公明党
広島市議会議員(西区)
田中まさる

対談 母子手帳誕生から75年 命と健康守る“成長記録”  日本WHO協会・中村安秀理事長×公明党女性委員長・古屋範子副 代表

未分類 / 2023年5月31日

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対談 母子手帳誕生から75年
命と健康守る“成長記録”
日本WHO協会・中村安秀理事長×公明党女性委員長・古屋範子副代表
公明新聞2023/05/28 1面より

 妊娠から出産、子どもの成長までの記録を1冊にまとめた母子健康手帳(母子手帳)が誕生して今年で75年。母と子の命と健康を守るための“日本発”の手帳は、今や世界約50カ国・地域に普及しています。母子手帳が担ってきた役割や、デジタル化など時代に合わせた今後のあり方について、日本WHO協会の中村安秀理事長と、公明党女性委員長の古屋範子副代表(衆院議員)が語り合いました。

■(中村)日本の誇るべきアイデア
■(古屋)時代に応じ電子化を推進

 古屋 中村先生は、海外で母子手帳の普及に尽力してこられましたね。

 中村 1980年代から、JICA(国際協力機構)の専門家として、途上国の保健医療に携わる中で、病気の子どもがいても、出生時の体重などのデータがそろっていないために、適正な診断ができないという状況に直面しました。

 その時に、妊娠時からの母親の記録と子どもの記録を一緒にして、家族の手元に置いておく「母子手帳」が日本の誇るべき“アイデア”であり、子どもの病気の早期発見・治療や母親の健康を守る役割を担っていることに気が付きました。

 94年にインドネシアで初めて、海外版の母子手帳の配布が実現し、東南アジアやアフリカなどの各地で、母親や乳幼児の命を守るツールとして広がっています。

 古屋 素晴らしい取り組みですね。

 中村 インドネシアでは今でも、母子手帳の裏表紙に「インドネシアの保健省とJICAで初めて母子手帳を作った」という記録が残っています。ハード面だけでなく、こうした地域社会に浸透していく国際貢献の大切さを痛感します。

 古屋議員は日本の母子手帳の充実に携わってこられましたね。

 古屋 日本では、10年くらいのスパンで母子手帳の大幅な改訂が行われてきました。前回の改訂の時に、胆道閉鎖症の子どもを持つお母さんから、便の色の異常を知ってもらうことが、早期発見につながるという話を聴き、母子手帳に便色の「カラーカード」を加えることができました。

 今年度の改訂では、大きな変化としてデジタル化に向けた検討が進みました。

 中村 必要な変化です。私が携わったパレスチナの母子手帳は、10年以上前に作成されたのですが、既にアプリ版と併用されています。

 成人後も自分の健康状態をしっかり管理でき、個人情報に配慮しながら、ビッグデータとして、国全体の健康のための資料になるなど、デジタル化にはさまざまな可能性とメリットがあります。

 古屋 公明党は2020年の菅義偉首相(当時)への提言に「母子手帳の電子化」を盛り込み、全国の地方議員も母子手帳アプリの普及を進めるなどネットワークの力を生かし、時代に応じた取り組みを推進しています。

 中村 そうした新しい取り組みには、政治の力が欠かせません。

 タイの母子手帳などは、全ページカラーで、動画につながる2次元コードを盛り込むなど、大変充実しています。

 タイでは少子化が課題となっており、妊娠・出産する女性に政府が最初に贈る「プレゼント」として、母子手帳が位置付けられているんです。

 日本でも子どもを産み育てる時に、「母子手帳が受け取れてうれしい」「活用しよう」と思えるよう、国として内容の充実に取り組んでもらいたい。

 また、社会の多様化が進む中で、“誰一人取り残さない”よう配慮していく必要もあるでしょう。例えば、一般的な母子手帳は、乳幼児の体重が1キロ以上からしか記録できない。

 古屋 そうした声も公明党には届いており、早産などで小さく生まれた赤ちゃんの成長記録を書き込める「リトルベビーハンドブック」を各地で推進するなど、当事者の声に寄り添った形で拡充してきました。現在、37道府県でこうしたハンドブックの作成が進んでいると聞いています。

■相談支援などの体制整備も重要

 中村 すごいことです。併せて、母子手帳はあくまで情報を提供・集約するツールであり、実際には、そこからつながる医療や相談窓口などの体制が整備されているかが重要になります。

 古屋 子育て支援については、わが党として昨年末、「子育て応援トータルプラン」を発表しました。この中から現在、これまで手薄だった0~2歳児への支援として、多様な悩みに寄り添う“伴走型”の相談支援と妊娠・出産時の経済的支援が始まっています。

 中村 母子手帳の国際会議でも“人生最初の1000日を守るための母子手帳”というのが合言葉になっています。ちょうど、妊娠から2歳の誕生日までの期間を健康に過ごすことができれば、その後、順調に成長していける可能性が高い。

 この年代への支援が強化されたことは、大変心強く感じます。

 古屋 ありがとうございます。

 中村 世界で作成されている母子手帳は、日本のアイデアを取り入れてはいますが、中身は国によって全然違います。

 それは「母と子の命と健康を守る」という目的の中で、時代や文化に合わせて知恵を絞っているからです。日本でも、母子手帳をどんどん良い物に変えていってもらいたい。そうした面でも公明党に期待しています。

 古屋 子どもの幸せを最優先する社会は、誰もが暮らしやすい社会でもあります。子どもが健やかに育つための母子手帳の拡充に、これからもしっかり取り組みます。

 なかむら・やすひで 1952年生まれ。東京大学医学部卒業。小児科医。国際協力機構(JICA)などで途上国の保健医療に従事。大阪大学名誉教授。国際母子手帳委員会代表。著書に『海をわたった母子手帳』(旬報社)。

■開発途上国など約50カ国に普及

 日本の母子手帳は、戦後間もない1948年、それまで使われていた「妊産婦手帳」と「乳幼児体力手帳」が一つの手帳に統合されたことが始まりです。以来、母子の命と健康を守るために欠かせないツールとして、改善を重ねながら活用されてきました。

 日本で生まれた母子手帳は、国際協力機構(JICA)の尽力によって開発途上国などにも普及。世界の約50カ国・地域で使われています。民族性に配慮した表紙のデザインなど、国によって特色があります。