山口代表が参院代表質問
少子化対策最優先で
0~2歳児支援、恒久的実施を/首相「継続へ安定財源を確保」
公明新聞2023/01/28 1面より
参院は27日の本会議で岸田文雄首相の施政方針演説などに対する各党代表質問を行った。公明党の山口那津男代表は「急速に進む少子化は社会に深刻な影響を及ぼす」と指摘し、最優先で取り組むよう主張。長引くコロナ禍や昨年来の物価高、終結が見通せないウクライナ情勢など難局の打開に向け、「公明党は生活現場の声をいち早く政府に届け、国民生活の向上と活力あふれる新しい日本の構築へ全力を挙げる」と強調した。=3面に質問と政府答弁の要旨
【経済対策・地域活性化】山口代表は、1月使用分から実施される電気・都市ガス料金の負担軽減策について「着実に実施するとともに、今後の動向を注視し、必要に応じて予備費を活用するなど機動的な対策を」と訴えた。また、デジタル技術で地域活性化を図る「デジタル田園都市国家構想」の総合戦略を踏まえ、地域の実情に応じた施策で成果を上げられるよう、きめ細かな支援が重要だと力説した。
【子育て・教育】0~2歳児への支援充実に向けた妊娠・出産時の計10万円相当の給付や伴走型相談支援について、山口代表は「恒久的に実施されることを担保するため法律に位置付けるべきだ」と主張。岸田首相は「今後も継続して実施していくことが重要であり、安定財源を確保しつつ、着実な実施に努める」と応じた。
また、山口代表が若者の経済的基盤の強化を訴えたのに対し、岸田首相は「希望する若者の正社員化支援や同一労働同一賃金の順守の徹底に取り組む」と述べた。
【防災・減災】山口代表は、自然災害から命と財産を守るため、予報・警報の高度化が必要だと強調。その上で、高度化された予報を活用できる人材養成の重要性を指摘した。斉藤鉄夫国土交通相(公明党)は「高度化された予報を基に避難指示の発令について助言ができる気象防災アドバイザーの育成に努める」と述べた。
■対中韓対話・交流を促進
【外交・安全保障】山口代表は防衛費の財源確保を巡って、歳出改革などの努力を最大限に行った上で、不足分を税制措置で賄うとの政府の方針に触れ「なぜ税制で対応するのか。国民の理解を得るための明確な説明が必要だ」と強調。反撃能力の保有についても丁寧な説明を求めた。
岸田首相は、反撃能力保有に関して「ミサイル防衛による迎撃と同様、先制攻撃とはならず、専守防衛の範囲内で運用するものだ」と答弁した。
さらに山口代表は、日韓・日中の外交に関連し「胸襟を開いた対話と交流を一層進めてほしい」と主張。岸田首相は、韓国、中国との関係改善にも取り組むと述べた。
■広島サミットで被爆の実相広めよ
【核廃絶への取り組み】山口代表は5月に広島で開催される先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に合わせて「次代を担う政治リーダーや若い世代の人々に、被爆の実相に直接触れる機会が実現されることを強く望む」と訴えた。また、今年の核兵器禁止条約の第2回締約国会議に当たり、日本のオブザーバー参加を要請した。
■丁寧な首相答弁、予算委で深掘り
公明党の山口那津男代表は27日、参院本会議での代表質問後、国会内で記者団に対し、子育て支援策の充実や防衛力強化などを巡る岸田文雄首相の答弁について「丁寧な答えをしていただいた」と評価した。
その上で「今回の答弁によって、今後の予算委員会などで議論をより深掘りしていくための足掛かりが得られた。次の委員会質疑につながることを期待したい」と語った。
山口代表の参院代表質問(要旨)
2023/01/28 3面
■(物価高騰対策)予備費も使い機動的に
昨年12月の消費者物価指数は4%と41年ぶりの高水準を記録した。本年も4月にかけて電気料金や7000品目を超える飲食料品の値上げが予定されている。電気・都市ガス料金については、本年1月から9月末まで、標準的な家庭の負担を4万5000円程度、軽減する支援策が始まる。着実に実施するとともに、今後の動向を注視し、必要に応じて予備費を活用するなど機動的な対策を実行してほしい。
その上で、「物価上昇に負けない賃上げ」こそ真の物価高騰対策だ。日本経済が低価格・低成長のサイクルから脱するカギであり、断じて成し遂げなければならない。
中小企業の賃上げが大きな課題だ。中小企業庁の調査によれば、コスト上昇分に対する価格転嫁率は平均46・9%で、全く価格転嫁できていない企業は約2割に及ぶなど、原材料高が中小企業の利益を圧迫している。取引の適正化に向けた一層の取り組みが必要だ。
