「気になる!ニュース コロナワクチン、治験の最終段階に 米で初申請、来月にも接種開始/実用化へ期待高まる」(公明新聞2020/11/29 3面より)
■日本への供給でも合意
新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、海外の大手製薬会社から有望なワクチン開発の成果が相次いで発表され、実用化への期待が高まっている。最終段階に入った治験の現状について解説する。
■米、ファイザー
米製薬大手ファイザーは20日、独ビオンテックと共同開発中の新型コロナウイルスのワクチンに関し、食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請した。米国でのコロナワクチンの申請は初めてで、来月にも接種が始まる可能性がある。
ファイザーのワクチンは、コロナウイルスの遺伝情報を伝える「メッセンジャーRNA(mRNA)」を体内に取り込んで免疫を作る仕組み。共同開発相手のビオンテックの技術を活用した。通常は数年以上かかるとされるワクチン開発だが、約8カ月という異例のスピードで当局への申請までたどり着いた。
アザー米厚生長官は「数週間以内にFDAの決定が出され、その後24時間以内に(ウイルスに対して)最も脆弱な人々向けに配布が始まる」と、今後の見通しを示した。ファイザーによれば、医療従事者などに限定した接種は来月半ばに始まる可能性がある。基礎疾患のない一般の米国人の接種は、来年4月以降になるとの当局者の見方が伝えられている。
4万人以上が参加した最終段階の臨床試験(治験)では「95%の有効性」が示され、深刻な副作用も起きなかった。ただ、感染予防効果がどの程度続くかなど、今後の研究を待たなければ分からない部分も多く残されている。
また、ファイザーのワクチンはセ氏マイナス70度前後でなければ長期保存ができないことが普及のネックになるとの指摘もある。
同社は年内に5000万回分、2021年中に最大13億回分のワクチン製造を見込む。日本政府は、来年6月までに6000万人分の供給を受けることで合意している。
■米、モデルナ
一方、米バイオ医薬品企業モデルナは16日、開発中のワクチンの治験で94・5%の有効性がみられたとの暫定結果を発表した。同社製ワクチンは保管や輸送のたやすさが特徴で、遠隔地でも普及させやすいとみられる。
同社によると、開発中のワクチンは2~8度の標準的な医療用冷蔵庫で1カ月間、マイナス20度なら6カ月間保管できるという。同社は「世界中のほとんどの医薬品流通に関わる企業が保管、出荷をすることができる」と強調した。
モデルナは、米当局が許可すれば年内に2000万回、21年に5億~10億回分を製造できるとする。日本はモデルナからは2500万人分の供給を受ける契約で、このうち2000万人分は来年6月末までに供給されることになっている。
■英、アストラゼネカ
英製薬大手アストラゼネカは23日、英オックスフォード大と共同開発中の新型コロナウイルスワクチンが、最終段階の治験で平均70%の効果が確認され、2回の接種のうち1回目の投与量を少なくしたグループでは90%近い効果があったと発表。ファイザーやモデルナに続き、有効なワクチン開発にめどが立った。
しかし、米当局の責任者から高齢者への効果の確認が必要との見解が示されたことを受け、同社は26日、追加調査を行う考えを表明した。
アストラゼネカは世界で計30億回分の供給を行う予定で、早ければ年内に配布を始める。日本政府はアストラゼネカと6000万人分の供給で合意済みで、このうち1500万人分は21年1~3月に供給される見通しだ。ロイター通信によると、チェン副社長は「(全体では)年末までに2億回分、21年3月末までに7億回分を準備できる」と述べた。
アストラゼネカのワクチンは、効果が出た割合は2社に比べて低かったものの、費用はコーヒー1杯と同程度の1回当たり4ドル(約420円)前後と安価で、一般的な冷蔵庫の温度(2~8度)で保管可能な点が最大の特長だ。
費用面ではファイザーのワクチンが20ドル前後、モデルナは35ドル前後と予想されている。これらに比べてアストラゼネカは破格に安く、途上国を含む各国の財政負担が軽減されそうだ。
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国内では、大阪大発のベンチャー企業アンジェスと塩野義製薬が先行。武田薬品工業は、米ノババックスが開発中のワクチンを、山口県の自社工場で製造することで合意している。