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夫婦別姓とは?メリットやデメリットを中心に現状の課題を解説

「夫婦別姓のメリットは?」
「日本で夫婦別姓は、認められているの?」

このような疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。

 

この記事では、夫婦別姓とはどのような制度なのか、メリットやデメリット等について、詳しく解説します。

 

夫婦別姓は大きく2つに分けられる

現在の日本の法律では、夫婦は同じ姓を名乗る必要があり、別姓は認められていません。
今後、法改正によって夫婦別姓が導入される場合、制度には下記2つの方法があります。

  • 選択的夫婦別姓
  • 例外的夫婦別姓

 

選択的夫婦別姓

選択的夫婦別姓とは、夫婦のどちらも姓を変えずに、結婚する前の姓を名乗ることを選べる制度のことです

選択的であり、全ての夫婦が別姓になるよう、強制されるものではありません。
あくまでも別姓にすることを選択できる制度なので、夫婦で同じ姓を名乗る現在の夫婦同姓も選択できます。

 

選択的夫婦別姓制度では、別姓夫婦も同姓夫婦も対等とされています。

 

例外的夫婦別姓

例外的夫婦別姓とは、夫婦それぞれが結婚前の姓を名乗ることを例外として認めることです。

例外的であり、現在のように夫婦が同じ姓を名乗ることを原則としています。

 

夫婦別姓と事実婚の違いは?

夫婦別姓と事実婚の違いは、法律上の夫婦か否かです。

夫婦別姓は夫婦が異なる姓を名乗りますが、婚姻届を提出して受理された夫婦であり、責任や権利などは同姓の夫婦とまったく同じです。

 

事実婚は、婚姻届を提出していません。

つまり、法律上は配偶者ではなく内縁関係です。夫婦のように生活していても法律婚ではないため、法的な夫婦の責任や権利は認められていません。

 

日本は世界で唯一夫婦同姓制度が残っている国

日本で生活していると、夫婦同姓が世界で一般的なことであると思う人もいるでしょう。しかし、実際は日本が世界で最後の夫婦同姓制度の国といわれています。

 

国連から、夫婦に同姓を強制する制度の改善をするよう、複数回勧告がおこなわれました。法務省も、日本以外の国で夫婦同姓制度の国は把握できていない、と公表しています。

 

 日本では法律上夫婦別姓が認められていない

日本は法律上、夫婦は同姓であることが原則とされ、別々の姓にすることが認められていません。日本が夫婦同姓になったのは、19世紀からです。

 

江戸時代には、農民や町民は姓を名乗ることができませんでした。しかし、武家の女性は結婚後も実家の姓を名乗り、夫婦別姓だったのです。

一般の人に姓が広まったのは明治時代で、この時も女性は結婚後に実家の姓を名乗るとの規定がありました。

夫婦同姓となったのは、1896年(明治31年)に民法(旧法)で夫婦は同姓であることが定められてからです。1947年(昭和22年)には、改正民法(現法)によって夫または妻の氏を名乗ることと、夫婦同姓が規定されました。

 

夫婦別姓の実現に向けた昨今の動き

昨今では、選択制夫婦別姓制度を導入するべきでは、という声が出ています。

しかし、以下の3つの観点から、民法の改定ということろまで踏み出せないというのが、最高裁判所の考えです。

  1. 個人が「家族」という集団を実感するため
  2. 「家族」という集団を外に示して識別するため
  3. 嫡出子であることを示すため

 

最初に声を上げた女性は、国立大学の研究者です。旧姓の使用を求めて1988年に提訴しましたが、同年に敗訴し、1996年に高等裁判所で和解が成立しています。

 

その後も多くの女性が声を上げ、2018年には妻の姓に変えた男性も、仕事で不利益を被ったとして、国に損害賠償請求をしています。

 

そもそも婚姻数の減少が少子化の一因といわれ、夫婦別姓制度を実現すれば、少子化解消につながるとの見方も出ています。

 

共働き夫婦が増加傾向にあることや、少子化対策の観点からも、今後は夫婦別姓の実現に向けて何らかの動きが見えてくることが考えられます。

 

公明党は、女性の社会進出を考えると、選択的夫婦別姓制度は良いことであると考えているんだヨネ?

