認知症などで手続きに 不安のある人を手助け
(1日 公明新聞) 成年後見制度は認知症や精神疾患などで、一人で物事を決めるのが難しい人が安心して契約などの法律的な手続きをできるように手助けする仕組みです。
しかし現在、国内の認知症の人は400万人以上いますが、約25万人しか同制度を利用していません。
仕組みや申し立ての流れについて、日本司法書士会連合会の上前田和英副会長、春口剛寛理事に聞きました。
成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の二つがあります。
法定後見制度は、支援を受ける本人の判断能力の程度によって、「後見」「保佐」「補助」の三つの支援制度が用意されています【イラスト参照】。これらは医師の診断書や鑑定を参考に、家庭裁判所がどの類型に該当するかを判断し、それによって「後見人」「保佐人」「補助人」を決めます。
申し立て時の希望により本人の親族が後見人になることもあります。しかし、管理する財産が高額な場合や事務内容が複雑な場合、家庭裁判所は裁量により司法書士などの専門家を選任することがあります。
任意後見制度は、本人が元気なうちに、あらかじめ契約によって、自分の意思で「任意後見人」を決めておき、判断能力が不十分となった時に初めて支援が始まるという二段階の仕組みとなっています。しかし、自由に決められるため、家庭裁判所は任意後見人がしっかりと後見事務をしているかを把握できません。
そこで、家庭裁判所は自分たちに代わって任意後見人の行う事務を把握し、管理監督するための「任意後見監督人」を選任します。任意後見人は任意後見監督人と相談しながら必要な支援を行います。
成年後見制度の利用を始めれば、後見人などへ報酬の支払いが発生します。
法定後見の場合は家庭裁判所が本人の保有財産や業務内容により金額を決定します。任意後見の場合、任意後見人の報酬は契約で定めた額です。また、任意後見監督人の報酬は法定後見と同様に、家庭裁判所が決定します。
■ (事例)
成年後見制度はどのような場面で使われるのでしょうか。制度利用の理由で一番多いのは、本人の預貯金などの管理・解約といったお金の問題、次いで本人の高齢者施設入所のためといった住む所に関しての契約などが必要な場面です。具体的な事例を見てみましょう。
■ ケース①
父親が亡くなり、母と子で遺産を相続する際、母の判断能力が不十分で遺産の分け方を決められない場合、母の代わりに後見人が遺産分割の手続きを代理して行います。
■ ケース②
高齢者本人が入院し、入院費支払いのために定期預金を解約しなければならないにもかかわらず、本人の判断能力が不十分で解約をできない場合、後見人が代理で解約手続きを行い、本人の口座にお金を振り込みます。
■ まずは司法書士に相談を
成年後見制度を利用する場合、まず最寄りの市区町村役場や家庭裁判所の担当窓口に行き、制度の利用について相談しましょう。書類作成などの手続きが煩雑なので、専門家である司法書士に相談することをお勧めします。
法定後見の手続きは【表】のような流れです。申し立てを受けた家庭裁判所は本人や後見人候補者に調査を行った上で、後見開始の可否を決定します。
任意後見の場合、任意後見人を選び、契約書の原案を作成します。本人と任意後見人予定者が二人で公証役場に行き、公正証書を作成し、その内容は法務局で登記されます。その後、本人の判断能力が不十分となったタイミングで、支援に向けた手続きを開始します。