「素顔 在来野菜で地域と農家を元気に 令和2年度文化庁長 官表彰を受賞したイタリアンシェフ 奥田政行さん」(公明新聞2020/ 12/20 3面より)
「足下を掘れ、そこに泉あり」
ドイツの哲学者ニーチェの言葉で、好きな言葉です。そんな言葉を思わせる方が、以前、TV番組『情熱大陸』で、「シェフが奏でる料理をもとめに世界そして日本全国から毎日お客様が集まる」と紹介された山形県の庄内平野にあるイタリア料理店「アル・ケッチァーノ」の奥田政行シェフです。
2006年にイタリア・スローフード協会国際本部から「世界の料理人1000人」に選出。2016年にイタリアミラノ世界野菜料理コンテスト The Vegetarian Chance 世界3位。
SDGsのエシカル消費の観点からも地産地消の在来野菜を使ったイタリア料理は、魅力が満載で、私も山形に住んでいたとき、小学校時代の恩師の来県時に、「アル・ケッチァーノ」を初訪問し、食べたことのない在来野菜と美味しさに感動したことが懐かしい思い出です。
奥田政行シェフは、在来作物と種を守り継ぐ人々を描いたドキュメンタリー映画『よみがえりのレシピ』にも出演されています。
その奥田政行シェフの記事です!
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「素顔 在来野菜で地域と農家を元気に 令和2年度文化庁長官表彰を受賞したイタリアンシェフ 奥田政行さん」(公明新聞2020/12/20 3面より)
山形県庄内地方から国内外の料理界へ新風を送る「アル・ケッチァーノ」のオーナーシェフ。店名はイタリア語と思いきや庄内弁で「そういえば、あったわね」の意味。
2000年に鶴岡市で店をオープン。2年後、県内で無登録農薬が使用され、県産野菜に風評が流れたことが転機となった。「農薬の多用は戦後から。それ以前の野菜なら農薬はほとんどいらないのでは」。“大事なことは足下にある”と地元の在来野菜に着目した。
例えば江戸時代から焼き畑栽培されてきた「藤沢カブ」。市場で消滅していたが「藤沢カブと庄内ブタのグリルの焼き畑仕立て」とすると人気を集めた。「作物は土、水、風、光で育つ」と地質学も研究し、学者、生産者と「平田赤ネギ」や「カラトリイモ」など絶滅寸前の在来野菜を次々とブランド化。その個性を引き出したイタリア料理は、新たな潮流となる。
次なる目標は「日本産ワインを世界の食中酒へ、国産米を世界の食卓に」広げること。その一手は、しょうゆの代わりに世界各地の塩、オリーブやナッツなど多彩な香りのオイルで素材の持ち味を引き出す「オイル寿司」。東京五輪で訪れる外国人観光客らに日本のコメのおいしさと食文化を伝えるのが狙い。「輸出拡大につなげ、稼げて後継ぎがいる元気な農業」とする壮大な夢だ。
「食べる人が心を満たし、生き物、生産者、大地へ感謝してもらえれば」。一皿一皿に思いを込めて厨房に立つ。(又)
1969年、山形県鶴岡市生まれ。2006年スローフード協会国際本部より「世界の料理人1000人」に選出。
「成立した生殖補助医療法 女性の健康、子の福祉守る 基本 理念示し、親子関係も規定/党PT座長 秋野公造参院議員に聞く 」
「成立した生殖補助医療法 女性の健康、子の福祉守る 基本理念示し、親子関係も規定/党PT座長 秋野公造参院議員に聞く」(公明新聞2020/12/28 1面より)
人工授精や体外受精などの生殖補助医療について基本理念を法定化するとともに、第三者の精子または卵子を用いた生殖補助医療により生まれた子の親子関係を定める生殖補助医療法(議員立法)が、先の臨時国会で成立した(12月4日)。同法の作成に携わり、筆頭発議者を務めた公明党生殖補助医療に関する法整備等検討プロジェクトチーム(PT)座長の秋野公造参院議員に、同法の意義やポイントを聞いた。
――立法の背景は。
