2001.10.11: 平成13年 財政委員会
都債の状況、いわゆる発行額、公債費、都債残高の推移について。財政再建プランに基づく取り組みの中で都債を抑制について。公共施設の整備を民間の知恵、人材を活用して低廉良質なサービスを提供する、PFIの手法、新たな事業実施の手法を要望。
〇長橋委員 私の方からは、委員会の資料要求として都債の状況、いわゆる発行額、公債費、都債残高の推移について要求をいたしましたので、調べました。というのは、本当に現在、国、日本全体、地方を問わず、国債や地方債の累計による長期債務の増大が一番大きな問題になっているわけでございます。都債という名前でございますけれども、中身はもとより借金でございます。借金を積み重ねれば、だんだんとみずからの首を締めていくということは、だれでもわかることでございます。これは都民でも、みずからの家計のやりくりの中で肌身に感じていることではないかと思います。
こうした基本的なことからお伺いしますが、庶民感覚に立って、都債の場合はどうなっているのかということを明らかにするために、何点かお伺いをしたいと思います。
まず、本当に基本的なことでございますけれども、都債の目的や機能、そして発行の仕組みについて、改めて説明をお願いしたいと思います。
〇松澤主計部長 都債についてでございますが、都債は、投資的経費などの財源を確保することを目的とするものでございまして、その機能といたしまして、二つございます。世代間の負担の公平を図ること、それから、財源の年度間調整を行う、大きく分けてこの二つがございます。
まず、一つ目の世代間の負担の公平を図る機能についてでございますが、例えば道路を建設する場合、その道路を利用するのは、現在の住民だけではなく、将来の住民も、次世代の方も利用することになるわけでございますから、財源として都債を活用して、ローンみたいな形で償還していくということになりますが、そういう形にして、その償還費を将来の各世代にも負担していただくことにより世代間の公平を図ろうという機能でございます。
もう一つ、次に、年度間の財源の調整を図る機能としましては、税収の急激な落ち込みなどに伴う財源の不足を補うことによりまして、必要な住民サービスの水準を維持するなど、計画的な財政運営を確保するための機能でございます。
それから、都債の発行の仕組みについてでございますが、これは地方財政法などに基づきまして、発行に当たりまして、現在、国の許可が必要となっておりまして、平成十八年度から事前協議制ということになりますが、現在は国の許可が必要となっております。
また、事業ごとの充当率が、例えば清掃施設だと何%とか、そういうような充当率が具体的に定められているなど、現状では、国による制約のもとで発行が認められるというような仕組みになっているところでございます。
〇長橋委員 わかりました。
ところで、要求した資料を見ますと、ここ十年間で、明らかに公債費、都債残高、ともに大変な増加をしていることがわかるわけでございます。十年前、三年度と十三年度を比べますと、公債費が二千三百十九億、それが十三年度は五千二百九十七億、約二・三倍に増加しているわけでございます。ちなみに、その前の十二年度、昨年は六千三十億と、六千億を突破しているわけでございます。また、都債残高を見ますと一兆六千九百四十一億円、これが七兆六千八百八十六億円と、さっき説明がありましたけれども、実に四・五倍に膨れ上がっているわけでございます。これは、平成四年度以降バブルがはじけて、その翌年、平成四年は三年の三倍以上になっておりますけれども、都債を大量に発行したことが、公債費、都債残高を大きくふやした原因、これは明らかでございます。
資料では、三年度は二千二百六十六億円であった都債発行額が、ピークの二年後の五年度には一兆五百八十五億、一兆円を突破するという、急激に増加をしたわけでございます。その後も、十一年度までは高い水準を維持しているわけでございます。
そこで、四年度以降、なぜ都債の大量発行を続けたのか、お伺いをいたします。
〇松澤主計部長 平成四年度以降の都財政の状況は、いわゆるバブルの崩壊後の景気後退を受けまして、法人二税を中心に都税収入が大きく落ち込むなど、極めて厳しい状況に直面したわけでございます。例えば平成三年度に約四兆八千五百億円あった都税収入は、次の年、四年度には四兆三千八百億円、また、その次の年の五年度には四兆六百億円ということで、わずか二年間で約八千億円も減少したところでございます。
このような状況の中、財政運営としまして、投資的経費の財源として都債を積極的に活用することにより、国と歩調を合わせまして景気対策に取り組むとともに、投資的経費に充当しておりました一般財源を経常経費の財源に振り向けるなどによりまして、都民サービスの水準を、また歳出水準を維持することにした、こういうことによるものでございます。
