5月26日、安倍政権が成立を目指す安全保障関連法案の国会審議が始まる。法案には、集団的自衛権の行使の条件「新3要件」のすべてを明記することや、自衛隊を海外に派遣する際の条件など、公明党が求めてきた「歯止め」が随所に盛り込まれていると伝えられている。いったい、公明党は、一連の安保法制をどのように考えているのか。そして、集団的自衛権の行使は、どのような場合に認められるのか。安保法制に関する与党協議のメンバー、公明党の遠山清彦議員に聞いた。

与党協議のメンバーとして

[画像]公明党・遠山清彦議員に聞く「安保法制の狙い」

(以下、インタビュー文字起こし)

質問:安保法制に関する与党協議のメンバーとして、どんな取り組みを?

遠山:はい。私は、昨年の5月から、ちょうど1年間になりますけれども、公明党と自民党の間で、与党安全保障法制協議会というものができまして、端的に言えば与党の代表の議員を5、6人ずつ自民党、公明党から出して、そしてまずは集団的自衛権に関わるところですけども、われわれ今、存立危機事態と言っておりますが、今の憲法を変えていないわけですから、今の憲法の枠内で日本が自衛の措置としてどこまでできるのかということを協議して、それを閣議決定で昨年の7月1日出しました。その協議を、昨年5月から6月、やらせていただいて。で、今年に入ってからは、日米ガイドラインについても議論しましたけれども、基本的に去年の閣議決定、これは大方針です。簡単にいうと。この大方針を受けて、それをじゃあ、今の既存の法律、新しい法律に落とし込んだらどうなるのかと。こういうことで法案そのものを作る作業というのをするこの与党協議ですね。これに私、一貫して参加をしました。

で、去年から今年に掛けて25回、与党協議やらせていただきましたけれども、全てにフル参加して、さまざまな協議を政府とそれから自民党さんと、われわれ公明党、いわば3者でやってきた中の1人ということです。

安保法制関連11法案の狙い

それから、並行して公明党党内にも安保法制に関する検討委員会というものができまして、委員長は北側一雄副代表、私が事務局長ということで、この公明党内の党内協議も昨年と今年の分を合わせますと35回。与党協議を10回上回る数をやりまして、時間数も与党協議以上にやりました。ですから、公明党は平和の党であると内外で言われてるわけですけれども、やっぱり国民の皆さまに理解をしていただける、その必要性がですね。またその自衛隊の海外での活動等の要素が含まれますから、無用な懸念とか不安が無いような法制にしなければいけないということで、相当な時間を使って議論させていただいた。その中で、ずっと北側さんと一緒に真ん中でやらせていただいたということです。

質問:関連11法案の狙いは?

遠山:狙いはひと言で言いますと、安全保障に関わる法律というのは、もちろん一番有名な自衛隊法、あるいはPKO法ということを含めまして、もともと十数本ございます。ただ、これまでの日本の安全保障法制というものは、少し新しい国際社会の情勢に対応していないという部分がありまして、今回の最大の狙いは、この日本を取り巻く国際社会の環境が大きく変化をしている。そういう中で、わが国の平和とそれから国民の暮らしをどんな事態が起こっても守り抜けるための法律を整備しようということで議論を重ねて。そのわれわれの与党の合意を法律に落とし込んだら、今、おっしゃったように1本の新しい法律と10本の法律の法改正になります。

10本の法律はもともと存在している法律ですから、これは1本の改正案にまとめて、一括改正法案と言いますけれども、平和安全法制の整備法ということで、10本を1つにまとめて出しました。で、もう1本は国際平和支援法という、新しい法律ですので、これは独立して出したと。ですから、国会で審議されるときには形としては、2本。ただし、1本の中に10本の既存の法律の改正が含まれていると。こういうことです。

対応すべき新しい環境とは?

質問:今おっしゃった、新しい環境に対応するということ。具体的に言うと?