秋野 近年、生殖補助医療の技術は日進月歩で進展している。しかし、同医療の定義も、共有すべき基本理念も法定化されておらず、女性の健康や生まれてくる子どもの福祉がないがしろにされる恐れが指摘されていた。
また、第三者の精子または卵子を用いた生殖補助医療により生まれた子の親子関係を定めた法律がなかった。このため、生まれた子の親が「精子または卵子を提供した者」なのか、「出産した女性やその夫」なのか不安定な実態もあった。
今回の法律は、これらの課題を解決するものだ。
――法律のポイントは。
秋野 生殖補助医療の定義を定めるとともに、基本理念として「女性の健康の保護」「同医療で生まれる子どもへの必要な配慮」などを明示し、国や医療関係者の責務も規定した。これらは、同医療を適切に提供する根拠となる。
さらに、第三者の精子または卵子を用いた生殖補助医療により生まれた子の親子関係を安定化させるため、「出産した女性を母」「生殖補助医療を受け、懐胎することに同意した夫は嫡出(メモ)を否認できない(=父)」とした。
――今後の取り組みは。
秋野 残された課題として、子が精子または卵子を提供した者の情報を知る「出自を知る権利」や、「代理懐胎」などがある。同法では、付則で2年をめどに検討すると定めており、今月9日には超党派で議論を進める議員連盟も発足した。今後は他の制度との整合性も重視しつつ、合意できた項目から順次、法改正を行うことも考えられる。
■公明が合意形成リード
――公明党が果たした役割は。
秋野 生殖補助医療を巡っては、政府内でも20年近く前に法制化の動きがあったが、議論がまとまらず見送られた経緯がある。公明党は識者や当事者と意見交換し、不妊で悩む夫婦や生まれてくる子どものためにも法整備が必要との観点から、2014年に法案を作成し、自民党に提示。両党の意見を反映した与党案を16年にまとめた。その後、野党にも説明を重ねた結果、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会などの賛同を得て、今回、成立させることができた。
今後の検討課題でも議論をリードし、より丁寧な合意形成に努めたい。
(メモ)嫡出・・・法律上の婚姻関係にある夫婦の間に子どもができること。
広島市:新型コロナウイルス感染症を疑うとき「風邪かな?」 と感じたらまずお電話を!
広島市では、新型コロナウイルス感染症を疑うとき「風邪かな?」と感じたらまずお電話を!と発信しています。
広島市の新型コロナウイルス感染症に関する症状や受診方法、不安な事などの相談にお答えする24時対応のコールセンター(積極ガードダイヤル)は下記になります。
◆【広島市】新型コロナウイルス感染症の電話相談窓口:コールセンター(積極ガードダイヤル)
電話:082-241-4566(全日24時間対応)
※新型コロナウイルス感染症の検査(PCR検査等)については、医師が個別に判断します。
◆広島市HPより:新型コロナウイルス感染症の相談窓口
https://www.city.hiroshima.lg.jp/site/korona/140558.html
◆厚生労働省:新型コロナウイルスに係る電話相談(コールセンター)
・電話:0120-565653 (フリーダイヤル)
・受付時間 :9時00分~21時00分 (土日・祝日も実施)
※聴覚に障害のある方をはじめ、電話での御相談が難しい方
・FAX:03-3595-2756
・メール:corona-2020@mhlw.go.jp
「政府、グリーン成長戦略 脱炭素へ政策総動員 洋上風力な ど重点14分野/党推進本部が意見交換」(公明新聞2020/12/29 1面よ り)
「政府、グリーン成長戦略 脱炭素へ政策総動員 洋上風力など重点14分野/党推進本部が意見交換」(公明新聞2020/12/29 1面より)
■50年ゼロ 工程表示し投資喚起
