地域で楽しく暮らす人が急増 周りの負担も和らぐ良環境に / 高槻市のオレンジガイドも
ご家族が認知症になられ、どうしたらいいのか? とお悩みを聴きました。先月4月の公明新聞の記事がご参考になればと掲載させていただきます。また、高槻市の取り組みも。
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(4月9日 公明新聞) あなたの身近な人を「認知症?」と思ったら、どう接するべきか。従来の価値観を転換させる、希望のある新しい認知症観のポイントや具体例について、認知症介護研究・研修東京センターの永田久美子副センター長に寄稿してもらいました。
■ 地域で楽しく暮らす人が急増/周りの負担も和らぐ良循環に
4月に入り、草木が一斉に芽吹き出し、季節の変わり目です。今、認知症についても、大きな変わり目であることをご存知でしょうか。
認知症についての考え方(認知症観) が大きく変わってきています【図参照】。これまで社会に根強くあった絶望的な考え方を、希望のある新しい考え方に根底から切り換えていくことで、自分の個性や力を発揮しながら地域とつながり続け、伸び伸びと楽しく安定した暮らしを続けている本人たちが、全国で急増中です。
ご家族も新しい認知症観に切り換えることで、抱え込まずに地域の支援者らと早い段階でつながり、負担やストレスを和らげ、仕事や自分なりの生活を続けていくことができ、お互いが良い状態になっていく良循環が生まれています。
認知症は長い経過をたどり、環境によって状態が大きく左右される特徴があります。特に初期の頃が肝心です。「認知症では?」と感じた早い段階で、新しい認知症観に基づいて適切な接し方ができると、本人も家族もより良い経過をたどれます。図を参考に五つの視点から具体的に考えてみましょう。
■「できること」を見つけ励まして
❶ 本人ができなくなったことに目を奪われてしまうと、知らず知らずのうちに、本人から見ると、冷たいまなざしの怖い人、傷つく嫌な言葉を言う敵になってしまいます。些細なことでいいので、本人がまだできていることや、分かることを見つけて、「まだ、いろんな力があるね」と本人を勇気づけてください。
本人がやりたいことを、本人と楽しく話し合うことを習慣にしましょう。やりたいことをかなえるのが難しい場合も、そんなの無理、ダメと決め付けず、まずは、「いいね」の一言を。本人はできないことが増えて自信喪失気味のはず。自分がやりたいことを大事にしてくれる人がいると、どれだけほっとすることか。実現できなくても、やりたいことの話をすることで自分を取り戻し、見違えるほど落ち着く人が多いです。
❷ 認知症が始まると、以前のようにはスムーズにいかないことが増え、恥をかいたり情けない思いをしたりして、自分が崩れていくような恐怖感を抱きがちです。「お父さんはお父さん」「お母さんはいつまでも私のお母さん」など、本人の存在を大切にしていることを伝えてください。本人が自分らしさを保つためには、好みの髪型や衣服、持ち物なども大事です。本人と楽しく相談しながら一緒に整えましょう。
■ なじみの場所とつながり続ける
❸ 誰にでも、長年にわたって育んできた友人や知人とのつながり、安らぎ元気になれるなじみの場所があります。それらとつながり続けることが、本人が安定や活力を保つ源泉です。家族と本人がお互いの縛りから解放されるためにもとても重要です。
一方、本人自身がつながることを諦めかけている場合も多いです。本人が本当は誰と(どこと) つながり続けたいのか、さりげなく話し合ってみましょう。「そこに、ちょっと送っていくよ。行くと、きっと楽しいよ」。そんな一言で友人とのつながりが復活したり、大好きな図書館にまた行けるようになったりして、元気を取り戻した人たちが大勢います。
また現在は、認知症になってからの新たな出会いやつながりの場が増えています。お住まいの市町村の最新情報をぜひ調べてみましょう。本人が居心地よく楽しんだり活躍できる場となったりするように、本人の好きなこと・得意なことなどを具体的に書き出したメモを一緒に作っておくと役立ちます。
❹ いずれにしても、「家族が介護しなければ」という、とらわれから家族自身が脱皮することが重要です。家族だけではやれることが限られ、家族と本人双方がより良く暮らしていく可能性を非常に狭めてしまいます。
「家族がみるべき」という考え方が根強い地域の場合こそ、できるだけ早い段階から、地域の力を借りることにぜひチャレンジしてください。「本人や家族から言ってくれるのを待っています」「一言言ってくれれば応援するよ」という人たちが、どの市町村にもいます。相談できる人が見つからない場合は、市町村に必ずいる認知症地域支援推進員に連絡してみましょう。
■ 何をどう選ぶか決めるのは本人
❺ 医療や介護サービスにつながることも重要です。ただし、家族が焦って、医療や介護サービスを使うことに走ってしまうと、本人が強い不安や不信感を抱き、状態悪化につながる失敗が後を絶ちません。せっかくの家族の思いが空回りしないためにも、急がば回れ。これからどう暮らすか、何を選ぶか、決めるのは本人です。本人はその人なりの底力を持っています。先回りしたりピリピリしたりせず、本人が落ち着いて自分のこれからを前向きに考えていけるよう、ゆったりと構え、楽しいモードで接してください。本人はあなたがこれから行く道の、一足先を歩んでいる先輩でもあります。
新しい認知症観に基づく生き方や接し方をリアルに知れる動画があります【「ともに生きるまち大賞」でネット検索、または2次元コード参照】。参考にしていただき、共に、いい日々になりますように。
東京都老人総合研究所を経て2000年から現所属。NHK「認知症とともに生きるまち大賞」選考委員長などを務める。
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高槻市の取り組み▽
超高齢社会を迎え、認知症の方の人数も急増しています。認知症の人ができる限り住み慣れた地域で暮らし続け、また認知症の人やその家族が安心して生活していくための取組みとして、「たかつきオレンジガイド(認知症ケアパス)」を改訂しました。
これは、高槻市医師会認知症対策委員会の監修のもと、認知症のご本人やご家族のご意見も伺いながら作成しました。
認知症ケアパスとは、認知症が疑われる初期状態のときから、ご本人の進行状態に応じて、「いつ・どこで・どのような支援体制があるのか・対応のポイントの流れ」を示したものです。
認知症の状況は、個人により異なりますので、必ずこの経過をたどるわけではありませんが、今後予測される症状や状態の変化の目安として参考にしてください。
認知症の人とそのご家族、または相談や支援にご活用ください。
【お問い合わせ】福祉相談支援課代表 大阪府高槻市桃園町2番1号 高槻市役所 本館1階 14番窓口
Tel:072-674-7171 Fax:072-674-5135