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加速するカーボンリサイクル

□公明新聞 党活動 / 2021年9月27日

気候変動に挑む新技術

07D2AF4B-C993-409D-BA9A-828CC5400460(今日の公明新聞より)地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を“厄介者”ではなく資源と捉える逆転の発想で、気候変動問題に挑むカーボンリサイクル。

2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」実現への鍵となる技術だ。

先進事例を紹介するとともに、広島大学カーボンリサイクル実装プロジェクト研究センターの市川貴之センター長に展望を聞いた。

カーボンリサイクルは、CO2を回収して他の用途に利用したり、地下に貯留したりする技術「CCUS」のひとつで、回収したCO2を別の物質に転換し再利用する技術のことだ。

すでに、CO2と水素をメタン(都市ガスの主成分)に高速変換するメタネーション、微細藻類によるバイオ燃料の開発、CO2を原料とするポリカーボネート(プラスチック)製造、CO2を熱触媒とする地熱発電などの研究・開発が始まっている。

日本には大きな競争力があり、コスト削減や社会実装を進めていけば、グローバルに展開できる可能性もある。

経済産業省は今年7月、「カーボンリサイクル技術ロードマップ」を改訂。カーボンリサイクル製品の普及開始時期を2050年頃から「2040年頃」に前倒しし、大気中からCO2を直接回収する新技術「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」や、国際連携の取り組みを追記するなど技術革新への動きを加速させた。

電力の8割を化石燃料による火力発電に頼り、世界第5位のCO2排出国である日本。夢の新技術で国際社会をリードできるか、目が離せない。

■(事例1)植物のようなコンクリート

コンクリートの主原料であるセメントを製造する時に、大量のCO2が発生する。この問題を解決する画期的なコンクリートがすでに実用化されている。

鹿島建設株式会社(東京・港区)、デンカ株式会社(東京・中央区)、中国電力株式会社(広島市)、ランデス株式会社(岡山県真庭市)の4社による環境配慮型コンクリート「CO2ーSUICOM」(スイコム)だ。

スイコムは特殊な混和剤を使うことで、CO2を吸収しながら硬化する。1立方メートルで、杉の木一本のCO2年間吸収量を上回る18キロを吸い込み、作るほどCO2を削減する「植物のようなコンクリート」。各地で歩車境界ブロックや基礎ブロックに活用されている。

一方、一般のコンクリートはアルカリ性だがスイコムはほぼ中性であり、鉄筋を腐食させる可能性があることや、工事現場での打設に利用しにくいなどの課題もある。

こうした課題克服への取り組みは昨年、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公募事業に採択され、中国電力は「2020年代中頃の商用化を目指して取り組む」としている。

■(事例2)完全無機物から“上質な肉”

「心と身体を健康に保つ魅惑的な動物性たんぱく質を世界中にお届けします」。これは食品会社のPRではなく、東京大学発のバイオベンチャー・株式会社CO2資源化研究所(東京・江東区)が進める、CO2から「肉」を作るという驚きの事業を紹介したもの。

水素をエネルギー源にCO2を吸って育つ「UCDI水素菌」で、人工肉となるタンパク質をつくる。菌の重量の80%以上をタンパク質が占め、魚粉の50~60%を上回る。

湯川英明社長は「国内の完全無機物から動物性タンパク質をつくれるのが特長。CO2削減とともに、食料安全保障にも貢献したい」と語る。

1個の菌は1時間で2個に分裂し、1グラムが24時間で16トンもの重量になる。米国でも同様の試みがあるが、2個に分裂するのに3時間程度かかるという。

湯川社長は「できるだけ早い時期に商品化したい。厳しい競争にさらされるだろうが、世界のベンチャーに負けない日本発の技術を世に送り出していきたい」と意気込んでいる。

「UCDI水素菌」からは、生分解性プラスチックやジェット燃料も製造することができ、同社は事業化に取り組んでいる。

3A525521-63F3-41E9-ACCD-EAFC3838451B■水素のコスト低減が必要/脱石油による地域産業の衰退防ぐ

――CO2をリサイクルするために何が必要か。

市川センター長 CO2を別の物質に転換し、資源化しようとすれば、相応のエネルギーとコストがかかる。一番簡単なのは水素を用いることだが、その水素の製造コストが高すぎる。

メタン(CH4)を生成すると今の流通価格を大きく上回ってしまう。安価な水素の実現が絶対に必要だ。

まずは比較的付加価値の高いメタノール(CH3OH)などの化学品を作るところから始め、水素の製造コストがいくらになったらビジネスになるか、産業界で共通認識をつくることが大事だろう。

――それに対する産業界の動きは。

市川 2019年8月に一般社団法人カーボンリサイクルファンドが設立された。このファンドは民間主導によるもので、高いCO2分離・回収技術を持つ企業など、会員企業85社11個人(9月1日時点)が参加し、カーボンリサイクルの実用化に向けた研究に対する助成などを行っている。

広島大学の「瀬戸内カーボンリサイクルコンビナート」構想に向けた研究も採択され、助成を受けている。

――どのような研究か。

市川 瀬戸内海沿岸には石油化学コンビナートが集積しているが、米国のシェールガスの登場など脱石油の流れから産業構造が変わり、縮小している。

そうした休眠設備などで、カーボンリサイクルで作ることができる石油の代わりとなる原料を活用し、石油化学コンビナートを「カーボンリサイクルコンビナート」へ発展させたいと研究を進めている。広島の大崎上島が、カーボンリサイクルの実証研究拠点であることを最大限に生かしたい。

今後、各地で石油に依存する産業を見切る動きは進んでいくだろう。カーボンリサイクルは、産業構造の変化による地域産業の衰退を食い止め、発展させる可能性があると思う。

――カーボンリサイクルが進展するためには何が必要か。

市川 カーボンリサイクルという産業はまだ存在しない。水素の製造コストを下げ、ビジネスとして成立するまで、大学などが基礎から応用まで技術的にサポートできる研究を進めていく必要がある。そのために、広島大学もこの研究センターをつくった。

行政による後押しも重要だ。例えば制度面では、再生エネルギーによる新電力の価格体系を見直すなどの“環境価値の見える化”もカーボンリサイクルの進展に影響するだろう。

回収・貯留技術でCO2を地中に埋めさえすれば良いという議論もあるが、国土は限られている。日本が2050年に温室効果ガス実質ゼロを実現するため、カーボンリサイクル技術が果たすべき役割は極めて大きい。

いちかわ・たかゆき 1974年生まれ。広島大学大学院・生物圏科学研究科・環境計画科学博士後期課程修了。博士(学術)。同大学院先進理工系科学研究科教授。一般社団法人水素エネルギー協会理事。