欠かせぬ子どものケア
発災10カ月 能登地震 能登半島地震取材班より
(1日 公明新聞より) きょうで発災10カ月を迎えた能登半島地震。過疎地域で起きた大災害で、忘れられがちな被災者が子どもたちだ。
地震や津波の恐怖は彼らの心に今も刻まれ、避難所や仮設住宅での不自由な生活によってストレスを増している。
学校の校庭には仮設住宅があり、校外で遊べる場所が少ない。窮屈な環境の中で子どもの心のケアに携わる現場を追った。=能登半島地震取材班
石川県能登町宇出津地区。10月中旬、仮装した子どもが一軒家に続々と集まってきた。ここは9月に開設された子どもの居場所「宇出津キッズ見守りハウス」。
この日は月1回の子ども食堂イベントで、2階の開放スペースではワークショップなどが催され、100人以上の子どもが楽しいひとときを過ごした。小学3年の女子は「いろんなものを作れたり、みんなと会えるのが楽しい」と瞳を輝かせた。
■ ストレス解放の場に
「発災直後、子どもが道路脇でぽつんとゲーム機で遊んでいる姿をよく見た」。宇出津キッズ見守りハウス代表の浜中淳子さんは当時を振り返る。屋外は復旧支援の車両が往来。いつも以上に気を遣う避難所や仮設住宅では、大人が子どもを叱る場面が必然的に多くなっていた。
浜中さんも母親の一人で、特別支援学級に通う小学2年の息子がいる。元日の地震の際は息子と高台に避難し、車や船が津波に流される光景を目の当たりにした。「子どもがおびえて離れられない」という親の声も多く聞いた。
炊き出しや居場所の支援など発災直後に支援に来ていた団体が月日とともに撤退していく中、浜中さんは「子どもたちが自由に遊んで、震災のストレスから解放される場所が必要だ」と痛感。地元で継続して地域を支える活動ができるよう、大きな被害を免れた自宅を改装して居場所を開設することを決めた。現在は週3日、放課後に開放し、イベント時には県内外のNPO団体などの協力を得て運営している。
■ 2次避難地域でも
居場所支援が必要なのは能登町などの奥能登地域に限らない。フリースクールを運営するNPO法人ワンネススクールの森要作代表は被災地から金沢市などに2次避難している子ども向けの居場所づくりに取り組んでいる。森代表は2次避難をきっかけに孤立して不登校になった事例を踏まえ、「子どもに支援が行き届くよう、学校と連携した情報発信の体制をめざす」と語り、関連団体とのネットワーク構築にも汗を流す。
■ 活動支援に補助金
石川県内では宇出津キッズ見守りハウスのように民間団体などが遊び場や多様な体験の場、学習支援といった子どもの居場所づくりに奮闘している。国は居場所づくりを通じて子どもの心の負担軽減や回復を促せるよう、NPO法人などに対し、最大500万円の補助金を支給。現在は34団体が補助を受けている。
■ スクールカウンセラー増員/公明、緊急要望で政府に提言
学校現場で県はスクールカウンセラーによる心のケアの授業や個人面談を実施している。
奥能登地域は元々、スクールカウンセラーの人数が少ないため、従来の体制を倍増させた上で、県内外からも上乗せして派遣。現在、奥能登で各校週3~4日程度訪問する体制で来年3月までは継続する方針だ。
公明党は1月に党「令和6年能登半島地震災害対策本部」が政府に行った緊急要望の中で、子どもの十分な心のケアや居場所の確保などを強く要請。
また、被災地に教職員やスクールカウンセラーを迅速に派遣する「被災地学び支援派遣等枠組み(D-EST」の創設を提唱してきた結果、準備が進められ、9月の豪雨災害では同枠組みとして初となる職員派遣が実現した。
■ 継続したサポートが必要/兵庫県立大学名誉教授、冨永良喜氏
能登半島地震では多くの子どもがトラウマ(心的外傷) によるストレスを覚えた。2次避難や集団避難などで親と離れ離れの生活を強いられ、新しい街で頑張っている子もいる。心のケアには基本的な日常の環境を取り戻した上で、自身のストレスを知って対処方法を学ぶ授業が大切だ。
スクールカウンセラーの派遣については、県と国が連携して体制を整えているが、来年4月以降の継続と併せて、奥能登地域に定住して支援できる体制を要望したい。ストレスを知って対処方法を学ぶ授業は平時も含め、道徳などの授業の枠で推進してほしい。子どもの心の健康を後押ししている公明党に感謝するとともに、今後の取り組みに期待している。