遠山:1つは、日本の安全保障法制というものは、結局、冷戦時代に日本をどう守るかというところから出発をして、そして積み上げられてきたんですが、もちろん今、ご承知の通り冷戦が終わってもう、数十年たっております。そして例えば日米ガイドラインでいうと、前回中身を変えたのは、17年ぐらい前でございますので、2001年の同時多発テロの前が一番最新の変更だったんですね。それ以来、日米同盟がどうやって動くかっていうのは変更してこなかったわけですから、そういう意味で、われわれが考えなきゃいけないのは、ざっくり言えば21世紀に入ってもう、15年たってるわけですが、21世紀に入ってからこれだけテロの脅威がグローバルに広がったことでありますとか、それから大きいのは軍事技術が高度に発達したんですね。

例えば今、皆さんドローン兵器って言葉、もう一般に知ってると思いますが、あれはもちろん日本は持ってませんけども、アメリカは無人で、アメリカ合衆国内で操縦しながら中東で人や建物を攻撃できると。無人攻撃機ですね。プレデターなんて名前で呼ばれてますけども、そういうものは昔なかったわけですね。それからあえて特定の国の名前は言いませんが、日本の周辺の国々の中でも、弾道ミサイルを持ってこれはマッハ20とかで飛んできますんで、日本との距離にもよりますけれども、ミサイルの発射ボタン押してから10分から30分以内に日本の都市を攻撃できるような弾道ミサイルが、正直言うと何百発とこの日本周辺だけでもあって、それに核弾頭だとか、あるいは化学兵器だとかを載せられて発射した場合には、これはとんでもない事態になるわけでございます。

もちろん、そういうふうにならないように日頃から外交活動というものがありますし、それから軍事的な側面で言えば、情報収集活動。人工衛星や艦船、飛行機等による情報収集活動、警戒監視活動、こういうことはやってるわけですけれども、これが今、私が申し上げたような、21世紀、今日に起こってることに対応した法律とかガイドラインに実はなってなかったと。これを今回、集中的な議論を行って、まとめて変えるということになったので、これだけ大きな改正になったというふうに理解をしていただければと思います。

「ポジティブリスト」と「ネガティブリスト」

それから日本の島、これ私、公明党の離島振興対策本部長もやってるので、よく知ってるんですが、日本に島、いくつあるかって言って街頭で答えられる人は、ほとんどいないんですね。じつは、6,852島ございます。これは人が住んでる有人島と、人が住んでない島を合わせて6,852島。ですから、このうち人が住んでる島はもちろん少ないです。418しかございません。ということは、6,400以上の無人島が日本にはあるわけでございまして、こういうところに外国の、他国の、もちろん軍隊とは限りませんけれども、人やあるいは集団が無断で上陸をしたときにどう対処するか。こういった問題にも実は、日本の法律は答えてなかったんです。

もう1点関連で、大事な点があります。世界中のほとんどの国と日本と実力組織、自衛隊と他国の軍隊で決定的な違いが1つあります。これがなかなか理解されてないので、なんでこんな複雑な法体系とか、こんなたくさんっていう言葉がよく出てくるんですが、それは、日本の自衛隊はポジティブリストという方式で運用される部隊です。それに対してほかの国の外国の部隊は、ネガティブリストなんです。どういう意味かと言いますと、ほかの外国の部隊は基本的にその国を守るために、その国の軍隊としてなんでもしていいですよ、と。ただし法律で禁じられていることはできません。つまり、禁じられていること、ネガティブリストですね。法律でこれやっちゃいけません、あれはやっちゃいけません、ということはやっちゃいけない。でもそれ以外はなんでもやっていいんです。アメリカの軍隊、イギリスの軍隊は

日本の自衛隊は逆でございまして、基本的に何もやってはいけません。だけど、法律に書いてあることはやっていいですと。よって日本の自衛隊というのは、これはほかの軍隊と全然違うんです。法律に書いてあることしかできません。よって、われわれは、われわれっていうのは国会議員は、たくさんの法律にいろんなこと書くわけですね。それはなぜかというと、そこに書いてあることしかできないし、そこに書いてあるルールに従って動くしかないと。ほかの国は、法律に書いてあることはやっちゃいけないことだけなんです。これは決定的に違うんです。で、ここに対して理解が得られないと、なかなか安全保障法制がどうしてこうなってるのかっていうのが理解されないと、こういうことです。

自衛隊の活動範囲は増えたのか?

