「第13回公明党全国大会 幹事長報告=全文」(公明新聞2020/09/29 3面より)
27日に開催された第13回公明党全国大会での幹事長報告(全文)を掲載する。
■(はじめに)新たな自公連立政権のスタート
菅義偉新政権が16日に発足し、自公連立政権は新たな体制で日本のかじ取りを担うことになりました。憲政史上歴代最長となった安倍晋三前政権では、長期停滞していた日本経済を回復軌道に転換させるとともに、国際社会での日本のプレゼンス(存在感)を高めるなど多大な成果を上げました。公明党は連立政権の一翼を担い、教育無償化を柱とした「全世代型社会保障制度」の充実や消費税の「軽減税率」の実現など、後世に残る画期的な意義を持つ数々の政策の推進に大きな役割を果たしました。
安倍前政権が7年8カ月もの長きにわたり続き、国内外の政治を前進させ、国民の信頼を得ることができたのは、自公連立によって政治が安定していたからです。政治の安定は民主主義の土台であり、それは国民とのたゆまざる対話を通じて生活現場の声を政治に生かす努力があって初めて成り立ちます。
公明党は日々、地域で庶民の声を聴きながら、国民的な合意形成の政治を進め、政権運営が生活者目線から外れないようアクセルとブレーキの役割を担ってきました。その意味で、日本の政治が安定し、国民に安心感を持ってもらえているのは、公明党が連立政権にいるからにほかなりません。
マスコミによる世論調査によれば、今後も自公連立政権の維持に期待するとの回答が6割に上り、4年以上の長期政権を望むとの回答も半数を上回っています(8月31日付日本経済新聞)。新しい菅政権にあっても、公明党は政治の安定と改革を担う“要”の存在として責任を果たし、国民の負託に応えていく決意です。
新政権としては、15日に自公両党が交わした9項目の連立政権合意の実行に総力を挙げねばなりません。特に、未曽有の国難ともいうべき新型コロナウイルスの感染拡大が社会・経済に甚大な影響を与えている深刻な事態を乗り越え、明るい未来を切り開くには、感染拡大への備えや経済対策に万全を期した上で、将来の見通しを示し、国民の不安払拭に努めることが必須です。連立与党として公明党は、感染症の一刻も早い収束に取り組むとともに、ポストコロナ時代の新たな社会の構築に全身全霊を傾けます。
■新型コロナの経緯と現状認識
新型コロナウイルスの感染はパンデミック(世界的大流行)となり、今なお世界各地で猛威を振るっています。グテレス国連事務総長が「これは経済危機、社会的危機、急速に人権上の危機になっている人類の危機」と指摘したように、コロナの世界的な流行は国際秩序や世界経済から一人一人の生活にまで大きな影響を与え、世界は第2次大戦以降、最大の試練の時を迎えています。
人類は今、時代を画する分岐点にいます。14世紀に欧州で流行したペストや20世紀のスペイン風邪――。過去の歴史を見ても、パンデミック後には大きな社会変革が起きました。今回のコロナ禍を受け、世界の秩序や社会のあり方はどう変わるのか。グローバル化や国際協調の行く末はどうなるのか。日本は民主主義を強化し、感染症はじめ、さまざまな地球的問題群を乗り越えられる強靱な国家を築けるのか。まさに政治のかじ取りが問われています。
■日本政府の対応
コロナの感染拡大に対し、わが国では感染症対策の専門知を生かし、主に、密閉・密集・密接の「3密」回避や外出自粛を国民に要請するとともに、医療崩壊を防ぐための徹底したクラスター対策を実施してきました。こうした政府の対応は、医療従事者らの懸命な努力と国民の協力に支えられ、結果として、欧米諸国などに比べ感染者数・死者数を少なく抑えることができ、世界保健機関(WHO)も「成功している」と評価していますが、一連の対応がどうだったのかは、今後、検証が必要と考えます。
現在も東京、大阪をはじめ、コロナの感染状況は決して楽観できるものではありません。さらなる感染拡大に備えつつ、「新しい生活様式」を定着させながら、いかに社会活動、経済活動を軌道に乗せていくか、難しい局面が続いています。
■公明党の対応
