BCP(業務継続計画)について
本日は、杉並区議会公明党の一員として、BCP(業務継続計画)に関する質問を行わせていただきます。
BCPとはビジネス・コンティニュイティ・プランの頭文字で、行政機関を対象とする場合は業務継続計画、民間企業では事業継続計画との日本語訳が多く使用 されています。災害時や緊急事態においてもいかに事業や業務を継続するかという考え方に重点を置いているところが従来の防災計画と異なっており、二〇〇一 年の同時多発テロ以来、米国を中心に広まってきた危機管理の考え方であります。
地震大国と言われる日本、国土の面積では世界のわずか〇・三%に すぎませんが、これまでの十数年間でマグニチュード六・〇以上の大地震が発生してきた頻度では、全世界の二〇%以上がこの日本で起きています。六千人を超 える死者、行方不明者を出した阪神・淡路大震災、近年では新潟県中越地震、能登半島沖地震、新潟県中越沖地震、そして、ことし六月の岩手・宮城内陸地震 等、大規模な地震が我が国では多数発生しています。私たちの住む首都圏東京におきましても、マグニチュード七程度の直下型の地震が発生する確率が今後三十 年以内に七〇%、五十年以内であれば九〇%という調査結果があり、いつ大災害に見舞われてもおかしくない状況にあります。
それぞれの企業、組織 には、どのような状況であれ、必要とされる業務を遂行しなければならない、社会に対する一定の責任というものがあります。しかし、大規模な災害のときには 自らも被災し、機能不全に近い状態となり、業務遂行に支障を来すような事態に陥ることも予想されます。
BCPでは、企業や組織において災害や事 故等で大きな被害を受けても重要業務をなるべく中断させない、仮に中断しても、できるだけ早急に、あるいは許容される時間内に復旧させる、業務継続を実現 するための戦略を計画します。優先的に継続、復旧すべき最重要業務を事前に特定しておき、バックアップ準備やリスクの軽減、事後の災害時応急対応、復旧手 順の明確化、指揮命令系統の確保等の計画をあらかじめ立案し、被災の影響を最小限にとどめる、そしてその実現を可能にするために、被害状況と資源の活用状 況を詳しく想定、分析した上で、事前対策を着実に実施していくことを定めます。
日本でのBCP普及の流れとしては、平成十七年八月に内閣府によ り事業継続ガイドラインが発表され、民間企業におけるBCPを策定する上での一定の指針が示されました。また、経済産業省からは、情報セキュリティーと中 小企業の取り組みの観点からガイドラインが発表されています。
民間企業においては、本年、ある経営コンサルティング会社が、国内の全上場企業及 び売上高五百億円以上の未上場企業を対象にBCPに関する調査を行ったところ、BCPを既に策定済みあるいは策定中と回答した企業は七八%で、二年前の同 じ調査での四九%から二九ポイントも上昇しています。また、BCPの必要性を感じていると回答した企業は九六%にも上り、ここ数年でBCPに対する関心が 大きく増大しています。
官公庁においても、国土交通省や財務省を初め、既に十七の中央省庁がBCPを策定、公表済みで、そのうちの十六省庁が本年の三月から七月の間に策定しているという、まさに今、BCPラッシュの様相を呈しております。
地方公共団体では、都道府県で三団体、区市町村では二・三%に当たる四十一団体が策定済みという状況で、まださほど浸透はしていませんが、東京都では先月 七日に都政のBCP(東京都事業継続計画)の素案を発表し、パブリックコメントを受けた後、本年十一月の計画策定を目途に作業を進めております。
そこで質問をいたします。基礎的自治体として、子育て、教育、保健、医療、福祉、年金等、区民の日常生活に直結した行政サービスを提供する杉並区が、災害 時にあっても必要な行政サービスの業務を継続しなければならないという区民に対する責任についてどう認識しているのか、所見をお伺いいたします。
また、予測不可能なリスクの発生懸念材料が最近は増加しているのではないかと私は感じております。地震以外でも、先月にはゲリラ的集中豪雨が東京都を初め 全国で多数発生しました。新型インフルエンザやSARSのような人的資源の活動を脅かす疫病、情報通信機器に対するサイバーテロの脅威等、リスクの種類が 増加しているのではないでしょうか。当区の業務活動に重大な影響を与える災害リスクの発生懸念について、区としての考えをお伺いいたします。
一方で、危機管理に対する区民の意識が向上すればするほど、当区の災害時の対応への期待感、要求度が高まります。最近の杉並区民の災害に関する危機意識について、区としてはどのように認識されているのでしょうか。
