対立超えた協調へ
1945年8月15日、日本は戦争という過ちを二度と繰り返さないと世界に向けて固く誓いました。 先の大戦で犠牲となられた内外の全ての方々へ謹んで哀悼の意を表し、今なお傷痕に苦しむ皆さまに 心からのお見舞いを申し上げます。 あの日から80回目となる終戦記念日を迎えた国民の多くが、直接の経験としての戦争を知らず、 記憶としての戦争を受け継ぐ時代を生きています。 しかし国際社会では各地で地政学的対立が深まり、中東での武力衝突、ロシアによるウクライナ侵略を きっかけとした核の脅威も高まり、さらに気候変動やAI(人工知能)の急速な進展など世界は複合的な 危機ともいうべき事態に直面しつつあります。中でも北東アジアに位置する日本周辺の安全保障環境は 厳しさを増し、ルールに基づく国際秩序が揺らいでいます。
■不測の事態を未然に防ぐ取り組みが必要 「対立を超えた協調へ」――。公明党は戦後80年を迎えるに当たり、具体的な平和への行動を日本から 起こすべく「平和創出ビジョン」を5月9日に発表しました。その平和創出ビジョンの中心に 「北東アジア安全保障対話・協力機構」の創設を掲げました。
国家間の対立を超えて、 協調を生み出していくための要は人間同士の“対話”に他なりません。緊張感の高まる安全保障環境下で、 不測の事態を未然に防いでいくためには、対立国を含む多国間の対話による信頼醸成を同機構を通じて 具現化することが重要であると考えます。
「北東アジア安全保障対話・協力機構」創設の参考となるのは、北米、ロシアやウクライナを含む欧州、 さらに中央アジアの57カ国が参加する世界最大の地域安全保障機構のOSCE(欧州安全保障協力機構)です。 1975年のヘルシンキ最終議定書を創設の起源とするOSCEは、冷戦下でも東西対話を促進し、 軍事的透明性を上げる信頼醸成措置や安全保障対話の制度化、紛争予防や危機管理、復興支援などを通じて 機能してきた歴史があります。
公明党は北東アジア・北太平洋地域においても、こうした常設の対話枠組みを新たに設置すべきと考えますが、 そのためにはOSCEの課題や限界なども含めて多角的に検証し、創設への国内外の理解を醸成する必要があります。
公明党は党内に「平和創出ビジョン推進委員会」を設置し、平和創出ビジョンの具体化を進めていきます。
■核保有は非現実的議論で断固反対
戦後80年は「被爆80年」の節目であることを忘れてはなりません。 一方、国内では核武装を正当化するような声が一部にありますが、核兵器不拡散条約を批准する日本では、 非現実的な議論と言わざるを得ません。公明党は、核保有に断固反対します。 唯一の戦争被爆国だからこそ知る「被爆の実相」を国内外の若い世代に伝え、平和への取り組みの機運を さらに高めることが重要です。
公明党は、平和創出ビジョンで掲げた「平和の心の継承」を進めてまいります。 戦争の悲惨さや核兵器の非人道性を直接体験した被爆者や戦争体験者の高齢化が進んでいますが、 数多くの証言は、平和の意味を次世代に伝えることに大きな力を発揮しています。 今こそ、「平和の心」――命の尊厳を守り抜く決意、人間を信じる力、対話と共生を求める願い――を、 社会全体で継承していかなければなりません。
広島・長崎の被爆体験、沖縄戦、全国の空襲や戦災、引揚げの体験など証言の数々は、 かけがえのない「人類の遺産」です。これらは繰り返してはならない歴史の教訓であると同時に、 「平和を願う心」を未来へつなぐ懸け橋です。公明党は歴史の教訓を広め、「平和の心」を継承する取り組みを推進し、 平和を“自分ごと”として考える社会を築いてまいります。
さらに公明党は、これからも核兵器禁止条約の締約国会議へ党所属議員を派遣するとともに、日本政府に対しては オブザーバー参加を決断するよう粘り強く訴えていきます。
世界各地で第2次世界大戦以前に戻ったかのように、反グローバル主義などに基づく「自国ファースト」を 唱える動きが広がっています。戦後、人類が築き上げてきた国際協調を捨て、国家間の対立を先鋭化させ、 国際紛争や経済摩擦が深刻化している状況を公明党は強く憂慮します。公明党は7月15日に党声明を発信し 「対立を超えて、誰もが安心できる平和と共生社会の構築」を求めました。
戦後80年、「平和国家」として世界に 貢献してきた日本において、まず、世代、性別、国籍、障がいの有無などを問わず、立場や主張などの差異を超え、 この国に生きる全ての人々が包摂され、一人一人が生きがいと喜び、安心と希望を持って暮らせる社会を断固として 構築し国際社会をリードしていく決意です。
2025年8月15日 公明党 