この未曽有の危機に対し、<生命・生活・生存>を最大に尊重する人間主義、中道主義に立脚する公明党は、コロナ禍から国民を守る闘いに総力を挙げて取り組んできました。
政府に先駆けて党対策本部を設置し、専門家会議の設置をはじめ、現場の声を踏まえた対策を、30を超す提言として政府に要請し、着実に実現してきました。
中でも、全ての人に一律10万円を支給する特別定額給付金は、「社会の分断をつくらない方向に導いた。もし、一律給付という形でなかったならば、日本社会は大変な状態になっていた」(5月6日付公明新聞、作家の佐藤優氏)、「日本で暮らす全ての人の命と暮らしを守る意味で非常に重要」「公明党は現場の声を届けるボトムアップ(積み上げ)型の政党として本領を発揮した」(4月26日付公明新聞、飯田泰之・明治大学准教授)などと高く評価され、大きな意義がありました。
また、全国の地方議員と連携し、中小企業やフリーランス、アルバイト学生、文化芸術に携わる方々など一人一人に寄り添う支援策を、前例にとらわれることなく進めてきました。とはいえ、現状の支援策だけで十分とは言えません。引き続き感染状況や社会・経済への影響を注視し、必要な対応を政府に促してまいります。
このコロナ禍の中で、現在も多くの人が何かしらの“困り事”を抱えています。今こそ「大衆とともに」との立党精神を赤々と燃え上がらせ、この新しい時代に対応した議員活動を展開し、国民の暮らしを守り抜く闘いにまい進しようではありませんか。同時に、「日本の柱・公明党」として、コロナを経験した後のポストコロナの時代に誰もが安心できる未来を開くため、新たな社会ビジョンの方向性を確認し、共々に決意新たに出発してまいりたいと思います。
■(コロナ禍で見えてきた課題=日本社会)経済・生活基盤のもろさ顕在化
コロナ禍は、内外のさまざまな課題をあぶり出しました。国民生活に目を向けると、通常時は困窮するような状態になくとも、経済・生活の基盤が脆弱なため、緊急事態宣言を受けて社会経済活動が広く停止・抑制され、収入が途絶もしくは大幅に減少した途端に、程なく行き詰まってしまう個人や事業者がいかに多いかが、今回、顕在化しました。
個人では、非正規雇用やフリーランスなどで働く人々の間で、こうした状況が多く見られました。事業者では、観光業や旅館業、小売業、飲食業などの中小企業・小規模事業者を中心に、わずか1カ月でも客が来なければ経営が立ち行かなくなるという“自転車操業”が多い実態も明らかになりました。
これらは、物価や賃金が下がり、経済が縮小していくデフレが長年にわたって続き、日本経済の足腰が弱くなっていたことの一つの表れと言えます。
結果的に、こうした事態を招いたことを真摯に受け止め、コロナ禍の中でも日本経済が再びデフレに逆戻りすることがないよう政策を総動員し、個人や事業者の経済的な基盤を強くする取り組みを進めなければなりません。
■デジタル化の遅れ
日本の行政は業務の遂行にスピード感が不足し、必要な人にタイムリーに手を差し伸べることができない実態も明らかになりました。政府・与党が一律10万円などの各種給付金の支給を決め、政府・自治体で懸命に準備を進めても、実際の給付にはかなりの時間を要しました。
その最大の背景とされるのが、行政のデジタル化の遅れです。今なお、行政手続きや医療、教育、司法など多様な場面で対面や書面を求め、紙ベースでの膨大な事務処理を余儀なくされている現状を変え、デジタル技術の活用で迅速・効率化していかなければなりません。
■感染症への備え足りず
また、医療を巡っては、欧米諸国と比べて新型コロナによる死者数を少なく抑えられている要因の一つとして、日本の国民皆保険制度の存在が挙げられます。一方で、急速な感染拡大に直面する中で病床不足が顕著になるとともに、医師が必要と判断してもPCR検査をなかなか受けられないといった事態にも見舞われ、4月の緊急事態宣言発令のきっかけにもなりました。多くの医療資源や保健所などの対応能力が必要となるパンデミックに対して、わが国の備えは不十分だったと言わざるを得ません。