そうなんだよ。制度として導入できるよう、公明党が働きかけているんだ。

 

夫婦同姓なら夫妻どちらの姓でも可能

夫婦同姓では、夫または妻の姓に統一して、夫婦が同じ姓を名乗ります。夫婦で相談して決めることができますが、妻が夫の姓に変える夫婦が一般的です。

 

平成28年度に厚生労働省が発表した統計によると、妻が夫の姓に変更した夫婦が全体の96%という結果が出ています。制度上は夫の姓または妻の姓を自由に選べるものの、妻の姓を選んだ夫婦は4%にとどまっているようです。

女性の社会進出が進み、共働きの夫婦が増えている現在でも、「夫の姓を名乗るのが当然」と考えられていることの表れでしょう。

 

参考:人口動態統計特殊報告

 

夫婦別姓のメリット

多くの国で夫婦別姓が取り入れられ、日本でも希望する人が多いということは、それなりのメリットがあると考えられます。

夫婦別姓で得られるメリットを紹介しましょう。

 

仕事に支障がなくなる

結婚前と同じ名字で仕事を続けられるので、仕事に支障がなくなるというメリットがあります。

 

夫婦同姓では、職場で新しい姓が浸透するまで混乱が起きることは珍しくありません。取引先に混乱を生じさせないために、メールの署名に新姓と旧姓の両方を、記載している人もいるでしょう。

 

仕事では通称として旧姓を使用する人もいますが、総務や人事で扱う書類の記載は戸籍上の姓でなければなりません。ひとりに2つの姓が存在することで混乱が生じる可能性があります。

 

プライバシーが保護される

夫婦別姓だと周囲に結婚や離婚をしたことを知られにくく、プライバシーが保護されます。

 

姓が変わると結婚や離婚のことを周囲に知られ、プライバシーを侵害されたと感じる人がいます。夫婦別姓であれば、結婚や離婚を知られにくいため、プライバシーの保護ができるといえるでしょう。

 

公的な手続きが不要になる

夫婦別姓の制度は、公的な手続きが必要ないこともメリットです。

 

夫婦同姓だと姓を変える側は、免許証や保険証などの公的なものはもちろん、銀行口座やクレジットカードなどあらゆるものの変更手続きが必要です。特に公的な手続きは平日にしかできないことが多く、手続きのために有給休暇を取得する人もいます。

 

結婚や離婚の際に知られにくい

夫婦別姓では、男性も女性も名字を変更しないまま結婚や離婚ができるため、名字の変更からプライベートを推測されることがなくなるでしょう。

 

夫婦同姓だと、結婚によって姓を変えた側は、名字が変わることで、結婚や離婚を周囲に知られてしまいます。

 

夫婦別姓のデメリット

夫婦別姓にすると、デメリットもあります。

ここでは、選択的夫婦別姓で別姓を選んだ場合のデメリットではなく、夫婦同姓が原則という現在の制度の中で、別姓にする場合のデメリットを紹介します。

 

選択的夫婦別姓が導入されれば、別姓を選択した場合でも同姓夫婦と同じように、相続権や税制の優遇が受けられます。選択的夫婦別姓と事実婚を、混同しないように注意してください。

 

現状の制度では事実婚扱いになる

現在は婚姻届を提出する法律婚では夫婦別姓にできないため、別姓にするには戸籍が別の事実婚になります。

 

子どもの苗字をつける際に問題になる

子どもが産まれたときに、子どもの姓の問題が大きなデメリットといえます。事実婚では、子どもは母親の姓を名乗ります。父親と親子関係が認められるためには、認知が必要です。子どもが父親の姓を名乗るためには、養子縁組の手続きをしなければなりません。

 

子どもの姓については、事実婚だけのデメリットではなく、選択的夫婦別姓が導入された場合にも問題となります。海外では夫婦それぞれの姓をつなげたものを子どもの姓にしている国もあります。

 

