
■授業の質向上に期待/空き時間確保、担任の負担も軽減
「もっと、足を伸ばして!」。教員の元気な声が響く。横浜市西区にある市立戸部小学校。4月下旬の3時間目、体育館で6年2組の体育の授業が行われている。この日は、マット運動が課題で、児童たちは前転や倒立の練習に励んでいる。指導に当たるのは、隣の1組の学級担任教員だ。
教科担任制を導入する同小の6年生は2学級編成。どちらの学級も、体育は1組の担任、社会は2組の担任が受け持ち、外国語、理科、家庭科、音楽、図工は、担任を持たない専科教員がそれぞれ授業を担当する。国語と算数は、各学級担任が授業を行う。
教科担任による授業は、内容も充実しているようで、児童から「分かりやすくて楽しい」など好評を博しているという。
教員側のメリットも大きい。担任の教員は担当教科以外の“空き時間”を活用して授業や教材の準備のほか、学級通信の作成、提出物の確認など、今まで放課後に対応していた業務を進められるようになった。1組担任の土田大貴教諭は「授業を一度準備すれば、2学級分で活用できるため、より入念な準備がしやすくなり、さまざまな業務を行う時間が確保しやすくなった」と語る。
横浜市の調査では、学力面などでの教科担任制の効果が明らかになっている。例えば、理科の教科担任制を実施した5校について、導入前と導入後で同じ児童群の学力調査の結果(全市平均との差)を比較したところ、「思考・表現」において5校中4校で上昇した。また、「学年のほかの先生と学習するのは楽しいか」との問いへの児童の回答は、「そう思う」「ややそう思う」で9割を占めた【グラフ参照】。
教科担任制導入の効果は、兵庫県でも明らかになっている。同県は、学級担任間による交換授業と少人数授業を組み合わせた“兵庫型”の教科担任制を独自に構築。12年度には全県で実施している。
教科担任制を実施した学校の教員を対象に、県が20年度に行ったアンケートで、「中学校への円滑な接続ができるか」との問いに「そう思う」と回答した割合は83・4%、「多面的な児童理解に基づく生活指導ができるか」の問いに「そう思う」と答えた割合は93・4%に上った。実際に指導に当たる教員自身が、教科担任制のメリットを感じていることが分かった。
■全国実施へ教員定数増
こうした利点の多い、教科担任制だが、これまでは地域の実情に応じて自治体が独自に行うしかなかった。そこで、教育上の効果の大きさや、教員の「働き方改革」の必要性などを踏まえ、文部科学省は22年度から小学校5、6年生を対象に、教科担任制を導入することを決定した。
全国での導入推進に向けて、政府は、専門性の高い外国語、理科、算数、体育を指導する正規の専科指導教員を22年度から4年程度かけて段階的に配置し、計3800人増やす方針を決めている。実現すれば、週3・5コマ程度で教科担任制が実施される計算になるという。
■公明、予算確保を後押し
子どもの可能性を引き出す教育を推進する観点から、公明党は「35人学級」とともに「教科担任制」の実現に一貫して取り組んできた。
22年度予算編成の際、教科担任制導入に向けた教職員定数の増加などを求める文科省に対し、財務省側は当初、中学教師の活用を提案するなど難色を示し、交渉の先行きが見通せなかった。
そこで公明党は、年々負担が増している教育現場の切実な実態を政府に訴えるとともに、党文科部会(部会長=浮島智子衆院議員)が昨年12月1日、財務省で岡本三成財務副大臣(公明党)に対し、予算確保を求めるなど当局に粘り強く要望してきた。
これが力強い後押しとなり、同22日の文科相と財務相による大臣折衝の結果、教職員定数について、小学校高学年での教科担任制の推進のために、4年程度で計3800人を本来の定数に加えて増やすことで合意。22年度の教職員定数は、教科担任制推進の950人、公立小学校の「35人学級」への移行を3年生で実施するための3290人などを合計し、全国で4690人増加することになった。