杉並区地域防災計画では、区民の協力のもとに、災害予防対策、応急対策及び復旧復興対策の実施に区が中心的な役割を担うことを定めております。しかし、こ ういった防災計画に加え、自らも深刻な被害を受けるということを合理的に想定して、その上で何ができるか、何をしなければならないかという業務継続計画の 策定をする必要があると考えますが、区の所見をお伺いします。
次に、BCPの中身について伺います。
東京都のBCP素案では、マグニ チュード七・三の地震が東京湾北部で発生し、都の防災会議が発表した被害想定を前提として、都民の生命、生活及び財産を保護すること、首都東京の都市機能 を維持することの二つを計画の目標としています。都の総業務数二千八百九十二のうち六百九十七の業務を発災後すぐに業務に着手しないと、都民の生命、生活 及び財産または都市機能維持に重大な影響を及ぼすため、優先的に対策を課すべき業務、これをAランクと定め、発災後二十四時間以内に復旧に着手し、三日以 内に業務復旧を目標としています。そして、二百六業務をBランクとして、発災後一日から三日以内に復旧に着手、一週間以内に業務復旧させることを目標とし ています。そのほか、百六十五の業務をCランク、三日から一週間以内に着手し、三十日以内の復旧目標と定めています。これらのAランク、Bランク、Cラン クの合計千六十八業務を非常時優先業務と分類しています。それ以外の千八百二十四業務に関しては、緊急性が低いという判断のもと、限られた資源をA、B、 Cの業務に集中的に投入するという優先業務の実効性の確保に重点を置いた計画を立てています。
当区としましては、通常業務として行っている事務 事業の数は、平成十九年度末で六百六あります。そのうちで災害時にも継続が必要な業務、また災害時に取り組まなければならない応急・復旧業務等で優先順位 を明確にし、それらの実効性を確保する必要性があると考えますが、区としての考えをお聞かせください。
また、平成二十二年度までに、六〇%の事 業がNPO等との協働、民営化や民間委託によって区役所以外の組織によって運営されることが目標として計画化されております。公共サービスの担い手の災害 時の緊急対応、復興、そして事業継続の計画について、区としてどのように把握、また対策を推進されているのか、現状と今後の展開についてお聞かせくださ い。
業務の優先順位を明らかにした上で、それを遂行するための必要な人員の確保と適切な配置、安否確認等を行う必要があります。東京都の素案で は、災害時での参集人員を、勤務時間外に徒歩によって参集可能な人員で対応することを前提としています。当区においては、職員の居住地を考慮した上で、勤 務時間外に災害が発生した際に、参集可能人員を時間帯別でどこまで正確に把握されているのでしょうか。また、災害時の非常時優先業務を遂行する環境とし て、非常時のバックアップの発電設備の体制を含めて、区庁舎等の施設の業務遂行拠点としての被災対策の現状と今後の取り組みについてお示しください。
続きまして、災害時における区の情報システム、ICT部門の業務継続の体制についてお伺いいたします。
二〇〇五年十一月一日に起きた東京証券取引所のシステムダウンは、オペレーションマニュアルの記入漏れが原因だったそうですが、発生直後はシステムトラブ ルの原因を特定できず、結局、午前中の取引が全面停止となり、企業や市場関係者にはかり知れないダメージを与える異常事態に発展しました。現代社会は、情 報システム、情報通信技術、ICTに大きく依存している反面、当のコンピューターシステムは意外と脆弱性を抱えています。この点は災害対策についても同様 です。
情報システムは、平常時からの業務継続の備えがないと、被害を受けてからの事後的な復旧に多くの時間を要してしまう特性が強い。また、区 民情報等を失ってしまい、その回復に多くの時間を要してしまえば、甚大で回復困難な影響を区民に生じさせてしまいます。したがって、当区におけるICT部 門のBCP策定の必要性は他の部門よりも高く、重点的に業務継続力をつけることの価値は大きいと考えます。そういった観点から、少々詳しくお伺いいたしま す。
現在、区の業務執行のための情報システムは、ハードウエアとしては、業務処理用と開発用のメーンフレームコンピューターが二台、ホスト系の サーバーが四十台近く、スイッチ系のサーバーが百台近く設置されています。専用LAN回線で接続されたホスト系の端末機が本庁舎と出先事務所を合わせて四 百五十台近く、そして、オープン系として合計三千台近いパソコンが連日使用されております。また、ソフトウエアでは、大小合わせて四百近い業務処理アプリ ケーションが存在しています。さらには、年間数百万回にも及ぶデータ入力がコンピューター上で行われており、区民と区に関係する大切なデータが大量に保管 されています。
基本的なご認識を伺います。区のこれらのコンピューターシステムが完全に、または主要部分がダウンしてしまった場合、区の業務遂行に対してどのような影響を与えるとお考えでしょうか、所見をお聞かせください。
