5月8日(木)、別府市で立川市議会公明党会派の行政視察を行いましたのでご報告します。この日は同じ別府市で、午前・午後で別項目での視察でしたので、ブログも項目別に掲載します。
視察先と調査項目
視察先:別府市
調査項目:インクルーシブ防災について
調査の目的
別府市では誰ひとり取り残さないインクルーシブ防災に取り組んでおり、立川市における防災対策の取組の参考とするため視察を行った。
調査概要
別府市役所にて、別府市企画戦略部政策企画課から「インクルーシブ防災」についての説明いただいた。
インクルーシブ防災
●目的
すべての人に寄り添い、別府市総動で災害から命と暮らしを守り、安心して安全に暮らし続けられる持続可能な地域づくりと人づくりを目指す。
災害時に要配慮者を地域で守る仕組みを作り、障がいのある人なども含めすべての人の命と暮らしを守るためインクルーシブ防災に取り組んでいる。
●背景
これまでの全国での被災地の教訓を学び・生かし、被災しない住民、被災しない地域をつくるため、仕組みにできるものは仕組みとし、できないものは関係機関や地域で支え合いながら命と暮らしを守る日常的なつながりをつくる必要性を感じ、誰ひとり取り残さない防災の取組みを進めている。
2007年の別府群発地震と、障がい者が亡くなったマンション火災死亡事故で、障がい者の災害への不安が大きくなった。そこで、障がいのある人たちがつくる「福祉フォーラムin別杵速見実行委員会」は別府市の担当課へ呼びかけ、行政との協働で取り組まれてきた。平成28~30年度は日本財団の助成を受けて実施し、平成31年度以降は市単独事業として実施している。
●事業の概要
インクルーシブ防災の取組みは、障がい当事者、福祉専門職、市民等、多様な団体と取り組みを行っている。
具体的には、「要配慮者支援の仕組みづくり」「要配慮者への理解促進」「関係機関相互連携の推進」「関係者で支援計画作成」「福祉関係者への災害時ケアプラン作成研修会」「要配慮者が参加した避難訓練及び避難所運営訓練の実施」「障がい当事者の側の取り組みの推進」「障がい者のゆるやかな安心ネットワーク構築と勉強会開催」「要配慮者支援の仕組みづくりの理解」「関係機関への研修及び検討会議の開催」「福祉事業所等災害時BCP(事業継続計画)作成のための研修会」など。
個別避難計画の作成対象者数は約3,800名。市内17地区から優先度の高い地区を選定して作成を進めている。なお、計画の実効性を高めるため次の3つのステップで作成されている。
ステップ1:調査票を用いて計画作成(「個別避難計画作成のための調査票」を使用し、個別避難計画を作成)
ステップ2:地域調整会議(1で作成した計画をもとに、地域関係者で話し合い完成)
ステップ3:避難訓練(完成した計画で避難が可能かなどの検証)
防災の取組みを進める中に、障がい当事者、福祉職に参画してもらい、地域の協力を得るために普段から顔の見える関係を構築し、防災を一緒に考えることとしている。このような中から共通理解が進み、避難所に障がい者が来た時に別室へ案内するなどの配慮がスムーズに行なうことができる。みんなで考えることで、誰ひとり取り残さない防災を進めている。
質疑応答
Q.多くの個別避難計画作成対象者がおり、それぞれの避難先を決めるのは大変ではないか?
A.福祉施設だけではなく旅館・ホテルにも協力いただいている。全体の調整は市危機管理課がまとめているので避難先の調整も問題なくできている。同じ要支援者でも災害の種類によって避難先が異なることもある。
Q.計画作成の優先度の付け方は?
A.地区としての優先度はハザードエリアの状況を踏まえ、優先度順に「土砂災害」「洪水」「津波」「火山」としている。その地区の中の要支援者の作成を優先しているのは「自分で判断できない人」、「自分で移動できない人」、「地域で孤立している人」としている。
所感
説明の中で「名簿があっても命は守れない」との言葉があり、どのようにすべての住民の命を守るかを考えた中から、様々な取り組みや工夫が生まれてきたのだと感じた。また、地域の方々の理解をえることは決して簡単ではなく、職員が地域に出向いて説明会を開くなど、丁寧に地域と関係機関、要支援者、福祉職等をつないでいることがわかった。
個別避難計画で本当の意味で命を守ることができるものにしなければならず、これまでも議会質問などを通して計画の実効性をどう持たせるのかを議論してきた。今回の視察で、単に計画を作ることが目的ではなく、命を守るためのツールであることを改めて感じることができた。今後も、今回の視察を参考とし、要支援者を含むすべての市民を守る防災の取組みを推進していきたい。
お忙しい中ご説明をいただいた別府市企画戦略部政策企画課のご担当者に感謝申し上げます。