また、マスクや防護服などの医療資材の多くを海外に依存してきた結果、パンデミックが起こった途端に供給が滞ってしまいました。
■非常時の権力のあり方
コロナ禍は、非常時の権力のあり方を巡る課題も突き付けています。日本は他国と異なり、全面的な強制力を持たない緊急事態宣言で対処し、自粛要請を受けた国民の自助努力で一定の拡大抑制に成功しました。このことについて、「自分たちの将来は自分たちで決めるということを、戦後、初めて真剣に考えるきっかけになったはず」「日本の民主主義のあり方を考える良い契機となったのではないか」(6月10日付公明新聞、先崎彰容・日本大学教授)など、前向きに捉える指摘があります。
一方、自粛要請については、翼賛的な発想の下、国民の同調圧力を利用する手法で、行政府の力を強めることにつながる可能性があるとの指摘があります。さらに、「非常時の権力は日常の中にとどまろうとする傾向があり、民主主義を破壊しうる」(4月20日付読売新聞、社会学者の大澤真幸氏)との懸念も踏まえると、国民への自粛要請という手法であっても、ともすれば政治権力が恣意的に利用できる余地が残る懸念は拭えません。
日本が健全な民主主義国家であり続けるためには、情報公開を徹底して進めるとともに、非常時の対応を客観的に検証・総括していくことが求められます。感染拡大の収束後、一連の対応を冷静に検証し、次なる感染症や大規模自然災害も見据えた緊急事態時の権力のあり方について、国と地方自治体の役割分担なども含めて、落ち着いて議論を深めていくことは必要と考えています。ただ、日本の危機管理法制は法律以下のレベルで相当綿密に書かれていることも踏まえると、こうした議論と憲法改正論議を結び付けることには、慎重であるべきと考えます。
■(コロナ禍で見えてきた課題=国際社会)グローバル化の後退と分断拡大の懸念
ヒト・モノなどの自由な往来を通じて経済効率を高めるグローバル化――。これによって、感染の世界的な急拡大、つまりパンデミックが引き起こされるという“副作用”が今回、出てきました。
その結果、自国での感染拡大防止に向けた水際対策として出入国を厳しく管理し、医療物資などの供給が滞る中で、それらの囲い込みを始めるといった形で、各国はグローバル化と真逆の動きを余儀なくされました。
そうした中で、国際協調を軽視し自国の利益だけを最優先する、行き過ぎた「自国中心主義」が、国によっては、国家指導者の政治権力を強化する動きとセットになって台頭している現状もあり、世界で分断が広がるのではないかと懸念されています。
■(ポストコロナへの対応、展望=内政)「新しい社会」の構築へ三つの視点
内政における最大の課題は、感染拡大予防と社会経済活動を両立させる「新しい生活様式」を定着させつつ、コロナ禍を収束させることです。さらに、来夏の東京五輪・パラリンピックの開催に努力するとともに、後退局面に入った景気を政策総動員で下支えし、回復軌道に戻さなければなりません。
そのためにも、国民の間に漂う先行き不安と閉塞感を払拭する“希望と安心の社会ビジョン”を提示することが政党の重大な責務です。ここでは、ポストコロナの新しい社会像を構想する上で、われわれが重視すべき三つの視点を指摘しておきたい。
第1に、人間主義、中道主義の理念を基盤とした「生命尊厳の社会」です。第2に、今後も起こり得る未知のウイルス感染症や激甚化する自然災害との闘いにおいて、ダメージを最小限に抑える防御力とともに、災禍前よりも、さらに安全で安心な地域社会と国土を再構築できるレジリエンス(復元力)を備えた「しなやかで強靱な共生社会」です。第3に、少子高齢化・人口減少が進行していく中で、社会的分断や格差拡大を抑制し、単身高齢者らを孤立させない「創造的包摂社会」です。
こうした視点から、経済再生や地方創生、社会保障のあり方など今後の内政課題にどう取り組むべきか、展望したいと思います。
■日本経済の再生
ポストコロナ時代の経済のあり方については、国内外から文明論的な転換の必要性を訴える声が上がっています。