公明党地球温暖化対策推進本部(本部長=石井啓一幹事長)は28日、参院議員会館で会合を開き、2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」の実現に向けた実行計画「グリーン成長戦略」について、政府から説明を受け、意見を交わした。戦略では洋上風力発電や水素技術の普及拡大など重点14分野の実施年限や技術的課題を定めた工程表を作成。公明党が訴えてきた脱炭素化へ、あらゆる政策を総動員する。
席上、政府側は「温暖化への対応を成長の機会と捉え、経済と環境の好循環をつくっていく」と強調。戦略を通じて、民間企業の投資や取引拡大などを合算した経済効果が30年に年間90兆円、50年に同190兆円に達するとの試算も紹介した。
戦略では、二酸化炭素(CO2)排出量の約4割を占める電力部門の脱炭素化を前提とし、再生可能エネルギー(再エネ)を最大限導入する方針を示した。今後の議論の参考値として50年の電源構成に占める再エネ比率を50~60%(19年は20%弱)と明記。洋上風力発電を再エネ主力電源化の切り札と位置付け、発電能力を30年までに原発10基分相当の10ギガワット、40年までに30ギガ~45ギガワットに引き上げる目標を掲げた。火力発電所などから出るCO2は、回収・再利用する技術の導入により、電力部門の排出を実質ゼロに抑え込む。
また、乗用車の国内新車販売の全てを30年代半ばまでに電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などの電動車に転換すると明記。トラック・バスの商用車の結論は先送りし、来年夏をめどに目標を具体化する。
次世代燃料として期待されている水素は、燃料電池車(FCV)に限らず、発電所や船舶などに幅広く普及を促し、50年に年間2000万トンの利用をめざす。
そのほか、住宅では省エネ設備によって消費エネルギーを低減し、必要なエネルギーは太陽光などで補う「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)」の普及拡大などが盛り込まれた。
出席議員からは、「技術革新に向け、具体的にどう国際連携していくかが重要だ」「カーボンニュートラルは産業界の取り組みだけではなく、国民の行動変容を促し、消費者を巻き込んでいく流れが大事だ」などの意見が出た。
「青年の声から政策実現 広島市でユーストーク開催/斉藤副 代表と三浦局長」(公明新聞2020/12/28 1面より)
「青年の声から政策実現 広島市でユーストーク開催/斉藤副代表と三浦局長」(公明新聞2020/12/28 1面より)
公明党の斉藤鉄夫副代表と三浦信祐青年局長(参院議員)は27日、広島市安佐北区内で開かれた党広島県本部青年局(局長=川本和弘広島市議)の「ユーストークミーティング」に出席し、青年世代が直面する課題を聴いた。会合は、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で行われた。
席上、看護系学校に通う女子学生は「新型コロナの影響で看護実習が今年は一度もなかった」として、現場経験なしに就職することへの不安を述べた。
このほか、雇用調整助成金の来年2月末までの延長や不妊治療の保険適用・助成措置の拡大、スポーツ振興による地域活性化などについて、活発な意見が交わされた。
三浦青年局長は、新型コロナ対策の一つである医療や介護、障がい福祉サービスの従事者らへの慰労金に触れ、「ユーストークで聴いた青年世代の声を政府に届け、公明党が実現したものだ。これからも現場第一で取り組む」と強調した。
また、斉藤副代表は「青年の声が社会を動かしてきた。これからも青年の声を政策に反映させ、皆さんと力を合わせて、若い世代が住みやすい地域をつくっていきたい」と訴えた。
作文「ガタガタガタガタ」
小学5年生の息子が、防災をテーマにした作文コンクールで、優秀賞をいただきました。
