「参院本会議で山口代表 希望と活力の日本へ コロナ、検査・接種万全に/少子化対策の全体像提示を」(公明新聞2020/10/31 1面より)
参院は30日の本会議で、菅義偉首相の所信表明演説に対する各党代表質問を行った。公明党の山口那津男代表は、新政権の発足を踏まえ「公明党は、国民目線で改革を進める菅内閣を支え、将来に希望と安心を持てる日本をつくるため、全力を挙げていく」と力説。新型コロナウイルスの感染拡大に対する万全の備えとともに、活力ある未来を開くため、国民本位の政策実現に、より一層取り組んでいくとして、少子化の克服や気候変動への対応、核廃絶に向けた日本の積極的な貢献などを政府に訴えた。
■新型コロナ対策
山口代表は「季節性インフルエンザと新型コロナの同時流行に備えた対策が急務だ」と力説。検査・診療体制の速やかな整備を主張し、医療機関への財政的な支援や個人防護具の無償配布などを求めた。
公明党が強力に推進してきたコロナワクチン確保に向けては、引き続き最重要課題として取り組むよう強調。接種体制の整備も「万全を期すべきだ」とした。
菅首相は、検査・診療や接種の体制整備へ「準備を進める」と答弁した。
■全世代型社会保障
山口代表は「少子化の背景には、出会いの機会の減少や子育てと仕事の両立の難しさ、教育費を含む経済的負担など、さまざまな要因が挙げられる」と指摘。不妊治療への保険適用や出産育児一時金の増額をはじめとする施策について、全体をひとまとめにした「トータルパッケージ」で示すよう迫った。菅首相は「年末に取りまとめる予定の全世代型社会保障検討会議の最終報告の中で、トータルな形で示す」と応じた。
山口代表は、ひきこもりへの対応や自殺対策、インターネット上の誹謗中傷対策も促した。
■(防災・減災)甚大化する風水害、対応急務/ドクターヘリの安定運航も
山口代表は「気候変動などの影響で甚大化する風水害への対策強化は喫緊の課題だ」と指摘。流域全体の関係者が一体となった治水対策や、都市部に広がる海抜ゼロメートル地帯の避難体制構築を早急に進めるよう訴えた。
また、地域防災力の強化に向けて、地域の気象災害情報に精通した地方気象台のOBなどを活用することも提案した。
全国配備が進むドクターヘリについて、山口代表は「新規導入の財政支援に加えて、人件費や飛行時間に応じた補助金の増額など、安定的な運航を確保するための支援を」と主張。菅首相は「予算編成過程で必要な対応を行う」と応じた。
■脱炭素社会の構築
山口代表は、脱炭素社会への取り組みを加速させるには「政府、自治体、経済界などオールジャパンで推進することが不可欠だ」として、自治体や経済界への手厚い支援を要請した。
菅首相は、国と地方で検討を行う新たな場を創設するなど「あらゆる政策を総動員して取り組みを後押しする」と答えた。
■(核廃絶)“橋渡し役”果たせ/首相「国際的議論に積極貢献」
山口代表は、来年1月に発効することが決まった核兵器禁止条約に言及し、「核廃絶をめざす上で、歴史的に大きな意義がある」と強調。発効後に開かれる締約国会合について、日本のオブザーバーとしての参加とともに「広島、長崎への招致を求めたい」と訴え、日本が核兵器国と非核兵器国との「真の橋渡し」の役割を担い、国際社会の取り組みをリードするよう促した。
菅首相は「核軍縮の進展に向け、今後も国際的な議論に積極的に貢献していく」と表明した。
■地方のデジタル化
山口代表は「デジタル技術を駆使した『ポストコロナの地方創生』を強力に推進するべきだ」と指摘。住民データの利活用を進める福島県会津若松市のような先進的な事例が、その推進力になると述べ、福島県を「デジタル化実証推進県」として先行拠点に位置付けるよう提案した。=2面に質問の要旨
「山口代表の参院代表質問=要旨」(2020/10/31 2面)
■国民目線で新政権支える
菅政権の発足から1カ月以上が経過しました。この間、やるべきことをスピード感をもって実行する新政権の政治姿勢に、国民から大きな期待が集まっています。
国民のために働く内閣として、着実な成果を挙げられるよう、政府・与党が一致協力して、内外の重要課題の解決に全力で取り組んでまいりたい。
新政権の発足に当たり公明党は、自民党と新たな「連立政権合意」を交わしました。この中には、新型コロナウイルス感染症の影響から国民生活を守り、経済を成長軌道に回復させることをはじめ、喫緊の課題であるデジタル化の推進、少子化の克服、防災・減災・復興、脱炭素社会の構築など、わが国が乗り越えなければならない優先課題への対応が盛り込まれています。