例えば、フランスの経済学者ジャック・アタリ氏は、「現在の経済の方向を変えて『生命を守る産業』に集中する必要がある」(5月10日付産経新聞)と指摘しています。これまで当たり前と思われてきた利益追求を最優先する価値観を転換し、人の命を守る医療や介護、環境保全などに軸足を置いた「生命尊厳の産業社会」を築いていくことが求められています。
こうした分野におけるイノベーション(技術革新)を成長の源泉としていかねばなりません。少子高齢化・人口減少、人手不足が急速に進む中で、地域の医療・介護を支えるためには、遠隔診療などICT(情報通信技術)の活用や、ロボットやドローンといった最先端機器を生かした取り組みが不可欠です。さらに環境分野においても、洋上風力発電の普及など脱炭素社会に向けた取り組みの加速化が急務です。
グローバル化の“副作用”の教訓を踏まえ、これからのイノベーションは、大企業だけではなく、地域の経済・産業を支える中小企業・小規模事業者も一体となって進めることが重要です。中小・小規模事業者の中には、従来からの構造的な後継者難にコロナ禍が追い打ちとなって、廃業を検討し始めているところも少なくありません。これまで以上に経営相談などの事業承継対策を強化し、持続可能な経営基盤の整備を支援します。
全国各地、それぞれの地域の特性に合わせたイノベーションを推進するため、市区町村ごとに可能なところから「わが街の経済再生プロジェクト」の策定を提案していきたい。こうした試みを具体化させつつ、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図り、“危機”に強い自立的な地域経済圏の構築をめざします。
国や都道府県においては、中小・小規模事業者の収益率アップ、生産性向上に直結するICT導入、デジタル化への投資を促進させるとともに、海外展開を支援する仕組みを強化すべきです。
■一極集中の解消、地方創生を推進
先に掲げた共生と包摂を重視する地域社会をめざす上で、大都市圏と地方のバランスが重要です。東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)への一極集中を是正するとともに、北海道から沖縄まで多種多様な個性を生かした地方創生を、さらに進めなければなりません。
感染症の拡大に伴い、職場以外の場所で仕事をするテレワークなどの普及が進み、地方でも東京圏でも同様に仕事ができるようになりました。東京圏への一極集中から地方分散への流れをつくり、地方創生を大きく加速させるチャンスです。
地方分散は、多様な人材が活躍できる場を広げるだけでなく、地域の生産性向上にも大きく貢献します。これを進めるには、医療や教育、福祉など基本的なサービス提供の基盤が整い、まとまりを持った“地域の核”が必要です。少子高齢化・人口減少の中で知恵を絞り、そうした核の形成を促進したい。その上で、サービスの供給などが単独で完結できない地域に関しては、自治体同士、地域共同体同士で補い合う多核連携型の国づくりを進めていきます。
行政の効率化や企業の生産性向上につながるデジタル化は、地方創生の大きな“武器”になります。デジタル化への集中投資と環境整備を積極的に進め、その恩恵を享受できる「新たな日常」を広げ、定着させていきます。その際に社会の分断、格差を生むことがないよう、「誰一人取り残さないデジタル化」社会を築くという観点が重要です。国民一人一人に最低限度のICTを活用できる環境を保障する「デジタルミニマム」を基本理念とし、デジタルデバイド(情報格差)が生じないように検討を進めます。
■「ベーシック・サービス」論を検討
公明党は結党以来、全民衆の最大幸福をめざす「大衆福祉」の旗を掲げてきました。社会保障制度の安定と充実に向けた2012年の「社会保障と税の一体改革」では、公明党が主導して民主、自民との3党合意を実現。これをスタートラインにして、従来の年金、医療、介護に教育無償化など子育て支援を加え、老若男女、誰もが安心して暮らせる画期的な全世代型社会保障へと踏み出しました。=4面に続く
——————————
