衆院代表質問で石井代表 政治改革断行を 政策活動費廃止せよ/電気、ガス、燃油代 補助継続も 公明新聞2024/10/08より
衆院代表質問で石井代表
政治改革断行を
政策活動費廃止せよ/電気、ガス、燃油代 補助継続も
公明新聞2024/10/08より
衆院は7日の本会議で、石破茂首相の所信表明演説に対する各党代表質問を行った。公明党の石井啓一代表は、新たな連立政権合意を踏まえ「不断の政治改革をはじめとする政策を着実に実行し、失われた政治の信頼を取り戻すとともに、持続可能で活力ある日本へ、未来を拓く改革を前に進めることが新内閣の責務だ」と強調。特に政策活動費の廃止を含めた、もう一段の政治改革の実行を求めた。
石井代表の衆院代表質問(要旨)
■(はじめに)生活守る政策実現に総力
能登地域の豪雨災害でお亡くなりになった方々のご冥福を心からお祈り申し上げるとともに、被災された方々に衷心よりお見舞いを申し上げる。
苦境が重なる中、生活再建に奮闘されている被災地の皆さまにお応えするためにも、新内閣は、被災者支援、復旧・復興に総力を挙げねばならない。公明党も政府の取り組みを全力で支えていく。
9月30日、自民党と公明党は新たな政権合意を結び、不断の政治改革をはじめ、物価高対策や経済成長、子育て・教育・若者支援、女性活躍、防災・減災、国際社会の平和と安定など、重点的に取り組む政策を確認した。
これらの政策を着実に実行し、失われた政治の信頼を取り戻すとともに、持続可能で活力ある日本へ、未来を開く改革を前に進めることが、新内閣に課された責務だ。
公明党は、どこまでも一人の声を大切に、自民党と力を合わせて、国民生活を守り、豊かにする政策の実現にまい進していく。
■(政治の信頼回復)改正政規法の実効性担保する「第三者委員会」設置を
政治の信頼回復は、現下の最重要課題だ。
公明党は、先の通常国会で成立した改正政治資金規正法(政規法)の実効性を担保するため、政治資金を監督する第三者委員会について国会閉会後も議論を積み重ね、10月4日、「中間取りまとめ」を発表した。
現行の(総務省に設置されている)「政治資金適正化委員会」を改組し、政治的中立性を保つ「3条委員会」として仮称「政治資金監督委員会」を設置し、収支報告書に不記載や虚偽記入の疑いがある場合の調査権限を持たせることなどが主な内容だ。今後、与野党協議を重ね、改正政規法が施行される2026年1月1日をめざして同委員会を立ち上げたい。
さらに、政党から政治家個人へ渡される政策活動費については、自民党総裁選において複数の候補者が廃止を訴えていた。この際、政策活動費について、廃止を含め、もう一段の改革を実行すべきだ。
併せて、調査研究広報滞在費(旧文通費)の使途の明確化、使途の公開、未使用分の国庫返納について、来年の通常国会までに法改正を行うべきと考える。
■(物価高対策、賃上げ)低所得世帯に給付行え/下請法改正で価格転嫁を促進
食品価格の高騰が家計を圧迫しており、物価高対策として具体的な取り組みを求める。
第一に、物価高の影響が大きい低所得世帯や低所得の子育て世帯、賃上げの恩恵が及ばない年金生活者に迅速な給付を行うこと。第二に、電気・ガス料金・燃料油価格の負担軽減策を続けること。第三に、「重点支援地方交付金」を追加で措置し、地域の実情に応じたきめ細かな支援を行うこと。特に、国や地方自治体との取引が多い福祉事業者など価格転嫁が難しい事業者への支援を検討すべきだ。
今年度、中小企業の賃上げ率は3・62%という高水準を記録した。物価高の克服へ、来年以降も賃上げを持続させなければならない。
一方で、多くの中小企業からは、人手不足や原材料のコスト増などが重く、賃上げの原資確保は難しい、との悲痛な声が寄せられている。
政府は、労務費を含めた適切な価格転嫁に取り組んでいるが、6月の調査では、価格交渉が行われたのは59・4%、コスト全体の価格転嫁率は46・1%という状況だ。また、約4社に1社が買いたたき行為を受けた経験があると答えている。
対等な価格交渉を進めるには、そもそも「下請け」という呼称自体を変えるべきとの指摘もある。買いたたきや、交渉もないままでの一方的な価格据え置き行為の禁止などと合わせた下請法の改正を行うべきである。
■(子育て・教育)高校無償化、所得制限なくせ
公明党は大学などの教育費の負担軽減をめざして、24年度は多子世帯や理工農系の中間層へ、25年度は多子世帯へ所得制限なく支援を拡充していく。給付型奨学金と授業料などの減免による「修学支援新制度」のさらなる拡充を行うべきだ。
