東京デフリンピックまで1か月
全国キャラバン 機運高まる
(公明新聞 2025/10/15 3面) 耳のきこえない・きこえにくいアスリートの祭典「東京2025デフリンピック」(11月15~26日) まで、あと1カ月。公明党が実現に寄与した「全国キャラバン活動」が各地で活発に行われ、大会の気運が高まっている。
ドン、ドドン! ――。多くの観光客でにぎわう広場に和太鼓の重低音が鳴り響く。ばちを操るのは、耳の不自由な男女らだ。太鼓の振動を体全体で感じ取り、互いにアイコンタクトを交わしてリズムをそろえる。迫力の演舞に聴衆は「両手を上げてひらひらと振る」拍手の手話を送った。
これは、宇都宮市の道の駅「ろまんちっく村」で5日に行われた全国キャラバンのイベントのひと幕。ろう者など、きこえない人らによる和太鼓のほか、VR(仮想現実) を使ってきこえない人の日常を疑似体験するコーナー、手話に挑戦するブースなどの催しがズラリ。栃木県聴覚障害者協会の稲川和彦理事長が手話で「私たちのきこえない世界『デフワールド』を体験してもらえれば」と述べた。
最も人気を集めたのは、地元・栃木県にゆかりのあるデフリンピック日本代表の増田香音選手(サッカー女子)と辻結名選手(ゴルフ女子)のトークだ。増田選手は「勝てるように全力プレーする」、辻選手は「メダルを取れるように頑張りたい」と力強く述べた。
約300人の聴衆は、手話をベースに考案された新たな応援スタイル「サインエール」【イラスト参照】で両選手を壮行した。来場者の女性は「拍手の手話を覚えたので、デフリンピックの応援で使ってみたい。大会の開催が楽しみになった」と述べていた。
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デフリンピック全国キャラバンは、① 商業施設などでデフアスリートの紹介や手話体験を実施するイベント開催 ② 小中学校やろう学校で手話言語やデフスポーツの体験学習実施 ③ 桜色に装飾したPRカーを走らせるキャラバンカー巡回――の3本柱で構成される。
このうち、体験学習に参加する児童生徒は延べ5000人を超える見通し。7月には秋田県大館市立桂城小学校をデフバスケットボール男子日本代表でチームリーダーを務める石川友正氏が訪れ、子どもたちとデフバスケをプレーした。
■ 大会認知度アップ
こうした取り組みが奏功し、デフリンピックの認知度は着実に上昇する。日本財団パラスポーツサポートセンターが7月に公表した調査では、4年前に16・3%だった認知度は38・4%に。また、競技会場などで活動する大会ボランティアには応募が殺到。3000人の募集枠に対して1万8903人が集まり、3500人が当選となった。
■ 公明、成功へ一貫して支援
デフリンピックに関して公明党は、東京への招致をはじめ、大会の成功に向けた支援を一貫して実施。今年6月には、手話施策推進法(議員立法) の成立をリードした。
全国キャラバン活動についても、浮島智子衆院議員が全日本ろうあ連盟などの要請を受け、2024年度補正予算で活動費を計上するよう政府へ訴え、実現。浮島氏は「東京デフリンピックを契機に、障がいの有無にかかわらず誰もが自分らしく活躍できる共生社会の構築を進めたい」と述べる。
■ デフリンピック運営委員会・久松三二委員長/サインエールで盛り上がろう
私が子どもの頃は、アスリートとして優れた能力があっても、耳がきこえないという理由で活躍の場が与えられない時代だった。どんなに重い障がいがあっても、子どもたちが夢を持つことができる社会をつくりたい。そして、情報・コミュニケーションのバリアフリー化を進めたい。こうした願いを実現する大きな一歩にしていくのが、今回の東京デフリンピックだ。
この意義を、東京だけでなく全国津々浦々へと浸透させたいという思いに公明党は応えてくれている。全国キャラバンの実現を力強く推進し、さらに、全国の議員ネットワークを生かして、各現場での開催を応援してくれている。本当に感謝したい。
デフリンピックの競技会場は入場券不要で無料観戦できる。また、会場へ行けない人には、ライブ配信も用意されている。きこえる人も、きこえない人も一緒になって、サインエールで盛り上がってもらえれるとうれしい。そして、選手一人一人が自らの限界に挑戦し、それを乗り越えていく姿を見てほしい。
デフリンピック <あきひログ