息子は、広島で生まれ、その後、東北の山形に引越しをした後、東日本大震災となりました。更にその4年半後、私の転勤で関西の京都へ。大阪北部地震の発災のときは、教室で飼っていたカイコが亡くなったので、朝、校庭に埋めてあげようとしていたそうで、その場から避難となったとのこと。手に握っていたカイコはつぶれてしまったそうで、友だちが「田中君、それは、ほんま怖い思いをしたな」と励ましてくれたそうです。下記が作文です。
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「ガタガタガタガタ」
2011年3月11日、山形へ引っ越して十日目の東日本大震災。ぼくたち家族は、知り合いもいなくて、どこへ避難したらよいかも分からなくて、コンビニの駐車場に車をとめて、一晩、とても不安を感じながら過ごした。次の日は朝六時から、十二時間もガソリンスタンドにいて、夕方六時に運良く給油してもらうことができた。そのおかげで、空港へ車で移動して、飛行機でおじいちゃんの家へ避難することができた。
そのときから、家族で、どこに避難するのかなど家族会議をしたり、半年に一回は防災グッズのチェックもかかさなくなった。ぼくたち家族の意識は180度変わった。
2018年6月18日、大阪北部地震が起きた。ぼくは学校の校庭にいた。びっくりしたけど、避難訓練で避難していた場所へ落ち着いて移動することができた。大雨が続いたり、台風のときも、ぼくの家の玄関には、防災グッズがならんで、いつでも避難できるようにしているし、家族で落ち着いて行動することができるようになった。
お父さんは防災のことを勉強して、防災士になった。お母さんは、防災グッズの本を図書館で借りたりして勉強している。ぼくは学校の避難訓練をまじめに取り組んで、学校で勉強したことをお母さんたちに話してあげている。急に来る災害をふだんから意識していると、「自分の命は自分で守る」行動につながるんだと思う。
「希望と信頼の政治へ 斉藤副代表が事務所開き」(公明新聞20 20/12/27 中国版より)
「希望と信頼の政治へ 斉藤副代表が事務所開き」(公明新聞2020/12/27 中国版より)
次期衆院選広島3区に出馬する公明党の斉藤鉄夫副代表(衆院議員)は20日、広島市安佐北区可部南で事務所開きを行い、あいさつした。
斉藤副代表は「激動する世界の中で日本が生き抜くには、自由と民主主義を理念とする保守中道の安定した自公連立政権が続かないといけない」と強調。「希望と信頼の政治を取り戻すべく、力を振り絞って戦っていく」と訴えた。
また、取り組むべき重要政策課題として新型コロナ対策を挙げ、「感染拡大防止と社会・経済活動の両立に取り組み、命と暮らしを守ることに全力を挙げる」と力説。さらに、豪雨災害に備える防災・減災対策の強化や脱炭素政策の推進による中山間地域の活性化、平和創出・核兵器廃絶などに取り組む決意を表明した。
これに先立ち、JA広島中央会の香川洋之助元会長、安芸高田市高宮町地域振興会連絡協議会の辻駒健二会長、広島市立大学広島平和研究所の吉川元前所長ら来賓がエールを送った。
■山本副大臣と現場の課題聴取
一方、斉藤副代表は12日、山本博司厚生労働副大臣(公明党)と共に、広島市内で開かれた党広島県本部(代表=田川寿一県議)の政策要望懇談会に出席した【写真】。
介護老人福祉施設やサービス付き高齢者向け住宅などを運営する社会福祉法人「可部大文字会」(梶原澄子理事長)や障がい者就労継続支援B型事業所を運営するNPO法人「まなび」(高橋剛理事長)らから、現場の課題をつぶさに聴いた。
【道路陥没:応急補修】広島市西区福島町・己斐橋東詰
「土曜特集 紛争防止に重要な『協調的安全保障』植田隆子・ 元EU日本政府代表部次席大使に聞く」(公明新聞2020/12/26 4面より )
「土曜特集 紛争防止に重要な『協調的安全保障』植田隆子・元EU日本政府代表部次席大使に聞く」(公明新聞2020/12/26 4面より)
