「マイナカードを健康保険証に 患者、医療機関ともに利点」(公明新聞2022/02/24 3面より)
12桁のマイナンバー(個人番号)が記載され、公的な身分証明書となり、行政手続きのオンライン申請などにも役立つ「マイナンバーカード(マイナカード)」。これを健康保険証として利用する取り組みが昨年10月から本格的に始まっている。2022年度末までに、ほぼ全ての医療機関や薬局で対応できるようにするという国の目標に合わせ、各地で導入が進む。どんなメリットがあるのか、探った。
■医療の質向上や事務負担軽減
医療機関で診療を受ける場合、初診などの際には健康保険証の提示が求められるが、東京都品川区のNTT東日本関東病院の初診窓口には、マイナカードを健康保険証として利用するためのカードリーダーが設置されている。
患者はカードをセットし、顔認証かカード取得時に登録した4桁の暗証番号の入力により本人確認を行うことで、受け付けが完了する。顔認証では、カードリーダーに装備されたカメラで患者の顔を撮影し、カードの顔写真データと照合して本人確認する。
なお、マイナカードを健康保険証として利用するには登録が必要だが、医療機関にカードを持参すれば、カードリーダーでの簡単な操作で登録できる。マイナンバーの個人向けサイト「マイナポータル」などでの事前登録も可能だ。
同病院では、マイナカードの保険証利用により事務負担やミスが減ることを期待している。初診の患者の氏名や住所、保険資格などを手作業で入力するには、患者1人当たり10分ほどかかるが、カードを利用すれば瞬時に自動入力される。手入力で発生していた保険資格の誤りによる診療報酬明細書(レセプト)の修正も、カードを利用すればなくなる。
患者にも、医療の質向上など利点がある。マイナポータルで、過去に処方された薬剤や一部の健診結果の情報を患者本人が閲覧できることに加え、本人が同意すれば医師や薬剤師も閲覧できるため、より正確な情報による質の高い診療・薬剤処方につなげられる。今夏からは、受診した医療機関や手術歴、透析などの情報の閲覧・共有も順次可能になる。
■「高額療養費」、簡便に利用可能
高額療養費制度の利用も簡便になる。これまで高額な医療費がかかる場合、一旦、窓口で限度額を超える費用を支払った上で、払い戻しの申請をするといった手続きが必要だった。マイナカードを利用すれば、医療機関が本人の同意を得た上で限度額を照会できるため、それを超える窓口での支払いが不要になる。
また、国民健康保険や後期高齢者医療制度の加入者は、通常1~2年で保険証の定期更新が必要だったが、マイナカードを保険証として利用するようになれば更新が不要になる。
■病院・薬局の8割が準備/政府、装置の提供など導入支援
ただ、マイナカードの保険証利用は、まだ十分に広がっていない。1日約1500人の外来患者が訪れるNTT東日本関東病院では、昨年9月の運用開始から今月10日までの利用者は62人だ。
同病院の担当者は、利用できる病院などがまだ少ないことに加え、カードを持ち歩くこと自体に情報漏えいなどの不安を感じる人もいると指摘。「患者の半分程度がカードを利用すれば事務負担軽減などの効果が期待できる。そのためには多くの医療機関での体制整備が必要だ」と述べる。
厚生労働省は、22年度末までに、おおむね全ての医療機関や薬局での運用開始をめざし、カードリーダーの無償提供や導入にかかる費用の補助を行っている。
13日現在、運用を開始した施設は全国で2万7296と全体の11%にとどまるが、カードリーダー無償提供の申し込みなど導入準備を進める施設は全体の56%。病院・薬局に限ると約8割に上る。厚労省の担当者は「新型コロナの影響などで導入が遅れている施設もあるが、22年度中には多くの施設で利用が可能になる」と見通しを示す。
なお、健康保険証の利用登録を行ってもマイナカード自体に患者情報が記録されるわけではない。総務省などは、マイナンバーが他人に知られることで関連する全ての情報が漏えいすることはないとして、安全性も強調している。
■利用登録でポイント(7500円分)付与/公明推進、6月開始へ
マイナカードを健康保険証として利用する登録で7500円分のポイント付与!――。これは、公明党が推進した「マイナポイント第2弾」の一環で、今年6月ごろからスタートする。既に登録を行った人も対象。災害時などの給付金を迅速、確実に受け取れるようにするための公金受取口座の登録(7500円分)と、先行してスタートしているマイナカードの新規取得(5000円分)を合わせて、最大2万円分のポイントが受け取れる。
同事業については公明党が、マイナカードの普及策として、昨年の衆院選で公約に掲げ、政府への提言や国会質問を通じて、実現に道筋を付けた。