「居住目的なし」が20年で倍増/発生抑えるため関連法改正へ
2023/02/27 3面
全国で増え続けている空き家について、国土交通省の有識者委員会は7日、空き家対策の今後のあり方を取りまとめた。政府はこの内容を踏まえた関連法の改正案を今国会に提出する方針だ。今後の空き家対策の方向性に関する解説とともに、有識者委員会の委員長を務める日本大学の中川雅之教授のコメントを紹介する。
総務省の調査によると、国内の空き家は2018年時点で849万戸あり、住宅の総数に占める割合は13・6%に上る。このうち、居住目的のない空き家は349万戸で20年前からほぼ倍増し【グラフ参照】、30年には470万戸まで増加する見通しという。
公明党のリードで制定され、15年に全面施行された空き家対策特別措置法により、倒壊の恐れがある空き家を自治体が「特定空き家」と規定し、除却の代執行などが可能となった。ただ、空き家の除却が各地で進められているものの、今後も居住目的のない空き家が増える見通しであることを踏まえ、発生そのものを防ぐ対策の充実・強化が欠かせない。こうした観点から、22年10月に設置された国交省有識者委員会が、今後のあり方を議論してきた。
今回の取りまとめの柱は、「発生抑制」「活用促進」「適切な管理・除却の促進」「民間主体の活動促進」【表参照】で、空き家状態となる前の段階から有効活用や適切な管理を促す。
発生抑制に向けては「住まいの終活」としての空き家対策の意識啓発を強調。
活用促進については、中心市街地などを対象に、建て替えの規制が緩和される「活用促進区域」を設定する。地域によっては、災害に強く資産価値の高い中心市街地や観光地、地域の拠点となるエリアに空き家が集中する傾向もあるという。こうした空き家が物件としての価値を失う「特定空き家」になる前の段階で活用を促すことが狙いだ。
適切な管理では、これまでの「特定空き家」に加え、管理が不十分な空き家についても、固定資産税の優遇措置を解除するよう提案している。国交省によると、放置すれば「特定空き家」になる恐れがある管理不全の空き家は約24万戸あるという。
また、自治体が所有者探索に活用できる情報の拡大や取得の円滑化についても言及している。
民間主体の活動促進では、所有者と空き家活用希望者とのマッチングを円滑に行うため、市町村が保有する空き家の所有者情報をNPOなどに対して提供する案なども盛り込まれている。
■中川雅之・日本大学教授のコメント
■早期活用が悪影響防ぐ/NPOなどの活動も重要に
今回の取りまとめの特徴は三つある。一つ目は、状態が悪い空き家に対する強い介入を行うのではなく、空き家が発生する前段階で幅広い介入を行うことだ。
例えば、所有者と家族の間で相続が発生する前から「住まいの終活」として対処を話し合うことの重要性を啓発する。空き家が発生した場合、引き継いだ子孫にはどのようなリスクが生じるのか。また発生した時の地域への悪影響など、所有者の意識醸成を促していく必要がある。
空き家は早期に活用されれば周辺への悪影響も防ぐことができる。活用促進に向け、空き家バンク登録の働き掛けや、建て替え規制の緩和などの仕組みも求めている。
二つ目は、空き家対策について社会全体で取り組んでいく方向性を打ち出したことだ。これまで対策を担ってきた自治体だけでなく、NPOなど民間団体の活動を促進していく。プレーヤーの幅を広げたとも言える。実際、空き家の所有者と移住希望者のマッチングなど、NPOの活動が広がっている。そうしたNPOをプレーヤーの一つとして明確に位置付け、具体的な取り組みを後押しする体制整備を打ち出している。
三つ目は、自治体が積極的に動きやすい環境整備を提示した。自治体が所有者探索に活用できる情報を拡大するとともに取得の円滑化を図る。具体的には戸籍情報の取得時間の短縮や、電力会社にある所有者情報の提供を円滑化することなどを掲げている。
今後、今回の取りまとめを踏まえた改正法案が国会で議論される中で、住民や事業者側に空き家対策への理解が浸透してほしい。
公明党は住民生活に直結する住宅政策に熱心に取り組んできた。空き家問題はこれからの住宅政策の一丁目一番地になり得る。公明党には引き続き、現場の声を反映した政策を期待したい。