第13回公明党全国大会 幹事長報告=全文」(2020/09/29 4面より)
2025年以降、団塊の世代全員が75歳以上となり、医療・介護ニーズの急増が予想される一方、社会保障の支え手の減少にも直結する少子化も危機的状況にあります。さらに今回のコロナ禍では、生活保護の申請が急増するとともに、多くの世帯が生活に困窮していることが判明。低所得層だけでなく中間層も含む全ての人を受益者とし、社会に「分断」をもたらさないようにする新たなセーフティーネット(安全網)の整備を求める声が高まっています。
具体策の一つとして注目されているのが、全世代型社会保障の考え方をさらに推し進めた「ベーシック・サービス」論です。これは、医療や介護、育児、教育、障がい者福祉、住まいなど人間が生きていく上で不可欠な基本的サービスを無償化し、「弱者を助ける制度」から「弱者を生まない社会」へと福祉の裾野を大きく広げるものです。ベーシック・サービスに似た手法として、全ての個人に一定額の現金を継続的に給付するベーシック・インカムがありますが、給付の中身がサービスと現金では、決定的に異なります。
公明党はこれまで、全ての消費者の痛税感を緩和する軽減税率の実施、さらに教育無償化や未婚のひとり親への支援など、経済的、社会的理由による分断や格差を生み出さないように、“防波堤”として社会の安定を担う役割を果たしてきました。
誰も置き去りにしない包摂社会を築くためには、従来の枠組みにとらわれず思い切った発想で改革を推進していかねばなりません。三つの視点に言及した中で、包摂社会に「創造的」と冠したのは、不断の改革を断行するという意味を込めたものです。こうした観点からポストコロナ時代における新たなセーフティーネットを構築するため、ベーシック・サービス論を本格的に検討する場を党内に設け、給付と負担の両面から積極的に議論を行っていきたい。
■国家戦略として医療体制を抜本強化
社会保障制度の中でも、医療に関しては、国民の生命と健康を守る安全保障、すなわち「医療安全保障」と捉えるべきです。例えば、マスクや防護服など感染症対策に不可欠な医療資材は、いざという時に国内で全て賄えるようにしなければなりません。こうした危機管理の観点も含め、医療提供体制の不備を洗い出し、国家戦略として抜本的な強化をめざします。
とりわけコロナ禍で脆弱性が浮き彫りになった感染症医療の基盤強化と、公衆衛生の最前線に立つ保健所の体制強化は喫緊の課題です。また、感染収束のカギを握る治療薬やワクチンについては、海外の幅広い先行開発品の確保に全力を挙げる一方、政府が製薬会社や研究機関を強力に後押しし、産学官が一体となったオールジャパン体制で知見を集結させ、開発・生産に取り組むべきです。
■防災・減災・復興を社会の主流に
地球温暖化をはじめ気候変動の影響もあって、近年の自然災害は激甚化・頻発化しています。昨年は台風19号による大規模水害に見舞われ、今年は7月の豪雨災害で、熊本県を中心に九州、中部、東北地方など各地で河川が氾濫し、甚大な被害が発生しました。
わが党は福祉と合わせて「防災・減災・復興」対策を政治の主流に据える闘いを展開してきました。今後はさらに、しなやかで強靱な国づくりを進めていかなければなりません。
具体的には、防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策(18~20年度)後も防災・減災対策の予算を十分に確保し、中長期的な視点に立った新たな「5カ年計画」の策定に取り組みたい。防災・減災に関する日常的な意識・行動の変革が幅広く国民に共有される社会を築くとともに、国と地方でハード・ソフトの総合的な施策を推進していきたい。
地域の防災力向上のため、専門家の育成に力を入れるとともに、各自治体が作成しているハザードマップ(災害予測地図)の周知徹底、それに基づく避難体制の構築、高齢者や介護を必要とする人など災害弱者に対する避難対策を一段と加速させることが重要です。
