プラごみ汚染の防止へ
国際交渉で条約の素案作成
公明新聞2023/11/27 3面より
世界各地で大量に発生しているプラスチックごみ(プラごみ)が、さまざまな環境汚染を引き起こしている。この問題に対処するための条約の策定をめざす第3回政府間交渉委員会(INC)が、13日から19日までケニアのナイロビで開かれ、日本を含む約160カ国が参加した。今回のINCから、条約の策定に向けた交渉が本格化し、条約に盛り込まれる条文案に関する議論が始まった。
■有害化学物質の扱いや生産量制限などを議論
プラごみによる環境汚染は「プラスチック汚染」と呼ばれている。
例えば、レジ袋やペットボトルといった使い捨てのプラごみなどが海に流入する海洋汚染のほか、プラごみが野ざらしのまま放置されていたり、野焼きにされたりすると、プラスチック製品に含まれる有害な化学物質が土壌や大気を汚してしまう。
プラスチック汚染を終わらせる取り組みを各国に促すべく、法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた交渉を進めているのがINCだ。INCは、昨年3月に開かれた国連環境計画(UNEP)の意思決定機関である国連環境総会で採択された決議に基づき、設立された。
日本はペルーやルワンダ、インドと共同でINCの設立を提案するなど、プラスチック汚染に対処する条約の策定に向けた交渉を主導している国の一つだ。
今月開催の第3回INCでは、条約に盛り込まれる条文の「ゼロ・ドラフト」(たたき台)に参加国の提案を反映し、修正する作業が行われた。たたき台をまとめたのはUNEPだ。
UNEPのたたき台は▽1次プラスチックの生産量の制限▽添加剤などの化学物質の扱い▽マイクロプラスチックを使用した製品や使い捨てのプラスチック製品の規制▽漁網などの漁具を含む廃棄物管理――などについて、多様な選択肢を示している。
1次プラスチックとは、原油などから製造された未使用のプラスチックで、回収したプラごみをリサイクル(再生利用)して作られたプラスチック製品と区別される。1次プラスチックの生産量を各国が一律の基準で制限することに対しては、反対する国が多い。
プラスチック製品には、燃えにくくする添加剤や着色剤などの化学物質が使われており、これらの中には、自然環境や人体に悪影響を及ぼすものもある。プラスチック製品に関連する化学物質の生産や使用なども条約の規制対象にすべきか議論されている。
直径5ミリ以下の微細なマイクロプラスチックで、粒子状のものを使用した洗顔料や歯磨き粉などもあり、そうした製品の規制を訴える国も少なくない。
また、プラスチック製の漁網が海に捨てられ、その網に絡まって死んでしまう魚なども多い。漁網などの漁具の廃棄物管理を促進することも重要だ。
今回のINCでは、UNEPのたたき台に参加国の提案を加えて修正し、100ページ以上に上る条文案を作成。これを今後の交渉の素案にすることを決めた。
■日本、40年までに“ゼロ”訴え
経済協力開発機構(OECD)が昨年6月にまとめた報告書によると、現状のプラごみ削減策を続けているだけでは、世界のプラごみの量は右肩上がりで増え続け、2019年の約3億5300万トンから、60年には約10億1400万トンと大幅に増加するという。
プラごみのうち、リサイクルや焼却、衛生埋め立てといった適正な処理がなされたものの比率については、19年の約77%から、60年には約85%に増える見通しとなっている。衛生埋め立ては、土壌汚染などが生じないように工夫してプラごみを地中に埋めるという、途上国で主流になっている方法だ。
問題は、投げ捨てられて放置されていたり、野焼きにされたりするなど不適正に処理されたプラごみで、環境汚染の原因となる。不適正に処理されたプラごみは、19年の約7900万トンから、60年には約1億5300万トンに倍増するという予測だ【図参照】。
今回のINCで、日本は40年までに追加的なプラスチック汚染をゼロにすることを条約の目的として明記すべきだと訴えている。
公明党は18年11月、環境相に対して「日本がリーダーシップを発揮し、国際的なプラスチック対策推進を」と提言するなど、政府の取り組みを強く後押ししている。