10月25日に、熊本県山鹿市で会派行政視察を行いましたのでご紹介します。

視察先: 山鹿市役所
調査項目:インクルーシブ教育モデル事業について


平成18年に「障害者の権利に関する条約」が国連で採択され、障がいに基づく差別の禁止とともに、障がい者を抱擁するあらゆる段階での教育制度の確保が求められた。翌平成19年には学校教育法が一部改正され、それまでの養護学校・養護学級は特別支援学校・特別支援学級とされた。平成23年には「障害者基本法」の改正、平成24年には中教審から「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」が出された。
本年4月には障害者差別解消法が施行され、教育分野においても合理的配慮が求められるとともに、中教審の報告にもある共生社会の形成に向けた取り組みが求められている。山鹿市では平成25年からの3か年、文部科学省指定のインクルーシブ教育システム構築モデル事業に取り組んできたことから、立川市における学校教育の参考とするため取り組み状況を調査した。
 
【調査概要】

山鹿市教育委員会よりスライド等の資料を基に取り組みの概要説明を受けた。
 
◆モデル事業の取り組み
【平成25年度】
 ・各中学校区へ合理的配慮協力員配置(事務局含め7名)
 ・市教育委員会と合理的配慮協力員との会議開催
 ・モデル事業の周知及び協力依頼 など
【平成26年度】
 ・3つの重点事項の設定
 ・有識者による運営協議会設置
 ・合理的配慮協力員会議の充実
 ・アンケート調査や中間報告会の開催 など
【平成27年度】
 ・広報紙発行
 ・小中学校全教職員研修
 ・授業での合理的配慮例の作成、配布 など
 
◆合理的配慮協力員
 合理的配慮協力員は、「児童生徒の実態把握や教育的ニーズの把握」「教職員の専門性向上への指導助言」「校内委員会やケース会議等への参加」「合理的配慮・基礎的環境整備についての検討・提供・評価」をはじめ、大変多くの食内容を担っている。実態把握や環境整備という面では、3年間に800回の学校訪問を行うなど、積極的な活動が行われている。
 教育委員会ではこの合理的配慮協力員がモデル事業の成否を決める重要なポイントであるとして、市内に限らず幅広く有能な人材を集めた。その職歴は、元養護学校校長、元教育センター副所長、元特別支援学級担任など。
 なお、モデル事業では文科省の10/10補助で7名の協力員を配置したが、事業終了後の平成28年は市費で2名の協力員を採用・配置している。
 
◆重点事項
 モデル事業を進める上で、以下の3つの重点事項を定め取り組まれた。

【ユニバーサルデザインの視点に基づいた授業づくり】
 どの子どもにもわかりやすい授業づくりを目指し、教室内掲示物の整理、1時間の授業を子どもたちが見通せるよう、めあて、学びあい、まとめ等の掲示を充実させるなどした。
 具体的なユニバーサルデザインの視点として、「学習の姿勢」「学級環境づくり」「授業の構造化」「時間の構造化」「学習ルールの明確化」「学習のつまづきへの支援」「自分の考えを持たせる工夫」「考えを話す場づくり」「板書の工夫」「子ども同士のつながる言葉」などを意識している。

【ケース会議の充実】
それまでのケース会議では情報交換は行われていたものの、支援策の検討や検証が十分でなく、会議自体の時間の確保も難しい状況であったことから、このケース会議をいかに充実させるかに力が入れられた。
 具体的には、大学教授を研修会に招いて学び、短時間で、少人数で、支援シートを活用し、成果の出るケース会議とされた。その中で対応策の検討検証をするためにストラテジーシートが活用され、これは事前、行動、事後に別け、それぞれの段階で対応の工夫、望ましい行動、ほめ方などを記載し、役割分担や期日などについても明記するものとなっている。

【個別の教育支援計画、移行支援の充実】
 幼保から小学校、小学校から中学校の移行支援については、進学前から直接幼保小へ出向いて状況の把握を行っている。中学から高校については、情報の引き継ぎを高等と文書により充実させている。
 
◆モデル事業の成果
 3年間のモデル事業の成果として、配慮を必要とする児童生徒に関する学校間の連携が良くなった、研修などの機会を通して教員の専門性が向上した、ケース会議が充実したことで適切な支援が行うことができた、などが挙げられた。 またアンケート調査の結果からも客観的な成果として、教員の理解やそれに基づく指導が実施されている状況もわかった。
 
◆課題
合理的配慮協力員が国のモデル事業終了に伴い、これまで同様の配置が難しくなった。そこで、リーダーコーディネーターやコーディネーターの役割が重要となるため、専門性の向上が課題となる。

【主な質疑】

Q.義務教育である小中と異なり、幼保との連携は難しいのではないか?
A.特別支援担当教諭やコーディネーターが幼稚園や保育園に足を運んで状況を把握している。モデル事業以前から、学校の夏休み期間に幼稚園や保育園で保育体験を教員が行い、それと合わせて懇談や相談も行っている。

Q.誰でもわかりやすい授業は、配慮の必要な児童生徒に限らず、理解力や習熟度などでも異なり、難しいのでは?
A.大きな目標として教育の質は落とさないように取り組んできた。授業をルーティン化することで子どもも安心して授業に臨める環境を作り、自分の考えを持たせることと学びあうことで学習意欲を高め、子ども任せではなく必ず1時間の授業の振り返りやまとめまで終わらせるように工夫している。大事なことは一人ひとりの習熟度合を担任がしっかりと把握すること。

Q.教員は県内で異動があり、市外から赴任した教員はこのシステムにすぐに対応できるのか?
A.校長会などを通して、新任の教員には早く山鹿市の教育システムに慣れることができるように指導することを繰り返している。これまで現場で困ったなどの話はなく、学校内でしっかりとフォローできているものと思う。

【所感】

教育長の「すべての子どもを自分の子どもと思ってかかわる」という言葉が印象的であった。現場の教員までこれが浸透しており、子どもの成長につながる仕事にやりがいを感じて取り組んでいる様子が、事業説明の中でも感じ取ることができた。
このモデル事業が大きな成果を上げた要因として、素晴らしい合理的配慮協力員を配置することができたとの説明もあった。モデル事業としての仕組み作りと、意識の向上、専門性の発揮などで果たした役割大変大きいものと思われる。
学校教育の中で必要な合理的配慮をどのように考えていくのか、地域性などにも応じた仕組みを作っていく必要があり、新たにスタートした特別支援巡回指導などの実施状況や成果なども確認しつつ、今回の視察を検討の参考としていきたい。
 
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