〇長橋委員 今ご説明ありました、確かにその時々の社会情勢、都税の大幅な減収に応じて、税収が落ち込んでも投資的経費を賄わなきゃならない、歳出水準を維持していくための財政運営は必要だったということは認めます。四年度以降の都債の発行額の増加は、主に景気対策という国の要請に応じたことが大きなことであったと思います。これは理解できますけれども、都債の機能を考えて発行したということはわかりますけれども、これは、将来にわたって大変大きな都民の負担になることは明らかでございます。
こうした都債の発行について、一つ留意しなければならないことがあると思います。東京都もそうであったわけですけれども、地方全体、日本全体が、地方財政全体として、地方債残高が大きく増加したわけでございます。地方全体が借金財政に陥っているといっても過言ではありません。
しかしながら、聞くところによりますと、国は、こうした地方債の増加について一定の財政措置を講じているようですけれども、その内容はどんなものでございましょうか、お伺いします。
〇松澤主計部長 ただいまお話ありましたように、国の景気対策やあるいは減税対策などのために発行した地方債につきましては、次年度以降、元利償還費が地方交付税の基準財政需要額に算入されるなど、これまで交付税措置が行われてきております。とりわけ景気対策のための補正予算における地方債の多くにつきましては、元利償還費が一〇〇%、全額が交付税に算入されるなど、通常の地方団体にとりましては手厚い財政措置が講じられているところでございます。
しかし都は、ご案内のとおり、算定上、一貫して地方交付税の不交付団体でありまして、このような地方交付税措置を、実質的には一切受けることができない状況となっているわけでございます。
〇長橋委員 確かに今の答弁を聞きますと、地方債を発行しても交付税でカバーできるということになるわけでございますけれども、地方にいわゆる財政出動させて景気対策を実施する、交付税制度を道具にして地方債の発行を促した国の意図というのを感じざるを得ません。
しかしながら、地方交付税の不交付団体である東京都の場合は、このような交付税措置を受けることができないわけでございます。都債償還に伴う財政負担は、すべて都の負担になるわけであります。このような負担の増加は、大問題であるといわざるを得ません。
十二年度から、都は、財政再建プランに基づく取り組みの中で都債を抑制してきております。十二年度は三千八百五十二億、そして十三年度予算では三千五百七十七億円まで減額をしたわけでございます。都債の抑制はやや遅きに失したとはいえ、正しい方向であったということは評価できると思います。
しかし最大の問題は、景気対策の効果が本当にここに来て乏しく、景気の本格的な回復が見られない、今後もなかなか難しいということで、多額の都債だけが残ってしまうということになってしまいます。そして、都債のほとんどが十年満期一括償還ですから、来年度は、四年度以降大量発行した都債が、まさにこれから返済期を迎えるわけでございます。
そこで、今後の都債償還額はどのように推移するのか、お伺いをいたします。
〇松澤主計部長 ただいま先生ご指摘のとおり、平成四年度から民間債はすべて満期一括償還ということで、都債を発行しましてから十年目に満期を迎えるわけでございます。償還額から借りかえ額を除いた、その年度の実質的な財政負担額である実償還額について今後の推移を申し上げますと、平成十三年度予算では三千二百五十一億円である実償還額は、来年度、十四年度には五千五百十二億円に急増いたしまして、さらに十五年度には七千九百億円に達し、十六年度以降も六千億から七千億円程度という高い水準で推移するものと見込まれます。
〇長橋委員 まさに大変な償還があるわけですけれども、こうした状況にありながら、一方で、緊急十兆円プロジェクトなどの大きな投資事業が打ち出されているわけでございます。今までも起債は、多くはハードの部分に使われてきて、都債の償還費が増大する中で、新たな借金は、ぎりぎり本当に必要なものに抑えなければいけなくなってきているわけでございます。本当に、さらにふえるのではないか、また、都民から見れば、これだけ借金があるのに大丈夫なのかという思いもあると思います。緊急でやらなければならない事業、施策があることは認めますけれども、だからこそ財政運営が大事になってくるわけでございまして、財務局の立場がますます重要になってくる、こういうふうに思います。
知事も、こうした大プロジェクトは国費を投入させて、都財政の負担を重くすることなく対応したいといっているわけでございます。また一方、知事本部が取りまとめている重要施策の立案状況でも、やはり建設局の事業費が四割以上、大きなウエートを占めるなど、投資事業の要求が目立つようです。安易な都債での対応は問題と考えますけれども、見解を伺います。