また、DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)を通じた生産性向上や成長力の強化も重要だ。
先日、福岡県の商工会議所の皆さまから話を伺う中で、価格転嫁を進めるために、元請けと下請け企業の共存共栄を図るパートナーシップ構築宣言の実効性を高めることや、中小企業の生産性向上に役立つ各種補助金の継続・拡充などの要望を頂いた。既に補助金や税制などによるさまざまな支援策を用意しているが、今後はこれらを活用し、経営人材への支援など企業自身の変革力を高める取り組みを後押ししていくことが重要だ。
■中小企業
本格的な経済再生に向け、日本企業の99%を占める中小企業の活力を引き出し、その流れを地方の隅々にまで波及させるという視点が重要だ。
具体的には、コロナ禍などで傷んだ中小企業の経営状態を回復させる環境整備が必要だ。
事業承継による世代交代やM&A(合併・買収)による規模拡大で企業の成長を促すとともに、GXやDX分野への投資促進、イノベーションを創出するスタートアップ(新興企業)の後押し、円安を好機として輸出を展開しようとする中小企業に対する、初期計画から販路拡大までのきめ細かな伴走支援など、ピンチをチャンスに変えようとする中小企業を強力に支援すべきだ。
厳しい経営環境の中で経営者の交代が難しく、黒字廃業の比率が約6割を占める状況も続いている。こうした事業の世代交代やスタートアップの創業、思い切った新規事業展開といった前向きな挑戦が進まない要因の一つとして、中小企業の経営者や起業家が金融機関から融資を受ける際の経営者保証の問題も指摘されている。制度の早急な見直しが必要だ。
■(地域活性化)デジタルの力で課題解決
政府は昨年末、デジタルの力で地域の社会課題を解決し、地方創生を加速化する「デジタル田園都市国家構想」の総合戦略をまとめた。地方が、地域の実状に応じた施策に主体的に取り組み、具体的な成果を上げられるよう、きめ細かな支援を行うことが重要だ。
公明党は、地方議員が地域の最前線で住民のニーズを吸い上げ、国会議員や他地域の議員とも連携して、さまざまな課題解決に取り組んでいる。
最近では、オンライン診療の環境整備、コミュニティーバスやデマンド交通などの移動支援、地域資源を生かした脱炭素やエネルギーの地産地消などを推進してきた。大事なことは、その地域にしかない魅力や持ち味を引き出し、磨き上げ、住民サービス向上や地域活性化につなげていくことだ。
■観光、農林水産
成長戦略の柱であり、地方の基幹産業として重要な役割を担う観光産業については、持続可能で地域活性化の好循環を創出できる環境整備が重要だ。その観点から高齢者や障がい者など、あらゆる人が観光を享受できるよう、施設などのバリアフリー化などのハード対策や、筆談対応などのソフト対策が求められる。
特にソフト対策では、バリアフリー対応やその情報発信に積極的に取り組む観光施設などに対し認定マークを交付する、心のバリアフリー認定制度がある。政府は今年度末までに新たな観光立国推進基本計画を策定するとしているが、同認定制度の普及促進をはじめ、あらゆる人が観光を楽しめる「ユニバーサルツーリズム」の実現へ、ハード・ソフト両面の環境整備を盛り込んでほしい。
地域の活性化へ、未来の農林水産業の構築に向けた大胆な投資が不可欠だ。各地域には、世界に誇れる魅力的な農産物が数多く眠っている。これらを旺盛な海外需要に向けて輸出し、生産者の所得拡大につなげられるよう支援を強化すべきだ。
公明党は、各自治体で有機農産物の生産から消費まで一貫して取り組む「オーガニックビレッジ」の拡大が重要と考える。現在、55市町村で有機農業の産地形成を予定するが、さらに拡大できるよう生産者や自治体の支援を拡充するとともに、人材育成、技術開発などを強力に進めるべきだ。
■(子育て・教育)経済的支援、1、2歳にも
公明党は、結婚・妊娠・出産から子どもが社会に巣立つまで、ライフステージに応じた支援策を「子育て応援トータルプラン」として取りまとめ、昨年11月に発表した。先行する形で、妊娠期から0~2歳児期に対して、身近で寄り添って相談に乗る伴走型相談支援と、妊娠時・出産時で合計10万円分の経済的支援のパッケージが実施される。今後も恒久的に実施されることを担保するため法律に位置付けるとともに、1歳、2歳の時点でもそれぞれ経済的支援を行うよう、財源を確保しつつ拡充すべきだ。
