「ズバリ聞きます!『核兵器禁止条約』発効へ答える人=党核 廃絶推進委員会座長(参院議員) 浜田昌良さん」(公明新聞2021/01/ 10 3面より)
「ズバリ聞きます!『核兵器禁止条約』発効へ答える人=党核廃絶推進委員会座長(参院議員) 浜田昌良さん」(公明新聞2021/01/10 3面より)
あらゆる核兵器の開発や実験、保有、使用などを許さず、核で威嚇することも禁止する「核兵器禁止条約」が、今月22日に発効します。同条約の意義や日本政府の立場、公明党の取り組みなどについて、党核廃絶推進委員会座長の浜田昌良参院議員に聞きました。
■Q 条約のポイントを教えて
■A 被爆者の思いを形にした全面禁止へ初の国際規範
アスカ 核兵器禁止条約の意義を教えてください。
浜田 この条約は、被爆者の核廃絶に向けた並々ならぬ思いが形になったものです。条約の前文に「hibakusha」と明記されているのは象徴的です。
もう一つは、核兵器の全面禁止に関する初めての国際規範であるということです。第1条には、核兵器の実験、生産、保有だけではなく、「使用する」と威嚇することも禁止しました。この義務は核保有国のみならず、非保有国にもこれらの行為の勧誘などが禁止されます。こうした禁止行為は、自国が核攻撃を受け、存亡の危機に陥っているような場合でも適用するという踏み込んだ内容になっています。このため実際に核兵器の脅威に直面している国と、そうではない国によって態度が二分されてしまう条約だとも言えます。
アスカ 日本の立場は?
浜田 政府は「核廃絶」というゴールは共有するものの、条約に署名・批准はしないという立場です。
アスカ なぜですか?
浜田 理由は二つあります。まず、核保有国が参加しないと表明しているからです。保有国が核兵器を減らさなければ廃絶に至りません。実現性に疑問があるとしています。
次に、日本を取り巻く厳しい安全保障環境が挙げられます。例えば北朝鮮は核保有を宣言しており、中距離ミサイルは数百発あるとされています。いつ、どこから飛んでくるかも分かりません。そうした現実に日本の防衛力だけでは対処できず、米国に頼らざるを得ません。長期的には核抑止に代わる解決策を模索すべきですが、現状では日本は米国の核抑止力を否定できないのです。こうした背景もあり、日本は核兵器禁止条約に署名・批准はできないという立場なのです。
■Q 公明党の取り組みは
■A 広島、長崎で締約国会合開催など政府に働き掛け
アスカ 条約の課題は?
浜田 まずは条約制定を巡って深まった、核保有国と非保有国の溝を埋めなければなりません。2015年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、中東の非核化問題などを巡る核保有国と非保有国の対立で決裂しました。その後、非保有国は合意形成よりも多数決による核廃絶に関する作業部会を設置し、核保有国の理解が得られないまま核兵器禁止条約の制定に至った経緯があります。
アスカ NPTと核兵器禁止条約の関係について。
浜田 相互補完的な関係をめざすべきです。禁止条約によって核抑止力に期待する国が減れば、核兵器の役割は小さくなり、NPTの核保有国も核軍縮がしやすくなります。そうすれば禁止条約への加盟国も増え、条約の強化につながります。こうした理解を広げ、核廃絶に向けた国際協調機運を再形成しなければなりません。
アスカ 公明党の取り組みは?
浜田 核兵器のない世界に向けた何らかの法的枠組みが必要だと主張して政府を動かし、核兵器の非人道性の署名・決議などを推進してきました。核保有国と非保有国、有識者らによる「賢人会議」の広島、長崎での開催をリードしたほか、山口那津男代表が歴代の米国大使らに大統領の広島訪問を要請したことで、16年5月、オバマ氏の広島訪問が実現しました。
公明党は大局的観点から核兵器禁止条約を評価しており、政府に対して締約国会合へのオブザーバー参加の早期表明や、同会合などの広島、長崎での開催を訴えています。今後も核廃絶への橋渡し役を担い、国際社会の取り組みをリードするよう政府に働き掛けていきます。