〇松澤主計部長 ただいまご答弁しましたように、今後、都債の償還費は高い水準で続いていくと見込まれるため、ご指摘のように、都債の発行を極力抑制しまして将来の財政負担を軽減することが、財政構造改革の重要な課題の一つとなっているわけでございます。
今回、重要施策が各局から立案され、この中に投資的な経費としての施策も多く含まれているようでございますが、こうした財源として都債が活用できるとしましても、将来の償還費は、最終的には税によって賄わざるを得ないわけでございますから、先生ご指摘のとおり、安易な対応は避けなければならないと思っております。
このため、選定された重要施策の財源につきましては、原則として各局からのスクラップによって賄うものと受けとめておりまして、また財務局としましても、これからの十四年度予算編成の過程におきまして、施策の見直し、再構築をこれまで以上に徹底する中で、必要な確保を図っていきたい、このように考えております。
〇長橋委員 同時に、都債の発行を抑えるということで、事業の必要性を吟味しないで、やらないことはやらないなんていうことはないと思いますけれども、そこで、二十一世紀にふさわしい新しい財政運営の手法について、取り組みも進めていかなければならない。このままでのやり方では、重要施策の選定ということもありますけれども、大変なことになるわけでございます。
例えば公共施設の整備を都債という借金で行うのではなくて、民間の知恵、または人材も活用して低廉良質なサービスを提供するという、いわゆるPFIの手法、新たな事業実施の手法も、これからは積極的に導入すべきではないかと私は思っております。
さきの定例会でも知事が表明しましたように、来年度以降は都税収入が減る、こういうことも覚悟しなければならないほど、ますます財政は、経済環境は厳しくなっているわけでございます。このような状況の中で、借金体質から脱却して、財政の弾力性を取り戻して今後の都民ニーズに的確にこたえていくためには、都債の発行抑制に努めるとともに、本当にさまざまな創意工夫を凝らしていくことが大事であると思います。財政運営に当たって、安樂局長の見解をお伺いいたします。
〇安樂財務局長 ただいま主計部長からもご答弁いたしましたけれども、余り遠くない平成十五年には、八千億というような都債の償還が起こります。その後も、その水準がしばらくは続くような感じになっております。将来の公債費負担の軽減を図るために、今から都債発行の抑制に取り組む必要があるというふうに思っております。
また、最近の国の内外の経済状況は急速に悪化しておりまして、都税収入の伸びが期待できないという中で、今後とも歳出構造面、これはもう当然のことですが、内部努力の徹底であるとか、あるいは施策の見直しをこれまで以上に強力に進めたいとは思いますが、このほかに、ご指摘のように、例えば国費の確保というようなことも、昨年の十二月から、例えば道路整備のための無利子貸し付けというようなことを国にも要望しております。
それから、道路財源の都の配分も非常に低いということで、都内のガソリンの売り上げが八%ぐらいあるにもかかわらず、半分ぐらいしか都に配分されていないというような問題もあります。こういうことにつきましても、これから取り組みを強めていきたいというふうに思っております。
こうした取り組みのメニューにつきましては、平成十一年に策定いたしました財政再建計画の中で総合的に定めております。あとは、これを我々が断固として実施していくということだと思っております。これがこれからの成否にかかっていると思いますので、今後も全庁的な英知を集めまして、さまざまな工夫をしながら、全力で財政再建のために適切な財政運営に努めていきたいというふうに思っております。
〇長橋委員 今、安樂局長がおっしゃったとおり、財政運営というのは本当にさまざまな工夫を凝らしていく、抜本的に見直していく、そういうことでございまして、改めてPFIの手法というのは、私は大事になってくるのではないかなと、今後進められていく財政運営の抜本改革の一つの大きな柱になるのではないかと思いますし、抜本改革ということが、本当に景気対策につながりますし、財政構造改革につながっていく。
そういうことで、財務局としても制度的な環境整備、今も国に対して働きかけていると思いますけれども、今までもやってきたと思いますけれども、さらに強力に制度改革を国に対しても進めていただきたいと思いますし、また、このPFIの手法を、投資的事業だけではなくて各種の事業に積極的に導入するよう取り組んでいただきたいことを要望して、私の発言を終わります。
2001.10.11 : 平成13年財政委員会