質問:自衛隊ができることが飛躍的に増えたという指摘があります。

遠山:私は、これは2つあると思います。1つは、日本を守るということについては法律上の考え方は基本的には変えておりません。報道では集団的自衛権の行使容認と書いてますが、これは非常に報道機関、たくさんの報道機関そう書いてるのですごく言いづらいんですが、不正確な表現です。ですから、それ1つ。それはちょっと、あとでなぜ不正確かって申し上げます。で、ただし、この、今まで自衛権の中でどこまでやっていいか分からないという限界点を示した上で、その中でやっていいことを決めました。よって、その自衛隊の活動範囲が広がったっていうのは事実です。ただし、考え方変えてないということが1つ。

それからもう1つは、国際社会への貢献という部分があるんですね。PKOがそうですよね。国連の平和維持活動というものは、もちろん日本は国際社会の一員ですので、国際社会全体が平和になることというのは大きく言えば、日本の国家安全保障にもつながりますから、決して関連がないわけではありませんけれども、一方で例えば、南スーダンに派遣されている自衛隊員の活動というのは、直接日本を守っているというよりも、国際社会の一員として国連が決議を出して決めた活動の一参加者として貢献をするという部分だと思います。そういう国際社会の平和と安定のために、自衛隊が活動する範囲を大きく広げた、これは事実でございます。ただ、あらかじめ申し上げると、これは安倍総理も何度も言っておりますけども、日本が、ほかの国がその国自身を守るために行う戦争に参加すること、これはありません。それから日本の平和と、安全保障に直接関わりのない武力紛争に日本が参加すること、これも100%ありません。それからもう1つは、戦闘を目的とした、それも相手が国家や、国家に準ずるグループ。ゲリラ組織ですね。高度に組織化されたゲリラ組織。そういったところとの戦闘目的で国連の活動をすること。これもございません。それも実は公明党がいろんな歯止めを、今私が言ったことをできないようにかけたということが背景にありますので、そこを1つ理解してもらいたいと思います。

集団的自衛権と憲法9条

で、ちょっと集団的自衛権のところすごく大事なのでちょっと申し上げたいと思うんですけれども、もともと去年の5月にわれわれ与党協議する前に一般的によく言われていた議論はこういうことです。日本は憲法9条を持つ、平和憲法の下での国、平和主義の国でございますので、基本的には、平和憲法の下で集団的自衛権は使えませんと。これ、ずっと政府が言ってきたわけです。ところが、日本が加盟をしている国連ってございますよね。そこの憲法に近い、最高規範である国連憲章、この第51条には、日本を含む全ての加盟国に個別的自衛権と集団的自衛権を与えますと書いてあるんです。

そこで、従来言われてきたことは、日本は国連加盟国として当然に集団的自衛権という権利は持っているけれども、平和憲法の下ではそれを使ってはいけませんと。こう言ってきたんです。で、多くの学者やあるいは一部の政治家は、特に自民党に多かったんですが、「権利として持っているのに使えないなんていうのは権利じゃない」と(考えていた)。よって、集団的自衛権は使えるようにすべきだと。こういう主張がかなり出されました。

で、その上で、われわれ公明党と協議に入ったんです。結論から言いますと、平和憲法、憲法9条が変わらない限り、もっぱらほかの国を守るために自衛隊が武力の行使をすることはやっぱり認められないということを、新3要件で書きました。ですから、これは安倍総理も、去年の7月14日の予算委員会の質疑で、安倍総理自身の言葉で言っていますが、国連憲章が各国に与えた集団的自衛権は、われわれ与党が決めた新しい安全法制の下でも許されない、使えないということなんです

「新3要件」とは何なのか?

じゃあなんで、新聞の見出しが「集団的自衛権行使容認」と言ってるかと。これは、分かりやすく例えで言います。われわれが作った、公明党が特に強く主張して作った新3要件っていうのは、日本ではないほかの国の部隊への攻撃がきっかけなんですが、そのほかの国の部隊に対する攻撃を「きっかけ」として、ほかの国の国民じゃなく、日本国民の生命、命と自由と幸福に暮らす権利が根底から覆される明白な危険があって、ほかに適切な手段がないときは自衛隊がほかの国の部隊に対する攻撃を「きっかけ」に動いていいですよ、と。武力の行使をしてもいいですよということを言ったんです。

で、こう言われるとまだ分からないと言われると思いますので、もっと分かりやすく例えてみます。普通の集団的自衛権というのは、私とそれから隣にいる人と同盟関係にある場合で考えますと、私は、まったく攻撃されてませんが、私の同盟であるこのAさんという人が攻撃されました。よって、Aさんに対する攻撃を私に対する攻撃と見なして一緒になって、そのAさんを攻撃している敵に反撃をする。これ、普通の集団的自衛権です。

