参議院選ポイント⑥:消費税と公明党
今回の参議院選で野党は消費税の減税(もしくは廃止)を訴えています。
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消費税について、これまでの経緯と公明党が向き合ってきたスタンスをまとめてみました。
(一地方議員である私が、個人的に書いているもので、公明党の公式なものではありません。)
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◆ 2012年、民主党政権による消費税増税法案が出される。
2009年の「政権交代」で民主党政権が誕生し、公明党は自民党ともに野党になりました。野党・公明党は「何でも反対」の姿勢ではなく、あくまでも国民のためになるのかどうかを判断基準とし、是々非々の立場をとっていました。
2012年3月、通常国会で、民主党政権による消費税の税率を引き上げる法案が出されました。
公明党は、高齢化が進み、現役世代が減っている中でも、社会保障制度を持続可能なものにしていかなくてはならないことや、今の社会保障制度を充実させていく必要性は認識していました。そして必要な財源を確保するため、消費税を含む税制の抜本改革は必要であると考えていました。
公明党は、消費税率引き上げに絶対反対ではありませんが、引き上げに5つの前提条件を主張してきました。具体的には、①社会保障制度の全体像を示す、②景気回復の実現、③行政改革の徹底、④消費税の使途を社会保障に限定、⑤税制全体で社会保障の財源を生み出すこと、です。
しかし、当初、民主党政権から出された案は、この5条件のほとんどを満たしておらず、このまま消費増税法案に賛成する訳にはいかないことを表明していました。
◆ 「三党合意」が転換点
民主党は、以前より消費増税を公約に掲げていた自民党へアプローチをかけ、民主党・自民党間で消費増税合意への動きが見られるようになってきました。当時の国会は、両党が賛成すれば、衆参で法案が通過してしまう勢力図でした。
これでは、庶民の生活を置き去りにした増税になってしまう。公明党は、そうした動きを阻止するべく、三党による修正協議に臨むことに舵を切りました。実務者間で協議は行われ、6月に入り合意内容がまとまり、民主党・自民党・公明党の幹事長により合意書に署名がなされました。
その中で、増税分は社会保障(年金・医療・介護・子育て支援)に使うことや、景気対策を行うこと(景気弾力条項)、低所得者(逆進性)対策を行うことなどが盛り込まれました。公明党の5条件を飲ませたのです。
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◆ 消費税率の引き上げと使途について
現在の消費税の使途については、国が使う財源と地方自治体が使う財源に配分されており、法律で以下のよう定められています。
※ 財務省のHPより
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【国】(消費税法第1条第2項)
消費税の収入については、地方交付税法に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする。
【地方】(地方税法第72条の116)
1.道府県は、前条第二項に規定する合計額から同項の規定により当該道府県内の市町村に交付した額を控除した額に相当する額を、消費税法第一条第二項に規定する経費その他社会保障施策(社会福祉、社会保険及び保健衛生に関する施策をいう。次項において同じ。)に要する経費に充てるものとする。
2.市町村は、前条第二項の規定により道府県から交付を受けた額に相当する額を、消費税法第一条第二項に規定する経費その他社会保障施策に要する経費に充てるものとする。
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こうした財源の確保に基づき、社会保障と税の一体改革関連法(年金改革法や社会保障制度改革推進法など)が制定され、国が行う年金・医療・介護の制度強化に加え、幼児教育・保育の無償化等の子ども・子育て政策の財源として使われています。また地方自治体においても同様に、地方消費税収に対して、予算・決算資料に使途の内訳が明示されています。
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◆ 景気状況を見据えた上での措置(景気弾力条項)について
社会保障と税の一体改革関連法の付則(第18条)では、「経済状況の好転」を税率引き上げの条件とし、経済成長率や物価動向などの指標から経済状況を総合的に勘案し、施行の停止を含めた措置を行うこととされています。
当初では、2014年4月に8%に引き上げ、10%への引き上げは2015年10月を予定していましたが、その後の景気の回復状況を鑑み、政府は二度にわたり引き上げの時期を延期しました。(2015年10月 ⇒ 2017年4月 ⇒ 2019年10月)
2018年、税率増に伴う駆け込み需要と反動減を抑える対策が打たれ、翌年2019年10月より、現在の10%への引き上げ実施となりました。
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◆ 低所得者(逆進性)対策について
消費税は税率が上がると低所得者ほど収入に対する食料品などの生活必需品購入費の割合が高くなり、高所得者よりも税負担率が大きくなります。これを「逆進性」と言います。公明党は、消費税率の引き上げに際しては、この「逆進性」への対策を組み入れることを主張しました。これは三党間でも合意されました。
逆進性対策の方法について、様々な議論がありました。例えば「給付付き税額控除」です。消費増税により負担増となる一部を所得税から差し引き、減税の恩恵が受けられない低所得者層には、現金を給付する方法です。しかし、マイナンバーが普及していない状況では、国民一人ひとりの所得や資産を正確に把握することが難しく、公平な制度設計ができないため、実現性は認められませんでした。
そこで、公明党が主張し、最終的に落ち着いたのが「軽減税率」です。欧州連合(EU)では、加盟27カ国のうち20カ国が軽減税率を食料品に適用しています。低所得者はエンゲル係数が高く、食料品などへの軽減税率の恩恵が大きいのです。当時の世論調査でも、軽減税率が「必要」と答えた割合は81%(毎日新聞2012年7月)、また政府には、軽減税率の導入を求める560万人の署名が届けられました。
最終的には、2015年10月に当時の安倍総理が、消費税率を10%へ引き上げる際に軽減税率を導入することを表明しました。約3年間の検討・議論を経て、導入が決定したのです。
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これまでの経緯を振り返ってみても、当時の民主党、現在の立憲民主党が、今になって消費税の減税を訴えることには、大いに疑問を覚えます。未来にも、過去にも責任を負わない「その場しのぎ」の主張であると断ぜざるを得ません。
現在の物価高対策については、これまで政府・与党が進めてきた総合緊急対策や地方創生臨時交付金等の方法で対応するべきと考えます。
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東京選挙区は「竹谷とし子」へ、比例区は「公明党」への投票をよろしくお願いします。