(23日 公明新聞) 後を絶たない児童虐待や深刻化する子どもの貧困――。
社会的援護を必要とする子どもへの対策は社会保障の欠かせない柱の一つだ。
昨年末に策定された「こども大綱」を受け、各地で策定作業が本格化している「自治体こども計画」には、虐待・貧困問題に対して地域の実情に応じた対応策の強化が盛り込まれる。
現状を解説するとともに今後の課題などについて、関西大学人間健康学部の山縣文治教授に聞いた。
■ 相談増えるも相次ぐ悲劇……深刻な状況は依然続く
小学1年生の女の子に暴行を加え死亡させたとして、母親と内縁の夫が逮捕――。
先週も目を覆いたくなるような児童虐待のニュースが報じられた。全国の児童相談所(児相) が2022年度に対応した虐待件数は21万9170件(速報値) に上り、過去最多を更新している【グラフ「児童相談所の虐待相談対応件数の推移」参照】。心理的虐待に関する相談や警察による通告の増加が主な要因だ。
核家族化や地域のつながりの希薄化が進む中、孤立した家庭が育児不安を抱えながらもSOSを出せず、虐待に及ぶケースなどが指摘されている。コロナ禍では、自宅で過ごす人が増え、その傾向が強まった。
このように虐待は身体的、精神的、社会的、経済的な要因が複雑に絡み合って起こる。その中の最たる例が「貧困」で、17歳以下の子どもの貧困状態(子どもの貧困率) は深刻だ。
厚生労働省の調査によると、21年の子どもの貧困率は前回18年よりも減少した【「子どもの貧困率の推移」グラフ参照】。かつては、経済協力開発機構(OECD) でも最低レベルにあったが、近年は改善傾向にある。
低所得層への給付の強化や賃金の上昇、共働き世帯の増加などが貧困率の改善に寄与したと指摘されるものの、孤独・孤立の深刻化といった経済的要因以外での課題も依然根強く、その解決が急がれる。
■ 地域の実情に応じた対策へ、自治体計画の策定が本格化
児童虐待の防止に向けて、国による諸制度の整備が進められてきた。00年に児童虐待防止法が制定され、児童虐待の禁止や虐待されている児童を発見した場合の通告義務、虐待を受けた児童の保護などを規定。
07年には同法が改正され、児相の権限を強化して立ち入り調査をしやすい体制が整備された。併せて、児童福祉法の改正により、親による体罰禁止や児相と関係機関の連携強化、子育て世帯への支援強化などが進んでいる。
子どもの貧困対策では、13年に子どもの貧困対策推進法を制定し、全ての子どもに対する健康で文化的な生活、教育機会の保障、貧困率の3年ごとの公表などを明記した。先の通常国会では同法が改正され、貧困家庭を支援する民間団体への財政措置が掲げられた。
急速な少子化、児童虐待といった子どもを取り巻く環境が大きく変化し、対策の抜本強化が求められる中、子どもの利益を最優先に考えた取り組みや政策を国の中心に据える「こどもまんなか社会」の理念を実現するため、政府は、こども家庭庁を23年4月に創設。同12月、こども大綱が策定された。従来の三つの大綱(少子化社会対策大綱、子供・若者育成支援推進大綱、子供の貧困対策に関する大綱) を一つに束ね、子ども施策に関する中長期の基本的な方針や重要事項を一元的に定めるものだ。
子育て世帯への経済的支援の強化、児童虐待や貧困対策の対応強化を柱に据え、同大綱に基づいて各自治体が子ども政策の方向性を定める「自治体こども計画」の策定を努力義務とした。こども家庭庁は5月、策定のためのガイドライン(指針) を公表。各自治体では現在、策定作業が本格化しており、地域の実情に応じた虐待や貧困対策の行方が注目されている。
■ 公明、法改正や提言重ね国の取り組み強く後押し
公明党は児童虐待防止法の制定や、こども家庭庁の創設をリードするなど、法改正や提言を通して国の取り組みを強く後押しし、児童虐待や子どもの貧困の解消に尽力してきた。
22年11月には、「子育て応援トータルプラン」を発表。児童虐待を未然に防ぐため、全ての妊産婦、子育て家庭、子どもを対象とした「こども家庭センター」を全自治体に設置することをめざす。子どもの貧困対策では、地域の実情に即した施策が行われるよう地域ネットワーク形成の充実に取り組むほか、就学援助制度の拡充などを掲げている。
■ 給付と就労支援が重要/関西大学人間健康学部 山縣文治教授に聞く
――児童虐待を巡る現状をどう見るか。
この10~15年で世の中の見方は変わってきた。児童虐待に関する自治体や児童相談所への相談・通告件数が増えているのは、地域の子どもを心配して声を上げる人が増え、問題への理解が広がっている証左だ。