また、情報通信機器への耐震、耐火、耐水等への対策はどのようにとられているのでしょうか。庁舎の耐震基準はもとより、ガラス等の飛散、設備の転倒防止、 発火時には火とともに水からも守らなければならない情報通信機器に対する消火対策、また、機器自体に被害がなくても、空調の故障による湿度や温度の異常に より機器が停止する可能性、これらの諸問題についてはどのような対策をとられているのか、具体的にお示しください。
情報システムの運用に関して、重要なサーバーを庁舎とは別の遠隔地のデータセンター等に設置することも一つの方法です。今後、区としては、庁舎との同時被災を回避するため、遠隔地にデータセンターを設置することに対してどのようなお考えか、所見をお聞かせ願います。
また、庁舎内及び外部と接続する通信ネットワークが二重化されているのか、もしくは庁舎の通信機器が故障した場合に鱶回経路等を準備しているのか、ネットワークの機器対策についてもお聞かせください。
納税や国民健康保険など、当区のみが保有している区民等に関する情報を消失することは、どのような理由があれ回避しなければなりません。したがって、重要 な情報のバックアップを実施することは最低限の責務であります。現在の区のデータ保存のバックアップ体制はどのようになっているのか、現状をお聞かせくだ さい。
練馬区では、二〇〇四年十二月から、区役所から数十キロ離れた民間施設に大容量の記憶装置を設置し、暗号化したデータを毎日伝送する、い わゆるレプリケーションを行っています。さらに進化した方法では、RAIDと呼ばれる分散型データ保存技術によるデータ損失の防止対策も民間企業では広く 採用されています。当区においても、これらの技術を活用し、今後、データ保存のバックアップ体制をより強固にしていくことをぜひとも研究するようご提案い たしますが、区の見解をお示し願います。
昨年の第二回定例会で、私は、全体像を見据えた上での区の情報システムの最適化、また、区としてのIT ガバナンスの体制強化について質問をいたしました。これからの情報システムを考えたときに、災害対策という点にも重きを置いた運営計画を策定していくこと が必要であると考えます。年間約二十五億円の予算がつけられており、業務の基幹を支える大変重要な部門でありますので、区としても抜本的な取り組みを展開 されることを要望いたします。
BCPへの取り組みは、単なる計画の策定が目的ではありません。現状分析、計画策定、訓練、テスト、検証、改善を 継続的に行っていく、PDCAを通してのマネジメントシステムとして体系立てて活用していくことが肝要となります。現在、ISOのようなBCPのマネジメ ントシステムの統一規格及びその認証制度設立の動きが世界的に進められております。そのような動向も見据えながら、実効性の担保された、区としての責務を 果たす盤石なシステムの構築を目指していただきたい、このように念願いたしまして、私の質問を終わります。
ありがとうございました。
○副議長(小川宗次郎議員) 理事者の答弁を求めます。
区長。
〔区長(山田 宏)登壇〕
◎区長(山田宏) 中村議員の一般質問にご答弁申し上げます。
今、BCP、つまり災害時の業務継続計画の行政での必要性についてるるお話を伺いました。まさに本当に今地震が起きて被害を受けたら、初動対応と応急対応 に追われるだろうと思います。と同時に、区としては日常の業務を持っておりますので、それらを一日も早く復旧していかなきゃなりません。そういった意味 で、初動態勢と、それから日常業務の復旧というものを同時に行うということを計画を立ててやっていく、優先順位を決めていくということは、お話をお聞きし ながら、極めて大事なことだというふうに認識をいたしました。
十八年度末にまとめた杉並区防災会議専門委員会報告書の提言にもありますが、今 後、区として最低限でも途絶えることのない業務をきちっと遂行できるように、維持すべき業務、優先すべき業務は何かということをきちっと洗い出しを行った 上で、今後、ご指摘のような業務継続計画の策定を急いでいきたい、こう考えております。
なお、その策定までの間も非常に大事だ、こう考えておりますので、その間、大体の、緊急であればこうだというようなものも並行して考え、そしてきちっとしたものも策定していくということが大事ではなかろうかと思います。
残余のご質問につきましては、関係部長からご答弁申し上げます。
○副議長(小川宗次郎議員) 危機管理室長。
〔危機管理室長(赤井則夫)登壇〕
◎危機管理室長(赤井則夫) 私からは、 中村議員のご質問のうち所管事項についてお答えいたします。
まず、区の業務に影響を与える災害リスクの発生懸念についてのご質問にお答えいたします。
