ウィッグ購入助成が拡大/公明推進、600超の自治体で導入
(25日 公明新聞より) 病気やけがで髪を失った“ヘアロス”の人を支える外見(アピアランス) ケアに社会的な関心が高まっている。
医療用ウィッグ(かつら) への公的助成が広がるだけでなく、ウィッグに使ってもらおうと自らの髪を寄付する「ヘアドネーション」に協力する人が増えている。
外見ケアを巡る支援の現状と課題を探るとともに、野澤桂子・目白大学教授に話を聞いた。
■髪の寄付広がる
「短くなりすぎないかな……」。この日、都内に住む小学4年生の女児が人生初のヘアドネーションをしようと、少し不安げな面持ちで地元の美容室を訪れた。
きっかけは母親の闘病だった。抗がん剤治療で髪の毛が抜け、一時ウィッグを利用していた。その姿を見て、「髪の毛で困っている人の役に立ちたい」と思ったからだ。
美容師の男性は「ここ数年は月1人のペースでヘアドネーションの希望者が来店する。特に女子中高生が多い」と語った。
ヘアドネーションは米国の団体が始めた活動。日本ではNPO法人「JHD&C(ジャーダック)」が草分け的存在で、2009年から18歳以下の子どもに医療用ウィッグを無償提供する活動を始めた。渡辺貴一代表理事は「設立当初は月1、2件だった髪の寄付が、最近では1日500件前後になっている」と社会への浸透を実感している。
民間で支援の輪が広がる中、自治体では医療用ウィッグなどの購入助成制度の導入が相次ぐ。日本毛髪工業協同組合の調べによると、導入自治体は今年4月時点で647団体【グラフ参照】。各地の公明党の地方議員が議会などで訴え、実現に導いてきたものが多い。
■がん患者以外も
ただ課題も見えてきた。渡辺代表理事は「ジャーダックがウィッグを提供する約7割は脱毛症の子どもたちで、がんの子どもは2割に満たない。だが自治体の支援は、がん治療による脱毛に限定されている」と指摘する。ジャーダックが全国自治体を対象に行った聞き取り調査では、21年当時、助成対象に脱毛症を含めていたのは群馬県高崎市のみだった。
NPO法人「円形脱毛症の患者会」の山﨑明子事務局長は「脱毛症の生涯発症率は人口の約2%。全頭用ウィッグが必要となる重症例は、その1割以上に達すると思われる。脱毛症にも使える制度に改善してもらいたい」と訴える。
こうした中、公明党は当事者や家族の切実な声を受け止め、脱毛症も対象にした制度創設・拡充に向けて動き始めている。
■流山モデル
「娘は小学3、4年生の頃から全身の毛が抜けて、以来ずっとウィッグを使っているんです」
千葉県流山市では、円形脱毛症の中でも最重度の「汎発型」を発症した女子中学生の母親から相談を受けた公明市議が、議会で脱毛症も対象にした助成制度の創設を要望。これがきっかけとなり市は22年度から、がんだけでなく、その他の疾患のある人も対象とした助成制度を開始した。
加齢性の脱毛は対象とせず、申請には治療方針計画書などの提出を求める。市の担当者によると、昨年度の医療用ウィッグ助成の申請件数は79件。このうち脱毛症などを事由としたものは5件で、残りは全てがんだった。運用面で「問題は生じていない」という。隣接する野田市でも公明市議の提案で、この“流山モデル”を参考にした制度が昨年度から始まった。
東京都では、都議会公明党が昨年6月の代表質問で、がん患者への外見ケアを行う自治体への補助事業の対象に、脱毛症も含めるよう主張。都は現在、先行自治体やウィッグメーカーから聞き取りを進め、ニーズなどの実態把握を行っている。
■脱毛症も対象に入れて/目白大学看護学部 野澤桂子教授
公明党の議員が各地で熱意を持って、ウィッグなどの購入助成を進めてくれており心強い。今後、二つの「拡大」が大事になる。
一つは助成を行う自治体の「拡大」だ。財源確保が大変かもしれないが、助成額は高額でなくてもよい。ウィッグの性能と価格が比例するとは限らないからだ。日本毛髪工業協同組合の認証を受けた医療用ウィッグは1万円台からある。複数の調査で、ウィッグ購入費の中央値は3万~5万円だった。
もう一つは、助成対象の「拡大」だ。現在、がん患者に限定する自治体が大半だが、脱毛症やけがなどでヘアロスに悩み苦しむ人々も包摂する制度が、公的支援としては望ましいのではないか。
割高になるウィッグのカット代への補助や、ウィッグをカットできる理美容師の養成など、多様な取り組みと組み合わせることで、低廉なウィッグでも利用者が満足できるものになる。ウィッグ専門店のない地方での患者支援として、通販の利用を視野に入れた制度も考える必要がある。
外見ケアが全国的に定着していくよう、今後も公明党の尽力に期待している。
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高槻市 がん患者のためのアピアランスケア助成事業 <市ホームページ
高槻市議会公明党議員団としても「アピアランスケア」の助成事業を強力に要望し令和6年度の新規事業としてはじまることになりました(受付開始は令和6年6月3日から)