「信頼できるAI」で世界に挑む

■最も開発・活用しやすい国へ
AI基本計画は冒頭、日本が培ってきた「信頼性」を強みに、技術革新とリスク管理を両立させた「信頼できるAI」の構築を掲げた。めざすのは「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」である。
昨年9月施行のAI法に基づく同計画は、①利活用の加速的推進(使う)②開発力の戦略的強化(創る)③ガバナンスの主導(信頼性を高める)④AI社会に向けた継続的変革(協働する)――との方針に沿って具体策を打ち出した。
■人型ロボットなど“勝ち筋”に
特徴の一つは、国産AIの基盤モデルや「フィジカルAI」などを「日本の勝ち筋」と位置付け、開発に注力する方針を鮮明にした点だ。フィジカルAIは、現実世界でロボットや車などを自律的に動かす技術で、人手不足が深刻な介護や製造などの現場を支える人型ロボット、高度な自動運転の実現につながる。
利活用を巡っては、「隗より始めよ」として政府・自治体の業務への本格導入を推進するとした。国内で利活用が遅れている現状を打破するため、国民の「まず使ってみる」という意識を醸成し、社会全体の生産性向上を図る狙いがある。
国民の不安払拭への取り組みも欠かせない。基本計画では、AIの安全性を評価する政府系機関「AIセーフティ・インスティテュート(AISI)」の人員倍増を盛り込んだ。
AI人材の育成へ、初等中等教育の段階から基礎的な知識を学ぶ必要性を強調。AIに過度に依存せず、人間ならではの創造力や思考力などを発揮する「人間力」を育む教育を推進する方針を示した。
基本計画は技術革新の速さを踏まえ、当面は毎年改定する。政府は今夏をめどに、具体的な投資目標などを定めたロードマップ(工程表)をまとめ、計画に反映させたい考えだ。
■米中が先行、出遅れる日本
生成AIを筆頭に、AI技術を巡る世界の潮流は日進月歩だ。買い物のアドバイスや文書の下書きなど身近な利活用が進む中、フィジカルAIの開発なども加速する。いまやAIは産業競争力や安全保障に直結し、国力を左右するものとして、各国が「総力戦」で取り組んでいる。
一方、日本国内ではAIが日常の生活や仕事に深く浸透しているとは言い難い。基本計画は、日本の利活用や開発について、主要国に後塵を拝し「出遅れが年々顕著になっている」と強い警鐘を鳴らした。
実際、米中両国が利活用で先行している。総務省の2024年度の調査によると個人の生成AI利用率は、米国が68・8%、中国が81・2%に対し、日本は26・7%にとどまる。企業での利用率も米国や中国で9割を超える一方、日本は約半数に過ぎない。
投資規模の格差も深刻だ。内閣府などのデータによると、19~23年の5年間におけるAI関連の政府投資額は米国の約3290億ドル(50兆円)、中国の約1330億ドル(20兆円)に対し、日本は約100億ドル(1・5兆円)と米国の30分の1以下である。
政府は遅れを挽回し反転攻勢に出られるか、官民挙げた取り組みの加速が急がれる。
■「人間中心」の理念が土台/党生成系AI利活用検討委員長 河西宏一衆院議員
今回策定されたAI基本計画は、公明党が提言などで訴え続けてきた「人間中心のAI」との理念を土台に据えている。特に、AIと人間の境界線を見極め、人間自身の「人間力」向上を明記した点は、党提言の核心であり評価できる。
今後の焦点は社会実装だ。大企業のみならず、中小企業もAI活用による生産性向上をイメージし、実行できるよう幅広い世代へのAI教育を推進するよう政府に求めたい。また、今後、日本が産業界を一変させ得るフィジカルAI市場で勝ち筋を見いだすには、現場に眠る質の高いデータを引き出し活用する環境整備も急務だ。
さらに、サイバーセキュリティーの観点からAISIの抜本的強化や偽情報対策なども欠かせない。「中道改革」の立場から人間にとってのベストを見いだす実践的知恵を発揮し、人間中心のAI社会の構築を粘り強くリードしていく。