今の日本の新3要件はそうなってません。新3要件は、わが国と密接な関係にある他国に対する攻撃を「きっかけ」として、かつ、その攻撃によってわれわれ自身が、私自身が危ない目に遭うということが明白なときといってますから、分かりやすく言うと、単に私の盟友、同盟国であれば守る、じゃないんです。私を守ってる活動をしている、わが国、日本を防衛する活動をしている部隊が襲われて、そしてその部隊をそのまま放置して、その部隊が攻撃で壊滅してしまえば、当然に次はこっちに来るというような状況のときは行っていいですよ、と。

ですから、国会の論戦でもすでに想定されうる事例として出ておりますが、日本を守るために警戒監視活動を、日本の近くの海で、近海で行っているアメリカの艦船が攻撃を受けた場合。もちろんそのアメリカの艦船の後方にはわれわれ日本があって、自衛隊もいるわけですけれども、今までは明らかに日本のために活動しているアメリカの艦船が攻撃されても、自衛隊は動くことはできませんでした。なぜなら、日本そのものが武力攻撃を受けないと出撃できないという解釈になっていたからです。今後は、その米艦がやられたあとには、こちらのほうにね、大きな被害が来るということが予測される場合には、その時点で自衛隊が動けると。こういう整理をいたしました。

一方で、じゃあアメリカのテキサス州にある米軍基地がどっかの第3国に襲われた。テロリスト組織に襲われた。オバマ大統領から安倍さんに電話かかってきて、晋三さんと、日本は集団的自衛権もうできるんでしょ、と。ついてはアメリカ本国のここが攻撃されたんで、自衛隊助けに来てくださいと。行けません。行けないんです。なぜなら、アメリカのテキサスの米軍は日本を守ってますか。守ってないですよね。行けないんです。同盟国ですけど行けないんです。

ですから、そういう、それはなぜ行けないようにしたのか。憲法9条の下で許される自衛の範囲を超えているからです。だからあくまでも、日本を守るために自衛隊が動くという基本的な考え方はまったく変えていません。そういうことです、はい。

ホルムズ海峡での機雷除去は可能なのか?

質問:ホルムズ海峡での機雷除去の例ではどうですか?

遠山:私自身はホルムズ海峡の例というのは、起こる可能性がゼロとは言えませんが、極めて可能性が低い事態なので、この「存立危機事態」を説明する例としては国民の皆さまの理解を得るのにあまり適切だとは思っておりません。まずはそれを申し上げたいと思います。

なぜならば、ホルムズ海峡の機雷の例なんですね。これは、2つの特殊な要素があります。1つ目の特殊な要素は簡単です。ホルムズ海峡って日本からものすごく遠いんですね。ですから、ホルムズ海峡で起こったことが日本の国民の暮らし、あるいは命、自由、幸福追求権に大きな影響を及ぼすというのは、普通はにわかに考えがたいという問題です。2つ目は、機雷を巡る問題だということなんです。これは、一般の国民の皆さん、なかなか想像したことないと思うんですが、機雷を海でまくというのはどういうことかというと、これひと言で言うと、法律的には武力攻撃なんですね。しかもやっかいなのは、機雷をまいた海を通る船、その船を持っている国、全部に対する宣戦布告なんです

だから、例えば、ホルムズ海峡というのは世界中の船、タンカー、日本だけじゃないです。もう何十カ国の船が毎日通ってる海峡ですから、そこにどこかの国が機雷をまきますと、そのホルムズ海峡を通ってる国全部に宣戦布告なんですね。なぜかっていうとご承知のとおり機雷っていうのは船が当たったらぼんって爆発してしまいますので、ってことはその海峡通る船、その船を持ってる国、全部に対する宣戦布告なんです。よって、日本に対してもホルムズ海峡、タンカー通ってますので、ある意味宣戦布告になってしまいます。

で、機雷をまいた国がやっぱり戦争やめた、と。攻撃、いろんな国に攻撃するのやめた、と宣言をして停戦合意をすると機雷は武器ではなくて海に浮かんでいる障害物になります。障害物を自衛隊が取り除いてもいいんです。今でも。今でもっていうか、法改正しなくてもできます。道路に置いてある障害物を警察がどけるのと一緒で、自衛隊がその海まで行ってどけるのは、これなんの問題もないんです。問題は何かというと、機雷をまいた国がまだ戦争やめないと言っている状態で、かつ日本の船もそこを通ったら爆発してしまうので通れないという状況になってると。そのときに国連か、ほかの外国諸国か分かりませんが、自衛隊も優秀な掃海艇を持っていますので、ぜひそれを派遣して機雷を除去してくれと。そうすると、まだ停戦合意ができてないときに機雷の除去を始めますと、機雷をまいた国から見ると、「あっ」と。日本はわれわれの武力攻撃に反撃をしたと見なされると。そうすると日本はその国と交戦状態に入りますので、海外での武力行使や戦争を禁じた憲法に抵触してしまうかもしれないと。