この政権合意に基づき、どこまでも国民の悩みに寄り添い、真摯に耳を傾けながら、困難な課題を一つ一つ解決してこそ、国民の信頼を獲得し、安定した政権運営と国民が待ち望んでいる改革が成し遂げられます。
公明党は、国民目線で改革を進める菅政権を支え、将来に希望と安心の持てる日本をつくるため、全力を挙げてまいります。
■(新型コロナ対策)インフル同時流行へ備え急務/自治体の検査体制手厚く
これから冬を迎えるに当たり、新型コロナウイルス感染症の検査体制の充実と季節性インフルエンザとの同時流行に備えた対策について伺います。
感染症から国民の命と生活を守るため、社会的・経済的活動を維持しながら感染拡大を抑え込むことが求められています。そのためには、検査が必要な人が迅速に検査を受けられるよう体制を拡充しなければなりません。
感染が広がる地域においては、医療機関や高齢者施設などで一斉・定期的な検査を実施することが可能となりました。重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人が希望する場合、検査費用を国が補助する仕組みもできています。
今後、1日20万件の検査体制を確保するに当たり、どの地域でも必要な検査が幅広く実施できるよう、国は準備状況を把握しつつ、体制整備が進んでいない自治体への支援など適切な対策を講ずるべきです。
併せて、季節性インフルエンザと新型コロナの同時流行に備えた対策も急務です。
今後、発熱患者が増加することを想定し、医療機関に対し財政的な支援や個人防護具の無償配布などを実施し、適切に診療・検査できる体制を速やかに整備しなければなりません。
■ワクチン確保と接種体制の整備
国民が期待する新型コロナワクチンの確保と接種体制の整備について伺います。公明党は、海外開発のワクチン確保に加えて、国産ワクチンの開発も強力に推進してきました。政府においては、安全で有効なワクチンを一日も早く、全ての国民に提供できるよう、引き続き、最重要課題として取り組んでいただきたい。
接種体制の整備については、国が主導し、身近な地域で迅速かつ円滑に受けられるよう万全を期すべきです。併せて、希望する人が安心して接種できるよう、国が積極的に安全性・有効性について分かりやすく発信することも大切です。
一方で、世界規模で広がる感染拡大を防ぐには、発展途上国への支援も不可欠です。発展途上国を含めてワクチンを幅広く供給する国際枠組み「COVAXファシリティ」への参加を、公明党は政府に強く求めてきました。日本が先進国の中でいち早くCOVAXへの参加を表明したことは、関係機関から高く評価されています。引き続き、ワクチンの開発と公平な分配に向けて、日本が世界をけん引するリーダーシップを発揮していただきたい。
■(全世代型社会保障)
菅政権が真正面から取り組む少子化対策について伺います。2012年に民主党・自民党・公明党の3党で合意した「社会保障と税の一体改革」では、年金・医療・介護に加え、新たに少子化対策が社会保障の柱の一つとなりました。17年には消費税増収分の使い道を見直し、幼児教育の無償化や、低所得者に対する大学など高等教育の無償化を実現し、私立高校生の授業料実質無償化を含め、全世代型社会保障の構築に向けて、大きな一歩を踏み出しました。
しかしながら、昨年の出生数は初めて90万人を下回り、今年もコロナ禍の影響のもと、さらに下回る予測であり、少子化は予想以上の速さで進んでいます。少子化の背景には、出会いの機会の減少や、子育て中の孤立感や負担感、子育てと仕事の両立の難しさ、教育費を含む経済的な負担など、さまざまな要因が挙げられますが、若い世代の希望をかなえるために、こうした要因を取り除いていくことが必要です。
深刻な少子化を克服するため、焦点となっている不妊治療への保険適用や出産育児一時金の増額をはじめ、結婚支援や男性の産休・育休支援、仕事との両立支援、さらには、年末までに取りまとめるポスト「子育て安心プラン」など、少子化対策の抜本的な強化をトータルパッケージで示す必要があります。=3面に続く
「山口代表の参院代表質問=要旨」(2020/10/31 3面)
■ひきこもり対応