0~2歳児を巡っては、「第2子以降から」など保育料無償化の段階的な対象拡大や、専業主婦家庭など約6割を占める未就園児も保育サービスを定期的に利用できる環境整備、育児休業給付の対象外の離職者・自営業者・フリーランスに対する給付創設など、誰もが安心して子育てできる支援の充実が求められる。
今年4月には、こども家庭庁が発足する。子どもの視点に立った司令塔機能を存分に発揮させ、子ども政策を政治のど真ん中に据えた社会を実現すべきだ。
愛知県新城市では、若者議会を設置し、そこで提案された政策が実現した事例や、滋賀県では、選ばれた子ども議員が子ども県議会で質問を行う事例など、子どもや若者の声が、政治に反映される取り組みが進められている。未来の担い手である子どもたちにとって、こうした経験は大きな力になる。
自ら意見を表明することが難しい子どもたちをはじめ、多様な意見を受け止め、政策に反映していくことは極めて重要だ。意見を言いやすい環境づくり、聴く側の姿勢の改革とともに、子どもの声を関係機関などにつなげるファシリテーター(進行役)やサポーターなどの存在も求められる。
昨年、園児に対する暴行により、保育士が逮捕されるという、あり得ない事件が発生した。
政府は全国の保育現場の実態調査・検証を踏まえて、保育士の研修体制の強化やマニュアルの改善などの取り組みを進めるとともに、保育の質の向上や現場の負担軽減に向けて、人員配置の拡充やデジタルを活用した業務改善など総合的な再発防止策を取りまとめ、早急に実行すべきだ。実態を踏まえた保育士の配置基準の見直しも必要だ。
■不登校
文部科学省の調査では2021年度の小中学生の不登校は約24・5万人。このうち「学校内外で相談・指導等を受けず長期化している児童生徒」が約4・6万人おり、どこの支援にもつながれず、孤立状態に陥っていることが強く懸念される。
スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置の拡充、児童生徒や保護者が専門家に相談できる「オンラインカウンセリング」の開設を急ぐべきだ。
また、生徒に合わせた学びができる不登校特例校を都道府県・政令市に1校以上設置するための財政支援とともに、分教室型の開設事例などを示し、自治体の早急な取り組みを後押ししてほしい。不登校は、さまざまな理由で誰にでも起こり得るもの。社会が温かく見守るとともに、国は多様な居場所、多様な支援、多様な学びを提供し、大切な子どもたちのために、しっかりと予算をつけて取り組むべきだ。
■若者に安定した雇用を
働き方が多様化する中、雇用形態の違いによるセーフティーネット(安全網)の格差を解消する取り組みが重要となる。
一方で、103万円、130万円といった「就労の壁」が依然として課題となる。税制上は既に「103万円」の壁への対応がなされ、社会保険の適用拡大も順次進められているが、実際は、こうした壁を意識した就業調整が行われている。社会保険に加入するメリットなどを、経営者・労働者の双方に丁寧に周知することを含め、働きたい人が就業調整を意識せず働けるよう、もう一段の取り組みが必要だ。
フリーランスで働く人については、契約や報酬を巡るトラブルを防ぎ、安心して働けるように、取引を適正化する法律を早期に制定すべきだ。
また、がん患者が治療と仕事を両立できるよう、当事者の実態を把握しながら、テレワークなど柔軟な勤務制度や休暇制度の導入など支援体制の強化を進めてほしい。
30代半ばまでの男女の8割強は結婚の意思があるにもかかわらず、実際、結婚しているのは男性のうち正規雇用では約6割、非正規では約2割にとどまる。雇用が不安定で家族が持てなくなっている状況を改善し、若者の経済的基盤を強化することが少子化対策の観点からも極めて重要だ。
■(防災・減災)高度化する洪水予報を活用できる人材必要
自然災害の頻発化・激甚化や過去に例のない災害の発生に対応し、国民の命と財産を守るため、予報・警報の高度化が必要だ。公明党の主張により、線状降水帯の予測精度の向上を進めるとともに、国土交通相が委嘱した気象防災アドバイザーの採用により、地域の実態に合ったきめ細かな気象予測などの情報提供が行われるようになった。
さらに政府は、今国会に、都道府県と連携した洪水予報の高度化や、民間事業者による局地的な予報の提供などを可能とする改正法案を提出する予定と承知している。これにより、河川の氾濫警戒情報の発表を3時間早められることや、局地的な予報の精度向上などの効果が期待されている。高度化された予報をしっかりと活用できる人材を養成し、予報の受け手の側へ配置することもますます重要となる。
