確かな一歩
なりわい再建へ 石川県内初の「仮設商店街」がオープン/七尾市
■ 待ちに待った営業再開/今月以降、新たに県内6カ所で開設
能登半島地震から、きょう1日で8カ月。多くの被害を受けた石川県七尾市では、被災地域で初めてとなる「仮設商店街」が8月16日、市中心部の一本杉通りにオープンし、休業を余儀なくされた店主らが、なりわい再建への一歩を踏み出しています。“待ちに待った”営業再開の様子を取材しました。
今回オープンした仮設商店街は、独立行政法人・中小企業基盤整備機構の補助金を活用して七尾市が建設しました。4店舗が入り、入居期間は2年間で、家賃は無料です。光熱費や内装費などは各事業者が負担しています。
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「営業を再開して、ほっとしています」。こう語るのは美容室「イコマ」を営む後藤町子さんです。地震で店舗兼自宅が損壊。復旧に必要な費用や期間の不安を抱えながらも店舗の応急修理を進め、なじみ客を受け入れてきました。
3月に入り、被災した商工事業者向けに市が仮設商店街を建設し入居希望者を募集することを知り、営業再開を決意。市による意向確認を経て、後藤さんを含む4店舗が最終的に入居することになりました。
「何でも、ご相談ください」。8月27日、地元で復旧・復興に尽くす公明党の江曽ゆかり市議が仮設商店街を訪問し、後藤さんの話に耳を傾けました。後藤さんが、入居期限の切れる2年後の不安を語ると、江曽市議は「安心して営業が続けられるよう支援策を探っていきたい」と応じました。
隣接する店舗に入居したのは、紙製品や文房具などを扱う「株式会社コクブ」(国分誠雄代表取締役社長) です。創業120年以上の歴史を持つ地元の老舗で、地震後からの、ようやくの再開となりました。
より広いスペースでの営業を喜ぶのは、自家焙煎の喫茶店「中央茶廊」の窪丈雄代表取締役です。地震で店舗が使えなくなった後、市内の商業施設の一角での営業に切り替えていました。
同店は、七尾市など能登半島を舞台にした人気漫画『君は放課後インソムニア』に登場。地元だけでなく全国からファンが訪れ、再開を喜んでいます。
食堂の「太左ェ門」の経営者・坂本憲彦さんは、地場の新鮮な海鮮丼などをランチ限定で提供しています。元々は民宿を営んでいましたが、被災後は閉じ、親戚の網元を頼って漁師として働いていました。坂本さんは「仕事を続けたいという思いが実現し、うれしい」と語っていました。
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仮設商店街は、9月以降も七尾、輪島、珠洲、志賀、穴水の5市町で計6カ所が開設予定です【地図参照】。公明党石川県本部の谷内律夫代表(県議) は「復興に至るまで、徹して一人一人に寄り添っていく」と決意を語っています。
■地域のにぎわい創出に期待/石川県商工労働部 西村聡産業振興戦略監
被災地の復興には、生活再建だけでなく、なりわいの再建が欠かせません。県内各地に開設される仮設商店街は、事業者の本格的な事業再開への足掛かりとなる“支援”です。
この仮設商店街を通じて、一日も早く営業を再開したいという意欲的な事業者が相次いだことは地域のにぎわい創出にもつながり、復旧・復興に向けた大きな一歩と言えます。
地元の交流拠点だった、なじみのある商店の再開によって、この地で生活ができるとの住民の安心や期待にもつながっています。
引き続き、事業再開をめざす事業者に寄り添い、各地で支援が届くよう情報発信に力を注いでいきたい。
能登地震は、半島地域特有の地理的条件などによって復旧に向けたインフラ整備が難航しています。こうした現状を踏まえ、なりわい再建に向けた支援が途切れないよう、十分な予算確保へ国を挙げて取り組んでいただくことを望んでいます。