本格的支援が注目されるひきこもり、「8050問題」への対応について伺います。少子高齢化・人口減少が進む中、80代の親がひきこもりの50代の子どもを養う8050問題や、介護と子育てを同時に担うダブルケアなど、個人や家族が抱える生きづらさやリスクが複雑化・多様化しています。複合的リスクに社会全体で対応するため、さまざまなニーズや生活上の課題を受け止める、包括的支援体制の整備が急務です。
本年6月に成立した改正社会福祉法では、「断らない」相談支援を含む、重層的支援体制整備事業が創設されました。来年4月から本格的にスタートするこの制度は、国民が最も身近に感じ、菅政権が立ち向かう「縦割り打破」の象徴として、全市区町村での実施をめざすべきと考えます。
併せて、行政のデジタル化を進める中で、給付金などの行政手続きを「申請主義」から、申請なしに届ける「プッシュ型」に切り替えていくことも必要です。
■自殺、ネット上の誹謗中傷対策
切実な課題である自殺対策について伺います。自殺者数は本年7月以降、昨年同時期と比べて3カ月連続で増加。特に本年8月は30代以下の女性の自殺者が74%も増えており、看過できない状況です。
SNSを活用した相談事業も利用者が増加傾向にあり、十分な対応が必要です。対応の質を担保しつつ相談員を増やすことや、相談から個々の問題解決へ具体的支援につなげることが大切です。さらに、コロナ禍が女性の雇用や生活に与える影響を早急に把握し、女性の自殺要因を分析した上で、適切な対策を講ずるべきです。
インターネット上の誹謗中傷対策も重要です。公明党は本年6月に提言を取りまとめ、政府に提出しました。誹謗中傷の書き込み削除や、加害者情報の開示促進、情報モラル教育や普及啓発、相談体制の強化、侮辱罪をはじめとする刑事罰の見直しなど、早急な対策が必要です。
■(防災・減災)流域で水害に強い地域づくり
防災・減災対策について伺います。昨年は台風災害が相次ぎ、今年も7月豪雨により熊本県をはじめ九州や中部、東北などで甚大な被害をもたらしました。
お亡くなりになられた方々に謹んで哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われた全ての方々に、心よりお見舞い申し上げます。
近年の気候変動の影響により甚大化する風水害の対策強化は喫緊の課題です。
政府は新たな取り組みとして、全国の109の1級水系を対象とした「流域治水プロジェクト」を表明しました。プロジェクトの策定・実行に当たっては、縦割りを打破し、国と地方のみならず企業や住民も巻き込み流域全体の関係者が一体となって、ハード・ソフトにわたる“水害に強い地域づくり”を着実に進めていくべきです。
高齢者や障がい者の実効性ある避難支援、電気・ガス・水道・通信などのライフラインの強靱化、長期停電対策などの取り組みも重要です。250万人が住む東京都の江東5区や、名古屋・大阪などの都市部に広がる「海抜ゼロメートル地帯」における大規模広域避難などの事前防災対策も国と地方が連携して急ぎ進めていくべきです。
■専門人材の活用
私は、本年の7月豪雨の被災地、熊本県に行った際、気象庁防災対応支援チーム(JETT)など専門家による気象情報の分析や解説などを通じた市町村への支援が重要な役割を果たしたこと、また、災害発生地域において地方気象台OBなどローカルな気象災害情報に精通した人のアドバイスが的確で有益だったことを伺いました。
防災が政治の主流となる今日、専門家の派遣とともに、受け手の市町村にも気象災害情報の専門家を育成していくことが大切です。国の地方気象台だけでは、地域のきめ細かな状況に対応しきれません。災害が起きてからではなく、日頃から地域に精通した知識と技術を生かし、地方気象台をはじめ関係部門と連携しながら災害予防や避難体制の整備に当たることが望まれます。
例えば、茨城県の日立市では、天気相談所を設置し、気象予報士3人を含む専門人材を育成してきました。100年を超える気象データの蓄積を基に地域特有の気象条件を解析し、きめ細かな気象情報を市民に提供するほか、防災対策、環境保全に取り組んでいます。今後、こうした国と地方が連携した双方向の取り組みが不可欠です。
7月豪雨では、11時間以上停滞した線状降水帯が球磨川流域に大規模な洪水氾濫をもたらしました。早期避難に直結する線状降水帯の観測・予測技術の向上は喫緊の課題です。
■ドクターヘリ