さらには、想定を上回る洪水の発生にも対処できるよう、国、自治体、企業、住民が一体となって、河川流域全体で治水に当たる「流域治水」へと政策を大きく転換させ、水害リスクの軽減に総力を挙げて取り組みます。
また、近年の豪雨災害の教訓を生かし、線状降水帯の発生に関する早期予測を可能にするなど防災気象情報の技術的向上を図るとともに、水害リスクを軽減する住まいや土地利用のあり方についても議論を進めます。
災害時の感染症の拡大防止に関しては、「3密」回避など各避難所における対策に加え、分散避難や在宅避難を推進するため、ガイドラインなど必要な見直しを進めていきます。
■(ポストコロナへの対応、展望=外交・安保)国際協調へ日本がイニシアチブを
人類の歴史は感染症との闘いの歴史でもあり、新型コロナの収束後も人類が新たな感染症に見舞われる可能性は否定できません。ましてグローバル化が進んだ現代では、1カ国でも感染症の封じ込めに失敗すれば感染拡大が収束することはありません。
今こそ、人類の英知を結集し、感染症に強い国際社会を構築する必要があります。
感染症だけでなく、気候変動や核軍縮など地球的問題群の解決には国際社会の連帯が不可欠です。米国のWHO脱退の動きなどにみられるように、国際社会が「自国中心主義」の荒波にさらされる中にあって、日本が国際世論の醸成をリードし、国連機関の機能強化など多国間協調の深化へイニシアチブ(主体性)を発揮すべきです。
「地球民族主義」を掲げ、「平和の党」を自負する公明党は、多元的な価値観と対話を重視する国際協調体制を強化しなければならないと考えます。中国や韓国など世界各国と信頼関係を結んできた政党外交に一段と注力し、与党として政府を動かしていく決意です。
過去20年以上にわたり、日本が国際社会の取り組みを主導してきたのが、あらゆる恐怖や欠乏から個人を守るための「人間の安全保障」です。公明党はいち早く「人間の安全保障」を主張し、政府も外交の柱としてさまざまな施策を展開しています。
この理念を具現化したのが、2030年までに「誰一人取り残さない」社会の実現をめざす国連の持続可能な開発目標(SDGs)です。公明党は30年の目標達成に向けて、SDGs「行動の10年」の取り組みをリードしていきます。
■国際社会の平和と安定に貢献
米中両国の対立の激化は、今や“新冷戦”とも呼ばれる様相を呈しており、その影響が多方面で懸念されています。米ロ間の核軍縮交渉も停滞し、北朝鮮問題は日本を含むアジア太平洋地域の不安定要因です。日本は米国との同盟関係を基軸としつつ、隣国である中国との友好関係を維持・強化するとともに、日本と同じ「自由」と「民主主義」を理念に掲げるEU(欧州連合)やアジア太平洋諸国との連携を強めて安全保障環境の変化に即応していくことが重要です。国際社会の平和と安定へ、公明党が安全保障対話の要役を務めていきます。
核兵器の廃絶については、平和貢献における最重要課題として全力で取り組みます。
17年に国連総会で核兵器禁止条約が採択されましたが、公明党は核兵器を違法とした同条約を、大局的に核兵器に関する国是である非核三原則を国際規範にまで高めた画期的なものとして評価しています。
核保有国と非保有国との間で同条約を巡る対話が停滞する中、世界で唯一の戦争被爆国である日本が対話の橋渡し役を担うべきであり、核軍縮を進めるための環境を整備していく必要があります。
■感染症対策で医療支援を強化
さまざまな分野で日本の強みを生かし、国際貢献につなげていく取り組みも重要です。
一つは、新型コロナのワクチンや治療薬の開発に総力を挙げ、全ての感染国に迅速に普及させることです。抗HIV薬の途上国での普及に貢献した「特許権プール」のように、医薬品の特許権を第三者が安く利用できるようにする仕組みの構築を日本がリードすべきです。
また、途上国のオーナーシップ(自主性・自律性)を重視する日本の手法は相手国から評価されており、コロナ対策についても、こうした方針のもと途上国支援に取り組むべきです。
発展途上国の子どもたちへの予防接種を推進する「Gaviワクチンアライアンス」に対する支援の継続・強化も進めていきます。
■「防災・減災」分野での技術協力を支援
