(25日 公明新聞より) 夜間・休日の子どもの急な病気やケガに際し、経験豊かな看護師らから適切なアドバイスを受けられるのが、「子ども医療電話相談(旧・小児救急電話相談)」です。
全国同一の番号「#8000」でつながる同相談事業は制度開始から20年がたち、広く定着。育児の不安を軽減し、子どもの命を守る事業の概要や公明党の取り組みを紹介します。
■看護師らが適切助言/夜間など親に“安心感”与える
2歳の長女が39度超の発熱――。平日の午後11時、東京都の多摩地域に住む30代女性のAさんは対応に焦り、#8000に電話をかけました。
「救急外来へ行った方がいいでしょうか?」
応答した相談員は、長女が食事・水分を取れているか、呼び掛けに反応しているかなどを確認し、「今は体力の回復を優先し、すぐに病院へ行く必要はないと思います。あす、小児科を受診してください」と助言。気持ちにゆとりが生まれたAさんは翌日、医療機関を受診させ、長女は快方に向かいました。
Aさんは「専門家に症状を細かく聞いてもらい、アドバイスを言ってもらえると、安心感が全然違う」と振り返りました。
こうした保護者の“心強い味方”になっているのが#8000です。かつては夜間・休日などに小児救急の医療機関に患者や問い合わせが集中していました。そこで、小児救急の適切な利用に向け、2004年度に国が財政支援し、一部地域で#8000の相談事業がスタート。10年度以降、全47都道府県で実施されるまでになりました。相談には看護師や保健師らが対応。必要に応じて小児科医が答えています。利用できる時間帯などは自治体によって異なります。
■相談数115万件突破
相談件数は増加傾向にあり、22年度は115万件を突破【グラフ参照】。
事業を分析した厚生労働省の調査(22年度) によれば、相談内容は、発熱が31・3%、せきが9・4%、吐き気・嘔吐が9・2%などと続きます。相談員が受けた印象として、利用者の9割超は対応に満足しており、インターネットに情報があふれる中でも、電話相談の需要が高いことがうかがえます。
大阪府の#8000を担う同府小児救急電話相談事務局の福井聖子所長(小児科医) によると、子どもの息苦しそうな呼吸音を聞き、緊急性を判断するケースもあり、電話相談ならではの“安心感”を与えられることも多いそうです。福井所長は「核家族化で子どもの急病を相談できる親族がいない保護者は増えています。そうした保護者の不安を#8000が解消し、支えになっている」と語っています。
■必要性揺るがない“救いの手”/昭和大学小児外科教授 吉澤穣治氏
私は、厚労省が日本小児科医会に委託する「#8000情報収集分析事業ワーキンググループ」の委員長として、#8000の相談事業の質向上に取り組んできました。
夜間や休日に気軽に専門家に相談ができる同事業は、保護者にとって頼りになる“救いの手”となっています。20年前に比べて、小児科医の数が増加し、ネットなどで医療知識を入手しやすくなった今でも、その必要性は揺るぎません。
一方で、医療機関側も、同事業により不要不急の受診などを抑制でき、負担が減りました。重症患者を診る時間を確保できるなど、適切な診療がしやすくなりました。
子どもの医療費は各自治体が一部負担していますが、同事業が全都道府県に広がって不要不急の受診が減ったことで、自治体の経済的負担の軽減にもつながっています。
誰もが必要な時に#8000を利用できるよう、今後、政府や公明党には相談時間帯や電話回線数の拡大、相談員の人材確保、デジタルを活用した業務効率化などを進めてもらいたいです。
■公明、創設・拡充を推進
#8000の創設から拡充までを一貫してリードしてきたのが公明党です。2003年の衆院選で、党のマニフェスト(政策綱領) に「小児救急電話相談事業の展開」を明記。そして、政府は04年度に都道府県への財政支援をスタートさせました。
党のネットワークを生かし、地方議員も導入を強力にバックアップ。10年度に全都道府県での事業実施が実現しました。導入後も、各地で電話相談の実施日を「土日・祝日」から「平日」にも拡大したり、時間帯も「翌朝まで」に延長したりするなど、利便性の向上や相談体制の強化に努めています。