岐路に立つ日本 針路を問う 共生か排除か 外国人なしに成り立たず、相互理解と譲歩が不可欠/国際基督教大学 橋本直子准教授
岐路に立つ日本 針路を問う
共生か排除か
外国人なしに成り立たず、相互理解と譲歩が不可欠/国際基督教大学 橋本直子准教授
公明新聞2025/09/03 1面より
――先の参院選では外国人政策が争点に浮上したが。
橋本直子・国際基督教大学准教授 本来ならば物価高対策や社会保障制度改革、少子化対策など喫緊の課題に国民が意思を示す貴重な民主的機会だったが、外国人政策が「政争の具」とされ、他の重要課題を凌駕した感がある。
いわゆる「外国人問題」は、これまでもSNS上には真偽不明な情報があふれていたが、あまり正面から議論されてこなかった。背景には、外国人が日本に居住していても「移民」とは認めず、あくまでも「一時的労働者」とみなす姿勢や受け入れ体制の不備が挙げられる。制度面での課題や文化的・歴史的背景の影響もあるが、そもそも外国人市民の権利や義務が日本の政治の場で話し合われることは少ない。
今回、明るみに出た「外国人問題」は、社会の理解不足から拡散された誤報や一部政党による扇動的言説が飛び交い、出入国管理の現状やエビデンス(科学的根拠)に裏付けされていないものばかりだった。
――外国人受け入れへの理解をどう進めるべきか。
橋本 一言に「外国人」と言っても、インバウンドや永住者、中長期在留者、難民など多様であり、きめ細かな施策が求められる。
インバウンドは2019年の3189万人をピークにコロナ禍で25万人まで減少、そこから3年ほどで約3700万人まで回復した。いわば“疑似鎖国”ともいえる状態を経験した後だったので「外国人が突然増えた」との国民感情が増強された。インフラ整備も追いつかず、地域住民がオーバーツーリズム(観光公害)によるしわ寄せを受けているのも事実だ。
外国人には“言わなくても分かる”という日本特有の暗黙のルールは理解されず、違反者には厳正に対処する姿勢を示す必要もある。公正で適正なルールを徹底するためにも、自治体レベルで地域の実情に合った過料・罰則付きの条例を制定し、国籍不問で適用するのも一つの手段だろう。中長期在留者には、ある程度の日本語を習得できるよう、国が責任を持ち、インセンティブ(動機付け)を意識した教育の推進も重要だ。
■社会統合政策にベクトルを
――誰もが安心できる共生社会を築くには。
橋本 少子高齢化が加速する日本では、外国人を排除しては基幹産業も社会保障体制も成り立たない。多文化共生をめざす浜松市など11市町でつくる「外国人集住都市会議」の知見も参考に、社会統合にベクトル(方向性)を向けた共生施策の体制整備や予算措置、国民向けの広報も急務だ。特定技能外国人や難民に対する「生活オリエンテーション」の対象拡大や研修内容も見直してみてはどうだろうか。
日本で異なる文化や価値観を持つ人々と共に暮らす上で、社会の安定と調和を保つための相互理解と一定の譲歩も不可欠だ。表面化した「外国人問題」への不安や認知のゆがみを正すため、どのような有機的な議論につなげるかが問われている。