昨今、地震、水害など自然災害に加え、区民生活に影響を及ぼすおそれのある事態が発生しております。これら想定される危機事象に対しては、平成十七年三月 に杉並区危機管理基本マニュアルを策定し、一連の取り組みや実施すべき基本的事項を定めております。区民生活や区政運営に重大な影響を及ぼす事態に迅速に 対処できるよう、日ごろから職員の危機意識を向上させ、組織全体の危機対応力を高めることに努めてございます。
次に、区民の危機管理意識についてのお尋ねにお答えいたします。
区では毎年、「区政に関する意識と実態」区民意向調査を実施しております。その中で、施策の要望では、高齢者福祉に続き、二番目に災害に強いまちづくりが 挙がっております。また、最近の大雨、ゲリラ豪雨などの影響から、区で実施している災害情報メール配信サービスへの登録が、昨年の同時期に比べて約二倍の 登録件数となっております。こういった状況を見ますと、区民の危機管理意識は高まっているものと認識してございます。
次に、災害時の応急業務の優先順位についてのご質問にお答えいたします。
先ほど区長からご答弁申し上げましたように、地域防災計画の見直しの中で優先業務を明確にして、実効性のあるものに努めてまいりたいと存じます。
次に、区の業務を区役所以外の組織で運営される場合の災害時の対応についてお答えいたします。
協働化の推進により民営化や業務委託した施設や事業であっても、区の公共サービスを担っていることから、当然、事業の継続や災害時の緊急対応は必要なもの と認識しております。既に、区民が利用する区民センターや体育施設などは、災害時の緊急対応を協定や仕様で盛り込んでおります。今後、災害時の業務継続計 画の検討の中で全体の具体化を図ってまいりたいと存じます。
次に、職員の参集についてのお尋ねですが、区では、勤務時間外の災害発生時には、初 動配備態勢に指名された約七百名の職員が、本庁及び地域区民センター、震災救援所に、おおむね三十分から一時間以内に参集することとなっています。また、 震度六弱の地震が発生した場合では、全職員が指定された部署に参集することとなっていますが、時期をとらえ、時間別の参集人員等も検証してまいりたいと存 じます。
私からの最後になりますが、区庁舎や地域区民センター等、災害時の活動拠点となる区有施設の被災対策についてのお尋ねですが、非常発電 設備が区庁舎や五カ所の地域区民センターに配備されております。また、災害発生に伴い、営繕課職員を中心とする区有施設点検班が巡回して被災施設の状況を 把握し、対応することとなっています。しかし、職員の確保が困難な状況を想定すると、今後は、区内等の設備事業者との協定なども検討すべき課題と考えてご ざいます。
私からは以上でございます。
○副議長(小川宗次郎議員) 行政管理担当部長。
〔行政管理担当部長(大藤健一郎)登壇〕
◎行政管理担当部長(大藤健一郎) 私からは、災害時における区の情報システム及びICT部門の業務継続の体制についてのご質問にお答えします。
まず、コンピューターシステムのダウンに伴う区の業務への影響とその対策についてのお尋ねですが、被害規模、被害状況によって異なりますが、大規模災害で はコンピューター自体が破損し、復旧のめどが立たない場合もございます。その際には一定期間システムが停止し、それに伴い、区のさまざまな業務に多大な影 響を与えることになるものと考えております。
そのため、区では、情報通信機器の設置時に震度六強にも耐える機器固定を行うとともに、二酸化炭素 消火設備や漏水センサーを設置するなど、システムをダウンさせない対策を行ってございます。また、ネットワーク機器につきましては、主要箇所で鱶回経路や ネットワークの二重化などの対策を行っております。
次に、遠隔地のデータセンターの利用についてのお尋ねですが、ご指摘のように、遠隔地での データセンターの設置は、システムの危機管理対策の有効な対策の一つであると考えております。そのため、今年度改定しました情報化アクションプランの中で も、ホストコンピューターシステムの見直しを含めた、より適切なデータ管理の方法を検討する際の課題の一つとしております。
いずれにしましても、費用対効果から最も適切なデータ管理の方法を選択し、より災害に強いシステムの確保を図ってまいりたいと存じます。
最後に、区のデータ保存のバックアップ体制についてのご質問にお答えします。
現在は毎週プログラム及びデータをカートリッジ磁気テープに書き込み、地層のかたい埼玉県のデータセンターで保管しておりますが、今後につきましては、先 ほど申し上げました、より適切なデータ管理への見直しの中で広い視野から検討を進め、データ保存のより強固なバックアップ体制を構築してまいりたいと存じ ます。
私からは以上でございます。
平成20年9月16日