ちなみに、日本では、1996年の法制審議会の答申で、結婚の際に、あらかじめ子どもが名乗るべき氏を決めておくという考え方が採用されており、子どもが複数いるときは、子どもは全員同じ氏を名乗ることとされています。


また、夫婦別姓の導入前に結婚した同氏夫婦は、一定期間内に戸籍法の定める手続にしたがって、届け出る等の要件を満たすことによって、別氏夫婦になることができるとされています。

参考:法務省 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji36.html#Q8

 

相続権が認められない

事実婚の夫婦は法律上の夫婦ではないため、相続権がないこともデメリットです。法律婚では夫婦のどちらかが死亡した場合、配偶者には相続権がありますが、事実婚では認められません。

 

持ち家で名義人が死亡した場合には、相続権がないので住み続けることができないという問題もあります。

 

税金の控除など公的優遇を受けにくい

事実婚では所得税の配偶者控除など、税金の公的優遇が受けられません。

 

法律婚では相続税や所得税など、公的優遇が受けられる制度があります。事実婚の夫婦が対象外となっているのは、法律上の夫婦ではないためです。

夫婦別姓が実現しない理由とは?

日本で夫婦別姓が実現しない背景は、「イエ制度」の考え方が残っていることや、別姓にすると家族の一体感が薄れると危惧されているためといわれています。

 

1994年に法務省民事局参事官室が、「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」として姓について3つの案を提示しています。

 

1997年には、自民党に対して「旧姓続称制度」の提案がありました。 配偶者の同意や届出が必要ですが、旧姓を使用できるという案です。

これは、選択制夫婦別姓と例外的夫婦別姓を、合わせた案といえるでしょう。

 

その後も議論は続くものの、なかなか実現にはたどり着いていません。

 

保守派に残っている「イエ制度」の考え

戦後の民法改正で家制度は廃止されましたが、まだ日本では保守派に「イエ制度」の考えが残っています。GHQから家制度の廃止を要求された際に、政治家や資産家などが反対したのです。反対派の説得に「家制度がなくなっても、家族は同じ氏を名乗り、家族での生活が守られる」と説明しました。

 

家制度がなくなっても、夫婦同姓によって「イエ制度」が存続しています。言い換えれば、夫婦別姓を認めることで「イエ制度」が完全に廃止されるため、保守派が反対していると考えられるでしょう。

 

家族の一体感が薄れるという考え

夫婦別姓に反対する人の多くは、「家族の一体感が薄れる」と考えるようです。一体感とは心情的なもので、形に現れるものではありません。姓が同じだと、必ずしも家族が一体になるとは限らないでしょう。

 

姓が違うからといって、家族が一体になれないわけでもありません。

現在は結婚によって一方の姓が変わりますが、姓が変わったことが原因で親や兄弟と疎遠になる人はいないでしょう。

 

夫婦別姓が実現するためには

夫婦別姓を実現するためには、民法と戸籍法の改正が必要です。

 

民法750条は、婚姻によって夫婦が同姓となることを規定しています。また、戸籍法74条1号は、婚姻届を提出する際に、夫婦の姓を届け出ることを規定する法律です。

つまり、現在の法律では、結婚する夫婦の婚姻届が受理されるためには、夫か妻のどちらかが相手の姓に変える必要があります。

 

参考:民法750条

参考:戸籍法74条1号

 

民法の改正

婚姻に関する基本的なルールは民法で定められているので、選択的夫婦別姓の実現には、民法の改正が必要です。

 

民法とは個人はもちろん、事業者など法人などの間で交わされる契約や、家族のルールなどを定めた法律をいいます。

 

戸籍法の改正

戸籍のルールを定めた戸籍法でも、夫婦は同じ姓であることが前提とされていて、選択的夫婦別姓の実現には改正が必要です。

 

まとめ

夫婦別姓について、制度の内容やメリット・デメリットなどを解説しました。

 

まず、大切なことは「制度を正しく理解する」ことではないでしょうか。夫婦別姓が導入されれば、すべての夫婦が別姓になると誤解している人もいるようです。

実際にどのように困っている人がいて、夫婦別姓が認められればどのようなメリットやデメリットがあるのかを、考えることが大切です。

 

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