じゃあ、抵触しない解釈というものはどういうときに成り立つかというと、新3要件に合ってるときなんですね。じゃあ、新3要件に合ってるときっていうのはどういうときかと言うと、何度も繰り返しで恐縮ですが、日本の国民の生命と自由と幸福追求権が、根底から覆されるときなんです。その明白な危険があるときだけなんです。

で、そこで議論になるのは、じゃあ、ホルムズ海峡で機雷がまかれて日本の石油タンカー、天然ガスタンカーが日本に到達できなくなりましたと。その結果として経済、生活の混乱が日本で生じた。その混乱の度合いがこの3要件で言うところの国民の命を根底から覆される明白な危険と認定できるかどうかなんです

これは私個人の意見になりますが、ホルムズ海峡で機雷が仮にまかれたとして、日本のタンカーが来れなくなっても、まず1つ、日本には日本国民全員が6カ月間暮らせるだけの石油の備蓄がございます。そうすると、まかれた瞬間、あるいは翌週、そういう状態になるとは想定できないです。

それからもう1つは、その備蓄された石油でしのいでいる間に、当然日本以外の国々も、その機雷のせいで迷惑を被るわけですよね。そうすると国連が動いて、国連決議が出る可能性が高い。あるいは国連決議が出るか出ないかにかかわらず、日本のように平和憲法でいろんな制約がある国と違って、集団的自衛権を行使できる国、百数十カ国、海外にありますので、その国々が普通の集団的自衛権に基づいて機雷を掃海してしまう可能性もございます

いずれにしても私は完全にゼロとは言いませんけれども、この新3要件が当てはまる可能性のある事例として、ホルムズ海峡の機雷掃海というのは極めて低い事例だというふうに思っております。もちろん低いけれども完全にゼロでないという意味で、われわれは新3要件に合えば自衛隊は動けるし、新3要件に合わなければ自衛隊は動けないと、こういう答えを言ってるわけですけれども、それは法律論としてはそうなんです。法律論としては、まだ起こってない事態ですからね。これ、もしかしたら起こるかもしれないと、想像でしょ。想像の事態ですから、それは法律では新3要件に合えば行ける、合わなければ行けない、以上。終わり、なんです。

ただ、現実論として、本当にそういう事態になって自衛隊がホルムズ海峡に行くかどうかと私が聞かれれば、それは相当な偶然が重なって、われわれが想定しないようなことがいくつか重なってそうなることがあるかもしれない、という程度であって、確率は非常に低いと思います。

「新3要件」の判断をどうやる?

質問:実際、判断するのは時の政府ですか。

遠山:はい。新3要件の判断というのはもちろん、この新3要件で法律に書かれている文章だけでは判断しません。国会ですでに横畠内閣法制局長官、これは憲法の番人と言われている方ですけれども、そういうポジションにある人ですけれども、この人が去年、あるいは今年の国会の審議ですでに明言しておりますが、じゃあ、日本の国民の命や自由や権利が根底から覆される事態であるかどうか、ある事態が。それをどうやって認定するんですかと聞かれたら、これは攻撃をしている国の意思。意思ですね。それから能力。それから攻撃の規模。それから攻撃の態様。例えば核兵器を使って攻撃しようとしているのか、戦闘機を使ってしようとしているのか、船を使ってしようとしているのか、機雷でやっているのか、これによって大きく規模とか対応も変わります。そういったもの。

それからもっと大事なのは、私たちが分析をして認定しようとしている事態が、そのままわれわれが放置をして、何もしなかった場合に、本当に日本国民、日本国に大きな被害が及ぶのかどうか。その蓋然性。蓋然性というのは可能性ですね