米中対立が続く中、米国の同盟国であり、中国とも友好関係にある日本の外交・安全保障政策はどうあるべきか。注目されるのが「協調的安全保障」の取り組みだ。対立関係にある国も参加して頻繁に対話を重ねながら信頼を醸成し、軍事衝突を防ぐ目的で設立された「欧州安全保障協力機構」(OSCE)が参考になる。OSCEについて詳しい、植田隆子・元欧州連合(EU)日本政府代表部次席大使に聞いた。
■OSCE(欧州安保協力機構)が実践/対立する国が頻繁に接触
――OSCEは、どのような役割を果たしているのか。
植田隆子・元EU日本政府代表部次席大使 私は、EU代表部以外に、日本のベルギー大使館勤務時に、北大西洋条約機構(NATO)や、OSCEの前身である欧州安全保障協力会議(CSCE)を担当し、1992年のヘルシンキ首脳会議(以後、日本がパートナー国として参加)以来、CSCEおよびOSCEの会議に出席したり、関係国やOSCE事務局と交流したりしながら、外交現場も経験してきた。
歴史的には米国を中心とした資本主義陣営と、ソ連を中心とした社会主義陣営の二つに世界が分断された東西冷戦のさなかの1975年に、CSCEがヘルシンキ首脳会議で発足し、緊張緩和がめざされた。
発足には、フィンランドなど、東側と隣接する中立国が果たした役割も大きかった。東西対立の前線に置かれたNATO加盟国の西ドイツも、自国が戦場になるだけに、事前に衝突を防止するなどの安全保障協力の枠組みであるCSCEを重視してきた。
東側の崩壊により冷戦が終わり、欧州の安全保障体制がNATO一辺倒になることを、ソ連およびソ連分解後のロシアが警戒したこともあり、CSCEの役割が拡大されるとともに常設機構化も進められ、95年にOSCEとなった。OSCEは、オーストリアのウィーンに事務局と参加国の常駐代表部を置き、毎週、参加国の大使級の代表が集う「常設理事会」と、軍事問題を扱う「安全保障協力フォーラム」を、ホーフブルク宮殿の国際会議場で開催している。外相級、首脳級でも開催される。
対立している国の代表も会合で同席し、自国の立場を説明したり、他国の代表からの質疑に答えたりする。会議以外にも、休憩時間などに接触する。このように、緊張関係にある国が誤解を解き、軍事衝突を未然に防ぐ「協調的安全保障」の仕組みを、OSCEは備えている。
こうしたOSCEの歴史や現状を顧みると、日本は今、冷戦期の西ドイツと似たような状況に置かれているのではないかと思う。
米中対立が激しさを増し、軍事衝突に至った場合、中国から近く、米軍基地のある日本の領域が戦場になる恐れがある。そうした事態を未然に防ぐための緊張緩和を進められるよう、常設の多国間の安全保障協力の枠組みを、日本が提議して創設すべきではないか。OSCEには、安全保障のほかに、経済協力や人的次元と呼ばれる協力分野があるが、日本は、まず、安全保障協力に特化した機構をめざすべきである。
■インド太平洋地域の安定へ東京が拠点の常設機構を
――具体的に、どういった形の機構になるのか。
植田 以前、海洋安全保障に限定して、紛争を未然に防ぐための機構を創設してはどうかという見方もあった。しかし、海洋安全保障は安全保障政策の一部でしかないため、安全保障問題全般を扱う必要がある。
今日、安全保障を巡る課題は、サイバー攻撃のような、従来の軍事衝突の形を取らないものも含めて多様化しており、脅威と見なされるものの移り変わりも早い。こうした状況に対応できる機構でなければならない。
私の考えは、全域的な「東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム」(ARF)の加盟国に加えて、ARFに未参加の島しょ国も含め、安全保障協力を扱う、新たな常設の多国間機構を創設するというものだ。ARFは、外相級で年1回会合を開いている。ASEAN加盟10カ国を含め、日本や米国、ロシア、中国、韓国、オーストラリア、インド、パキスタンなど25カ国と北朝鮮、EUが参加し、安全保障問題に関する議論などを行っている。
