健康寿命を伸ばすため
いきいきシニア 「食べる、飲む、話す」を維持 舌を鍛えよう
(20日 公明新聞より) 舌は、さまざまな臓器とも関係が深く、筋肉でありながら消化器、感覚器としての機能も持ちます。
重要性や舌を鍛えるための簡単ストレッチのやり方について、熊本県にある、ましきクリニック院長で、日本耳鼻咽喉科学会認定専門医の桂文裕さんに教えてもらいました。
舌の力(舌力) は、かむ力や飲み込む力、発声や発音を向上させ、「食べる、飲む、話す」といった生きることのベースを維持するために、大きな効果を発揮します。
■舌力低下の大きな原因は食生活の変化
舌力が低下すると、いつも口がぽかんと開き、喉の奥の方に舌が落ちる「落ち舌」となります。こうなると、▽食べこぼしやむせ返り ▽滑舌が悪い ▽感染症にかかりやすい ▽いびきや無呼吸 ▽頭痛や腰痛――など、全身にさまざまな不調が出てきます。
舌力が低下した大きな原因は、食生活の変化により舌を使う機会が減ったことです。現代人は時間に追われて食事時間が短くなりがちで、レトルト食品やファストフードなど、あまりかまずに飲み込める食事を好むようになりました。
また、猫背でぽかん口などの悪い姿勢で、スマートフォンを長時間見ることが習慣化したこと、コロナ禍によりマスクを着ける期間が続いたことも、舌力低下の原因となっています。
今この瞬間、上あごに舌全体がベッタリ付いていない人、口を開けて「アー」と言ったとき、口蓋垂(俗に言うのどちんこ) が見えない人は、舌力低下が強く疑われます。
■誰でも簡単に実践できるお勧めストレッチ
そういった人に効果的なのが、舌を「伸ばす、もむ」という、誰にでもできる簡単な「舌ストレッチ」です【やり方はイラスト参照】。
舌は血流が多く新陳代謝が速いため、毎日行うことで ① 唾液が増え虫歯や歯周病、口臭を防げる ② 免疫力が上がり風邪をひきにくくなる ③ 呼吸が良くなり自律神経が整う ④ 体の痛みや歪みが改善する⑤表情筋が鍛えられ、二重あご、シミ、ほうれい線などが消える――といった効果が期待できます。
当院で10人の患者さんに平均24日間、舌ストレッチを続けてもらったところ、舌力は平均30%アップしました。舌ストレッチは、入浴後、就寝前などリラックスできる時間に行うとよいでしょう。特に歯磨き後は、口の中の血流が活発になっていてお勧めです。
「人生100年時代」と言われる現代では、日常生活が制限されずに健康的に暮らせる期間である「健康寿命」を延ばすために運動や食事と同じくらい、舌力アップが重要です。舌は体で最も動く筋肉であり、自分の意思で自由に動かすことができます。舌に目を向けて、動かしましょう。