それから、もし、じゃあ、日本に被害が及ぶとなったときには、その被害が深刻じゃないといけないんですね。よく、さっきのホルムズ海峡の例で出てきますけれども、ホルムズ海峡が機雷で封鎖されて、エネルギー資源が来なくなったことによって、日本の経済が大混乱起きて深刻な被害になったときには、それを守るために自衛隊が行わなきゃいけない。こんな主張が国会でされることがあるわけでございますが、ってことは、日本人の、国民の、全体のですよ。1人や2人じゃありません。全体の命に関わるような深刻な被害でなければいけないわけですから、単なる経済危機、経済社会の混乱だけでは、とうてい新3要件に合わないってことです

ですから、さっき私が申し上げたような、もう少し細かい判断要素というものを使って判断をしますし、特に大事なことは、日本が直接武力攻撃を受けたと同じような被害が来るという事態にしか、この新3要件に合ったとは言えないと、こういうことなんです。

自民党と公明党の考え方の違いは?

質問:経済的理由を存立危機事態としてはなかなか認めにくいというお話だったと思うんですけど、そこは自民党と考え方が違うのでしょうか。

遠山:はい。公明党としての考え方っていうのは、いろんな形で提示をしていきたいと思っております。で、自民党との距離ということですけれども、これは、正直に言いまして、ものの見方、立ち位置というのは少し異なる部分があるかもしれません。それは例えばさっきのホルムズ海峡の例で言えば、例えば自民党の幹部の方にホルムズ海峡の機雷がまかれた事態で自衛隊行けるんでしょうかと聞くと、「新3要件に合えば行けますよ」と答えると思います

じゃあ、公明党どうやって答えるかというと、いや、新3要件に合わなければ行きませんと。そうすると、国民の皆さまで、新3要件の中身を知らない方にとっては、結論が違うでしょ。新3要件に合えば、まあ、自衛隊行けますよと。結論だけ覚えたら、行けます、なんです。でも、われわれ公明党は、新3要件に合わなければ、それは行けないんですと。そうすると結論だけ印象に残ると、あれ? 自民党と公明党で180度違うなと。でも実は同じことを言ってるんですね。100円玉を裏から説明してるのか、表から説明してるのかであって、実は同じ100円玉を説明してるのと同じなんです。

「重要影響事態」と後方支援

ただこれは、分かりにくいですよね。ですから大事なことは、さっきの100円玉のコインの事例で言えば、裏から説明する場合と、表から説明する場合と、ちょっと異なると。だけれども大事なことは、この100円玉というもの、これは私から言わせれば法律そのものです。これは一緒なんです。説明の仕方がちょっと異なる。だから、大事なことは、じゃあ、この100円玉、真ん中の100円玉である法律というのは、何が書いてあって、そして日本というのは法治国家ですからね。ましてや日本の自衛隊というのは、先ほど冒頭に申し上げたように、法律に書かれたこと、ポジティブリストに基づいてしか動けないと。ほかの国の軍隊は法律に書いてあることをやっちゃいけない。あとはなんでもやっていい。自由です。だから米軍なんて世界各地行くじゃないですか。日本の自衛隊は法律に書いてあることしかできないんです。

ですからそこは厳密に細かく書かせていただいたと思ってますし、今回の平和安全法制は、今日は時間がなくてカバーできませんでしたけれども、例えば後方支援というものを行います。「重要影響事態」という、わが国に影響がある事態で、米軍が動いている、あるいは米軍以外の国も動いているときに、その後方支援をする。それが重要影響事態の法律です。それとは別に国際社会の平和と安定のために動いている外国の部隊をまた後方支援する。これが新しい新法です。

後方支援と自衛隊のリスク

ただ、この新しい新法による後方支援の場合は、やはり自衛隊員のリスクというものが高くなるという意味で、われわれ公明党は例外なき事前の国会承認というものを付けましたってことは特措法と一緒なんですね。よくテレビなんか見ていると、公明党は最初は特措法、海外への自衛隊派遣は特措法じゃなきゃいけないと言ってたけれども、自民党に押されて一般法でも納得したとおっしゃってますが、これはちょっと根拠のない批判なんです。

なぜわれわれが最初、特措法と言ったかと言うと、特措法というのは事態が起こって特措法を作って、国会を通して、毎回国会のチェックを受けて自衛隊の派遣を判断するから大事だと言ったわけであって、今回一般法にしましたけれども、その代わり例外なき国会の事前承認ですから、特措法のときと同じように国会のチェック、承認がなければ絶対送っちゃいけないわけです。ってことは、効果としては法的な、特措法と一緒です。それを自民党さんが譲ってくれたんで、われわれ賛成に回ったという敬意もございますし、それからこの平和支援法については、国連決議がある活動しか自衛隊は行けないということなんです。