多くの自然災害に直面する日本は、「防災・減災」関連の技術を発展させ知見を蓄えてきました。災害の脅威から個人を守る取り組みは、「人間の安全保障」や「SDGs」の重要な柱でもあります。“防災先進国”として、災害に対して社会を強靱化する分野で世界に貢献すべきです。「防災・減災」に対する取り組みを、日本のみならず国際社会でも主流とするため国際防災協力に力を入れたい。その具体的な行動として、災害犠牲者を減らす国際貢献策「仙台防災協力イニシアチブ」のフェーズ2を強く推進し、途上国における堤防や排水路の整備といった洪水対策、防災計画の策定などの支援を強力に進めます。
■脱炭素社会をリード
気候変動は人類共通の脅威です。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では、30年度に13年度比で温室効果ガスの排出量を26%減らす目標を設定しています。この目標達成に向けた取り組みを日本がリードすべきです。「環境の党」公明党として、石炭火力発電所の新増設の禁止や再生可能エネルギーの利用拡大を積極的に進め、脱炭素社会の実現をけん引していきます。
■(党勢拡大に向けて)新しい時代に対応し人のつながり・絆を再構築する活動を
いかなる時代にあっても、公明党は「大衆とともに」との不変の立党精神を掲げ、地域を照らす“希望の灯”“庶民を守る柱”です。ポストコロナという新しい時代を迎えるに当たって、私たちがまず取り組まなくてはならない課題は人や地域のつながり・絆の再構築です。感染防止のため人と人とが接触を控えたことによって、人同士、または人とコミュニティーのつながりが弱まりつつあります。暮らしの基盤である地域社会で、人がますます孤立し、疲弊していくとの懸念さえ指摘されています。こうした流れに歯止めをかけ、地域に活力を取り戻さなければなりません。
政治の礎になければならないのは、国民からの信頼です。「会って対話するといった接触型の重要性は忘れないでほしい。これ以上に有権者からの信頼を得られる方法は見当たらない」(8月24日付公明新聞、中北浩爾・一橋大学教授)との指摘のように、地域で信頼関係を築いていくには、直接、人に会って声を聴き、議員の人柄や考えを理解していただく以外にありません。
公明党のネットワークの力は、地域や一人一人との「絆」の強さです。困っている人がいれば、すぐに飛んで行き、議員と党員、支持者は地域住民と“信頼”という強い絆で結ばれています。公明党には、結党以来、積み重ねてきた、その信頼の基盤と実績があります。今こそ、全議員が「大衆とともに」との立党精神を胸に地域に飛び込み、住民一人一人を励まし、切実な声に耳を傾ける「1対1の対話運動」に徹していこうではありませんか。
ただ、コロナ禍にあって、対面による十分な対話が難しいという新しい状況の中で「運動」を進めるには工夫が必要です。そこで、それを補完する意味で、近年取り組みを強化してきた情報通信技術の活用を積極的に進めていきたい。特にSNS(会員制交流サイト)、オンライン通話の利活用は、議員の発信力を高めるだけでなく、コミュニケーションの機会を増やす上で有益な手段と言えます。このほか、電話や広報紙など、あらゆる方法を駆使して、コロナ禍から国民の暮らしを守り、信頼を勝ち得ていく公明党議員の闘いを展開していきたい。
また、党勢拡大に向けては、議員の日常活動の大きな柱として、議員個人の人脈などを生かした「小グループ」作りを強力に進めます。「小グループ」で定期的に意見交換を重ねて地域の声を政策に生かしていく、こうした地道な取り組みの中で党理解の輪は着実に広がります。「小グループ」を通じて地域により深く根差し、決して揺らぐことがない強固な党の基盤を築いていきたい。
■女性、青年運動
党理解を広げていく闘いのもう一つの柱が女性、青年運動です。これまで公明党が女性や青年に光を当てた政治を一貫して志向してきたのは、女性や青年の活躍が活気あふれる日本を築く上で不可欠だからです。