いよいよ全国配備が整うドクターヘリについて伺います。救急医療や災害時対応など、国民の命を守るドクターヘリの役割はますます高まり、年間出動件数は増加し続けています。
公明党は、ドクターヘリの全国的かつ安定的な運営を確保し、効果的な活用が可能となるよう一貫して取り組んできました。これにより、現在未導入である東京都や福井県においても、21年度からの導入が予定されています。残る香川県も導入が視野に入り、京都府は近隣府県との広域的カバーができています。
今後は、こうした新規導入の財政支援に加え、人件費や飛行時間に応じて補助金を増額するなど、全国システムの充実が望まれます。ドクターヘリの安定的な運航を確保するための財政支援の強化について答弁を求めます。
■(脱炭素社会)
この夏も九州地域における豪雨をはじめ世界各地で、今まで経験したことのない異常気象が多発しており、「気候危機」への対応は待ったなしです。
新型コロナウイルスの影響により、今年のCOP26は来年に持ち越しとなりましたが、世界的な自然災害の動向を考えれば、温室効果ガス削減への流れを止めるわけにはいきません。
また、ウィズコロナ・アフターコロナを見据え、元の社会に戻すのではなく、このたびの「自公連立政権合意」に盛り込んだように、思い切って「持続可能で強靱な脱炭素社会」に向け、変革を促すことが必要です。
公明党は、2050年を視野に温室効果ガス排出実質ゼロをめざすことを本年1月の通常国会で提案しており、今般の首相の決断を歓迎致します。
その上で、大事なことは具体的な取り組みです。徹底した省エネや、再エネの主力電源化の推進、石炭火力発電のフェードアウト(段階的に縮小)やイノベーション(技術革新)の創出など、政策を総動員して、脱炭素社会への取り組みを加速化させなければなりません。そのためには、政府、地方自治体、経済界などオールジャパンで推し進めることが不可欠です。
50年までにCO2(二酸化炭素)排出実質ゼロを表明した自治体、いわゆるゼロカーボンシティーは、今や23都道府県、144市町村を数え、人口規模では約8000万人に達します。100%再エネ調達をめざす「RE100」やESG(環境・社会・企業統治)投資などグリーン化に取り組む企業も確実に増えています。こうした地方自治体や経済界などの具体的な取り組みを後押しする手厚い支援が必要と考えます。
■(経済再生)各種補助金、一層拡充せよ
経済再生へ、ポストコロナ時代を見据えた成長戦略について伺います。はじめに、事業継続と経営改善に向けた支援についてです。ポストコロナ時代の社会経済活動は、感染拡大防止に万全を期しながら、事業の再開・継続に果敢に挑戦する事業者を支援していくことが最も重要です。
特に中小・小規模事業者に対しては、業種別ガイドラインに基づいた感染防止対策を一層支援するとともに、非対面型ビジネスモデルへの転換やテレワーク環境の整備といったデジタル化・リモート化、あるいはサプライチェーン(供給網)の強靱化に向けた生産拠点の国内整備や多元化など、こうした前向きな投資を支援するための「各種補助金」のさらなる拡充を求めます。併せて、サプライチェーン全体で、適正な取引の実現や、付加価値の向上が可能となるよう、下請け取引の適正化に粘り強く取り組む必要があると考えます。
コロナの影響が長期化する中で、中堅・大企業も含め、本業の立て直しや事業転換といった本格的な経営改善が課題となります。今後は資本性資金やファンド(基金)の活用、人材のマッチングなど、業種や企業規模ごとに異なる多様なニーズに応じた適切な支援につなげることが極めて重要です。
数ある支援が事業者の皆さまにきちんと届くよう、金融機関や、よろず支援拠点などを中心とした寄り添った相談・支援体制を一層強化していただきたいと思います。
■イノベーション
次に、科学技術・イノベーション推進についてです。コロナ禍を契機として、公衆衛生や健康・医療、気候変動、災害といった「生命を守る産業分野」におけるイノベーションを成長の源泉としていくことが重要と考えます。
首相が言及されたグリーン社会の実現に向けた革新的イノベーションをはじめ、日本の高い技術力を生かし、「生命を守る産業分野」におけるイノベーション創出をポストコロナの成長戦略の柱に据え、投資目標を設定し、官民が連携して強力に推進していただきたい。