ただ、そういうことを言うとね、いやいや遠山さん、地理的制約を取っ払って自衛隊どこでも行けるわけだから、もう世界中で、地球の裏側で戦闘に巻き込まれる可能性ありますねと、すぐ反論されるんですが、それも法律をよく見ていただきたいんですが、自衛隊は後方支援しかできないんです。平和支援法では。後方支援というのは戦闘が行われている現場では一切、補給活動も支援活動もしないというルールです

で、法律をよく読んでいただくと、戦闘地域では、戦闘が行われている地域では活動しませんし、もし後方支援で入ってる、活動してる近傍、近所で、あ、戦闘が起こってきたなと分かった瞬間に、地元の司令官や防衛大臣がそれを撤退させることができますので、ですから、例えばイラクで昔日本が、自衛隊がサマーワというところで人道復興支援活動をやりましたよね。あれは今回の国際平和支援法ではできないんです。なぜならば、あの、自衛隊がイラクで行った活動というのは自衛隊が自ら行う活動ですよね。自ら水をつくって、その水を補給する活動等したわけですよね。で、これは後方支援じゃないんですね。後方支援というのは、あくまでも他国の部隊がやってる活動に、後ろから協力をする、支援をする、サポートする活動で、それしかできませんよと決めてあるんで

ですから、確かに世界どこの地域で起こっても、国連決議があって、自衛隊員が安全にできる。そしてその活動の目的が国際社会の平和に貢献するものであれば、自衛隊員行くわけですが、後方支援しかできませんから、戦闘している現場にはまず行かない。仮にそういう状況になったら撤退をする。こういうルールを決めてるわけでございますんで、その辺が今たぶん、国民の皆さまから見るといろんなことが報道であふれていて、法律の数も多いので、ちょっとぐじゃぐじゃになって分かりにくいかと思いますが、こういった私が今日お話ししてることを1つ1つ丁寧に、これから国会審議の中で説明をさしていただければご理解はいただけるんじゃないかと、こう思っております。

後方支援と「武力行使の一体化」の境界線

質問:後方支援では、弾薬を運ぶことも後方支援として認められる?

遠山:はい。弾薬とか、水、もちろん弾薬だけじゃありません。水とか食糧とか、あるいは海外で野営をしながら活動をしている部隊というのはさまざまなものが必要なわけですから、そういったものを補給するお手伝いをいたします。弾薬については支援を受ける他国の部隊が、日本が持っている弾薬と同じものを使っていて、ぜひ欲しいと言った場合には提供をいたします。

ただ、後方支援をする場合に大事なことは、武力、ほかの国が行う武力の行使との「一体化」を避けるということでございまして、「何を提供すると武力行使と一体化と言える」というものではないんですね。水とか、日本が提供した水とか食糧を摂取して、元気になった兵士が戦場に行って戦争をすれば、それは人によっては武力の行使と一体化したと言われかねない。ですから水だからよくて、弾薬だから駄目という法律的な仕分けにはなっておりません。基本的には相手が要望があって、こちらが提供できるものは協力支援活動として提供をすると。

それを提供された部隊がどこかの前線で、仮に戦闘をしたとしても、戦闘している現場と一線を画した、まったく違う別の場所で補給活動を行ってる自衛隊は、直接戦闘行為に参加をしてませんので、憲法に違反したことにはならないと、こういう整理にしております

あと、ちなみに、「え? だけど他国の部隊が戦争をしてるところに食糧や水や弾薬まで補給したら、日本は一体化してるじゃないか」と言われるかもしれませんが、さっき申し上げたように、注意点は国連決議が出ている活動に参加をしている他国の部隊に対する後方支援です。ですから、ある国が勝手に中東とかアフリカで戦争をしているときに、後方支援することはありません。世界190カ国が参加してる国連の安全保障理事会等で、これは国際社会全体として対処しなきゃいけないとされる、「国際平和共同対処事態」と呼んでるわけですけれども、この国際社会全体が、みんなでこれは対応しなきゃいけないという、そういう事態に対処してるほかの国に対する後方支援ですから。そこをぜひ、誤解ないようにしていただきたいと思います

イラク戦争の場合はどうなる?