高等学校などについては、授業料の所得制限を撤廃し、国公私立を問わず実質無償化するとともに、経済状況が厳しい家庭への授業料以外の教育費を支援する「高校生等奨学給付金」も拡充が必要だ。
さらに、学校給食の無償化についても、6月に出た実態調査の結果を踏まえ、少子化対策の観点から、こども家庭庁の下、関係省庁が連携して検討に入るべきだ。
■(若者、女性活躍)可処分所得の向上推進
若者がより活躍できる社会へ、単身世帯の増加を含めた取り組みを強化すべきだ。
若者の政治参画を促進するため、被選挙権年齢の18歳までの引き下げ、立候補時の年齢に応じた供託金の見直し、若者議会の設置などを推進すべきである。
また、公明党の青年委員会には、人生の選択肢を増やすためにも、可処分所得の向上を進めてほしいとの声が数多く寄せられた。
リスキリング(学び直し)支援や、非正規雇用から正社員への転換支援、企業が賃上げしやすい環境整備などを進めるべきだ。
■「選択的夫婦別姓」早期に
わが国のジェンダーギャップ(性別の違いによる格差)指数は、146カ国中118位、中でも政治・経済の分野の格差が大きい状況だ。
女性の活躍、キャリア継続のためには、性別役割分担意識の根絶や労働時間の短縮など社会構造の変革が必要であり、あらゆる意思決定の場に女性を増やすことは、全ての人が尊厳と誇りを持って活躍できる社会の構築につながる。
公明党は、将来的には全議員の50%を女性とし、今後10年以内に女性国会議員30%をめざす目標を掲げた。
女性の健康支援に向けては、公明党が長年求めてきた「女性の健康総合センター」が今月、開設した。女性の健康問題による労働損失を防ぎ、生涯にわたる健康支援の中核拠点として大いに機能を発揮してもらいたい。
男女間賃金格差の解消や、「選択的夫婦別姓制度」の早期導入も、喫緊の課題だ。
■(能登復興、防災・減災)司令塔機能強化へ「防災庁」/避難所の総点検実施せよ
大地震に記録的豪雨が重なった能登地方では、復旧・復興に向けた一体的な支援が必要だ。私も3月に引き続き、10月5日に豪雨の被災地を視察した。
これまでは、予備費を活用して機動的に対応してきたが、本格的な復興に向け、中・長期的な支援を行う補正予算の編成も今後検討すべきだ。
また、これまでの大規模災害の経験を踏まえ、被災自治体との連携強化を一層進めるため、各府省庁を横断的に統括する司令塔機能の強化が必要だ。「防災庁」を創設し、最先端技術を活用した大規模災害のデータ解析・集積による予測精度の向上や専門的な防災人材の確保・育成などを進めるべきである。
さらに、自然災害に加え、切迫する南海トラフ地震などの対応に万全を期すため、国土強靱化のさらなる取り組みが急務だ。残り1年となる「5か年加速化対策」(25年度まで)については、近年の資材価格の高騰などの影響などを考慮しつつ、必要・十分な予算を確保し、着実に推進いただきたい。
同対策後も、取り組みを最大限加速するため、改正国土強靱化基本法に基づく「実施中期計画」を今年度内に策定するとともに、次の5カ年で20兆円規模となる予算の確保を強く求める。
これまでの大規模災害時に被災者は、厳しい避難所環境によって不自由な生活を余儀なくされてきた。特にトイレは、断水で使用できなくなるなど大きな課題となった。
そのような教訓を踏まえ、公明党はこれまでTKB(トイレ、キッチン、ベッド)の迅速配備や、被災者が尊厳ある生活を営める最低基準を示す「スフィア基準」の導入など避難所環境の大幅改善を政府に提言してきた。また、トイレについても、備蓄計画を強化し、トイレトレーラーやトイレカーの配備を強く訴えてきた。
直ちに全国の避難所の総点検を実施し、必要な資機材の確保や円滑な避難所運営のための支援などを、国が前面に立って進めていただきたい。
■(活力ある地域づくり)公共交通の担い手確保/スマート農林水産業、導入後押し
地域公共交通は、地域住民の「移動の足」であり、住民・利用者目線に立って再構築を図るとともに、利便性を向上させ、地域活性化につなげていくべきである。
そのためにも、まずは公共交通機関における担い手不足への対応が急務だ。
事業者の賃上げや働き方改革などを推進し、若者や女性、外国人材を含め、担い手の確保を進めていただきたい。
また、キャッシュレス化などのDX(デジタルトランスフォーメーション)化とともに、自動運転やMaaS(次世代移動サービス)など交通分野におけるデジタル技術の導入を強力に推進すべきである。
