通りです。
子供の数 | 学校種別 | 11万8,800円
(月額9,900円)の支給 |
39万6,000円
(月額33,000円)の支給 |
子供 1人 |
高校生
(扶養控除対象者が1人の場合) |
~約1,030万円 | ~約660万円 |
子供 2人 |
高校生・中学生以下
(扶養控除対象者が1人の場合) |
~約1,030万円 | ~約660万円 |
高校生・高校生
(扶養控除対象者が2人の場合) |
約1,070万円 | ~約720万円 | |
大学生・高校生
(扶養控除対象者が1人、特定扶養控除対象者が1人の場合) |
約1,090万円 | ~約740万円 | |
子供 3人 |
大学生・高校生・中学生以下
(扶養控除対象者が1人、特定扶養控除対象者が1人の場合) |
約1,090万円 | ~約740万円 |
共働きの場合、文部科学省の示した目安910万円よりは制限金額が高めです。紹介したモデルケースは両親の収入が同額の場合であり、実際には課税標準額をもとに計算されます。
両親のうち一方が働いている場合の所得要件
両親のうち、どちらかが働いている場合の家族構成と年収目安は以下の通りです。
子供の数 | 学校種別 | 11万8,800円(月額9,900円)の支給 | 39万6,000円の(月額33,000円)の支給 |
子供1人 | 高校生
(扶養控除対象者が1人の場合) |
~約910万円 | ~約590万円 |
子供2人 | 高校生・中学生以下
(扶養控除対象者が1人の場合) |
~約910万円 | ~約590万円 |
高校生・高校生
(扶養控除対象者が2人の場合) |
約950万円 | ~約640万円 | |
大学生・高校生
(扶養控除対象者が1人、特定扶養控除対象者が1人の場合) |
約960万円 | ~約650万円 | |
子供3人 | 大学生・高校生・中学生以下
(扶養控除対象者が1人、特定扶養控除対象者が1人の場合) |
約960万円 | ~約740万円 |
表のケースでは、年収目安が910万円未満で11万8,800円の支給対象となります。また、590万円未満で39万6,000円の支給対象となり、私立高校の実質無償化ラインです。
高等学校就学支援金の申請方法
高等学校就学支援金を受けるには申請の必要があります。高校入学時など学校から説明がありますので、指示に従い申請しましょう。申請に必要な提出物や手続き方法についてまとめました。
提出物
手続きに使う主な提出物は以下の通りです。
- 申請書
- 保護者等のマイナンバーを明らかに出来る書類
学校から配布された申請書と、親権者全員分のマイナンバーカードが分かる書類を提出します。マイナンバーカードの写しやマイナンバーが記載された住民票の写しなどが必要です。学校によっては他にも必要書類があるので、指示通り準備して提出しましょう。
申請・手続き方法
高等学校等就学支援金は、原則としてオンライン申請で行います。スマートフォンでも申請でき、マイナンバーカードの利用で審査機関を短縮できるメリットがあります。
オンライン申請では専用申請システムの「e-Shien」にアクセスします。学校から指定されたIDとパスワードが必要です。学校によっては、オンライン申請に対応していない場合も。詳しい申請方法は、各学校にお問い合わせください。
参考:e-Shien高等学校等就学支援金オンライン申請システム
都道府県別、国の就学支援金以外の補助と所得制限
国の就学支援金以外で、都道府県独自の補助が受けられる場合もあります。高校で受けられる支援金制度について、都道府県別に詳しく紹介します。
東京都
東京都には都内在住の高校生を対象にした、さまざまな支援制度が設けられています。私立高校を対象とした授業料軽減助成金では、年収約910万円未満で年間35万200円の軽減額が適用されます。国の支援金を合わせると46万9,000円まで受けられる手厚い制度です。
国公立高校へ通う生徒の場合「奨学のための給付金事業」が利用可能です。東京都内に住所があり生活保護世帯や所得割非課税世帯が対象。専攻科は5万500円、非課税世帯の第1子には11万4,100円など区分により金額が変わります。また、住民税が非課税の世帯や家計が急変した世帯などを対象にした奨学給付金もあります。使用目的は学用品や修学旅行などで、最高で年15万2,000円まで支給されます。
神奈川県
神奈川県には、私立高校在籍生徒を対象とした「高等学校等就学支援金」制度があります。収入に応じて国の就学支援金に県独自の学費補助金が上乗せ。また、中学生を除く15歳以上23歳未満の扶養している子どもが3人以上いる場合「多子世帯」給付が受けられます。
また、世帯年収が750万未満であれば入学補助金も受けられます。お金のかかる入学時に補助金が出るのは嬉しい制度といえるでしょう。
千葉県
千葉県には、私立学校を対象とした県の授業料減免制度や入学金軽減制度もあります。年収750万円未満で所得に応じ月額授業料の全額から就学支援金を除いた差額を免除します。高校の授業料をもとに計算するので実質無料化になる制度です。
