「医療体制強化へコロナ専用病院 感染者の急増に備える」(公明新聞2020/08/23 1面より)
新型コロナウイルスの感染者急増に備えた医療体制の強化策として、軽症または酸素投与が必要な中等症の患者を受け入れ、重点的に治療する専用病院が注目を集めています。公明党が強力に推進した東京都をはじめ、各地の開設の動きを紹介します【表参照】。
■東京は今秋オープン/軽症・中等症向け200床
東京都では、東海大学医学部付属東京病院(渋谷区)が9月中、旧都立府中療育センター(府中市)が設備改修を経て11月中にそれぞれ、コロナ専用病院として開設します。
都は、両施設とも約100床ずつの計200床の病床を確保し、軽症や中等症の患者を受け入れます。今回の開設によって、ひっ迫が懸念される病床利用率の緩和に加え、一般病院の負担軽減にも効果が期待されています。
都がコロナ患者向けに確保している病床数2500床に対し、入院患者数は1565人で、病床利用率は約62%に上っています(8月21日現在)。この数字は、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が示した感染状況の指標では、病床の追加確保などが必要とされる「ステージ3」の基準を大幅に超えるものです。
一方、コロナ患者を受け入れている一般病院は、感染リスクを懸念する一般患者の受診控えなどにより、経営に大きな打撃を受けています。加えて、コロナ患者に対応する人員の確保や院内の感染防止対策の徹底など運営面での負担も大きいことから、医療関係者から、専用病院の開設を求める声が上がっていました。
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専用病院の開設について都議会公明党(東村邦浩幹事長)は、3、4月に都内の医療機関でクラスター(感染者集団)が発生したことや中等症患者が増加している現状を踏まえ、小池百合子知事への緊急要望や議会質問などを通して、強力に推進してきました。
今月17日には療育センターを視察。翌18日には小池知事に会い、両専用病院の早期開設とともに、さらなる患者の増加に備えた、都立・公社病院などを活用した専用病院の拡充を重ねて要望しました。
■神奈川(3カ所)、大阪(2カ所)で開設/愛知は10月中旬をめざす
神奈川県は5月から、コロナの軽症・中等症患者向けの専用病院を3カ所設けています。病床数は、海老名総合病院東館(海老名市)が非公表、県臨時の医療施設(鎌倉市)が180床、旧北里大学東病院(相模原市南区)が50床となっています。
同県では、一般診療と並行し、入院が必要と診断されたコロナ中等症患者の受け入れも行う「重点医療機関」の指定を進め、他の医療機関からスタッフを派遣するなどして、医療体制の拡充に努めてきました。加えて、オーバーシュート(爆発的患者急増)による医療崩壊を防ぐため、新たに開設したのが三つの専用病院です。
愛知県は10月中旬から、コロナ専用病院(仮称・県立愛知病院、岡崎市)の運用をめざしています。同病院の経営は昨年4月、県から岡崎市に引き継がれていました。しかし、コロナの感染拡大を受け、県が市から同病院を借り上げ、専用病院として整備することになりました。
受け入れ対象は、主に中等症患者と、軽症だが重症化するリスクの高い高齢患者となっています。開設当初は50床、最大100床を確保する予定です。
大阪府には、中等症患者向けの大阪市立十三市民病院(同市淀川区、90床)と、軽症の高齢患者を中心に受け入れる阪和第二病院(同市住吉区、24床)の二つの専用病院があります。患者の受け入れを集約することで、治療が遅れたり、一般診療の患者が後回しになったりすることを防ぐのが狙いです。
■治療の要、全国へ広がってほしい/日本集中治療医学会理事長、藤田医科大学主任教授 西田修氏
専用病院は、コロナ患者と一般患者を分けて診療する必要がないため、患者の管理がしやすく、医療の質の向上が期待できます。
また、専用病院にコロナ患者を集約することによって、地域の医療機関の負担は減り、一般患者にとってもコロナ以前に近い形で診療してもらえるようになるメリットがあります。
私自身、3月半ばから、国に対して専用病院の必要性を訴えてきました。政治の場において、東京都で推進役を担ったのは都議会公明党だと聞いています。医療に携わる一人として敬意を表します。
コロナに限らずさまざまな重症患者の命を預かる集中治療の現場にいる立場からも、専用病院への期待は大きいです。集中治療室(ICU)など医療資源が限られる中、治療が必要な患者が専用病院から来るか、あるいは一般病院から来るか、受け入れる側があらかじめ把握できれば、感染防御の要否を踏まえ、安心して治療に専念できます。
専用病院はコロナ治療の要です。患者のみならず、そこで働く医師や看護師など医療従事者が差別を受けるようなことがあってはなりません。この点も政治の側できちんと対策を講じ、専用病院が全国に広がっていってほしいと願っています。