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(土曜特集)「年収の壁」打開の方策は?/名古屋商科大学ビジネススクール 原田泰教授に聞く

#公明新聞電子版 2023年10月28日付

 

配偶者に扶養されているパート労働者などの手取り収入が減る「年収の壁」【図参照】。

人手不足が深刻な中、就業調整(働き控え)をすることなく、働ける環境へ求められる方策とは何か。

 
■年収106万、130万円超で社会保険料負担が発生、手取り収入が減ることも

 

――年収の壁とは。

会社員などの配偶者の扶養に入っている人は、自分で社会保険料を支払わなくても、保険診療が受けられ、基礎年金も受給できる。

「第3号被保険者」に該当するこれらの人たちがパートなどとして働き、一定の年収額を超えると厚生年金や健康保険料を負担しなければならず、一気に手取り収入が減ってしまう。これが年収の壁だ。

従業員101人以上の企業で働く場合は、年収106万円で社会保険料の負担が生じ、年収130万円を超えると全ての企業で働く人に負担が生じる。

手取り収入を社会保険加入前の水準まで回復させるには、106万円の壁の場合、おおむね125万円の年収が必要だ。

 

――社会保険以外で変わることは。

所得税の支払い義務が生じる「103万円の壁」や配偶者特別控除が段階的に縮小する「150万円の壁」は、年収がその額を超えても、手取り収入が減ることがないよう制度設計されている。

 

 

■賃上げで働き控え加速/人手不足が一層深刻に

 

――なぜ、会社員などの配偶者は一定の年収まで社会保険料を負担しなくていいのか。

 

いわゆる「夫は外で働き、妻は家庭を守る」という“昭和的な家族観”を前提にしている制度だからだ。

ただ、夫婦共働きが主流の今、働く意欲があるにもかかわらず、年収の壁を意識して就業調整を行うパート労働者などは多い。

民間の統計では、パート労働者の約2割に相当する330万人程度が就業調整をしているとの試算もある。

 

――今になって、この年収の壁が焦点になっている理由は。

背景にあるのは、深刻化する企業の人手不足や、全国で加速している賃金引き上げだ。

特に、多くのパート労働者が働く飲食や宿泊、小売りなどの業界では、繁忙期の年末を中心に就業調整による人手不足が喫緊の課題。

加えて、賃金を引き上げても、壁に到達する時間が短くなることで働き控えが増え、人手不足が一層深刻になってしまう問題も大きい。

 

――日本経済全体への影響は。

言うまでもなく、就業調整がなければ、パート労働者などの収入が増えるため、日本の国内総生産(GDP)も税収も増えていく。

民間企業が配偶者のいる女性パート労働者を対象に行った調査では、年収の壁が解消された場合、増やしたい年収が30万円程度だった。

これを基にパート労働者が、これまでより年30万円程度多く稼ぐだけでも、日本全体で見れば、毎年1兆円弱の年収増(30万円×330万人)だ。

これに伴いGDPは約1・9兆円、税収は5700億円程度増えるとみている。日本経済を持続的な成長軌道に乗せていく上でも、年収の壁への対応策を早急に講じなくてはならない。

 

 

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■“税金の壁”は存在せず

 

配偶者に扶養されているパート労働者にとって、手取り収入が減る“税金の壁”は存在するのだろうか。

例えば、年収103万円を超えると所得税が課税されるが、課税対象となるのは103万円を超えた額のみ。

年収が103万円を1万円超えた場合、本人に課税される所得税額は500円だ。

また、年収150万円以上になると、年収が上がるにつれて配偶者特別控除の控除額が減っていくが、満額(38万円)から段階的に縮小されていく。

よって、税金では年収が上がったにもかかわらず手取り収入が減るという現象は起きない。

 

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