■(外交・安全保障)各国首脳を原爆資料館へ
厳しく複雑な安全保障環境に対処するため、政府は昨年末、今後の外交・防衛政策の指針となる国家安全保障戦略など三つの文書を改定した。
国民の命と平和な暮らしを守るためには、外交力の強化とともに、その裏付けとなる防衛力・抑止力の強化が必要だ。
その財源確保に向けては、歳出改革などの努力を最大限に行った上で、それでも足りない部分を、税制措置で賄う方針が首相から示された。「物価上昇を超える賃上げが必要」とする中、なぜ、税制で対応するのか。国民の理解を得るための明確な説明が必要だ。
今回の3文書改定では、これまで迎撃に徹してきたミサイル防衛だけでなく、相手国の領域に届く反撃能力を抑止力として保有することが盛り込まれた。このことを含め、首相は、「日本の安全保障政策の大転換」と述べる一方で、「専守防衛の堅持、平和国家としての歩みを、いささかも変えるものではない」と説明している。迎撃は先制攻撃にならないと専守防衛を理解してきた国民も多い中で、なぜ、そう言えるのか、国民に分かりやすく説明してほしい。
■G7広島サミット
本年、被爆地・広島でG7サミット(先進7カ国首脳会議)が開催される。かつてなく核の脅威が高まっている今、日本は、唯一の戦争被爆国として核廃絶への運動に立つ権利と資格がある。核廃絶の機運を高めるために、サミットに併せ、バイデン米大統領はじめ各国首脳による原爆資料館などの訪問、次代を担う政治リーダー、若い世代の人々に被爆の実相に直接触れる機会が実現されることを強く望む。
先週、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)のロバート・フロイド事務局長と会談した。核実験を全面的に禁じるCTBTは未発効の条約ではあるが、核実験が行われていないか監視する国際監視制度の整備も進み、実際に世界における核実験の実施国や実施数が激減し、抑止効果も出ている。このように、核軍縮・不拡散体制の強化につながる実践的な取り組みが重要だ。
公明党は、本年行われる核兵器禁止条約の第2回締約国会議へのオブザーバー参加も引き続き求める。G7サミットの機会を生かし、NPT(核兵器不拡散条約)、核禁条約に基づく取り組みを連携させて相乗効果を生み出しながら、さらなる取り組みを進展させていくべきと考える。
■日韓・日中関係
首相は先般、フランス、イタリア、英国、カナダ、米国を訪問し、それぞれ首脳会談を行った。積極的な対話外交を高く評価する。引き続き、胸襟を開いた対話と交流を一層進めてほしい。
公明党としても、昨年末に韓国を訪問し尹錫悦大統領らとの会談を通じて、日韓関係改善への意欲と懸案解決への熱意を感じ取るとともに、安全保障面で連携を強化することの重要性を確認することができた。与党として政府の取り組みをしっかりサポートしていく。
また昨年11月の日中首脳会談では、「建設的かつ安定的な日中関係」を構築していくことが確認された。中国への懸念事項は率直に主張するとともに、不測の事態が生じないよう、政府、防衛当局間の信頼醸成のため、安全保障対話をはじめ、外交的な取り組みに努めていくことが大切だ。
■海洋プラごみ削減せよ
SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた取り組みとして、プラスチックごみの排出削減は喫緊の課題だ。中でも海洋プラスチックごみによる経済損失額は、世界全体で年間約130億ドルに上ると推計され、現在のペースでプラごみの海洋流出が続くと、50年には魚の重量をプラスチックの重量が上回るという衝撃的な試算もある。
昨年11月、海洋プラスチック汚染対策の条約策定に向けた第1回政府間交渉委員会が開催された。25年以降の新条約の採択に向けて、日本が高い知見と豊富な経験を生かし、議論を積極的にリードしていくべきだ。
外国人技能実習制度は、開発途上国などの人々が日本で働きながら知識・技能を習得し、帰国後母国の経済発展に役立ててもらう制度だが、実施機関によっては人手不足を補う安価な労働力として活用されるなど、目的と実態の乖離が指摘されている。転籍や管理監督のあり方など、実習生の立場での見直しを進め、賃金未払いや長時間労働などの問題に対しては、実習生が相談しやすい体制を整備すべきだ。
他方、外国人材を確保することを目的とした特定技能制度は、19年の施行後、程なくして、コロナ禍により2年間の入国制限があったことから、運用状況のさらなる把握と分析が必要だ。