併せて、わが国の研究力の抜本強化を図るため、特に、博士課程学生を含めた若手研究者の生活を支援し、キャリアパス(能力アップの道筋)を確保する仕組みを早急に実現するとともに、大学などによるファンドを着実に創設していただきたい。
■(活力ある地方)Go To トラベル、延長必要
新型コロナウイルスの感染拡大は、地域経済にも甚大な影響を与えています。国は、地域経済を支え奮闘する方々が、希望を持ち安心して暮らせるよう、デジタル技術を駆使した「ポストコロナの地方創生」を強力に推進すべきです。
とりわけ、地方におけるテレワークやサテライトオフィス(本社から離れた場所にある職場)などの環境整備、地方大学を含めた官民による(情報社会の問題解決を担う)STEM人材の育成は、地方のデジタル化を進める重要な取り組みです。
多くの方にデジタル化の魅力を実感してもらうためには、医療・教育・交通など、多岐にわたる分野でデータ利活用を推進するスマートシティーの構築が重要ですが、そのためには、地域住民の理解と合意形成が必要となります。
先般、私が視察した福島県会津若松市は、「データは市民のもの」という理念の下、市民が自ら同意の上でデータを提供し、成果を還元するオプトイン方式を実施し、市民の理解と協力により、先進的なスマートシティーを実現しています。
このような先進モデルは、自治体の縦割りを打破し、システムの統一・標準化を進め、どの自治体に住んでいても行政サービスを届ける推進力になります。まず、福島県を、震災復興、地方創生、分散型国土形成の象徴となるよう「デジタル化実証推進県」として先行拠点に位置付けてはいかがでしょうか。
地方のデジタル社会実現に向けた支援策、特にデジタル庁構想に福島県を位置付けるアイデアについて答弁を求めます。
■地域の観光復興
全国約900万人の雇用を抱える観光産業も、新型コロナや豪雨災害などの影響により大きな打撃を受けています。
事業継続や雇用維持などの支援策に加え、「Go To トラベル」事業などにより、観光産業は回復の兆しを見せていますが、さらに、今後の需要動向や、被災地の状況、現場の声も考慮して、Go To トラベル事業の延長、予算の増額も検討すべきです。
特に重要なことは、地域経済を支える中小のホテルや旅館、旅行業者、飲食・土産店などの経営の安定や雇用の維持とともに、生活や観光の足として地域を支え続けているバス・タクシー・鉄道・航空・旅客船などの交通事業者への一層の支援です。
働きながら休暇を楽しむワーケーションなどを通じた新たな旅行市場の拡大とともに、感染拡大防止の徹底や、地域で展開する新たな観光ビジネスへの支援などが求められています。こうした支援を年内に策定する「政策プラン」にぜひ反映させていただきたい。今後、観光復興にどう取り組むか伺います。
■農林水産業支援
農林水産業の成長産業化を進める輸出拡大の取り組みについて伺います。政権交代時と比べて輸出額は倍増し、さらなる輸出拡大に向けて、30年までに輸出額5兆円を新たな目標とする「食料・農業・農村基本計画」も改定されました。この計画に基づく輸出促進は、地方活性化にもつながり、大きな起爆剤になると考えます。
しかし、担い手不足や輸出相手国・地域の規制などの諸問題に加え、新型コロナの影響による日本食の展覧会などのイベント中止や外国人観光客の大幅な減少などが、農林水産業者の大きな痛手となっています。
また、小規模農家などは、生産量が少ないため、海外からのニーズがあるのに輸出拡大が進まないといった課題もあります。こうした実情を踏まえ、例えば、産地間の連携強化によって、農地面積や生産量の拡大による供給力の充実を図り、販路開拓とともに、輸出額を拡大していくことも必要です。
農林水産物・食品の輸出拡大に向けた「当面の戦略」を年末までに策定するに当たり、農林水産業の生産・加工・流通にわたって強みを生かし、弱みを打開する必要があると考えます。
■(国際協調)SDGs達成のけん引役に
先月、開催された国連総会では、新型コロナウイルスの対応を巡る米中の対立が鮮明になる中、首相は、一般討論演説において、多国間主義の重要性を協調されました。このような状況だからこそ、多元的な価値観と対話を重視する国際協調体制を強化すべきと考えます。