低所得世帯に対しては「千葉県奨学のための給付金」制度があります。非課税世帯や生活保護受給世帯などが対象で、最高年額15万2,000円受け取れます。
埼玉県
埼玉県では「私立学校の父母負担軽減事業」という、私立学校の教育費を軽減できる補助金があります。
全日制の場合、年収目安720万円未満まで補助金を受けられるのが特徴です。年収590万円以上で国の就学補助金から漏れた場合でも、720万円未満なら26万8,200円上乗せされます。年収により10万円の入学金も給付される制度もあります。
大阪府
大阪府の公立高校入学者には「大阪府国公立高等学校等奨学のための給付金」があります。大阪府に在住している非課税や生活保護の世帯が対象です。年収により最高で年間14万3,700円の補助金が受けられます。
私立高校には「私立高等学校等授業料支援補助金制度」もあります。年収や子供の数に応じ支援額が変わり、800万円未満で子供が3人いる世帯は授業料が無償になります。
愛知県
愛知県には、生活保護や非課税世帯に対する「愛知県高等学校等奨学給付金補助金」があります。国公立学校に通う子供がおり、保護者全員の道府県民税と市町村民税の所得割が非課税の世帯で利用可能です。1人目の入学で全日制なら11万4,100円が支給されます。私立高校に通う場合は入学補助金や授業料軽減補助金が受けられます。入学補助金は全日制高校の場合、保護者の年収に応じ10万円〜20万円が支給されます。
授業料軽減補助金は、国の就学給付金を満額もらえない世帯をフォローする支援制度です。高校生と中学生以下の子供がおり、配偶者控除を受けている世帯では、年収720万円未満まで実質高校無償化されます。
よくある質問
ここでは、高校無償化についてのよくある質問にお答えします。
年収が590万円以上910万円未満の世帯は無償化の対象外ですか?
いいえ。年収が590万円以上910万円未満の世帯は、「高等学校等就学支援金」の受給対象です。
公立高校に通う場合、年間の授業料に相当する11万8,800円が支給されますので、実質的に授業料は無償となります。
私立高校に通う場合には、2段階の支給要件が設定されています。
- 年収が910万円未満の世帯には、公立高校と同じく年間11万8,800円の支給がされます。
- 年収約590万円未満の世帯は39万6,000円を上限として支給されます。(通信制の場合には年間29万7,000円が上限。)
世帯年収 | 支給額 | |
公立高校 | 590万円以上~910万円未満 | 11万8,800円 |
私立高校(全日制) | 590万円以上~910万円未満 | 11万8,800円 |
私立高校(全日制) | 590万円未満 | 最大39万6,000円 |
私立高校(通信制) | 590万円未満 | 最大29万7,000円 |
さらに、国の補助に加えて、各自治体でも独自の支援金制度を設けており、これらは併用して利用可能です。例えば東京都の場合、年収910万円未満の世帯は、国の制度と併せて最大46万7,000円の支給が受けられます。詳しい情報については、お住まいの自治体に問い合わせてみてください。
国公立の高校は適用されますか?
はい、適用されます。国公立の高校に通う場合、「高等学校等就学支援金」制度を利用可能です。
高等学校等就学支援金の受給資格は、日本国内に住所を持ち、国立・公立・私立は問わず、高等学校等に通う生徒となっています。
対象となる高等学校等は、以下のとおりです。
・国立・公立・私立高等学校(全日制、定時制、通信制) ※専攻科・別科を除く
・中等教育学校の後期課程 ※専攻科・別科を除く
・特別支援学校の高等部
・高等専門学校(一学年から三学年まで)
・専修学校の高等課程
・各種学校(告示指定外国人学校)
入学金や教科書費用は、無償化の対象ですか?
いいえ。一般的に高校の無償化といわれる「高等学校等就学支援金」制度では、授業料のみが対象であり、入学金や教科書費用などの授業料以外の経費は含まれません。
しかし、一部の低所得世帯を対象に、「高校生等奨学給付金」という別の制度があります。
これは、授業料以外の教育費の補助が受けられる制度で、教科書費や学用品費、通学用品費や修学旅行費などが含まれます。
受給を受けられる対象世帯は、生活保護受給世帯と非課税世帯です。
この制度は各都道府県が管轄しているので、詳しい条件や支給額については、お住まいの地域の担当部署に問い合わせてみましょう。
まとめ
高校無償化には所得制限があり、保護者の年収から計算されます。基準額である年額11万8,800円の支給を受けるための年収目安は910万円未満です。私立高校では39万6,000円まで支給され、年収目安は590万円です。実際は計算してみないと分からないため、迷った場合は申請した方が良いでしょう。
また、各都道府県独自の教育費給付制度を設けている場合も。高校は塾やクラブ活動費など、授業料以外のお金もかかる時期です。この記事を参考に、高校生が受けられる就学支援制度を確認してみましょう。
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