「コロナ禍とメンタル 誰もが不調になり得 国立精神・神経 医療研究センター 藤井千代部長に聞く」(公明新聞2020/08/31 2面よ り)
「コロナ禍とメンタル 誰もが不調になり得 国立精神・神経医療研究センター 藤井千代部長に聞く」(公明新聞2020/08/31 2面より)
新型コロナウイルス感染症拡大の影響が社会全体に及び、長期化する中で、メンタル面での不調をどう防ぐか。国立精神・神経医療研究センターで地域・司法精神医療研究部長を務める藤井千代氏に聞いた。
■身近な人による初期支援が有効、異変感じたら相談/情報過多、コントロールを
――コロナ禍でメンタル不調になる人の傾向は。
元々、不調を抱えていた人だけでなく、そうでない元気な人に影響が出ることもあり、「自分がメンタル不調になるわけはない」と考えて相談せず、治療が遅れる場合がある。「みんなが頑張っているから自分も……」などと奮起する人もいるが、それが過剰になると不調に気付かなくなり、本格的なうつに陥ってしまう。
あえていえば、収入が減った、就業形態が変わったなどの現実に起こったことに対して不安を感じる場合と、「コロナに感染するかもしれない」「仕事をなくすかもしれない」といった、起こるかもしれないことを予測して不安になる場合とがあるが、コロナ禍では誰でもメンタル不調になり得ると考えてよい。
――不調を防ぐには。
身体的健康は心の健康に直結する。食事、睡眠などの生活リズムを整えたり、少しでも運動することが大事。それがうまくいかなければ誰かに相談したり、診察を受けるなどの対処が必要だ。不眠や過眠、食欲減退や暴飲暴食などが現れ、生活リズムを保てなくなったときは、要相談だ。
飲酒には注意してほしい。アルコールは、短期的には気分を高揚させるが、長期的には、うつに傾かせる。酒量が過剰になると元のストレスがかえって大きく感じられたり、身体の健康が損なわれることもあり、悪循環が生じかねない。
情報コントロールも重要だ。コロナ関連のニュースばかりで情報過多になる中で、メンタル不調になる人も少なくない。信頼できる情報源以外は無視するなど、ある程度、自分でルールを決めるべきだ。情報をコントロールすることで、薬などを使わなくても回復することはよくある。
自分の状態が、いつもと違うと感じたら自分だけで抱え込まず、誰かに話してみることも必要だ。物理的距離をとりながら、いかに人とつながるかが、メンタル不調予防のカギとなる。
専門家に相談する前に、家族や友人など、そばにいる人が初期支援を行う「メンタルヘルス・ファーストエイド」は、コロナ禍という未曽有の事態に社会全体が直面する中で、一人一人のメンタルを守っていく上で有効であり、多くの人に知ってもらいたい。
■秋から冬は警戒が必要
秋から冬にかけて気分が落ち込む人は増える。コロナの影響が長期化しているので、今まで持ちこたえていた人が息切れするかもしれない。警戒が必要だ。