2000年施行の児童虐待防止法によって虐待の定義が明確化され、「心理的虐待」が通報対象となって件数が増えた。虐待といえば、痛ましい事件のニュースなどから「殴る」「蹴る」といった「身体的虐待」を思い浮かべる人が多いが、実際に増えているのは心理的虐待であり対策は急務だ。
――貧困については。
子どもの貧困率が下落傾向にあるのは、社会保障政策の充実で給付が強化されてきたことが大きい。特に、ひとり親世帯の改善は顕著だ。
ただ、社会的な理解という点では、虐待問題ほど深まっていないというのが、専門家としての実感だ。子どもの貧困の実態に迫るには、地域社会の大多数よりも貧しい状態にあることを指す「相対的貧困」の割合を見る必要がある。しかし、衣食住などの生活水準が必要最低限を満たしていない状況を示す「絶対的貧困」を経験してきた年長世代の多くは、この相対的貧困をイメージしづらいため、現状理解が追い付いていない。
――「子ども食堂」といった現場の支援は活発だ。
子どもの貧困の克服に求められる主な支援の条件は「食事」と「教育」である。NPOやボランティアが中心になって子ども食堂が各地に広がる状況は評価したい。一方で、子ども食堂を通じて見えてきたのは「食事がない子」よりも、家庭内不和やひとり親家庭を背景に「家にいたくない子」が多い点だ。「栄養」に加えて「居場所」確保の観点から、地域で子どもたちを見守り、サポートする取り組みを強化すべきだ。
――児童虐待や貧困の問題を解決する道は。
全ての子どもを対象にした基礎的な支援策をきっちり行うことに尽きる。この点、幼児教育・保育の無償化や今年10月分から拡充される児童手当などは高く評価したい。一方、給付頼みの解消策は多額の予算が必要となるため、継続性に懸念もある。やはり重要なのは就労支援だろう。それぞれの家庭が自ら稼いで収入を得て貧困状態から脱していくよう後押しすべきだ。
■ NPOなど地域力生かす視点も
――「自治体こども計画」に期待する点は。
子ども・子育て支援法に基づく事業計画が各自治体で既に策定されており、その経験を生かせば、自治体こども計画の策定自体はスムーズにできるだろう。子どもや当事者の声を直接聴くことをおろそかにせず、実効性のある計画に仕上げてもらいたい。そして政府は、先進事例を全国で共有するなど、自治体の取り組みを後押ししてほしい。
その上で、今は「行政の匂いがあまりしない支援」の重要性が増している。問題に直面している家庭は、行政が関わることを嫌がるケースが多い。
例えば、24時間のSNS匿名相談や見守りなどは、行政よりNPOの方が得意とすることがある。であれば、行政が前面に出るのではなく、財政面などで後方支援する形も十分あり得る。そうした地域力を生かす視点も意識してほしい。
やまがた・ふみはる 1954年生まれ。大阪市立大学大学院後期博士課程中退。博士(学術)。同大学生活科学部教授などを経て現職。現在、こども家庭庁児童虐待防止対策部会で部会長を務める。
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吉田あきひろの「子ども達の未来に思いを込めた」一般質問(2022年)
これまで公明党議員団として、高槻市政における“子育てナンバーワン” のまちづくりを目指し、意見や要望活動を行い拡充されてきたところです。
国全体においては、子どもや子育て家庭を巡る環境は複雑化、多様化してきていることから首相直属機関と位置付け、内閣府と厚生労働省から子どもや子育てに関わる主な部署を移管し、行政の縦割りを打破し、「虐待」や「貧困」、「少子化問題」など、子ども関連の支援策を一元的に担うことになりました。
「子ども基本法」は、子どもの権利条約のうち、「生命・生存・発達の権利」「子どもの最善の利益」などの4原則を反映し、こども施策の具体的な目標と達成時期を定め、必要な財政措置を講じる努力義務が盛り込まれています。
2022年6月24日「子ども食堂について」の一般質問は、子ども達の未来を思い、地域のネットワークをつなぎ、地元に開設される「子ども食堂」、市域全体で取り取り組まれる「子ども食堂」に、少しでも応援ができたらとの思いで、一般質問に立たせていただきました。
子ども食堂について/子ども未来部/2022年6月24日
会議録 子ども食堂について 高槻市の総合計画について
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児童虐待の早期発見と防止のために <市ホームページ(ご相談をいただき)