さらに、地域の多様な関係者による連携・協働を促進し、地域公共交通計画のアップデートを進めるため、関係府省庁による支援を促進すべきと考える。
安定した収入の確保と働きがいが実感できる、魅力ある農林水産業へ再構築を進め、食料安全保障を強化することが急務だ。
私は、地元・埼玉県の草加市、八潮市、三郷市で、担い手不足や猛暑による農産物の生育不良に危機感を募らせる生産者の声を伺ってきた。
食を支える農業や漁業の担い手の減少に加え、気候変動による品質低下などが続けば、食品の安定供給が確保できなくなる恐れがある。
こうした状況を克服するため、生産性や付加価値を飛躍的に高めるスマート農林水産業と新品種の開発・導入を強力に後押しすべきだ。
また、適正な取引環境の構築に向けて、付加価値や生産コストの上昇分を価格に反映できる環境整備も重要であり、法制化を含め、対策を一層強化すべきだ。
■(外交など)党平和創出ビジョン策定
世界は今、戦争による人道危機や核兵器使用リスクの増大など、人間の生命や尊厳を脅かす複合的な危機に直面しており、国際社会の平和と安定へ、日本の果たす役割はこれまで以上に重要だ。
公明党は、「人間の安全保障」の理念に立脚した地雷除去支援やアジア諸国の海上保安職員の能力向上などを長年推進してきたが、地雷除去支援については、今後のウクライナの支援につながるよう、カンボジアや国連と協力して主導的な取り組みを推進すべきである。
また、対話外交が極めて重要な時代だからこそ、欧州諸国を中心に米国やロシアも加盟する欧州安保協力機構(OSCE)をモデルにした対話の常設機関をアジアにもつくるべきと考える。
公明党としても、「戦後・被爆80年」の節目を迎える来春をめどに、こうした平和創出の取り組みを積極的に進めるビジョンを提示したいと考えている。
■立党精神を胸に庶民の声代弁し国民の幸福へ働く
来月、結党60年を迎える公明党は、「大衆とともに」という不変の立党精神を胸に、政治の“はざま”に置かれた「大衆」に光を当て、福祉社会の建設や清潔な政治の実現などを大きく進めてきた。
また、国会議員と地方議員のネットワークを生かし、現場の課題を的確に把握し、迅速な対応で庶民の生活を守ってきた。
60年たった今も、こうした政治姿勢は、いささかも変わることはない。これからも、庶民の声を代弁し、ひたすら国民の幸福のために働く政党であり続けることをお誓いする。
■石破首相らの答弁(要旨)
【石破茂首相】
<政治改革>政策活動費の透明性確保や、政治資金に関する独立性が確保された機関の設置、調査研究広報滞在費の使途の明確化、公開、残金返納については、いずれも政治活動の透明性を高めるものとして重要だ。連立政権合意書でも、これらの課題に取り組むことが明記されている。特に政策活動費については、将来的な廃止も念頭に、そのあり方の検討や透明性の確保に取り組んでいく。
<物価高対策・賃上げ>経済対策を早急に策定し、当面の対応として低所得者世帯向けの給付金や、地域の実情に応じたきめ細かい対応のための重点支援地方交付金をはじめ、総合的な対応を図る。価格転嫁の取り組みや、生産性向上支援など、中小企業の持続的な賃上げを実現するための施策を推進していく。
<子育て・教育>高等教育費について、授業料減免などの拡充を着実に実施に移す。その上で、教育の機会均等や少子化対策の観点から、その効果を見極めつつ取り組む。学校給食費の無償化について、関係省庁が連携し、課題を整理した上で検討する。
<若者・女性活躍>若者の政治参画を促進する各地の先進的な取り組みについて周知普及に取り組む。社会のあらゆる組織の意思決定に女性が参画することを官民の目標とし、達成への指針を定め、計画的に取り組む。
<防災・減災>内閣府防災担当の機能を予算・人員の両面で抜本的に強化するとともに「防災庁」の設置に向けた準備を進める。スフィア基準を十分に踏まえて避難所のあり方を見直すとともに、ベッド・トイレなどの備蓄を支援する仕組みを構築するなど、避難所の環境改善のための取り組みを着実に進める。
<農林水産業>人件費、資材費などの恒常的なコストを考慮した合理的な価格形成の仕組みについて、法制化に向けた検討を進める。
【斉藤鉄夫国土交通相(公明党)】
<地域公共交通の再構築>交通空白の解消などに向けた地域交通のリ・デザイン(再構築)を全面展開し、地域活性化につなげていく。