貧困・格差、気候変動など地球規模の課題は、未曽有の感染症拡大によって、ますます深刻化しています。その問題それぞれの解決をゴールに掲げたSDGsは、本年「行動の10年」をスタートしました。SDGsの実現には、多国間の取り組みが不可欠であり、その中心は国連です。本年は国連創設75周年であり、ますますその役割は大きくなっています。わが国としては、国連の行動を支援しつつ、「人間の安全保障」の理念のもと、SDGs達成に向けて、国内外の具体的な課題克服へリーダーシップ発揮を求めたい。
世界で保護主義的な動きが広がる中、日本がTPP11や日EU・EPAなど、自由で公正な経済連携協定の締結を協調を旨として主導してきたことを高く評価致します。去る23日に署名した英国との新たな包括的経済連携協定は、経済関係の緊密化と発展につながるものであり、今国会での承認手続きを急ぐべきと考えます。
■核兵器禁止条約
10月25日、核兵器禁止条約が、50カ国の批准を達成し、90日後の来年1月22日に発効することが決まりました。「いかなる場合も核兵器の使用を禁止する」との規定には、核廃絶をめざす上で、歴史的に大きな意義があります。
公明党は、先日、核廃絶に向けての緊急要望を政府に提出しました。要望では、延期されているNPT(核拡散防止条約)運用検討会議について、次の会議が開催された際に、成果文書が採択されるよう、合意形成に貢献することや、米ロの新戦略兵器削減条約(新START)の延長と、対象分野や中国などを含めた枠組み拡大の道を開くこと、核兵器禁止条約発効後に開催される締約国会合へのオブザーバー参加など、わが国の貢献のあり方をさらに検討していくよう求めました。
国連の中満泉事務次長との会談の際、中満氏は、「核廃絶という目的の根っこは共有しているというメッセージが、唯一の戦争被爆国である日本から出てくることが重要だ」と強調されておりましたが、全く同感です。核兵器禁止条約の発効が確実となった今、私は改めて、広島、長崎への締約国会合の招致を求めたい。
公明党は、日本が、核兵器国と非核兵器国との「真の橋渡し」の役割を担い、核軍縮を進め、核廃絶に向けた国際社会の取り組みをリードする重要な使命を有していると考えます。
◇
コロナ禍の影響は、今なお、国民生活に広く深く及んでいます。特に年末に向けては、企業業績や雇用情勢の行方が注視されるところであり、国民生活を断じて守り抜くとの決意であらゆる事態に備えた万全の対応が必要となります。
公明党は、未曽有の危機を乗り越え、安心と活力ある日本の未来を開くため、これまで克服できなかった課題を解決し、国民本位の政策実現に、より一層取り組んでいくことを改めてお誓い申し上げ、私の代表質問を終わります。
■菅首相らの答弁(要旨)
【菅義偉首相】
一、(新型コロナ対策)検査キットの製造メーカーに増産を要請するとともに、地域における診療・検査体制の整備に向け準備を進めている。
医療機関への支援については、これまでに約3兆円の支援を実施してきた。インフルエンザの流行期に備え、発熱患者などを対象とした外来体制が整う医療機関への支援を進めている。
一、(少子化対策)真正面から取り組む。不妊治療への保険適用を早急に実現する。男性が子育てに主体的に参加するための環境整備を進め、待機児童の問題については、年末までに新たな計画を取りまとめる。これらの対策について、全世代型社会保障検討会議の最終報告の中で、トータルな形を示していく。
一、(風水害の被害軽減)流域関係者が連携し、遊水地や雨水貯留施設の確保、海抜ゼロメートル地帯での避難体制の構築などに取り組み、水害に強い地域づくりを進めていく。
一、(ドクターヘリ)人件費の増額や飛行時間に応じた補助金の設定など、自治体などからの要望を踏まえ、予算の編成過程で必要な対応を行う。
一、(脱炭素社会)あらゆる政策を総動員して、地方自治体や経済界の取り組みを後押ししていく。
一、(デジタル庁構想での福島県の位置付け)会津若松市における教育・医療分野で、住民情報について同意を得た上で地域全体の住民サービスに活用する事例など、先行的な自治体の取り組みに十分配慮していく。
一、(国際社会における日本の貢献)核軍縮の進展に向けて、これまでも立場の異なる国々の橋渡しに努めてきた。
双方の関与や対話、共通基盤の形成に向けた努力を粘り強く促している。今後も、国際的な議論に積極的に貢献していく。
【赤羽一嘉国土交通相(公明党)】
一、(防災・減災)全国の気象台OB・OGから気象防災アドバイザーを任命し、新たな人材ネットワークを構築することで、市町村における地域防災力が一層向上するよう取り組む。