あきひろ日記 潮5月号【対談】「天災と人災」-先人の知恵を語る(下Part3)を読んで
地震大国に住む日本人が本来もつ人生観、共生する知恵、震災がもたらした教訓とは。中西進氏(国文学者)×磯田道史氏(歴史学者)が語る。
新幹線「のぞみ」命名の由来
(磯田氏)東海道新幹線「のぞみ」(1992年創業)、名付け親が阿川佐和子さん。
命名委員をされており、「希望」や「つばめ」「きらら」が有力候補だったよう。お父さん(作家の阿川弘之氏)に相談したところ、国鉄の列車の名前はすべて大和言葉がつけられてきたと指摘。
[大和言葉: 漢語や外来語が入る前から日本語にあった単語をさす]
(中西氏)候補の中では「つばめ」しかありません。
(磯田氏)そこで阿川さんは、「希望」を大和言葉の「のぞみ」に読み替えて提案し、採用されたそう。
(中西氏)列車の名前は大和言葉ばかり。自動車の名前はほとんど横文字。「SUBARU」だけ唯一の例外。「すばる」は「風土記」に出てくる千数百万もの歴史をもった日本語。
(磯田氏)「昴(すばる)」は「統べる(すべる)[統率する]」に由来する言葉。
(中西氏)「すめらみこと」(天皇)は「統べる」からきた言葉。
(磯田氏)統べる詔(みことのり)、神様の言葉をまとめて人々に伝えるリーダーが王様のはじまり。
(中西氏)言葉遊びは、味わい深く奥行きが。万葉集の世界には、言葉の成り立ちと日本人の源泉が詰まっている。
(磯田氏)津々浦々の人々が思いのまま詠んだ大和歌。名もなき庶民が書いたものも。文字を知らない庶民は神主から口伝えに和歌を教えてもらい、大和歌やまじない歌を歌う。3000万人いた江戸時代の日本人は、一人ひとりが大地と宇宙を身近に感じる哲学をもった人々。
(中西氏)日本の中央政府で行政官を務めていたのは、中国式の伝統的教育を受けた文字社会の達人。地方都市に派遣されると、文字の読み書きを知らない民衆を相手に。民衆との対話は、書き言葉を話し言葉である和歌の形式にあらためて、コミュニケーションを成立。和歌のおかげで、はじめて日本の地方政治は成立した。
(磯田氏)日本人は、人間だけを相手に和歌を詠むわけではない。発信する相手は、人間に限らず動物だったり山だったり。
(中西氏)極めて仏教的。仏典では、「草木国土悉皆成仏(そうもくこくどしつかいじょうぶつ)」と説かれる。人間や動物に限らず、草木や国土も仏性をもっており仏になれる。皆、同じ一列に並んでいると日本人は考えてきた。
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新幹線「のぞみ」の命名の経緯は驚きで、大和言葉は勉強になりました。言葉の成り立ちはすごく興味が湧き、和歌の存在がすごいと感じました。ここから一つの社会ができるような。名は体を表すといわれますから、命名は重要なことだと感じます。ちなみに「吉田章浩(よしだあきひろ)」いいでしょう(笑)
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「天災と人災」-先人の知恵を語る(上・下part)を読んで[バックナンバー]
潮4月号
⑴「災間」を生きている
⑵天災は忘れたころにやってくる
⑶「it」は「天」
⑷生老病死
潮5月号
⑴なゐふる
⑵先人がつけた地名
つづく