質問:アメリカが決議なしで行ったようなイラク戦争のようなパターンではどうでしょうか。

遠山:結論を言うと、いろんな見方、イラク戦争についてもあります。実は、あのイラク戦争で武力行使をしたアメリカとかイギリスは、湾岸戦争のときに出た国連決議687に基づいて自分たちはイラク戦争で武力を行使をしたと、一応主張しております。ただ、それに対する評価というのはさまざまですから、私は、ここであえて国連決議があったかなかったかは言いませんが、いずれにしても先ほど私が申し上げた、国際平和共同対処事態というふうに法律に基づいて認定する事態は国連決議、あるいは関連する決議があるものでなければならないので、イラク戦争の武力行使が国連決議がなかったという評価をしたとするならば、それは日本は後方支援もできません。はい。おっしゃるとおりです。

なぜ、今のままではいけないのか?

質問:状況の変化を踏まえ、新しい法で対応していくというお話ですが、現状維持だと、どういうデメリットが考えられるのでしょうか。現状のままでもいいのではと考える国民も少なくありません。

遠山:はい。おそらくこれからの国会審議の中で、さまざまな角度から、今おっしゃられた、なぜ今こういう安全保障法制を多岐にわたって改正するということが必要なのかということについては、これは国会審議の中で、われわれ与党の議員も質問立ちますので、明らかにしていかなきゃいけないと思います。短時間で説明するのはかなり困難ですけれども、一言で申し上げれば軍事技術、あるいはIT。例えばGPSの技術なんかも、十数年前とは比べものにならない精度になりましたし、今や家電製品屋さんに行ってドローンが1万円台で買えてしまう時代になりました。

そしてインターネット、サイバー攻撃、あるいはハッキング等によって、ネットとつながってる車や航空機を乗っ取るということも不可能じゃなくなりました。そういう、高度に発達した軍事技術を目の前にして、今まで70年間、日本は個別的自衛権に基づく防衛出動も一度もやっておりません。ベトナム戦争にも参加しませんでしたし、いわゆる戦争と言われるものには憲法で禁じられておりますから一度も日本は参加せずに今日まで来たわけでございます。

しかしながら、じゃあ、このまま何も法律も変えずに、70年間なかったんだから次の70年もないよという楽観主義でいけるかというと、残念ながら高度に進んだ情報技術、軍事技術等を目の前にして、それから今、中東で起こっていること、アルジェリアで日本の民間の方々が突如、民間のプラントで働いてるだけで襲われて亡くなりました。それから今年に入ってからはイスラム国、ISILですね。そこに日本人が2人人質になって、大変残酷な形で処刑をされるという事件を起こっております。

ですから、そういったもろもろのことを考えまして、あと先ほど少し申し上げましたけれども日本の周辺国の中で、残念ながら日本に対して敵意を公然と表明をしている国もありますし、またそれだけではなくて、1発の爆弾で万単位の人々を殺傷することができる弾頭を持ってるということが強く疑われる国もあるわけでございますし、日本の周辺の海域から少し東南アジア、あるいは太平洋のほうまで見渡しても、直接日本ではないけれども、海に権益を持ってる国同士のいろんな争いというものが現実起こっております。特定の国とは言いませんけれども。

ですから、そういった現実を前に、何かが起こってから、こんな事態は想定していなかったので自衛隊は対応できませんでは済まないだろうと思います。われわれ公明党はそういった最悪の事態が起こってほしいとは思っておりません。それどころか積極的な平和外交を展開をして、戦争にしろ、紛争にしろ、武力衝突にしろ、軍事的な危機にしろ、外交努力等で防げるものは徹底して防いでいくと。これは大前提です。ただ、その上で、万が一のときに備えるのが安全保障法制でございますので。

もちろん与党で密室でやってるじゃないかというご批判もありますから、これからは国会の場で、国民の皆さんが見えてる場で、今日話した事も含めて、虚心坦懐に議論させていただいて、今回の安全保障法制の整備の必要性ということをご理解していただき、もう一方でさまざまな改正はしていくけれども、日本の平和憲法の下での平和主義、あるいは自国防衛を基本とする考え方については変えてないと。戦後日本が70年間、過去の対戦に対する反省をもとに平和国家として歩んできた道は、これからも強固にしていくという、去年の7月1日の閣議決定の文言どおりの法整備を今回させていただいたということをぜひ、ご理解いただけるように、われわれあらゆる努力をしたいと思います。

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