――ARFでは駄目か。
植田 そもそもARFの発足に日本は尽力した。ARFは常設機構ではなく、参加国のコンセンサスを得て常設機構化することは短期的には不可能だろう。
新機構には外務省や国防省だけでなく、海上保安庁や沿岸警備隊に当たる組織の代表も参加し、毎週、定例会合を開くなどして、頻繁に接触できる機会をつくることが重要である。ARFとも協力する。
目下、日本、米国、オーストラリア、インドの4か国間で安全保障協力が進展し、メディアはこれを「アジア版NATO」とも呼んでいる。中国も含む協力枠組みがないまま、「アジア版NATO」が進められると、対抗抑止策ばかりが際立ち、対立が増幅され、日本がその前線になる恐れがある。
インド太平洋全域の安全保障協力機構は、当然、米国の新政権の支持も必要である。日本が中心となって提案する場合、常設機構の拠点を支え、円滑に動かすには負担がかかるため、拠点を他国に投げることは不適切であり、東京に置くことになる。
閣僚級の緊急会合招集時のフライトの便や、ほとんどの国が既に東京に大使館を設置していることからも、東京には地の利がある。参加国に代表部増設の追加負担は少ない。国交はなくとも、米国には、国連加盟国としての北朝鮮の代表部がニューヨークにある。同様に、北朝鮮の代表部を東京に置くことが想定される。
――偶発的な事故が戦争へと発展するのを防ぐ、ホットラインについてはどうか。
植田 日本と中国の間でも、海上や上空での自衛隊と中国人民解放軍の不測な衝突を避けるため、両国の防衛当局が直接連絡を取り合える「海空連絡メカニズム」の運用に向けて交渉中だが、2国間のホットラインは、非常時に相手が「電話に出ない」ということも起こり得る。そうした場合、ホットラインと並行して、OSCEのような協調的安全保障の接触枠組みがあれば、相手とまったく連絡が取れない、情報も入手できないという事態に陥るのを防ぐ手段の一つになろう。
OSCEの場合、参加国はインタネットベースのネットワークでもつながっている。
■日本の研究者にほとんど知られず
――協調的安全保障のための機構の創設をめざす上で、日本の課題は何か。
植田 国内問題として、日本の場合、安全保障論議は、極論すれば、日米同盟の追求か、理念的な平和主義のいずれかという立場だった。もう一つの特色は、集団安全保障機構である国連に対する一定の信頼があることだろう。日米同盟による個別の安全保障から、発想が一挙に国連に上がる傾向があり、中間の地域的な安全保障の機構化は念頭に置かれてこなかった。
日米同盟などの同盟体制は、安全保障上の脅威を与える国に対して抑止する役割を持っている。脅威として想定される国が軍備を増強すれば、一般に同盟側も軍備増強に走るため、軍拡競争を招き、リスクが増大する。これを緩和し、紛争の未然防止を追求する協調的安全保障の仕組みについて、日本の研究者にはほとんど知られていない。
「安全保障研究」が学問分野として確立している欧米では、協調的安全保障という名称が使われなくとも、研究でも実戦面でもその方法は浸透している。
冷戦期の米ソ対立よりも、米中対立は経済的要因が入っているだけに複雑である。米国とロシアの対立も続いている。また、日本には、領土を巡り、ロシアや中国との対立もある。こうした国際情勢の中、日本にとって、協調的安全保障を加味する安全保障政策の視点が必要だ。
なお、2019年9月号の月刊「公明」にも私が寄稿しているので、参照してほしい。
うえた・たかこ 外務省EU日本政府代表部次席大使、東京大学大学院総合文化研究科特任教授、ブラッセル自由大学欧州研究所客員教授、オーストリア国際問題研究所招へい研究員などを歴任。専門は国際安全保障。