女性の社会参加は徐々に進みつつありますが、非正規雇用が多く、男性との所得格差は依然として大きいままで、改善が必要です。貧困、孤立、DV(ドメスティックバイオレンス=配偶者などからの暴力)など困難を抱えた女性たちに寄り添い、支援をしていかなければなりません。また、女性のライフスタイルの変化に伴い、女性を取り巻く環境も悩みも多様化しています。こうした課題に向き合い、解決に導くため、党女性委員会が全国各地で精力的に展開する「ウイメンズトーク」を軸に、さまざまな境遇の女性の“生の声”を政治に生かす運動を草の根レベルで進めていきます。
一方、青年の訴えは、社会全体を変えていく大きな力を秘めています。しかし、バブル経済崩壊後に生まれた青年からは、非正規雇用や低賃金、仕事と育児・介護との両立、不本意な退学などの困難に直面し、将来への希望を見いだせず「政治から取り残されている」との不安の声も聞かれます。この苦境を打開し、青年の力を糾合するには、青年の声をより政治に反映させていくことが必要です。その問題意識から、党青年委員会が昨年末から今夏にかけて対面やオンラインで全国的に実施した「ユーストークミーティング」で寄せられた若者の声を基に「青年政策2020」を取りまとめ、8月に首相に提言しました。この中では「分断なき社会」を実現するため、幅広い分野の政策を提案しており、今後、予算や施策として実現に取り組んでいきます。
■公明新聞の購読推進
公明新聞は、一般のマスコミでは報道されない政策実現までの取り組みなど、公明党の“真実の姿”を正確に発信する党勢拡大の強力なツールです。特に、災害時に公明議員が被災地に足を運び、被災者に寄り添い、その声を政策に生かそうと奮闘する姿は共感を生み、読者の党理解に直結します。また、与党唯一の日刊紙として、政府・与党の今の動きや考え方が毎日、国民に速報される意味は大きいものがあります。
さらに、「極端な右にも左にもくみしない、良識派の知識人が党を超えて集まっている。政治ニュースを読みながら、こうした知性と教養に触れられるのは公明新聞の強み」(17年4月2日付公明新聞、劇作家の山崎正和氏)などの指摘のように中道、良識派の論調を国民に提供し、国民的なコンセンサス(合意)をつくる役割も果たしています。
党全体に常に立党精神が行きわたり、ネットワークの力を最大限に発揮できるのは、公明新聞が党の理念や運動などをリアルタイムで報道しているからにほかなりません。各地域で公明新聞が紙として配られてきた、その積み重ねが地域のネットワークの構築につながっています。
それに加え、公明新聞電子版はスマートフォンやパソコンで簡単に閲覧でき、いつでも、どこでもアクセスできます。電子版はSNSと連動して新しい運動につなげることや、さらに幅広い層のネットワークの構築にも大きく役立ちます。
公明新聞拡大では、従来の紙媒体に加え、こうした電子版の特長をアピールしてまいりたい。今年6月からスタートした企業・団体購読の「ウェブ申し込み」の利用も促しつつ、新たな購読層の拡大に挑み、全議員が自身の目標を達成しようではありませんか。
■(政治決戦の連続勝利へ)次期衆院選、参院選に断じて勝利
今後2年間の国政選挙を展望すれば、衆院議員の任期満了まで1年1カ月を切り、再来年夏には参院選を迎えます。いずれも将来の日本の方向性を左右する重要な選挙であり、全てに勝ち抜かなければなりません。政治を安定に導き、国民目線の政策を力強く推進していく公明党の持ち味を発揮するため、この“政治決戦”に断固勝利し、党の基盤を揺るぎないものにしていきたい。
■統一外地方選挙に完全勝利し、党勢拡大の波を
一方、統一外地方選は間断なく行われており、特に来年夏には、統一外地方選として最大の戦いである東京都議選を迎え、来年初頭からは、政令市の北九州市や、岡山県倉敷市、大阪府茨木市、埼玉県戸田市など大型の市議選も控えています。こうした一つ一つの戦いに勝ち抜き、党勢拡大の大きなうねりを起こしてまいりたい。全議員が総立ちとなって「公明党ここにあり」の旗を地域で高々と掲げながら、最高の上げ潮の中で政治決戦を迎え、断じて勝利しようではありませんか。