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リュウグウの砂

□公明新聞 党活動 / 2022年1月22日

土曜特集 小惑星の砂は何を語る

46A42A08-A426-4370-9FCC-B8E9EE357773(今日の公明新聞より)地球から約3億キロ離れた小惑星「リュウグウ」の砂を採取して持ち帰るという、日本の探査機「はやぶさ2」のミッション成功から1年がたった昨年12月、砂の分析結果に関する初の論文が発表された。

リュウグウは、46億年前に太陽系が形づくられる際、大きな天体が衝突・破壊するなどしてできたと考えられる小惑星の一つ。

その砂は、何を語るのか。論文の主著者であり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の地球外物質研究グループで主任研究開発員を務める矢田達氏に聞いた。

■(「はやぶさ2」で地球に)初の“物的証拠”5・4グラム/望遠鏡観測での推定を裏付け

――リュウグウの砂を採取し、分析する理由は。

矢田達主任研究開発員 私たちが住む地球は、どのようにして生まれ、生命が宿る今の惑星になったのか。

地球や水星、金星などの八つの惑星や、小惑星をはじめ大小無数の天体が連なる太陽系は約46億年前、どんな形成の過程をたどったのか。こうした人類最大の謎を解き明かす手掛かりを、リュウグウの砂が握るからだ。

リュウグウは、太陽ができて間もない頃の古い情報をとどめた小惑星であると考えられ、その砂の中には水や有機物が残されている可能性が、望遠鏡観測によって推定されていた。それを裏付けるための物的証拠を初めて地球に持ち帰ることに成功したのが、「はやぶさ2」だった。

1年前、リュウグウの砂を収めたカプセルがオーストラリアの砂漠に帰還した際には、「ついに帰ってきた!」との期待で胸が高鳴った。

――砂の帰還から分析へとプロジェクトの舞台は移った。この1年の経過は。

矢田 真空密封された状態で日本に空輸されたリュウグウの砂は、私たち地球外物質研究グループが用意した設備「クリーンチャンバ」で受け入れた。この設備は、地球の大気に汚染されることなく、砂を小惑星と同じ真空環境下で取り扱える。

何度もリハーサルを重ねて容器の開封作業に臨んだところ、そこには5・4グラムの砂が入っていた。期待していた量の50倍を超えており、この瞬間を迎えるために準備を重ねてきた苦労が全て報われる思いだった。

その後、高純度窒素環境で開封した試料を砂ごとに仕分け、サイズや重量、形状などを測定した。さらに赤外線を当てた時の吸収や反射の度合いから含水や有機物の有無などを調べた。こうして得られたデータを論文にまとめ、先月20日付の科学誌ネイチャー・アストロノミーで発表した。

■(現時点で分かったこと)太陽系初期の情報を保持/水を含む鉱物や有機物に富む

――砂の特徴は。

矢田 赤外線を用いた分析から、水素と酸素が結びついた水酸基(OH)が検出され、水を含んだ鉱物がリュウグウに豊富に存在していることが示唆された。砂の中には有機物に含まれる炭化水素や、鍾乳石などの成分で知られる炭酸塩の存在も認められた。

顕微鏡による観察では、宇宙から地球に落ちてきた始原的な隕石の多くに含まれる「高温包有物」が全く確認されなかった。高温包有物のうち、高温で凝縮してできたと考えられるカルシウムやアルミニウムに富んだものは、見た目が白っぽい。これらがないことや、水を含む鉱物が含まれることから、リュウグウの砂は水分が蒸発したり、鉱物が溶けたりするような高温を経験せず、低温な状態を保持し続けていると考えられる。

――他に言えることは。

矢田 リュウグウの砂の特徴を、これまでに発見されている隕石と比較すると、「CIコンドライト」と呼ばれる隕石と非常に似ている。CIコンドライトは隕石の中でも特に希少で、太陽に最も近い元素組成を持つ。太陽の元素組成に近いということは、それだけ元の状態からの変化が少なく、太陽系の初期の情報を多く保持している。

以上の分析結果を踏まえて結論すると、リュウグウは水と有機物に富み、太陽系の始まりからの情報を保持する小惑星であることが明らかになった。

■(これからの展開)生命の起源が解明か!?/内外6チームで進む詳細分析

――今後の展開は。

矢田 現在、国内外の研究者が参加する六つの初期分析チームが、リュウグウの砂のさらに詳細な分析を進めている。遅くとも今年の夏までには結果が明らかになる。非常に面白い成果が上がってくるはずだ。期待してほしい。

――詳細な分析が進めば、どんなことが分かるか。

矢田 例えば、砂に含まれる炭酸塩が、どのくらいの時間をかけてできたのかも明らかにできる。これは、リュウグウの親となる天体(母天体)につながる重要な情報だ。太陽系の歴史上、リュウグウの母天体がどこで形成され、どのように現在のリュウグウの軌道にもたらされたかの解明に役立つ。

地球の生命の起源論にも大きなインパクトを与えるだろう。

地球上の生命については、太古の地球の海にCIコンドライトのような隕石が落下し、生命の原材料物質(アミノ酸など)がもたらされたことで誕生したとの仮説がある。リュウグウの砂に含まれる有機物の分析が進めば、こうした仮説の裏付けとなる基本的な情報が得られるはずだ。

どのように地球の海が形成し、生命が誕生したか。そして地球をはじめ太陽系がどんな歴史を刻んできたか――。今後の分析によって、これらを説明するための、たくさんの情報が得られることを期待している。

――多くの子どもたちが宇宙に関心を向けている。

矢田 私自身、子どもの頃に望遠鏡で土星の輪を見たときの感動が今も強く残っている。「面白い」という純粋な気持ちが原動力となって、この世界に入った。今回のプロジェクトが、子どもたちの情熱をかき立てる一つのきっかけになればと願う。今後の分析結果についても、いろいろな情報を、できるだけ分かりやすく発信していきたい。

やだ・とおる 理学博士。1971年、福岡県生まれ。九州大学大学院理学府地球惑星科学専攻博士課程修了。学術振興会特別研究員として東京大学大学院、米ワシントン大学に在籍。台湾・中央研究院を経て、2006年にJAXA研究員として着任。専門は始源惑星物質科学、同位体宇宙化学。